オリ主によるストパンの学園もの 作:Ncie One to Trick
「えー、二年担任の加東です(半ギレ)。 些か急ではありますが、二~四限の座学を一年と合同模擬戦に変更します」
これからストライカーに関する座学が始まろうと言うのに、ケイ先生が突拍子もない事を言い出した。
当然、教室はざわつく。前の席で眠る準備に入っていたエイラもガバッと身を起こしてこちらに振り向いた。
「オイオイやったなジン! 模擬戦に変更だってサ!」
「そーだね」
興奮するエイラ。反面、俺は非常に冷めた態度である。
「……オメーなんか知ってんだロ」
「まーね」
適当に相づちを打ちながら席を立ってグラウンドへ向かう準備をするが、俺はどうして変更されたのかを知っている。
いつだったか、宮藤博士の手によって魔力伝達率の高い繊維を使ったウィザード用のズボンが開発されたと話した。実用段階まであと一歩というラインまで迫っているのだが、最後の最後に念を入れてテストをしたいと博士が申し出たのだ。
そのテストがこれから行われる、一年と合同の模擬戦である。俺が履いているズボンが、もう新繊維の編み込まれたウィザード用ズボンだ。
では何故俺が冷めているのか。
当然俺のためのテストなので、俺は自然とフル出撃になる。つまり死ぬほど疲れるのだ。午後からの授業が欝になる事間違いなし。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「一年生全員いまーす」
「二年生も揃いましたわ」
「よーし、揃ったな。おい静かにしろ!」
グラウンドに並んだ1・2年生から、それぞれのクラス委員長が集合したと告げると一年生担任の北郷先生が生徒の前で声を張る。
見た目も中身も喋り方も、使う武器まで坂本さんそっくりな北郷 章香先生である。前髪パッツンにして眼帯でもしたら坂本さんの生き写しになるレベルだなぁ。凛とした大和撫子って感じだ。
しかし、一年生と合同の模擬戦らしいがメンバー選抜はどうするのだろうか。
当然、俺はフル出場になるだろう。みんなに付き合って貰って悪いのだが、これは俺のための実験でもあるわけだし。
「二年生二人と一年生二人の計四名による小隊同士で戦ってもらう。呼ばれた者は返事して前に出てくるように。ちなみに波崎はとある事情でフル出撃してもらう」
「ういッス」
やっぱりフル出撃っぽい。午後の授業は寝よう。
「じゃあ読み上げるぞー」
ルール説明が終わり、北郷先生は隣にいるケイ先生にアイコンタクトをした。加東先生は一歩前に出ると、クリップボードに挟まった用紙に書かれているであろうネームを読み上げていく。
「一年生、宮藤芳佳」
「はい!」
若干緊張気味の芳佳が威勢の良い返事と共に進み出てきた。芳佳の固有魔法は治癒系だし案外チョロそうだな。
「お兄ちゃーん……」
小声で俺を呼びながらニコニコ笑顔で手を振ってきた。どうやら俺と戦えるのが嬉しいらしい。コヤツめ、ハハハッ。
「リネット・ビショップ」
「は、はい!」
こっちも芳佳と似たり寄ったりであるが、芳佳よりも狙撃に特化してるだけ戦闘力は高そうだ。
しかし意外な人選な気がする。芳佳は魔力こそ高いものの模擬戦はそこまで得意ではないし、狙撃タイプのリーネもドッグファイトには不向きだろう。そこまでガチ構成って気はしない。
「次、二年生、エイラ・イルマタル・ユーティライネン」
「はーい」
固有魔法の未来予知による変態機動で射撃・回避を繰り出す、スオムス随一のエースであるエイラが選ばれたって事は、一気にガチくさい雰囲気がプンプンしてくる。
というか、ここまでウチにいる連中しか呼ばれていない。……何やら嫌な予感がしてきた。
「ハンナ・ヘルッタ・ウィンド」
「はい」
予感的中である。
「ふざけんな!(声だけ迫真)」
「どうした波崎、不満か?」
「不満しかねーッスよ! 強すぎじゃないッスかそっちぃ!」
思わず声を荒げて反発してしまう。しかしこれは仕方ないのだ、許してほしい。
何せ、どう頑張ってもこちらに勝てるイメージが湧かない。
エイラだけですら落とせるかどうか怪しいのに、そこにオールラウンダータイプでスオムス二位の戦績を上げているハッセが加わるのだ。
そこまで強くない芳佳を背負っても余りある過剰戦力。
バランス崩壊ってレベルじゃねーぞ!
元々戦闘データを取るのが目的とはいえども、黒星を多く抱えたまま一日を過ごすのは癪じゃないか。
「こんなんどうやって勝てっつーんですか!」
「そーよそーよ! 戦闘力殆ど無いの宮藤ちゃんくらいじゃない!」
「私は絶対嫌ですからねー!」
「私もちょっと……戦いたくありませんわね……」
これから模擬戦の相手にされるかもしれない生徒からもブーイングの嵐である。
当たり前だ。最低でもスオムスのツートップを相手にしなければならないのだから。無理無理無理、勝てない!
