もしあの英霊がカルデアに召喚されたら   作:ジョキングマン

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2016/12/21 一部誤字修正しました。


黒のキャスター

 

 語るまでもなく、カルデアは万年資源不足に陥っている。カルデア以外の世界が焼却されてしまった現状では、外部から資源の補給など期待できるはずがない。

 この圧倒的な資源の供給不足を解消する苦肉の策として、カルデア最後のマスターとサーヴァント達があらゆる時代にレイシフトを敢行。レイシフト先の時代から必要な資源を回収するという方法で凌ぐことで難を逃れ続けている。

 

 科学技術、魔術研究共に最新鋭を謳うカルデア。必然、要求される物資も最新に近いものが割合を占める。そのため、資源も技術も豊富な傾向にある近年へとレイシフトすることが多い。

 とはいえ、それはあくまでカルデア単体としての必要資源のみを数える場合になる。ここへカルデアに滞在するサーヴァント達からの要求物資を加算すると、飛ぶ先の年代が戦乱の世から王政の世、果ては紀元前とあらゆる時代へのレイシフトを行わなければならない。

 

 飾り気のないの仮面と青いマントで全身を隠した魔術師(キャスター)--アヴィケブロンもまた、そうした「あらゆる資源」を要求するサーヴァントの一人。

 何せ、彼は哲学者であり魔術師。そして何より、ゴーレム製作に長けた魔術師だからだ。

 

「ゴーレムとは、ただの土人形などではない。むしろ僕の作るゴーレムは、『生』を得るために必ず『死ぬ』。ゴーレムとはすなわち、生命の創造である」

 

 指を走らせ、緻密かつ複雑怪奇な術式を驚くべき早さで材料に刻み込んで行く。

 ローマから掘り起こした濃度の高い魔力を含む土、オケアノスから汲み上げた新鮮な海水。歴史の中で焼却された名もなき羊皮紙。大気中の魔力を蓄えた天然の宝石。

 現代では入手不可能な希少な資源が混ぜ込まれた人型の土人形に、アヴィケブロンは一矢の躊躇いなく術式を書き込む。

 

「そもそも、僕は人手を欲してゴーレムを製作しているわけではない。質を落とした大量生産という行いは、生命に対する冒涜に他ならないからだ」

 

 刻まれた術式が怪しげに光を放ち、全く異なる材料で象られた土くれ全体を駆け巡る。

 染み込むように術式が溶け込んだ瞬間、無機物だけで構成された指がピクリと動く。次いで足を、腰を、胸を、肩を、最後に首を稼働させ、ここにまた一つ、新たなゴーレムが誕生した。

 

「僕の目指す先は、ゴーレム製作の終着点--生命の創造の起源。すなわち、原初の人間(アダム)の模倣。失われた世界が復興した暁には、僕はそれで世界を楽園へと導かせてみせる」

 

 ところで、とアヴィケブロンは振り向かずに言葉を続ける。

 

「どうだい。借入した資料を元に造形を凝らしたが、第三者兼資料提供者である君の意見を聞きたい」

 

 問われた男は、答えとばかりに不満げに鼻を鳴らした。

 

「--ああ、至極真っ当な返答だ。これで満足な出来栄え、と賛辞を投げられていたら君を絞め落とすところだった。僕はか弱いからゴーレムが、だけど」

 

「ハッ--。俺の方こそ、自分の作ったゴーレムだぞ文句あるか、などといらねェ傲慢張られたらその足をブチ抜こうと思ってたぜ。てめェ、魔術師にしちゃァ随分と謙遜的な野郎だな」

 

 背後から返された言葉は嘲笑と脅迫。そりが合わなければ手を切る、と堂々と男は言ってのけた。

 

「まさか。僕が作ったゴーレムは絶対だ」

 

 一転してアヴィケブロンは、己が積み重ねてきた生涯より満たされる自負をもって弁舌する。

 

「僕は常に、絶対という意識の元にゴーレムを手がける。しかし嘆かわしいことに、誕生したゴーレムは必ず何かしらの粗を抱えて生まれる」

 

 今し方作成したゴーレムに焦点を当てる。ゴーレム魔術に精通した魔術師ならば、それがどれほど高度で精密に製造されたゴーレムなのか一目で理解し、驚嘆に目を見開くだろう。

 しかし到達者であるアヴィケブロンからすれば、これは欠点を多く内包した「原初の人間(アダム)の模倣の模倣」の段階に過ぎない。

 

