モビルスーツに乗りたかった喰種捜査官   作:haregreat

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初投稿で慣れてません。
なにかご意見あればよろしくお願いします。



プロローグ

プロローグ 1

 

東京都某所

 

廃工場近くの高台にて深夜に二人の男が工場の全貌を眺めていた。二人はどちらもスーツに白いビジネスコート。両手に白いケースを持っており、町で見かければ、ケースを2つも持ち歩くことを除いて全く違和感を感じることはないだろう服装をしていた。その一人である40近くだろうか。僅かに猫背の男が、元から不気味である顔を更に不気味な笑顔にして嬉しそうにしていた。一般人が見たらすぐにも警察を呼ばれかねない顔、本人は満面の笑顔のつもりなのだろう。そんな顔をして隣にいる部下らしき男に話しかける。

 

「安室一等捜査官準備はいいかね」

 

相変わらず不気味な笑顔をし、深夜なことも相まって、その顔をみれば一般人であれば恐怖でまともな返答ができないだろう。しかし話し掛けられた安室一等捜査官と呼ばれた20代半ばの男は特に物怖じせず、軽く返答を返す。

 

「真戸上等。いつでもいけますよ。すぐにでも。」

 

そう返答を返す赤茶けた髪色に170程度の身長。僅かに幼さが見える童顔に整った顔の若い男性。安室一等捜査官と呼ばれた彼も不気味さは無いものの深夜の廃工場近くでするには全く場違いな満面な笑顔をしながら、静かにしかしやる気に満ちた声音で一拍置かずに即答をする。

 

「どうやら、準備もやる気も充分なようだね。」

「では、喰種(グール)どもを駆逐しにいこうか。」

 

返答に対して安室の上司であろう真戸上等と呼ばれた男は返された返事に満足し、まるでこれから遠足にでも行くかのように喜色を帯びた声で物騒な言葉を投げ返し、両手に1つずつ大きめな白いケースを手に持って、軽い足取りで廃工場に足を向けた。その行動に合わせ部下の若い男も同様のケースを両手に持ち、上司の後に続いた。

そして、返事を期待したものではなく、これから向かう場所にいるだろうグール達に期待を込めて呟く。

 

「あー。ガンダムっぽいカグネ持ちいねぇかな」

 

そんな訳がわからない呟きを残し、男は足早に上司に並走するような位置に着き、二人は目的地に向かって歩きだした。

 

 

 

 

二人が向かった先は工場の裏口にあたる場所。工場が稼働していた頃はトラックの搬入口になっていたことが想像される。

二人は入口周辺に見張りがいないことを確認し、真戸と言われた男が先頭となり、周りを警戒しつつ内部に侵入した。

侵入を果たした二人が通路を音を立てず歩いていると通路沿いの部屋から物音と人の話し声が聞こえた。

二人はゆっくりと扉に近づき中の様子を探る。

内部ではグールだろう3人が喋りながら、食事の最中であった。グールが食べれる物は限られる。

そう、グールが食べることができるのは人のみだ。であれば今グール達が何を食べているか、二人にはすぐに想像がつき、表情には出さないものの二人は嫌悪感と不愉快な雰囲気を露にした。

真戸上等はハンドサインで安室一等に合図すると真戸上等はゆっくりドアを開ける。ドアの先には大きな棚があり二人とグール達との視界の壁となり、グール達は誰が来たのかすぐに分からなかった。

 

「なんだ?ほとんど食っちまって余りなんざねぇぞ」

 

一人のグールが扉の方向を見もせず、仲間の誰かが腹を空かして肉をせびりに来たのかと思い、来訪者に適当に言葉を投げる。

 

 

「いや、結構。我々の口には合わなくてね。」

 

そんな返事が返って来たときグールは返答に疑問を抱き目線を扉に向ける。その目に映ったのは真っ黒のボーガンを自らに向ける見知らぬ人間であった。

 

