もしあの英霊がカルデアに召喚されたら   作:ジョキングマン

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2017/1/20誤字脱字修正。
誤字脱字の指摘ありがとうございます。多すぎて笑えねえ…


番外:キャプテン・アルゴー

  

 肌を突き刺す寒気と、死霧がロンドンを燦々と包み込む。

 霧の都と名目こそ気品だが、その実態は新たなエネルギーに溺れた人間達への代償----石炭と二酸化硫黄にまみれたロンドンスモッグと呼ばれる殺人霧の蔓延だった。

 時計塔の鐘が深夜を告げる。活気の消えた街中、硫黄の霧に隠された曇天。月明かりは埋もれ、申し訳程度に路道に設置された街灯が僅かに頼れる灯り。

 その市民街中央から数キロ離れた先、一件の寂れた館がある。周辺には不自然なほどに何もなく、さりとて何故か違和感を感じさせない孤高の一件。

 ロンドン市民が寝静まる最中、人の気配が消えたその廃館だけはいつもとは逆に物音を醸し出しているように思えた。

 

 廃れた館の正体は、とある魔術師家系が管理していた巨大な実験場だった。

 魔術の実験を館内で行い、その結果を記して次の実験へ移る。実験内容は多岐に渡ったようだが、魔術師特有の価値観からくる実験内容について語ることは後日とする。

 そして何があったのかは不明だが、館の管理を行っていた魔術師家系の者達が突然消失した。

 管理から外れた館は当然寂れ、廃れていった。多くの禁断の魔術実験資料を残しながら。

 

「----そっち、行ったよ!」

 

 掛け声の後、破壊音が響く。

 おおよそ日常とはかけ離れた異音。それは、この館内が既に日常ではなかったために鳴り響いたもの。

 

『目標、補足、近接攻撃、開始。「高速回転」起動』

 

 無機的な音声と共に、巨大な本棚を蹴って跳躍する機械人形。そのまま腰から上をコマのように回転させ、丸ノコで木材を切り落とすように上空から強襲をかける。

 

「あら、私の前で宙に飛び上がるなんて。それでは自ら照準に飛び込んだウミネコと同じですわ」

 

 だが、相手が悪かった。それ以前に相手に対しての攻撃方法そのものが間違っていた。

 乾いた発砲音が響く。

 硝煙の匂いと共に、敵意剥き出しで襲ってきた機械人形オートマタは頭部の核を撃ち抜かれて床に転がった。

 

「アン、続けて二体。正面!」

 

 白煙を吹き消し、自身の背丈ほどもあるマスケットを軽々と扱うグラマラスの女性。アン・ボニーと呼ばれる彼女に、さらなる追撃がふりかかる。

 物言わぬ残骸と化したオートマタを踏み越え、同型の二機の爪がギラリと光る。迫り来るオートマタ達にアンは手慣れた動作で銃口に弾丸を込め、照準を二機に合わせた。

 

 再度、銃声。

 だが、照準は二機のどちらに向けられていなかった。両者の中央、全くの虚空に合わせてしまったのだ。

 これ幸いとオートマタは近接攻撃スキルを発動。そのままアンの柔肌を剥ごうと腕をしならせ----

 

 女王に傅く僕の如く、アンの眼前でうつ伏せに事切れた。

 

「散弾をご存知でなくて? 私の扱う弾が一種類だけと思わないでくださいまし」

 

 糸の切れた人形を睥睨し、次の弾丸を銃口に詰め込んで照準を覗き込む。

 その彼女の死角で、一冊の厚い本がゆらりとはためく。ひとりでにパラパラとページを展開し、内側に記された術式を展開。

 そのままアンに対して炎の魔術を放とうと魔法陣を輝かせ----

 

 背表紙から、真っ二つに両断されてしまった。

 

「アン。油断しないで、囲まれてる」

 

「カバーありがとう、メアリー」

 