「だがそれが面白い。僕が作り出すゴーレムには、まだまだ先の段階へと進める余力と無駄が残されているという事実に他ならないからね」

 

 カバラという魔術基盤を確立させ、魔術世界に大きな影響を与えた魔術師アヴィケブロン。

 その本質は実に「魔術師らしい魔術師」と表現できる。一般的な魔術師が魔術の研鑽を生涯に費やすように、彼はカバラに--ゴーレム魔術にその生涯を費やした。

 その過程で必要なことは文字通り何でもやってきた。例えそれが人道に反していたとしても、完璧なゴーレムを生み出すためならば一切の躊躇なしにそれを切り捨ててきたのだ。

 

「その粗が生まれる理由を分析し、さらに先の絶対を手がける。粗を、無駄を削り切り、絶対のその先--『完璧なる一』を降誕させる。原初の人間を目指すというのは、そういうことだ」

 

「なるほど、性根は確かに陰湿でくだらねェことに精を捧ぐ根暗どもと同じらしい」

 

 男は嘲笑する。

 アヴィケブロンの人生は男にはまるで関係のない話であり、そもそも魔術師の精神理論を理解できない者からすれば、それが狂人の戯言であることに変わりはない。

 ただ一つ、アヴィケブロンに臨むもの。その依頼(オーダー)さえ実行してみせられるかどうかが、男とアヴィケブロンを繋ぐ唯一の関係だった。

 

「じゃあ聞くがよ。俺がそのゴーレムの一番許せない部分を当ててみやがれ」

 

 だから問い正す。ある一点において、自分とアヴィケブロンの意見が合致するのかを。

 

「そんなこと決まっているだろう。

 

 

 ----左睫毛(まつげ)だ」

 

 しん、と空気が静まり返る。

 

 男が戦慄(わなな)く。震える左手は血管が浮かぶほど握り、勢いよくアヴィケブロンに突き出して--

 

「----さっすがアヴィケブロン氏ーー! 拙者と同じ場所に目をつけていたとは、いやはや御見逸れいたした! 先生、いや、ドールマスターの名は伊達ではありませんな!」

 

 耳をつんざくような喧しい笑い声をあげながら、気持ち悪い動きでアヴィケブロンと肩を組もうと擦り寄ってきた。

 そんな気持ち悪いサーヴァント--『黒ひげ』エドワード・ティーチ--の腕を、アヴィケブロンはするりと(かわ)して一歩距離をとる。

 

 口調が悪ぶってた理由? そんなのカッコよく気取るために決まっているじゃない。

 

「僕は魔術師(キャスター)だ。別のキャスターに着せ替え人形趣味(ドールマスター)がいたはずだが。そいつにむかって呼んでやるといい」

 

「えー、だってBBAだし。それにああいうリカちゃん的な人形ごっこは拙者の趣味と合わないっていうか。勿論、着せ替えられてる側の金髪碧眼の美少女っ子であれば、拙者はモーマンタイですぞwww」

 

「そんなことより、君が目に付いた修正点はそこだけか?」

 

「んー、拙者的には? もちっと髪のボリューム足しても許されると思うのですが? あと頬骨を削ったりとかー、太もものあたりをキュッと引き締めたりとかー」

 

「……非常に不愉快な話だが、この手の類での君の鑑識眼は賞賛に値する。この僕と目に付いた箇所が同じというのが本当に嫌悪を抱くが」

 

「デュフフフフwwwもっと褒めてくだちいwwwあれ、でも今ナチュラリーに拙者ディスられてない?」

 

 アヴィケブロンは、黒ひげから提供された参考資料--二次元美少女フィギュアと、それに瓜二つ(・・・・・・)の作成したばかりのゴーレムの双方を交互に見比べる。

 

「等身大の人間型ゴーレムを造るのとはそもそも尺度が違う、というのが実にキモだ。より美しさ、愛らしさを際立てるための多少の『盛り』は理解しているが」

 

「そこはツッコんではいけませんぞ先生。三次元のBBAが二次元を目指して整形なぞすれば、見るに堪えないグレイが生まれてしまう次第」

 

「こういった特有の造形は一度正確に尺度を計測した方がいいな。顎のライン、妙にデカイ目、不自然な頭身のバランス。極めて非人間的な作りをしているにも関わらず、美を共存させているのが実に面白い」

 