「CCG!」

 

目線を向けたグールはすぐに侵入してきた男が何者かを悟る。

白いコートにスーツ姿。そして箱持ち。

グールを駆逐する為の組織がCCGであり、その者達が持つ武器は容易にグールの硬い皮膚だろうが貫き、切り裂く。

そんな記憶が頭の脳裏に横切り、大声を出すと同時に体を動かそうとした。しかし男が向けたボーガンからは既に同様の黒い矢が射出されており、丁度声を上げようと大きく開いていたグールの口にゆっくりと吸い込まれていった。矢はグールの口に突き刺さり、頭蓋を砕き矢はグールの頭に突き刺さった。恐らく、今の一撃で頑丈なグールでも即死か致命傷のどちらかの結果を与えていただろう。しかし更に追い討ちをかけるように刺さった矢はグールの血中に多く含まれるRc細胞に反応し、矢につけられていた小さな返しが勢いよく大きく形状を変化させたことで、グールの頭が内部から破裂するかのようにして破壊される。

仲間のグール二人が視界を扉に向ける頃には丁度矢がグールの頭を破壊する所でありその破片が仲間のグール達に降りかかる。残りの二人が今の状況を理解するまで一瞬ほど固まりすぐに外敵から身を守ろうとしグールの補食器官であるカグネを展開しようとした。しかしこの場でその行動はあまりに遅すぎた。瞬間、男が入ってきた入口から更にもう一人の男が現れグール達の目前まで迫っていた。その男である安室は接近と同時に対グール用武器であるクインケを展開する。手に持っていたケースは瞬く間に形状を変えいわゆる薙刀へと形を変化させ、その間合いに入ったグールを有無を言わさず、頭を凪ぎ払った。

更に攻撃を止めず、安室一等は初撃の勢いを利用し、薙刀を勢いよく半回転させ、柄の反対側にもつけられた刀身によって側にいたもう一人のグールの頭をも、初撃同様に凪ぎ払い、一瞬によりグール2体を頭の無い死体に変えて見せた。そのクインケ操術はまさに達人技であり一等捜査官クラスではトップの能力であることは間違いないだろう。その一連の殺戮劇をみていた真戸上等捜査官も1年近くその動きを見ているとはいえ、僅かの間その動きに見惚れた程だ。準特等いや特等クラスでも通じる。安室一等を真戸上等は内心そう評価していた。

 

そのように真戸上等にしては珍しい最上級の評価を頂いた安室一等は、内心では「な~んてお上手なんでしょ。僕っ!」

などと自らの動きに自惚れていたりするのだが、今部屋でそれに気がつく者は誰もいなかった。

 

 

 

二人は、目の前のグールを一瞬で片付けると他に敵がいないか周囲を警戒する。

しかし部屋の中は元から補食された人間の血と更に3体分の血が部屋一面に降り注いだことから正しく血の雨が降り注いだような景観と化しており、男2人を除けば生者がいるような雰囲気はまるでなかった。

そのような状況を作り出した二人は残敵がいないことを確認すると、クインケの血を払ったり、新たな矢を詰める等して次の戦闘の準備に取り掛かった。

 

「気づかれましたかね?」

 

安室一等が真戸上等に小さな声で話しかけた。

 

「いや、扉も閉めていたしそこまでの声ではなかった。大丈夫だろう。先程の食い散らかす音と話し声の方がよっぽど周囲に響いていた気がするよ。」

 

真戸上等はグールの頭を足蹴にして愉悦の籠った声で返答する。顔は歪んだ笑顔であることは言うまでもないだろう。

 

「さぁ、夜はそう長くはない。さっさとここの家主に挨拶しに行くとしよう。」

 

そう踵を返し更に工場の中心部へと足を向ける。

安室一等もそれに習い、後ろに続く。

 

「なんか、下っぱを見る限り上も思ったほどではなさそうですね」

 