 意思を持つ魔本をカトラスで引き裂いた小柄の少女。アンの背中に並び立つ彼女はメアリー・リード。

 アン&メアリーという最も有名な女海賊コンビが交戦している相手は、館の研究資料を侵入者から守るようにプログラミングされたオートマタの軍勢だった。

 加えて、永年放置されたことにより術式が暴走した魔本からの妨害。都合二種類の敵エネミーに包囲され、背中合わせのまま二人は構える。

 

 ダ・ヴィンチちゃんからの資材回収の任を受けて、マスターは十九世紀のロンドンにレイシフトしていた。その伴としてアン&メアリーの二人の他、マシュ・キリエライトを含め計体六機のサーヴァントが同行している。

 彼女たちは資材回収のためにマスター達と別行動をとっていた。

 そして書庫室へ足を延ばしたところ、運悪く館内の迎撃システムに引っかかってしまったようだ。 

 

「メアリー、きますわ!」

 

 赤色の魔本の群れが一斉に術式を展開する。

 繰り出されたのは炎系の魔術。一冊一冊は一つの炎しか行使できないが、数が最初から多いのであれば話は別。膨大な量の魔本に比例した無数の火球が弾幕となって飛来する。

 合図もなく二人は同時に散開。寸前まで二人がいた場所を炎の嵐が舐めとり、焼き焦がした。

 

 カトラスが空を切り裂き、瞬く間に浮遊する魔本を切り捨てていく。背後からの援護射撃も合わさり、破竹の勢いで魔本とオートマタの軍勢の中を突き進む。

 真横から爪を伸ばすオートマタを一閃。次なる得物へ目を光らせたと同時に、すっとんきょうな悲鳴が書庫室内に木霊した。

 

「うおうっ!? ほ、ほ、ほん!? 何しているんだお前ら! さっさとこいつらを全滅させないか!」

 

「…………あいつ、なんで来たんだろ」

 

「ほんと。まだ変態(くろひげ)の方が戦えましてよ」

 

 二人が一瞬視線を映した所に、一人の青年が複数体のオートマタに追われていた。

 輝ける芒のような金髪。傲慢さがにじみ出る不遜な態度。

 

 英雄間者イアソン。噂に名高いギリシャ神話『アルゴー号の冒険』物語に登場する英雄であり----

 

 

 ----単体の戦力としては驚くほど非力なサーヴァントだった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「くそう! 相手がキャスタークラスだから私が赴いたというのに、いざ現地へ行けばあの機械人形の群ればかりじゃないか! 観測室の奴らやマスターの目は節穴か!?」

 

「そう声を荒げるでない。何事にも例外という事例はつきものだ。ギリシャという例外やら規格外やらに身を置いていたそなたなら、必然そういったことには慣れていると思うが」

 

 うってかわって食堂内。清廉さを纏う美貌を歪め、机に怒りをぶつけるイアソン。

 激昂する彼を、偶々同席したカエサルがどうと窘める。

 

「それに肝心の資材の方は無事調達できたそうじゃないか。目的を達成できたのならばそれに越したことではないのかね」

 

「資材調達は結果でしかない。私が望んでいたのは過程の方だよカエサル。英霊イアソンが同行した、だからスムーズに任命を達成できた。こうでなければいけないんだ」

 

 しかし、とイアソンは奥歯をかみ砕かんとばかりに歯ぎしりする。

 

「ところがどうだ。現実は観測室のバカ達の解析漏れで想定以上の敵性エネミーが潜んでいたじゃないか。おまけにクラスはアサシンだぞ? ライダーで固めていたら苦戦するに決まっているだろ! しかも苦戦しただけでなく、想定通りしか(・・)回収できなかったんだ! 私がいたというのにこの結果だぞ!?」

 

