オリ主によるストパンの学園もの   作:Ncie One to Trick

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書いていく内にドンドン描写が諄くなる……クゥーン
あ、誤字修正兄貴姉貴アリシャス!




 芳佳、リーネと別れて、俺とハルトマンとペリーヌは二年生の教室に入った。あまり人はいない。いつもなら俺がもうちょい布団の中でごねてるだろうが、芳佳ショックで案外早く登校できてしまったようだ。

 俺は自分の席に着いて手提げカバンを机のフックに掛ける。と、不意に肩をポンポンと叩かれた。

 

「おはよーサン」

 

 一足先に登校していたエイラだ。今朝の食卓にいないからどうしたのかと思ったら、もう学校に来ていたのか。

 いつもなら夜更かし常習犯で寝坊助のサーニャに付き合って遅刻ギリギリに登校するエイラが、俺よりも先に登校してるのは非常に珍しい。

 

「オッスオッス。何だよエイラお前、珍しく早いじゃん」

「サーニャが妙に張り切って早起きしてナ」

「へぇ……。何かあった?」

「それがサー、聞いても教えてくれねーんだヨ」

「ふーん」

 

 サーニャとエイラは北国出身という共通点もあって、いっつも仲良しな二人組だから秘め事なんて無いと思ってたのに。

 

「それはそうとケイがオメーを探してたゾ」

 

 ケイ、というのは担任の愛称である。

 

「マジ?」

「マジ。何かやらかしたカ?」

「全然心当たりなし!」

「ジンは真面目だもんナァ」

「ハハァ……」

 

 そりゃウィザードだし留学生を預かる側としては真面目にもなる。しかし呼ばれる心当たりは一切無いのだが、何の用なんだろうか。

 

「後で職員室に行くよ。ありがと」

「ン」

 

 何かやらかしたかなーなんて考えながら一限目の準備をしていたら、教室のドアがバァン!(大破)と開かれた。

 

 『アフリカの星』と名高い天才ウィッチのハンナ・マルセイユだ。

 しかし肩で息をしている。多分、ハルトマンが自分より先に登校したのに勘づいて走ってきたのだろう。いつも一緒のペットゲンがいないし。

 

「ハァー……ハァー……。おはよう諸君、早速だが勝負だハルトマン!」

「はいはい」

 

 慣れたように生返事であしらう。俺もこの光景には見慣れたもんだ。

 あろう事かコイツ、ハルトマンのホームステイ先であるウチにまで押しかけてくるからな。

 そういう時は決まって付き添いのペットゲンと一緒にそのままウチに一泊していく。ペットゲンが毎回申し訳なさそうに謝罪しているもんだから、俺も居たたまれない気持ちになってハンナを追い返せずにいるのだが……。

 

「ふっふっふ……。その余裕綽々な態度もこれまでだ! 今日は秘策を練ってきた!」

 

 そう言いながらこっちに来た。大層にも秘策なんて言っちゃってるけど、それ失敗したら凄い恥ずかしくない?

 

「ナミザキ ジン! お前を手に入れればハルトマンに勝った事になる!」

「えっ、何その超理論は……(困惑)」

 

 左斜め前の席にいるペリーヌに目線を向けると、ムッとした表情でこちらを見ていた。ハルトマンなんて面倒くさげな態度から一変、怒り心頭と言った表情だ。前もバルクホルンが標的になった時もこんな顔をしていたかな。

 

「ちょっとハンナ! ジンは関係ないでしょ!」

「そうですわ! 校内不純異性交遊は禁止です!」

 

 ペリーヌがハルトマンに便乗して怒り出した。流石委員長である。ええぞ!ええぞ! もっと言ってやれ!(他人事)

 

「それに留学してからは異性との接触が厳しすぎる! 放課後ですら制限されてるなんて、カールスラントにいた頃と何も変わらないじゃないか! お前達はジンの家にホームステイしてるからいいだろがな、私は寮だぞ! 男と一つ屋根の下で暮らしやがって……!」

「だ、だからジンは関係無いって!」

 

 ハルトマンが顔を赤くして反論する。全く持ってその通り。正論。二人の勝負なんだから二人で決着付けてくれ。

 

 ……何て他人事のように静観していたのが不味かったのだろうか。俺を手に入れる何てのが秘策だと宣言していたのだから、何かアクションがあってもおかしくなかった。しかし俺は構えを取っていなかった。

 

 それが命取りと言わんばかりに、ハンナは素早い動きで俺の後ろに回ると……なんと抱きついてきた。

 あすなろ抱きという奴だ。フワッと髪の匂いが鼻孔を擽る。走ってきたから汗は少し掻いてたけど、逆にソレがアクセントになっている。

 

「「アッー!」」

 

 ペリーヌとハルトマンの叫び声がハモってる。

 

「どうだジン! こんな事ハルトマンにされてないだろう! これで私の勝ちだ……!」

 

 確かにされてないし、実際俺はとても嬉し恥ずかしな心境なのも確かだ。でも男を落とす手段としては弱い……弱くない?