「おうふ…なんだか現実を突きつけられる気分でござるなあ。萌えアニメを見ている横からむさいオッさん達が死にそうな顔で原画描いてる製作現場を見せられた気分というか」

 

 生前アヴィケブロンは、当時では珍しい女性型ゴーレムを製造して身の回りの家事を任せていたことがあった。

 別段彼がゴーレムに情欲を抱く特殊性癖というわけでない。人間嫌いだった彼が家事全般を任せるために戯れに製造したというだけの話だった。

 それでも、せっかくなのだから美人な顔立ちにしてやろうという気は起きなくもない。日常で幾度と顔を合わせるならば、醜悪な面よりは美しく整った羨顔の方が心地よいというもの。

 

 それが何の因果か全方位キモヲタ(黒ひげ)と出会ってしまい--超大真面目に美少女型ゴーレムについて語り合う二人が出来上がってしまった。

 そんな折、開けっ放しだった部屋の入口から新たな声が響いた。

 

「失礼するわよー。先生いる? --って、何よこれ!?」

 

 部屋を訪ねてきたのはアヴィケブロンと同じキャスタークラスのサーヴァント、真名エレナ・ヴラヴァツキー。

 彼女は何故か開いてた部屋の扉に疑問を浮かべながら部屋を覗き込み、そして鎮座する美少女型ゴーレムに素っ頓狂な声をあげる。

 

「おほぉーエレナ氏ではありませぬかwww今ここにあるは、拙者と先生の奇跡の合作。名付けて! 『リアルにようこそマギ☆マリちゃんドール』作戦なりー!!」

 

「エレナか。今、非人間的な造形ながら愛らしさを生み出すこれに興味を持っていてね。すまないが、ゲマトリアの話はまた今度にしてくれないか」

 

 一人勝手に盛り上がる黒ひげをよそに淡々と説明するアヴィケブロン。愕然とするエレナはそれにハッと我に返り、青ざめた顔でアヴィケブロンに詰め寄った。

 

「先生! 貴方、あの悪性サーヴァントに何かされてしまったの!?」

 

「エ、エレナ氏? まるで悪性腫瘍みたいな言い方をされるとさしもの拙者もブロークンマイハートなんですが?」

 

「悪性も何も、アンタとパラケルススとカエサルは問題しか起こさない三大トラブルメーカーじゃない!」

 

「失敬な! あの二人と一緒にされるのは業腹ですぞ! 拙者はいつも『良かれと思って〜』という意志を秘めた上での行動。あ、でも漫画の方のトラブルなら拙者は大歓迎ですなwww」

 

「自分が良かれと、が頭についての行動でしょ!」

 

 イベントと称して常に何かやらかす、というか何か起きたらとりあえずこの三人に出頭を命じれば大体原因というオチトリオを知らないものなどカルデアに住む者はいない。

 職員だって忘れない。エジソンは偉いライオンなんてことよりもそんなの常識。

 ふと、アヴィケブロンがまじまじとエレナを見つめていた。観察されるような目線に気付いたエレナは困惑して言葉をかけようとする。

 

「ちょうどいい、エレナ」

 

「--?」

 

「君、なかなか整った顔だろ? 次の試作品のモデルになってくれないか」

 

「えっ」

 

 唐突に、真面目な学者語りのままアヴィケブロンからさらなる爆弾が投げ込まれた。

 

「人形サイズのものをゴーレムに合わせて寸法を測るよりは、こうして等身大を元にすれば効率的に修正が行える」

 

「ちょ、先生?」

 

「霊基を弄る他に身体が伸びる心配もない。その都度計測がブレることもないな。サーヴァントというのは手間が省けて助かる」

 

「その、モデルって、あの変なゴーレムの?」

 

「ああ、動かないでくれエレナ。これから君の身長や各種体毛の長さ、顔のバランスや手足の比率等を測る」

 

「エレナ氏の一分の一スケールフィギュア……ゴクリ」

 

「ゴクリじゃないわよ変態! 先生も嬉々としてメジャー持ち出さないで!」

 

 よくってよ! とは流石に言わずエレナは黒ひげの頭を本の角で殴る。

 美少女に 殴られ昇天 ご褒美です、と辞世の句を残して床に転がった黒ひげのことは誰も気にかけない。

 

「何、別に溶かした蝋に浸して型をとるというわけじゃない」

 

「自分と同じ姿をしたゴーレムが量産されていくなんて気味が悪いでしょ」

 