 実際イアソンがレイシフト先の館内でどのような戦果をあげたのかは、一緒にいた女海賊コンビに尋ねれば苦い顔をして教えてくれるだろう。

 事前に彼女たちからその愚痴をぶつけられていたカエサルは、イアソンの怒りの丈に口をへの字の閉じておくことしかできない。弁舌の天才とて語らぬが吉という場合もある。

 

「第一、あんな野蛮な女共と組まされるところが前提として間違っている。弱い、弱すぎる。ヘラクレス級とまでは言わないが、もっと強力な英霊を私につけるのが定形と決まっているだろうに。エジプト朝のファラオあたりを連れて行けば楽に事も済んだはずと思うんだがな」

 

「あれの気難しさは天下一品故な。クレオパトラが崇めている分、私は複雑な心境だが」

 

 エジプト出身の英霊達の気難しさは、アクの強さしかないサーヴァント達の中でも指折りと知られる。

 ニトクリスやクレオパトラはそうでもないのだが、彼女たちの頂点に立つファラオ・オジマンディアスが特に顕著である。

 英雄王ギルガメッシュ、賢王ギルガメッシュ、もう一人のギルガメッシュの三人と組んで黄金四天王----四人中三人が同一人物だが----と化した日にはやりたい放題。子ギルの白い目も気にしない。

 まさに傍若無人な姿には言語の由来人たる荊軻も苦笑しかでないだろう。彼女自身、最近呂布やスパルタクスと妙な縁が絡んで苦労人気質もあるが。

 

「しかしてイアソン。そうであれば、そもそも今回の資材回収にわざわざ貴様が出向かうこともなかったと思うが?」

 

「そりゃあ、私もそう思っていたよ。だが、王となるべくしてなる者ならば、家臣の評定くらいはしかとつけておくものだろう? 将来私に仕えるのだ。有象無象の雑多ではなく有能な人材でなければ私の家臣は務まらないからね」

 

「一理ある。道理である。だが一理あるが……それでもそなたが戦地へ向かう理由には一手足りないように思えぬが」

 

 自信過剰な性格だが、イアソンとて己が非力なサーヴァントだということくらいは自覚しているはずである。

 それにもかかわらず戦いに挑む行為自体、よほどの理由がなければ行わないことは重々承知であった。

 

「まあね。家臣の有能さを判断するならば、やはり戦場が一番だ。癪だがこうして戦地に出向くことで、私自らが彼らの評価をチェックしている。それに、私自身が出向くことが時には重要なのさ。結果は納得のいく形ではなかったが……。それもこれも全部あいつらが悪い!」

 

 思い返していたところで激情がぶり返したのか、言葉尻が熱くなるイアソン。ぶつくさと文句を垂れ流し、自分の身を優先して守らなかったアン&メアリーには特に怨恨を述べている。

 肝心の威光が伝えられたのかはさておき、納得したカエサルは一つ大きくうなずいた。

 

「理解した。つまるところイアソン----そなたは人気が欲しいのだな?」

 

 したり顔で、カエサルはそう言った。

 

「であれば容易い話である。貴様は実に幸運だ。なぜなら今この場に私は来た、私は見た。ならば次は----」

 

「ちょっと待て何勘違いしている!? というか誰がお前の口車にのるか!」

 

 赤かまくらの口上を遮り、イアソンが前のめりに拒否の意を示す。

 

「なぜだね! 私を見たまえ。このふくよかなボディ、艶やかな声、嫋やかな顔立ち! 私がこのカルデアで人気者になるのも当然の帰結である!」

 

「寝言は寝て言え! お前の姿を見かけただけで『やばいカエサルだ。何吹き込まれるかわからないしさっさと離れよう』という顔をしたサーヴァント達が何人いると思っている!?」

 

「私は彼らの悩みを解消してあげただけだ。引き換えとして多少の報酬をいただくのに罰が当たるはずがなかろう」

 