「はいはーい! みんな戦わないなら僕が戦いたい!」
しかしどこにでもチャレンジャーが現れるもので。一年生側から僕っ娘の元気な声が飛んできた。
三変人赤ズボンのマルチナだ。お前の先輩のフェルがさっき反対してたけど……おっ、大丈夫か大丈夫か?
「ふむ、スオムスツートップか……。妾も手合わせ願いたいのう」
「あ、待て待て! 私もやるぞ!」
マルチナに発破をかけられたのか、プリン姫とマルセイユが続いて名乗り出てくる。
プリン姫は純粋に戦ってみたいだけだろうが、マルセイユは絶対目立ちたいからだろ。
「1、2、3……げ」
しまった。
気づいてしまった。
目立ちたがり屋兼自信家の三人が意気揚々と立候補するのは結構だが、都合良く一年二人の二年一人だから、このままでは俺を入れて丁度四人編隊が組めてしまう。
ぜってぇこの三人とは組みたくない。
個人技が高いのは大変宜しいのだが、どいつもこいつも我が強すぎる。調和なんか一切取れないし、チームプレイなんて夢のまた夢じゃないか。
「こちらの人選とは違ったが……このメンバーでやるか?」
北郷先生がケイ先生のクリップボードを覗きながらこちらに聞いてきた。俺は慌てて首をブンブンと横に振る。
「嫌ですよ。絶対やりたくないです」
「そうか……。だが残念だったな、本人達はやる気みたいだぞ?」
「は……?」
言われて意気揚々としていたマルセイユ達に目線を移すが、もう誰もいない。
「もう格納庫に行ったわよ」
ケイ先生が右手に見える倉庫を指さす。どうやらもうユニット格納庫に行ってしまったみたいだ。
行動力高スギィ!
ちなみに芳佳達もいなかった。あちらもメンバーを変える予定なんて更々無かったらしい。
「この状況でお前に自由は無いな。やれ」
「クゥーン……」
聞くだけ聞いといてこの仕打ちとか、「痛かったら手を挙げてくださいねー」みたいに言ってくる歯医者みたいだぁ……。
「南無ー」
「その……頑張って?」
ハルトマンが念仏を唱えて雁淵が応援してくる。同情するくらいなら俺と変わってクレメンス。
「……なぁハルトマン」
「やーだよ」
「まだ何も言ってないんですがそれは……」
「ハンナと組んだら私と勝負始めちゃって模擬戦所じゃなくなっちゃうよ」
「そりゃそうか。じゃあ雁淵……」
「一旦手前共に引き取らせてもらいます。その上で熟考し――――」
「やる気無いですねクォレハ……」
「波崎君、そもそも貴方のデータが取れないと意味ないでしょ。ホラホラ、早く移動しないとあの子達に怒られちゃうわよ?」
「ウッス……」
漫談してたらケイ先生に促されてしまった。校内のどっかでデータを取っているであろう宮藤博士と愉快な仲間達を怨みながら、俺は格納庫へと向かった。
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俺は芳佳と同じ型番の機銃を手にし、愛用のストライカー『橘花』に男用ズボンのまま足を突っ込んだ。
「おーええやん……気に入ったわ」
いつもなら魔力の伝達率が低く角や尻尾もちょっぴりしか生えてこないのだが、角も尻尾もしっかり出し切れる。
改めてこのズボンの完成度は凄い。これ、今までウィッチにとって問題だった寒い冬場も、ズボンの重ね着をして問題無さそうだ。
「波崎 迅。で、でますよ……」
気の抜けたコールと共に、俺は空へと舞い上がった。目に見えた負け試合だからね、仕方ないね。
とは言っても黒星も嫌だし、一応ベストは尽くす予定だけどもね。
数秒ほどの上昇でグラウンドの上空に着くと、既に俺以外全員待機していた。
「遅いぞジン。私の勝ちだな!」
「お前達がはえーんだよ」
マルセイユが味方相手に勝利宣言を始めた。コイツ、前の一件以来妙に絡んでくるな。
「ふむ、そう言えば波崎の了承を取らなかったな。妾達と組んで良かったかの?」
プリン姫が訊ねてくる。どの口が言うんだ、どの口が。
「Noっつっても来る癖に」
「そりゃそうじゃ」
「だよねー。こんな楽しそうな相手と戦えるんだもん。拒否られても行くっしょ」
「楽しそうな相手ねぇ……」
マルチナ曰く、相手チームは楽しそうらしい。
どれ、銃器片手に待機しているあちらのチームに耳を傾けてみよう。
「私とハッセが組めば、まず負けないだろーナ」
「エイラは相変わらず自信家だねぇ。ま、私も早々負けるつもりは無いけど」
「お二人ともそんなに強いんですか?」
