ゲームとは所詮“運ゲー”でしょう   作:人類種の天敵

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パッと思いついたネタ。運がある奴って良いよね。



人生とは所詮糞ゲーですね

この世界は所詮糞ゲーだ。

名家に生まれた奴、元々身体能力に恵まれてる奴、体格共に恵まれてる奴、コミュニケーション能力に恵まれてる奴、物事全般に一定以上の理解力に恵まれている、いわば1を知って10を知れる奴、顔が恵まれている奴などなど、こいつらは元々先天的なステータスや能力に恵まれている。

元々が御曹司なら職には困らず金にも困らない。

体格や身体能力が良ければ小中高で色々な部活動に熱烈な歓迎を受けて薔薇色な青春を送る。

コミュ力の高い奴はもはや崇敬の域に達している、何をどうすればあんなにペラペラと楽しく会話が出来るのか、頭の中をパクッと割って調べてみたい。

要領の良い秀才は東大だとか名門大学に行って、いずれは日本の頭脳を担う。

顔が恵まれてる奴は論外だ、頭がアレでポンコツでも貢いでくれる奴がいるから生きていける、クソッタレめ。

 

…………そして、そんな憎まれ口を叩く俺と言えば……。

身長は無駄に高いものの、ひょろひょろとしていて運動神経も特に良いわけでもなく、中高一貫してあだ名がノッポかヒョロい壁。

コミュ力なんて最早論外で、女と喋れば直ぐにどもるし舌は噛むしもう最悪だ。

更に要領は並、好きな事や夢中になれる事なら秀才クンには負けねえけども、他の事になるとからっきしのボンクラで、いけるとしてもギリギリ3、4流大学の最底辺か?

顔は至って普通、片目を覆い隠す癖っ毛が長年の相棒でありウザってぇ隣人でもある。

そして最後に、俺は、そんな星の元に生まれてきてしまったのか、どうした事やら“運”とやらに恵まれたことがない。

 

宝くじを引けば必ず参加賞か最低ランクの商品を貰い、俺の前後に並んだ奴らは特賞か一等を掻っ攫って行く。

地元じゃそれを知ってる親しい知人などは俺の特性?を利用して自分だけ良い物を独り占めしやがっていた、畜生が。

あぁ、あと、一つ……運が悪い俺の特技に、変人を呼び寄せる体質……なんて非常に要らないモノがある。

 

ああ、本当に…………。

 

 

この世は所詮、運ゲーだ。

 

 

 

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

 

 

 

 

ウィーン

 

「らっしゃっせー」

 

「………」

 

ピッ、120円、ピッ、100円、ピッ、362円、ピッ、100、ピッ、592円。

 

「こちら温めますか?」

 

「あ…………や……大丈夫です」

 

「……はい、こちらお会計1274円になりますー」

 

「………お願いします」

 

「はいー、1500円頂きます…。お返しが226円ですね、レシート要りますか?」

 

「ぁ、はい」

 

「アリャーしたー」

 

ウィーン

 

「…………………ふぅ」

 

基本簡単なレジ打ちを終えてカウンターの上に頬杖を突く。

1日1回の気が憂鬱になるノルマ達成〜……はぁ、後は目を瞑ってても楽勝だわ。

 

「センパイ〜、何溜息吐いてんスか。って、さっきの子いつもの子デショ?あの子可愛いっスよね〜」

 

二、三ヶ月前くらいにウチのコンビニに入ってきた新人後輩がお茶らけた軽い感じでさっきのお客さんの話を始めるので、耳を塞ぎたい気持ちで「そーだな」とだけ言って資材の補充を始めた。

 

「髪が長くて黒くて清潔だし、以下にも大和撫子って感じスよね!」

 

お前大和撫子なんだか知ってんのかオイ。

 

「背も高くてモデル体型だし、顔立ちもめっちゃ整ってるからどっかでスカウトされても良いと思うんスけどね〜」

 

まあ、確かに、俺が受けたあのお客さんは、顔立ちといい体型といい、CMやモデルなんかで引っ張りだこになってそうな子だ。

 

「いやーセンパイ羨ましいっス!いつもあの子のレジ打ちやれて超尊敬っスよ!」

 

うるせー、こっちゃ歓喜の感情以前に超ドギマギしてんだよバカヤロー。

 

「はぁ、お名前だけでも聞けたらなぁー……」

 

「バカ言ってないで仕事しろ仕事」

 

「う〜っスw」

 

「…………………名前………か」

 