 へらっとした態度でなんの悪びれもなくそう言い放つ。

 クリスマス赤セイバー事件に関与していなかったイアソンだが、とりあえずこいつが原因で揉め事が頻発していることは容易に理解した。

 眉先が苦悩と頭痛で吊り上がる。口を開けば詐欺に走る男である。

 

「----そうだ。人気が欲しいのなら心臓と歯車と紙と人工ベビーをドロップするようにすればいい。そうすればトレンド入りも固いぞ」

 

「なるほ----待て待てそれはやばい気がする。具体的に何がとはわからんが、とてもひどい目に合わされるということだけはなんとなく分かるぞ!?」

 

 かつてないほどの悪寒がイアソンの全身を走った。具体的に言うと、七百五十万人の獣欲に満ちた視線を一斉に向けられたような嫌悪感が彼を支配した。

 賽の河原の向こう岸から手招きする白い柱の姿を幻視し、イアソンはカエサルの提案を速攻で棄却する。

 

「とにかく却下だ! お前の出すアイデアに乗れば悉く破滅にしか向かわない! むしろわざとやっているのか!?」

 

「何を言う! 私はいつだって真剣に物事に取り組んでいるぞ! 次のバレンタインの時に備えて、怨嗟溢れるむさい野郎どもからチョコを餌に搾取する手立てを計画している最中だ!」

 

「さては貴様メディアだな!? オレのためにと純粋に働く結果が不幸しか呼び込まない一番最悪なタイプだな!?」

 

「ちなみにそなたは計画のうちには入っていないから安心するがいい。そなたを一心に想う麗しき乙女が二人いるのでな。愛と憎のダブルクランチだが」

 

「おお。来年の三月をオレは迎えることができるのか……?」

 

 そもそも人理焼却を阻止できなければ二千十六年をもって人理は完全に崩壊するのだが、恐怖と戦慄に飲み込まれたイアソンの頭からその事実はすっぽ抜けてしまったようだ。

 数瞬絶望の光景に怯えた後、はっと我に帰ってイアソンはわざとらしく咳払いした。

 

「とにもかくにも君の助力は気持ちだけで十分だ。その心意気は是非とも別の奴に与えてやるといいさ」

 

「そうか。まあ私も半ば気まぐれに提案しただけだ。プロデュースするならば、我が愛しのネロのようにみっちり腰を据えてだな----」

 

「それに、私は人気が欲しいわけではない」

 

「----ほう?」

 

 思いがけない言葉に今度はカエサルの眉が興味深く吊り上がる。

 

「人気なんてものは後からついてくるものだ。今の私が必死こいて人気を獲得したとしよう。だが所詮、仮初のもの。少し経てば、か細い松明のようにあっさりと吹き消える」

 

 その瞳はいつになく真剣さを帯びていた。

 曲がりなりにもギリシャ神話という過激な時代を駆け抜けた英雄。どのような人間が好かれ、どのような人間が悪辣なのかを知りえているのだろう。

 まして、彼の同期にはメディアやケイローン、アタランテにメレアグロスにテセウス、そしてヘラクレスという全時代きっての英傑達が肩を並べていたのだ。大英雄たちが放つ威光を間近で刮目していた彼に、武勇においてその逸脱者たちを上回る才能など持ち合わせていようか。

 

 故に、とイアソンは碧色の瞳を細める。

 

「オレが目指すのは理想の王だ。悶え足掻く民衆たちを導ける英雄となり、全ての人間の先導者として君臨する。イオルコスの王位はその足掛けでしかなかった。武技や武勇がなくとも、民たちを安心させることのできる王になれるということを、オレは示さなくてはいけないのだ。人気なぞ、その後からいくらでもついて回るだろうよ」

 

「ほほう。これはまた……」

 

 難儀な輩が増えたものだ、と嘆いた。

 英雄としての願望は、なるほど神代の英雄と伝えられるだけある。

 

 だがどうだろう。それにしては彼はあまりに歪みすぎている。

 