 

 それに一つだけ釈然としない。

 

 俺の意思を無視して勝手に話進めている事だ……。てめぇの玩具になんかダレガナルカ!

 今日の今日まで、面倒事はゴメンだし二人だけの勝負だからとスルーしていたが、そっちが俺を実力行使で巻き込むならこっちも実力行使だ。

 

 グルルルッと敵意剥き出しにするペリーヌとハルトマンをアイコンタクトで抑えると、俺は首に回されたハンナの腕をグイッと持ち上げた。そこまで力を入れていなかったのか、案外すんなりと腕は俺の首から離れた。

 そのまま廊下に面した壁に両手首を押しつけ、壁ドンに似た姿勢のまま真剣な顔でハンナの目を見つめる。お~良い格好だぜ?

 

「お、おいおい何だよ急に積極的になって……」

「……」

 

 無言で見つめ続ける。壁に押さえつけたからと言って、俺もハンナと同じくそこまで力は入れていない。振り払おうと思えば振り払えるはずだ。

 しかし、急な一転攻勢に驚いたのか抵抗する素振りを見せない。それとも俺が奥手な草食系男子だとでも思っているのだろうか。

 

「お、おい、何とか言えって」

「……」

 

 まだ無言でハンナの目を見つめる。背は俺の方が高いから、どちらかというと見下す感じなのか。

 ハンナは女性にしては背の高い方だから、自分より背の高い人間に壁に押さえつけられるなんて滅多にない経験だろう。感謝してほしい。

 

「おいってば……」

「……」

 

 普段は強気な女性が力で押されて徐々に口数も少なくなっていく

 いいよね……

 

 しかし口では喧しい癖に抵抗が一切見られない。Sって事は、Mって事なのかなぁ?

 

 調子に乗った俺は、トドメを刺そうと試しに片手だけ手首から離して指を絡めてみた。恋人繋ぎ。これで恥ずかしくなって逃げ出すかと思ったが、意外と素直に受け入れらてしまった。

 

「あ……ぅ……」

 

 遂に顔を赤くして俯いてしまった。もう懲りただろうか。

 俺はハンナを抑えていた手をパッと離し、繋いでいた指も解いてそのままハンナの頬に添えて顔を持ち上げると――――。

 

「テイッ」

「あたっ」

 

 凸ピンをした。

 

「俺は誰のモンでもねっつーの。オーケー?」

「あ……」

 

 数秒ほどボーッとしていたが、我に返ったのか歯を剥き出しにして

 

「くぅ~……! ポイテーロ!」

 

 捨て台詞を吐いて教室を出てどっかに行ってしまった。多分、ペットゲンにでも泣きつきに行っただろう。

 ペットゲンしか心の拠り所無いとか恥ずかしくないのかよ(嘲笑)

 

「ハハッ。超ウケるー」

「おー、あんなハンナ初めて見た」

 

 あたふたしたハンナに胸中スカッとし、ハルトマンと「イェーイ」と拳骨を合わせる。

 

 しかしふと気づいた。俺達の声が反響して耳に入ってくる。教室ちょっと静かすぎない?

 

 

 そして己のしでかした愚行を嘆いた。同級生から注がれる視線が痛い。

 

 

「おーええ(シチュ)やん。気に入ったわ……」

 

 やめてくれパティ。そんなキラキラした目で俺を見ないでくれ。君はリーネが貸していた少女漫画の見過ぎだ。

 

「じゃあ俺、職員室行ってくるから……」

 

 俺はその場を後にして、呼び出しにあった職員室に向かった。去り際にエイラが「お前ってタラシだよナ……」と呟いた気がしたが決して振り返らなかった。

 

 

 

 

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

 

 

 

 

「で、用事ってなんスか……?」

 

 俺は担任の加東 圭子先生、もといケイ先生に呼び出された原因を恐る恐る問い質す。反省文を書かされたり説教されるような悪事は働いてないはずなのに、先生に呼び出されただけでやけに緊張する。

 

「宮藤博士からさっき連絡があってね、波崎君にお仕事の話があったのよ」

「ほーん」

 