「あれ?なんか言いました?センパイ」

 

「何でもねーよ」

 

……………………………小比類巻 香蓮。

それが毎日俺の担当するレジに並んで買い物をする彼女の名前だ。

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

「んじゃ先に上がるわ」

 

「あ、う〜っス、お疲れっス」

 

「おう、乙」

 

服装を着替えてパーカーを羽織り、愛用のリュックを背負ってコンビニエンスストアを出る。

時刻は既に午後11時台をマークしている。

直ぐ家に帰ると部屋着に着替えて軽い食事を取り、部屋の温度を適温に設定してベットにゴロンと横たわって、一つの機械を瞼の上にソッと乗せる。

 

「ーーーリンク・スタート」

 

最後に魔法の言葉を唱えれば、夢の世界の始まりだ、頭の中を電子的なナニカが………こういう感想とかバカじゃ無理なんで感覚的に行こう。

 

パーとなってブィーンと言ってパァァァッと光ったらいつの間にか荒廃した世界に立っていた…………………ハイ!

 

…………というわけで、銃弾飛び交う、疾走する戦場……fpsVRMMO ガンゲイルオンライン 通称GGOへとログインした俺は、とりあえずいつもの酒場へと顔を出すことにした。

 

 

「うおっ、ラッキートレジャーのアリーヤじゃねえか!ハッハッハ!今日の獲物は何狙ってんだァ!?ヴィントレスか?はたまた噂実装のレールガンか?………おい、どこ行くんだよ。まあ、とりあえずそこに座れよ!なあ!ハッハッハ」

 

入って早々後悔した。

絡まれたくない奴ランキング1位のプレイヤー「バフォメット」が逃げようとした俺の肩にムッキムキの太腕を巻きつけてきた。

 

アリーヤは 逃げるを選択した → Oh、逃げきれなかった 。

 

筋肉モリモリの2メートルサイズのこのアバターは、絡まれたら最後、レア銃をトレードするまで絡まれると言われてるチンピラプレイヤーだ。

 

「うっせーぞ、バフォメットぉ。…………実はそろそろ対物ライフルを狙って箔付けんのも良いかと思ってる」

 

仕方なくカウンター席に座ってNPC……ではなく、fpsVRMMOで何故か酒場のバーテンダー兼支配人をしているプレイヤーからクリームソーダを頼む。

 

「ブハッ!鯖に数丁しかねーってアレをか!?どうせお前じゃ使わねーんだろォ?」

 

何が面白いのか知らないが、ブハハハハ、と体格に似合った笑い声を上げる大男にVサインを掲げて緑色の液体をストローで啜った。

 

「もち。俺の筋力値じゃフツーに装備とか無理だし第一に芋とか趣味じゃねーよ。フツーに売っ払って今後の資金に致しますわ」

 

「ブフォフォ!何が落ちるか分からんが、こんな奴に拾われるたァレアもんも可哀想だなァ」

 

顎に手を当ててニヤニヤとこちらを伺うこのおっさんは、顔に似合わず沢山のフレンドやコネを持っているので、それらを活用して武器トレードや売買の仲介人的な副業を行っていることがある。

 

「……………………良い商談相手がいんのか?」

 

横目でおっさんの顔をジロジロと見つめながら問いかけると、気色の悪い顔を浮かべてニヤリと笑う。

 

「4、6でどうだー!」

 

「マスター、今度対物ライフル取ってくるけど要るー?」

 

「んー?なになにー?」

 

「ドワァァーー!!!!待て待て!待てェェい!!分かった!分かったァーー!!お前7、俺3、これでどうだ!」

 

酒場のマスターに商談を持ちかけるとバフォメットが慌てて値段を交渉してくる。

 

「最初からそうしとけ、バカ」

 

その真面目くさった顔に対してフッと鼻で笑い、こちらのカウンターに寄ってきたマスターにアイスカフェオレのフロートを頼んだ。

 

「く、悔しい……!ドロップ運性が良いだけのアンポンタンにこんな屈辱を味わされるとは……」

 

「オイ聞こえてんぞアホ」

 

本人としては結構アレなのか、両手で頭を抱える大男の脇腹を軽く小突き、クイッと親指で店の外を示す。

 

「とりあえず行くぞ、準備しろや」

 

とりあえず洞窟っぽい所に行って、とりあえずレイドボス的な奴を倒せば、ドロップアイテムの中からとりあえず対物ライフルが出るだろう………。

ドロップ率がアレなVRMMOでは至極安易な考えだとバカにされるものの、運性能を極めた俺としては、逆にそんな奴らに対してこう、一言言ってやりたいものだ。

 