 誰もが満足できる世界をつくることなどできるだろうか。平和で満たされる者と、悪逆で満たされる者の双方の願いを叶えることなどできるだろうか。

 

 彼は幼く、世界を知らない。

 他者を見下すがために、他者を見ようとしていない。

 魂が幼いまま、ひどくねじ曲がってしまっているのだ。

 

 そのような男が、果たして理想の王になど----

 

「----だがイアソンよ。その王道、やはり誰かが書き記さねば『英雄譚』とは呼べないだろう?」

 

 なれるはずがない。イアソンが理想の王になるには、イアソンがイアソンでなくなる以外に方法はない。

 

 だがそのもがき(愛しさ)を、足掻き(美しさ)を、嘆き(健気さ)を捨ておくにはあまりにも惜しかった。

 イアソンという男はどうしようもなく無能で、無力で、小物で、クズである。

 だがしかし、そんな彼にしか放つことのできない朧げな輝きをカエサルは見た。

 ヘラクレスやアタランテらが秘める、眩いばかりの光とまた違う。路地裏の街灯のような、淡く雑多だが確かなる光があった。

 

 であれば、小物な英雄が辿る道筋を記しておくことも文豪の責務というもの。

 

「喜べイアソン。乱用するようだが言わせてもらおう。私は来た、私は見た。ならば次は勝つだけのこと。そしてその勝者とは私ではなく、そなただ」

 

「何に勝つ、というのだ?」

 

「当然----ヘラクレスにだ」

 

 あまりにもあっけらかんと口にされた言葉に、イアソンは暫し茫然と呆けた。

 次いで我が耳を疑い、最後にカエサルの口上を疑った。

 

「お前は馬鹿か!? 私が勝つだと!? あの、ヘラクレスに!? 誰もが挑み、誰もが憧れ、誰もが認めた大英雄だぞ! ふざけるのも大概にしろッ!」

 

「貴様こそ何かはき違えているようだな。武勇、技量、勇姿、戦績。貴様がそれらでかの大英雄に並び立つことなど、私の舌先といえど困難の極みだ。いや、あえて言おう。不可能だ」

 

 十二の試練を突破し、それ以外にも数えきれない偉業を達成してきたヘラクレス。

 対して、アルゴノーツを結成してイオルコスとコルキス間を航行したイアソン。

 両者の武勇は天と地ほども差がある。世間的に広まっている英雄がヘラクレスということが何よりの証拠だろう。

 

「だが王としては? 勇者としてではなく最王として語り継がれることがあるのなら、それはヘラクレスにできたことか?」

 

 問いかけに、イアソンは閉口するしかなかった。

 

「いいや、できない。あれは根っからの武人。人の上に立つには猛りが強すぎる。力で他者を従えさせようとも、他者を導くことはできない」

 

 ヘラクレスは確かに最強の英雄である。狩人として知恵も働く。しかし最賢ではない。

 むしろ彼の生涯は勇猛と狂気に満ちていた。殴られたという理由で師の一人リノスを殴殺し、ヘラに吹き込まれて妻子の命を奪い、復讐に身を任せ大量虐殺した経歴がある。

 激情家である彼が、民衆の上に立って統治を行うには難題が過ぎた。力ではどうしようもない、そもそも彼には全く向かない別ジャンルなのだ。

 

「……そうか。----そうだとも。ヘラクレスは鉄砲玉として最強でも、先導者としては違う。その才ではこのイアソンが勝っている」

 

 震える唇でたどたどしく言葉を紡ぎ、視線を下げていたイアソンの瞳に光が宿る。

 

「奴はヘラの威光を名乗るが、オレはヘラに加えてアテナ、アフロディテの三柱の加護を受けている。比べるまでもないじゃないか! オレと奴では役割が違うだけなのだ!」

 