部屋を出る前に安室一等が軽口を溢す。

 

「油断はやめたまえ。あの害虫共は生き汚い。君も下手をすれば、足元を掬われるぞ。」

 

真戸上等はそう返し、自らの部下に軽く叱責する。

そして、更に真戸は言う。

 

「通称巨腕 A+~の判定をつけられているが私の勘では、Sレートに届くだろう。S+やSSには届かないだろうがね。しかし決して油断していい獲物ではない。久々の大物だ。確実に仕留めよう。」

 

「真戸上等の勘がそう思うんなら、そうなんだろうなぁ。つか、今回のグールの特徴的にクインケにしても自分好みの作れなそうなんですよね。」

 

血だらけの惨場を気にもせず、二人は会話を続けるが、部屋を出れば、先程の弛緩した空気はなくなり二人の空気は刃物を想像させる鋭く冷たい雰囲気に瞬く間に変わる。そうして二人は工場の中心部へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

二人の捜査官がグールの根城である廃工場に侵入した頃、その根城の主であるグールは工場の中心部、元は組み立てスペースだったのだろう広い空間に一人佇んで、苛立っていた。ここ最近白鳩(CCGのこと)の活動がかなり激しくなっており、自らの狩場を荒らされ、相当数の部下が餌の人間を狩ろうとして、逆に狩られ続けているのだ。

つい最近では、自らに次ぐ実力を持った組織のNo.2とも言うべき存在も狩られ、組織の活動がままならぬ状態になりつつある。

人数も多かった時は50人近くはいた構成員も狩られるか逃げ出すかして、今では20に届くかどうかの有り様だ。

実力も精々がカグネを出して振り回す程度の者しかいない。

実力者もいたが、どういう訳か優先して狩られ、今まともに白鳩の箱持ちを相手にできるのは自分だけなのではないか。

そんな鬱々とした感情がこみ上げ、そしてこんな状況に落としこんだ白鳩に対しての怒りが前者以上に身体中に沸き上がり、近くにあった鉄屑を握りつぶし、脇にあるドラム缶を数m先まで蹴飛ばした。

そして、物に鬱憤をあたり散らし、しばらくして気持ちを落ち着かせ、まずは食料調達をどうにかしないといけない。そうした現実問題をようやくまともに考えられるようになった時、何か入口に気配を感じた。

 

部下の誰かが来たのか?

 

まず、第一に当たり前のことを思い付く。しかし扉からは異様に血の匂いが漂ってくる。

その異常を感じとりグールは大声を出す。

 

「誰だ!さっさと入ってこい!」

 

声を出し、扉の向こう側に間違いなくいる誰かに問いかけるが、数秒たっても入ってくる様子がない。

 

苛立たしげにもう一度声を張り上げようとした瞬間、扉がゆっくりと、開け放たれる。

果たして、何者か。恐らく部下ではない。グールのリーダーはそう予感した。

 

そして、入ってきたのは白いコートにスーツ姿。両手にケースを持つ不気味な笑顔をこちらにむける男ともう一人も不気味さはないものの、この場に全く似合わない純粋な笑顔をこちらに向けた男2人組であった。

その外見の特徴は間違いなく唯一、グールの天敵であるCCGに他ならなかった。

 

 

 

 

 

 

真戸上等と安室一等は3人のグールを部屋にて始末した後、軽い足取りで、順調に目的地の工場中心部に向かっていた。以前捕らえたグールの情報でグールのリーダーは好んで中心部にいることが多いと聞かされていたからだ。

中心部に向かう最中に何回かグールに遭遇することがあったのだが、通路には、一人で見回るグールばかりであり、真戸上等のボーガンの形をしたクインケで一瞬で葬りさられるだけであった。一度だけ二体のグールと遭遇したが、安室一等の「この先から2つプレッシャーが迫ってきてる感じがするので物陰に隠れて奇襲しましょう。」等という意味不明な発言があり、そのような発言に馴れている真戸上等は了承し、物陰に隠れ安室一等が言ったように近づいてきたグール二体を奇襲することで瞬殺し、問題なく進んでいった。途中の部屋で寝ていたグールもわざわざ殺し回っていたのは余談だろう。