ーーーあら?おたく……レア銃の一つも持ってないんですね(笑)まあ、俺は?×××とか?〇〇〇とか?持ってますけど?ーーーと。

 

 

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

荒廃した砂漠の洞窟の中、激しい銃弾の嵐を掻い潜り、天井からひっそりと現れた蝙蝠のような巨大怪物がプレイヤーの1人を掴んで連れて行ってしまった。

 

「ウワァァァァ!?」

 

「うぉっ!?お、おおおおおい!バフォメット!!お前のスコードロンメンバーが連れてかたぞ!」

 

「あァ!?ああ、あいつは借金の片があっから体で払う奴だ、心配すんな。それよりもお前ら!コンカッション持ってきたなァ!?奴ぁエコーロケーションを使って周囲を把握してっから、先ずは奴の耳を潰すぞ!」

 

しゃ、借金の片………ゲームでしょ、これ?

 

「アイサー!!ウラァこれでも喰らえヤァ!!」

 

1人のプレイヤーがコンカッション投げろと言うたのにRPGを天井へとぶっ放した。

 

「大丈夫だ、あの弾頭には通常弾じゃなくてコンカッショングレネードを詰め込んだ特性弾頭になってる。空中で炸裂して奴の聴覚を狂わすのよ………まあ、見てろ」

 

口に含んだタバコを美味そうに吸いながら、バフォメットは右手に掴んだライトマシンガンのグリップを強く握りしめた。

 

「アッ…………ランチャーの弾頭変えるの忘れてた……」

 

「洞窟が崩れッゾーーー!!逃げろォォォ!!」

 

「おい!話が違ぇ!!?」

 

洞窟の出口へと全力疾走しながらバフォメットへと唾を飛ばす。

 

「悪い悪い、あいつ……手先が器用な癖にたまにああしてドジる事があんだよ。まあ、こんな立派な拵えの洞窟がRPGの弾頭1発くらいでそうそう簡単に崩れるわけねーべ」

 

「うおおおおおお!!?何故か天井の隙間に保管されていた大量の燃料缶が起爆したゾ!!も、もうダメだー!!崩れる〜!!!!」

 

「………」

 

「死ね、ガチで死んで下さい」

 

ドドドドドド……と、岩盤が崩れ始め、周囲には逃げ惑うプレイヤーに容赦なく降り注ぐ巨大な岩礫の数々。

 

「オイ待て、まず第一になんでテメーは俺と同じ速度で走ってんだ」

 

「バッカヤロウ、そりゃ、おめーが運ステータスだけは異常に高い運回避野郎だからに決まってんだろ。お前の近くにいれば運良く岩崩れを回避できるかもしれん」

 

キリッと真顔で言い放った目の前の筋肉親父の頭を両手で掴んでガクガクと揺さぶりまくる。

 

「ふっざけんなテメェ!元はと言えばテメェの使えねーポンコツスコードロンが悪りーんだろが!死ね!俺の盾になって死んでくれ!」

 

「オワァァ!?待て待て、今は流石に非常事態だ!今は生き延びることを考えようぜ!「グシャ……」」

 

バフォメットの足に岩礫がクリーンヒットしてあらぬ方向に右足が曲がっている。

 

「………」

 

「………」

 

「…………じゃ、お先っ!」

 

「待て!ストーーーップ!!ここで容赦なく見捨てるとか実にお前らしいけど、も!それ人としてどうな訳!?人としてどうな訳ーー!!」

 

どうなわけーー!どうなわけーー!!どうなわけーー!!!………………。

 

 

 

 

ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶

 

 

 

「ゼェ……ゼェ……ゼェ……………い、生き延びた………」

 

「ふぅ、あっ、お疲れさん。足も戻ったし、もーいーぜ?」

 

足が使えなくなったバフォメットを引きずりながら洞窟を脱出し、砂漠のど真ん中で長い長い息を吐く。

足が復活したバフォメットは新しいタバコを口に含んで火を付けた後、しまっていた機関銃を手元に出した。

 

「…………お前のスコードロンメンバーは?」

 

「ぜーんいん死んだ。まあ、レアもんは落とさなかったらしいし、いんじゃね?」

 

流石にこの後RPGを撃ちやがったバカが袋叩きに遭ったのは言うまでもない。

 

「………とりあえず帰るか」

 