「ここには同じ姿どころか本人が複数居住している。今更不思議に思わない」

 

「あー、それとこれとはまた違うような気がするんだけど……。ていうか最近また増えたわよね。全身血塗れ鎧とかすごい格好した剣士とかになってたけど」

 

 バーサーカーよりバーサーカーらしい風貌の串刺し公や隠せてない鎧のドラゴン娘とかが召喚されたことは記憶に新しい。

 それを除いても英霊召喚のシステム上、同じ人間の別側面や「IF」の存在が複数人滞在していることはカルデアにとって珍しくもない光景。

 むしろ、なんで本人達の間で仲良くできないことの方が不思議だが。胸の大きさの張り合いとかで円卓が割れるような事態など、史実よりも笑えない。

 

「とにもかくにも私は嫌。モデル依頼なら別の人にしてちょうだい。そんなの探せばいくらでもいるでしょ」

 

「僕が工房からわざわざ足を運んでまで他人を探すと思うのか?」

 

「堂々と言ったところでそれってどうなのよ……」

 

 魔術師としては正論であるものの、あっけからんとした引きこもり宣言にエレナは嘆息する。

 

「失礼します」

 

 その時、一声と共に新たなサーヴァントが現れる。思わぬ珍客にエレナとアヴィケブロンは目を丸くした。

 

「あら、貴女はナイチンゲール? どうしたの、ばい菌ならそこに転がってるけど」

 

「床で睡眠をとるとは何事ですか。体が冷えれば体内の内臓器官の働きが弱くなり、冷え性などを発生させやすくなります。今すぐ起き上がりなさい」

 

 珍客、ナイチンゲールは入室するや否や床に横たわる黒ひげに目をつけ、拳銃を引き抜いて彼のこめかみにグリグリ押し付ける。心なしか黒ひげの額に冷や汗が見えないこともない。

 

「あまり僕の部屋で乱暴ごとを起こして欲しくないのだが」

 

「黙りなさい。そもそも何ですかこの部屋は。雑多に置かれた土や水に鉄。古ぼけた紙きれの束。埃もたまっていますね。放置しておくとこれらは菌の温床になります。こちらも消毒が必要のようですね。処置しましょう」

 

「それよりも、貴方が先生のところに来るなんて珍しいわね。何か用事?」

 

 段々とズレていくナイチンゲールの暴走をエレナはさりげなくレールに戻す。ナイチンゲールも用事を思い出したらしく、強制殺菌コースを一旦打ち切る。

 

「そうでした。この近くをあのサーヴァントが通りませんでしたか? 全ての病の詰め合わせという私に対しての挑戦状のようなふざけた存在のサーヴァントです。一刻も早くあれを滅ぼさなければ、人類に明日はありません」

 

「ペイルライダーのことかしら。それだったら向こう側にすっごいスピードで駆けていったけど。でもマスターが召喚したサーヴァントを勝手に消滅させるのって……」

 

「知りません。マスターは私が説得します。では、私はこれで--」

 

 一礼し、足早に立ち去ろうとするナイチンゲール。しかし、意外にもこれをアヴィケブロンが呼び止めた。

 

「--待ちたまえ」

 

 ギョッと目を見開くエレナ。ギクリと体を震わせる黒ひげ。

 煩わしそうにナイチンゲールは振り向く。その顔は不機嫌を全面に押し出した表情だ。

 

「何ですか。私はこれから治療に赴かねばなりません。先程誰かにも申しあげましたが、一分一秒たりとも無駄にできないのです。用があるなら手短にお願いします」

 

 撃鉄に指をかけて凄むナイチンゲール。彼女の引き金は軽い。返答次第では、というか多分すぐにでも引き金を引くだろう。実際さっき通りすがりの無貌の王(ふびん)が餌食になった。

 今にも爆発しそうな不発弾を前に、アヴィケブロンは悠然とした態度を崩さずに告げた。

 

「ふむ、良い。性格はさておき、君もまた美麗な顔立ちをしている。試作品のモデルとしての素質は十分に検討できるな」

 

「……貴方ねぇ」

 

 誰でもありか、とエレナは深く嘆息する。

 意味がわからない、と眉を顰めるナイチンゲールに彼女はこれまでの経緯を説明した。

 

「--と、まあこんな感じなんだけど」

 

「私の等身大ゴーレム、ですか」

 

「そういうこと。同じ顔をした自分を見るのって変な感じするし、別に断ってもいいと思うけ--」

 