 

二人は特に騒ぎを起こすこともなく、中心部の組み立て場の入口であろう観音開きの大きな入口を見つける。

真戸上等は長年の経験により磨いた直感が間違いなくこの扉の先に目標である巨腕のグールがいることを確信する。

安室一等もこの世界に生まれた時に与えられた能力により、敵の親玉がいることを察知する。

お互いに目を合わせこの先にいるだろう敵が目標であると、目で告げると考えが一致していることに気づき二人は口元に笑みを作る。ペアを組んでから二人の勘が一致した時の勘は今まで一度も外れたことがないのだ。

そうして二人同時に扉を開け放とうとした瞬間、中から大声が放たれた。

 

「誰だ!」

 

二人は一瞬固まり、もう一度目を合わす。

お互いの笑みは更に増しており、お互いに笑いだすのを堪えるようにしてゆっくりと扉を開いた。

凶悪な笑顔をした真戸上等はこれから殺せるグールをいかにして、どのような苦痛をもって殺してやるか想像しながら。

安室一等は扉越しからでも気配に気付けたグールは想像以上の能力を持っているのではないか。自分が理想とするクインケになってくれるのではないかと想像しながら。

そうして、ようやく二人は今夜の目標としていたグールに相対した。

 

 

 

 

 

 

 

相対したグールは身長は190㎝はありかなりの筋肉質。黒のタンクトップにジーンズという格好。顔にはサングラスを身に付け頬には目元から顎にかけて傷痕が見える。一般人は絶対に近づきたくない姿をしていた。

 

「身体的特徴とその頬の傷痕。間違いなく駆逐対象である巨腕のグールと判断する。駆逐させてもらおう。」

 

真戸上等がそう言い放ち、両手に持っていたクインケを武器の形に変えていく。右手には銀色のレイピアが。左手には先程まで活躍していた黒いボーガンが姿を現す。

 

「見せて貰おうか。巨腕と呼ばれるグールの実力とやらを」

 

 

それに続けて安室一等もキャラ違いの発言をしながら両手に持つクインケを展開する。右手には柄の両側に刀身があり、両側の刀身を含めても安室一等の身長と同じ程の黒い薙刀が。左手にはパーティー用のクラッカーに似た形をした使用用途が見た目では全く不明な武器がそれぞれ安室一等の腕に収まっている。

 

 

 

それを見た。巨腕と呼ばれるグールが両側の肩甲骨からカグネを露にし、カグネを両手に纏わせることで巨腕の名に恥じぬ5m近い2本の巨腕が顕になる。また腕の先には指を模倣しているのか、5本に枝分かれしたカグネも確認できた。

 

「たかが白鳩二人で俺の前に姿を現した勇気は買ってやる。だが白鳩なんざいくらでも殺してるんだよ!」

 

巨腕のグールがそう言い切ると同時に間合いを詰め、全力で右腕を横凪ぎする。

 

目にも止まらぬ速さで振り抜かれた腕に常人であれば上半身と下半身の2つが泣き別れしていただろう。しかし歴戦のベテラン捜査官である真戸上等と生まれ持った特殊な能力を持つ安室一等にとっては、ただの力任せの攻撃でしかなく、二人は余裕を持って上体だけを前に倒してかわす。

そしてかわすと同時に真戸上等は巨腕のグールの右側に回り込み、安室一等が左側に回り込むことで、阿吽の呼吸でグールを挟みこむようにしてお互い移動する。真戸上等が回り込みつつ黒いボーガンをグールに向けその胴体に矢を放つが自らの左腕を盾にすることで攻撃を防ぐ。しかし矢はただの矢などではなく左腕に突き刺さると同時に大きく形状を変えカグネの動きを阻害した。