「おう、そーだな。はぁ、お前のドロップ運でレアもん出んのは良いけどよォ、やっぱアレだな。ボスを倒さねーとそれも意味ねーもんな」

 

「おま………MP-7の弾丸喰らうか?あ?」

 

筋力値的に装備できる相棒にして愛銃のH&K社製PDW……MP7A1の銃口をグリグリとバフォメットの顎に押し付ける。

MP7A1のピカニティーレールにはこのゲームの仕様上要らないアタッチメントであるホロサイトやタクティカルライトを装備。

他にもバレルに消音対策のサプレッサーと、拡張マガジンを後付けしている。

 

この消音対策で装備してサプレッサー、音が聞こえないのは良いのだが、その性質上どうしても射程距離や貫通力、ダメージなどが減衰する。

ボス戦ではどうしても威力不足になりがちだが、その代わりに反動も軽減されるわけで射撃の上手くない俺でも軽々と扱える。

これは元々、俺のステータスは運と敏捷性以外あんまりパッとしないので対人戦になった時最低自分の身を守れるようにカスタムしているのだ。

……………ホロサイトやタクティカルライトは完全な趣味というか、飾りというか……モロにヴィジュアルを重視したアセンブルだが、結果的にとっても気に入っている。

 

「んじゃ帰るか………」

 

「そーだなァ……」

 

そう言って止めていたジープに乗り込もうとすると、直前で砂に足を取られて顔から砂に突っ込んでしまった。

 

「ブァフォフォ……!!お、おいおい……ブフォ……何やってんだおまぇぎなぎ……?」

 

「……………は?」

 

バフォメットが変な言葉を発して俺と一緒に砂の中へ顔を埋めるーーーいや、これは。

 

(クソッ!敵か……!?もしかして…………ああ、最悪だ!最悪!!今噂の待ち専キラーかよ!)

 

デザートスコーピオン。

 

今GGOサーバーの砂漠フィールドで特に凶悪とされている姿の見えないPK(プレイヤーキラー)プレイヤーだ。

既に被害に遭ったプレイヤー達の数は数え切れないほどであり、唯一の情報は、このPKプレイヤーの武器が名前の由来となっているVz 61スコーピオンのデュアル装備だと判明していることくらいだろう。

 

ーーーそう、このPKプレイヤーの恐ろしい所は、情報が少ないーーいや、姿が見えないために情報を集められない、という点だ。

武器がスコーピオンだと判明しているのもスコーピオン独自の射撃音やサブマシンガンの威力補正、射撃レートから、被害に遭ったプレイヤー達が情報掲示板やサイト、果てにはPKプレイヤースレで情報提供しているからに他ならない。

 

砂漠を縄張りとして武器が二鳥持ちのスコーピオン、それ以外は何の情報も、一切無し。

故にデザートスコーピオン(砂漠の蠍)

故に恐れられるPKプレイヤー。

 

今俺が相手にしているのは、出会ったら最後、生きて逃げられない恐怖のPKプレイヤーなのだ。

 

 

 

「………」

 

とりあえず、砂に頭を突っ込んだままで考える。

どうするか、いや、どう生き延びよう。

武器はスコーピオンだし、二鳥持ちだし、距離さえ取れば射程減衰やら弾のばらつきやらでひょっとしたら逃げ切れるかもしれない。

つーか死んじまったら武器がMP7A1しか持ってないから絶対落としてしまうだろう、それだけは嫌マジで勘弁して欲しい。

初期でドロップしてから今日まで一緒に戦ってきた相棒なのだ、まあ、大金をはたいてサプレッサーや拡張マガジン、その他の要らないアタッチメントの装備改造なども理由の一つに入るものの、現状でMP7A1を手放す事は絶対に避けたい、だってレアだもの。

 

「………」

 

「………」

 

そんな事を考えてるうちに横たわっている俺の背後に気配を感じる、ああ、こいつが噂のPKプレイヤーか?