 前にも言ったが俺には魔力がある。所謂ウィザードって奴。まだモルモットよりはマシな扱いだけど、度々ウィザードの研究と称されてウィッチ関連機関に呼び出される。

 その一貫として、芳佳のお父さんにウィザード専用のストライカー開発もしてもらっているのだ。

 え? お前もウィッチと同じストライカーはけって? 男がズボン(女用)じゃないのをお忘れじゃないだろうか。ホモは盲目。あんなんズボン(男用)じゃ履きづらいんだよなぁ……。魔力の伝達力もかなり下がるし。

 

 話を戻すが、これは学校側も承認しており、当然ケイ先生も俺の事情は知っている。

 

「そっちの携帯にも電話したらしいんだけど……?」

「いやまぁ学校じゃスマホの電源切ってますし」

「真面目ね」

「ハハァ……。授業中に鳴ると恥ずいじゃないッスか」

 

 にしてもまた叔父さんの研究かぁ……。(酷使されて身体が)壊れるなぁ……。

 

「で、何時行けばいいんスかね?」

「今日ですって。放課後に車を手配するからそれに乗ってすぐ来てくれと」

「えぇ……」

 

 いつもなら数日前に事前通告くらいあるんだけど急を要するって事は……やっぱり壊れるじゃないか(呆れ)。

 

「どうする? 断っておく?」

「いや、コレ欲しいんで行きますよ」

 

 そう言って俺は親指と人差し指で輪っかを作る。金だ。叔父さんの研究に協力すれば金がもらえる。それも、世界でも珍しいウィザードだからたんまりとね。

 

「ねぇ……、やっぱり11人も住んでるからお金大変なの?」

「いえ全然。ただ人生何が起こるか分かんないッスからねぇ。今の内から貯金しとこうかと」

 

 俺の金銭面を心配しているようだが、別に金に困ってる訳ではない。ウチに住んでるウィッチの生活費は親御さんからしっかりと頂いているし、それを抜きにしても俺から毎月お小遣いを配る程度には余っている。

 ただ、将来何が起こるか何て誰にも分からないから、ある程度は貯金しとこうという安定志向なだけだ。

 

「感心ね……。私なんて、その歳の頃は写真や資料にお金を使いすぎて何度貯金が底を突きかけたか……」

「やだなぁ先生、昔を懐かしむほど歳食ってないでしょう? 外見だってホラ、まだ若いし独身ってのが信じられないッスよ」

「あら、煽てても内申点は増やさないわよ? でもねぇ……付き合おうにもこんな職場だからいい人いないし……。というかウィッチ専門学校だからまず男性が少ないし」

 

 なんてちょっと嬉しそうに謙遜するケイ先生だけど、いやいやそりゃねーよ。

 ケイ先生は学生の時に映画に出演した経験もあるしウィッチとしても優秀だし、職場恋愛以外にも引き手数多で行き遅れは無いだろう。嫌味か何かだろうか。

 

「いや世辞じゃないッスよ。先生はどちらかって言うと綺麗系より可愛い系だし、それなりにお洒落して町とか行ったら一発で声かけられますって」

「ふふっ。随分私を買ってくれるじゃない。行き遅れたら波崎君にもらってもらおっかなー」

「あ、いっすよ(思考停止快諾)」

「え……え!? え、あの、その、私は嬉しいけど、でも卒業後の進路とか、元教え子との関係っていうかゴニョゴニョ……」

 

 最後は尻すぼみになってしまった。

 御覧の通り非常に弄り甲斐のある先生である。そんなんだから、ハンナを始め殆どの生徒から呼び捨てで呼ばれるのだ。尊敬される先生だけども威厳がない。

 

「でもほら、社会に出た自分を想像してみて? 私と年の差八つも離れてるのに、世間体ってものが……」

「いや将来を想像できないから俺は金貯めてるんですって」

「あっ、そっかぁ」

 

 呼び出した当初の予定を忘れて雑談を続ける俺達だったが、SHRの予鈴のチャイムが鳴り、その場はお開きとなって俺は教室へと戻った。

 しかし社会に出た俺か……。こんなのが良いな、という漠然とした未来予想図なら一応ある。

 

 空がいい。

 

 ウィザード用のストライカー開発してくれてるし、ウィッチ専門学校に通ってるんだもん。大学行けば教員免許も取れるけど、教師になるような柄でもないし空を飛んでいたい。

 

 うん。空がイイ。

 

 でも、もしも俺が社会に行ったらウチにホームステイしてる連中は――――。

 

『お兄ちゃーん!!!!!』 

 

「うわ!」

 

 芳佳がドアップでこっちに飛び込んできた。頭を振って将来のイメージを払拭する。芳佳だけは10年経っても今まで通りな気がする……。

 




―その後のマルセイユ―

「があああああああああああああああああ!!!!!! ああああああああああああああああ!!!」

(ティナが学校から帰って来るなりベッドでゴロゴロし出した……)


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