「芳佳ちゃん、この二人はスオムスでも一位二位を争うエースなのよ?」
「えーそうだったんですか!? 凄ーい! 私エイラさんと住んでるのに全然知らなかった!」
「フフーン。そうだゾ、リーネの言うとおり私達は強いんダ! 二人とも大船に乗ったつもりで戦えよナ」
「ハハッ。私も期待に添えられるように頑張るよ」
「あ、ウィンドさん、これが終わったら握手してください!」
「ああ良いよ。私はアッチのハンナと違って握手もサインもしてあげるからね」
「やたー!」
なんて呑気な会話が向こうチームから聞こえてくる。なんとも和気藹々とした雰囲気じゃないか。
別の意味で確かに楽しそうな相手だ。
一方こっちチームは……。
「よーし……。いいかお前達、私は負けるのが大っ嫌いなんだ」
「とーぜん、やるからにはこてんぱんにして勝たないとね!」
「赤ズボンは威勢だけはいいよな。ま、精々私の足を引っ張らないようにしろ」
「一番足を引っ張りそうなのはお主じゃと思うが」
「アハハ! それ言えてる!」
「なにぃ!? どういう意味だ!」
「そのまんまの意味じゃ。スタンドプレイに専念しすぎんようにの」
「うっ……わ、分かっている!」
プリン姫とマルチナは、少なくともチームプレイをする気はあるみたいで安心した。
一方、釘を刺されたマルセイユだが、(スタンドプレーに走って各個撃破される未来が)見える見える。
『両チーム、準備は良いか?』
インカムから北郷先生の声が聞こえる。
『Aチーム行けます!』
あっち側はもう準備万端なようだ。
俺は味方三人にアイコンタクトを送る。三人とも縦に頷いた。
『Bチームもオッケーッスよ』
『それでは、私の合図をもって開始とさせてもらおう』
スゥ……とインカム越しに息を吸う音が聞こえる。
俺はそっとインカムのスイッチを切った。
「用意……始めッ!!!!!」
眼下に広がるグラウンドから轟く雄叫びによって、今、戦いの火ぶたが切って落とされた。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「降参です」
「だろーナ」
エイラがしたり顔でこちらに銃口を向けてきたので、俺は両手を挙げて大人しく投降のポーズを取る。
まるで即落ち二コマみたいだぁ……(直喩)
だってもう残ってるの俺しか居ないんだもん。無理無理無理勝てない!
結果は下馬評通り。三人ともサクサクッと墜落判定を出されていった。
やはり勝てない。芳佳、エイラ、ハッセの三人で前線を支えながら、その後ろでリーネが狙撃してくるからきついのなんの。
まず、遠距離が厄介なリーネを先に叩くべくマルセイユが潜り込もうとするのだが、エイラが未来予知で必ず後衛への進路を塞いでいた。それも最小限の動きでマルセイユに着き回るのだから、その都度マルセイユは対抗心を燃やして仕掛けるものの、あえなくハッセに撃たれて撃墜。
じゃあ正攻法のドッグファイトに持ち込めばいいじゃんと残った三人で戦ったが、エイラとハッセだけでも充分きついのにそこに芳佳も加わってちまちま弾をばらまいてくるから鬱陶しい事この上ない。
しかも戦いが長引けば長引くほどリーネの狙撃が精度を増してきて、こちらの動きがかなり制限されていく。
完全に詰め将棋だよ。相手が一手も間違えなければ100%勝てるゲームだわ。
結局、痺れを切らしたマルチナが半ばヤケクソ気味に「オリャー!」とキックを咬ましに行ったがカウンターで負けた。
プリン姫も奮闘し、後一歩で芳佳を落とせる場面まで肉薄したものの人数差で押し込まれて負け。
こうして残ったのは俺だけだ。
気分は陸の上でホッキョクグマに捕食されるアザラシである。ぼくのかんがえた最強の4人組を相手にどう戦うのが正解なのか見当も付かず、必死の抵抗虚しくついぞ誰一人として撃墜は叶わなかった。
もうこんな戦いやめましょうよ! みんな平和が一番! ラブ&ピース!
「そりゃ」
「あたっ」
両手を挙げた俺に容赦なくエイラのペイント弾が飛んできた。大きく反り立った角がピンク色に染まり、今日一番クソ怠い模擬戦はこれにて閉幕。みんな解散!
……ところで、これ、俺の戦闘データ取れてるんだろうか。
(オチは)ないです。(戦闘描写も)ないです。
おまけにウィッチ同士の絡みが多いだけで恋愛要素が無いじゃないか……(呆れ)
けどまぁ、ネウロイとかの設定もイメージできてきたのでそのうち書けたら書きたいですね。
……あれ、これまた恋愛描写無くなるんじゃない?