とりあえずの処置として俺はまず両手を挙げて戦意喪失している事を表明した。

 

「撃たないでくれ。降参、降参だ。俺の負けだよ」

 

「………」

 

「俺はアンタの姿なんか見てないし、アンタがこれからする事にも関与しない」

 

まあ、見てないというより、見えなかった……し、これからやろうっていうのは、十中八九ドロップ回収………剝ぎ取りだろうな。

 

「だから俺を撃つのだけは勘弁してくれ。命が惜しいとかじゃなく……その、武器が惜しいんだ。MP7って知ってる?今アレしか持ってないから絶対に落としちゃうんだよね……」

 

「………」

 

「そうだ、ジープの中に今回持ってきたアイテムがごっそり入ってるから持ってけよ。あんだけあれば結構な金額になると思うし、アンタにとって損な話じゃないだろ?」

 

「………」

 

クソ、なんか言えよこいつ……。

 

「…………それで、撃たない?………撃たないんなら、肩か体のどこかを二回タッチして欲しいんだけど………」

 

「………」

 

数秒待って、トントンと肩を叩かれた。

ホッと一息ついているとドカン、と洞窟から何かが飛び出した。

 

「ッ!?ずぉっ!?まだ生きてたのかよ!アイツ!!」

 

「……ッ!!?」

 

蝙蝠型の巨大レイドボスは、大きな耳を使ってこちらを発見したようだ。

不協和音を奏でてこちらへと飛び込んできた。

 

「お、おい!とりあえず逃げるぞ!ここにいたら死んじまう!」

 

目の前に落ちていたバフォメットのライトマシンガンーーーMG4ライトマシンガンを掴んでジープに放り投げ、運転席に飛び乗ると、すぐさま助手席側のドアがバンと閉められ、デザートスコーピオンもジープに乗ったのだと知る。

 

「これ使ってあいつを撃ちまくれ!当たらなくていい!」

 

ジープを発進させて片手で運転しながら助手席に座っているだろうデザートスコーピオンにバフォメットが使っていたMG4ライトマシンガンを寄越すと、程なくして後方のレイドボスに射撃を開始する音が聞こえる。

 

「はぁ!クソックソ!冗談じゃねえぞあのバカ!」

 

レイドボスによる空中からの襲撃をギリギリで避けて悪態を吐く。

サイドミラーからレイドボスの動向を気にしつつ目の前の運転にも集中する。

 

カチ、カチ……。

 

「弾が切れたか……もういい、確か後ろの座席にコンカッションが沢山置いてあるはずだからそれをあの蝙蝠にぶん投げて混乱してるうちに逃げるぞ」

 

「………」

 

デザートスコーピオンは俺の指示に素直に従い、後部座席をゴソゴソと漁った後で、コンカッショングレネードをがむしゃらに投げまくった。

 

「ギァァァァァァ!!」

 

レイドボスの苦しむ声が聞こえる。

それを心地よく聞きながらニヤリと笑う。

 

「他にもねえのか?あ?ランチャーがある?」

 

そりゃ………バフォメットのスコードロンメンバーが使用するはずだった、コンカッションランチャー……?は?ジープに放置?……マジ死ねよアイツ。

 

「使ってくれていい!………当てれるか?」

 

その問いかけに、座席を1発、ドンっと叩かれる………良い返事だ。

 

「さぁ、ラストドライブだ!蝙蝠ヤロォ!」

 

空中からの襲撃を避けるためにグニャグニャと運転していた軌道を、直進運転に切り替える。

レイドボスが鳴き声を上げながらそれに追従し、後部座席からコンカッションランチャーが発射された。

 

「〜ーーーーーーーーーッッッ!!!!」

 

レイドボスの悲痛の叫び、そしてサイドミラーからチラチラと見えていた備え付けある装備を見つけた俺は、ハンドルに後付けされている見慣れないボタンを思いっきり叩いた。

 

「オラオラオラオラオラ!M2機関銃の銃弾を喰らいやがれ!」

 

ジープ後部座席に備え付けられていたM2機関銃が唸りを上げて銃撃し、翼を傷付けられたレイドボスが地面へと不時着する。

それを好機と見た俺はハンドルを操作してレイドボスの元へUターン。

そのままレイドボスの顔面へとジープをぶつける。

 

ドガッッッジャーーーン!!!

 

ジープに顔面を撥ねられたレイドボスは、遂に小さな悲鳴を上げてその巨体を砂漠へと沈めた。

よっしゃ!………と小さくガッツポーズした俺は、この喜びを分かち合うためにデザートスコーピオンの方へ振り向くーーーー。

 

「あたた……………頭が……なまら痛い………」

 

「……………は?」

 

「え」

 

助手席には、頭を抱えてわたわたと体を動かす、小さなーーー身長150にも満たない……低身長の、チビが…………………いた。

 




レンちゃん可愛い。
主人公の武器であるMP7A1は、H&K社がFN社のP90に対抗するために開発されたPDWですが、主人公が採用した理由は単に軽いから。

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