「承りましょう」

 

「ど--はい?」

 

 耳がおかしくなったか、とエレナは思わず耳を疑う。

 対してナイチンゲールは凛とした姿勢のまま、アヴィケブロンに向けていた銃をホルダーに戻した。

 

「私は具体的に何をすれば? 断っておきますが、不衛生な方法を使用するのであれば賛同しかねます。その際は、先にきっちり(・・・・)洗浄させていただきます」

 

「君のサイズを測るだけだ。髪の長さや睫毛、虹彩、爪の伸び具合と多少細かくチェックリストを作成することになるが」

 

「細かいことは面倒だ、などとは決して思いません。清潔な環境は徹底した気配りから。爪の先まで石鹸で洗うことを細かいと罵る馬鹿は、私が正すわ」

 

 会話になっているような、なっていないような。

 それよりも、あのナイチンゲールがなぜこんなアホらしい企画に付き合う気を見せたのか。エレナとしては何よりもそこが気にかかった。

 

「ねえ、ナイチンゲール。その、結構乗り気だけど、なんで受けたの? 言っちゃあなんだけど、ただ自分と同じ姿のゴーレムを造られるだけなのよ?」

 

「貴方こそ何を言っているの?」

 

「えっ?」

 

「医療の現場とは常に人手が足りないもの。まして医療に携わる人間一人一人への負担は重大。そういう環境で誰か一人でも倒れれば、それだけで何十人もの患者が命を落とすわ。であるならば、こうして『私』という人員を増やすことができれば、今まで手の届かなかった治療にも迅速に駆け付けることができるようになる。それはなんて素晴らしいことなのだろう、と思わない?」

 

 その言葉を聞き、彼女の伝えたいことを咀嚼して理解し。

 エレナは恐る恐る、整理した事実を口に出した。

 

「--それって、これからナイチンゲールが二人、三人と次々増えていくってこと?」

 

「人格の再現か? ある程度ならば可能だ。彼女のように一点に思考が固定されたものならば、より容易く--」

 

 

 

 その後、エレナと死に真似を解いた黒ひげ。

 二人の英雄による必死の説得の結果『ナイチンゲールゴーレム量産化計画』という清潔地獄絵図は、せめてゴーレムを一体だけにするという形でなんとか落ち着かせることに成功した。

 こうして、密かにカルデアに忍び寄った最大の危機は、世界最強の海賊によって人知れず救われたのであった。まる。

 

「自分の手柄みたいにされても困るんだけど?」

 

「おほっ!? 第四の壁の破壊は拙者だけに許された特権のはずでは!?」

 

「マハトマの前には第四の壁など無力よ!」

 

 ちなみにこの後ナイチンゲールがペイルライダーを捕捉、大英雄を巻き込みながらひと悶着を起こしていたことは言うまでもない。

 

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クラス:キャスター

 

真名 :アヴィケブロン

 

キャラクター紹介

 またの名を「ソロモン・イブン・ガビーロール」。

 「ルネッサンス」の起点となった哲学者の一人にして、「ゴーレム魔術」の頂点に立つ稀代の魔術師。

 彼がヘブライ語の「受け取る」という単語から生み出した「カバラ」という魔術基盤は、現代魔術の世界にも今尚深く浸透している。

 世界の表にも裏にも多大な影響を与えた彼は、しかし虚弱体質であり極度の人間嫌いであったという。

 

パラメーター

筋力:E

耐久:E

敏捷:D

魔力:A

幸運:B

宝具:A+

 

小見出しマテリアル

 ルネッサンス運動に携わった「哲学者」としての功績、カバラの創始者である「魔術師」としての功績、冷徹で自己完結気味ながら説明が達者な「詩人」としての顔。

 気づけば「先生」と呼ばれ始めた。人間嫌いである当人からすれば迷惑極まりないだろうが。

 カバラについて興味津々のエレナ他数名のキャスターや、美少女型ゴーレム作成同盟の黒ひげ。

 ルネッサンス関連からマリーらフランス陣営と実に多種多様。知識人枠としても幾人かの英霊から興味を惹いている。

 腕の立つ人形作りと勘違いされておかしな注文を送り付けられることも。頭が痛い。

 




ヴラド「ゴーレムの服を縫ってやろう」
メディア「服の組み合わせなら任せて」
アヴィ「帰れ」

先生は星3で実装されそう

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