 体育会系の人間にいきなり学校全ての管轄を任せたところで、三日持つか怪しいところである。

 ヘラクレスに勝るのは武勇に対してではない。知略のさらに先、知謀で勝ればいい話だった。

 そして、ヘラクレスよりも統治に優れた理想の王として、これからイアソンの名が挙がればいいのだ。

 

 イアソンがヘラクレスを上回る英雄だということを、数多の人間に知らしめる。

 そのために最も効率的な方法が、文字として後世に残し、文献として広め、物語として語り継がれること。

 その点に至って、『ガリア戦記』を自ら著したカエサルほど適任はいない。

 

「そうと決まれば早速取り掛かろう! だができればもう一人くらいは人材が欲しい。君の伝手にそういうのはいないかな?」

 

「ふうむ……。であるならば、知り合いというほどではないが一人いる。『三銃士』や『巌窟王』を執筆したキャスタークラスがな。彼と私の作品となるならば、君の王道にはより輝かしい花道を添えられるだろう」

 

「そうか! それは楽しみだ! ハハハハ、ついに私の時代が来てしまうのだな! ヘラクレスやメレアグロスの奴でもない、このイアソンの時代が!」

 

 機嫌よく笑いながら食堂を後にする弁舌マン二人組。

 

 だが、カエサルはイアソンの生きざまに驚嘆こそしたが共感はしていない。

 その証拠に、カエサルは一度もイアソンが「理想の王に相応しい」と口にしていない。

 

 如何に彼の物語を脚色しようと、彼は『アルゴー号の冒険』を超えることはできない。

 それは最低限の活躍を保証された祝福であり、最低限の活躍しか保証されない呪い。

 

 その概念の名は、女神の加護。

 

 イアソンは、どれだけ頑張ろうとも「イアソン」なのだ。

 

 

「…………これで、少しは助力に精をだすとよいがな」

 

 

 隣で響く高らかな笑いを耳にしながら、カエサルは脳内に書きとどめた新生英雄物語の表紙を閉じた。

 

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クラス:ライダー

 

真名 :イアソン

 

キャラクター紹介

 ギリシャ神話の物語『アルゴー号の冒険』に登場する英雄。

 イオルコス王の息子だが叔父のペリアスに王位を奪われ、「コルキスの宝とされる金羊の皮を持ち帰れば王位を譲る」という約束に従いアルゴー号の船員をかき集めた。

 アキレウスやヘラクレスに並ぶ大英雄とされるが、信じられないほどに本人は非力で無力。おまけに小物臭く、常に他人を見下すうえに計画通りに事が運ばないと周りに当たり散らす。

 しかし、一癖も二癖もあるアルゴノーツをまとめあげたそのカリスマ性と弁舌は本物。

 

パラメーター(詳細不明)

筋力:

耐久:

敏捷:

魔力:

幸運:

宝具:

 

小見出しマテリアル

 金ぴか臭はするが所詮メッキ。輝ける黄金の古代王`Sとは根本的に合わない。

 彼らからしたら道化もいいところなので放置案件。たまに見ると面白いのだとか。

 他人の力を自分の力と勘違いする癖があり、強力で尚且つ言いくるめられそうな英霊がいるとちょっかいをかけにいく。

 ジークフリートとかちょろいらしい。最近だと割り箸からエクスカリバーを出せるロックな英霊がねらい目。

 外面だけは良く女神の扱いも心得ている。ケツァルコアトルとかアルテミスくらいなら手玉にとる実力の持ち主。

 メディアリリィは気が付くと背後にいる。魔女メディアは気が付くと死ぬレベルの呪いをかけてくる。

 そしてワカメ臭がするためメドゥーサ系統からも毛嫌いされる。それでもめげない。イアソンだから。

 




イアソン「我こそは!」
「「「「…………」」」」
イアソン「っておーい!?」

ロマンを本編に出すか悩むところ。
それと先週の今頃日刊ランキング1位になってて心底ビビりました。ありがとうございます。この調子で追加鯖を運営に求めるのだ……ッ

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