 

「くそが!!」

 

巨腕は予想外の痛みと左腕が異物によりまともに動かせなくなったことによる煩わしさに思わず相手を罵るが、挟み撃ちにされる現状はあまりよく無いと冷静に判断し、その巨体からは想像できない機敏さで後ろに下がり距離を取る。距離を取る際にも先程の矢が飛んで来ないか注意していたが、どうやら先程のは一発のみだったらしく、射手である捜査官はボーガンを投げ捨てレイピアを持ちこちらに突貫してくる様子だった。

武器が減れば更にこちらに有利になる。そう思いもう一人に目をやる。もう一人の若い男は相変わらず回り込もうとし、こちらの視界に同時に二人を写さないよう嫌な立ち回りをしてくる。

その状況から、今までの捜査官とは違うと判断し、敵に応援が来ないとも限らない。

捜査官がここまで来ているということは、こちらの仲間は当てにできない。そう考え巨腕のグールは一瞬で決断する。

 

正面から向かってくる人間を巨腕2本を用いて瞬殺した後にもう一人を殺す。

この巨腕は巨大なこともあり、動きは単調だと思うかもしれないが、それは間違いだ。

腕に巻き付くこのカグネの指で器用に絡めとることもできるし、腕はどのような方向にも曲げることができる

これまで、自らに立ちはだかった何人もの喰種や捜査官をこの腕で葬ってきた。

その巨腕2本を用いれば、どのような捜査官とて瞬殺は可能。

 

そう判断し、正面から向かってくる捜査官に対して、自らも突撃し必殺の攻撃を行おうと、若い男の捜査官から一瞬目を離した瞬間、その若い男のいる方角から乾いた気の抜けた音が聞こえた。

 

音が聞こえたと同時にその音源に対して左腕を盾にするようにして向ける。奇妙な形をしたものはどうやら飛び道具だったようだ。しかし、体に衝撃がくる様子はない。

 

外したか?

 

そう疑問に思ったと同時に左後ろから何かが自らを通り越していくのが見えた。

その瞬間に疑問は確信へと変わり目の前の敵に集中できることを悟る。まぬけめ。内心で攻撃を外した捜査官を馬鹿にする。

そして正面の相手に対して必殺のパターンである片腕で横に大きく腕を凪ぎ払った後に、恐らく先程同様に攻撃をかわすだろう敵に対して回避中を狙った2撃目にて仕留める。単純ではあるが、この両手を用いた攻撃で多くの白鳩を仕留めてきた。

グールは自信をもって攻撃に移ろうとした瞬間、通りすぎていった筈の小さなおもちゃのロケットを想像させるような物体は急に角度を変え自らの正面を横切り更に自らを中心として円状に回りだした。なんだ?その不思議な軌道に疑問を抱いたその瞬間にロケットの形をした物が通りすぎていった跡に何か月明かりにより反射したものが見えた。

グールがそれに気付いた瞬間、それが極めて細いワイヤーかなにかだと気づく。

そしてワイヤーのたるみがなくなったことで一気に自らに巻き付き、拘束してきた。

だが、グールは心の中で嘲笑う。高々このような細いワイヤーごときでは一瞬でも拘束すること等不可能だと。そして体に巻き付くワイヤーを引きちぎろうとした瞬間。バチッ!とワイヤーと体の接触部から今まで聞いたことがない激しい音が聞こえた。

直後体が硬直し、更に体に力が入らず、走り出していた体は一気に地面に衝突した。転倒した直後グールは何が起きたか分からずほんの一瞬だが呆けてしまう。しかし幾度となく白鳩達と死闘を繰り広げてきた経験により培われてきた本能が動かないと死ぬ。殺される。と頭の中で絶叫するように本能が警鐘を鳴らす。

グールは本能に従い直ぐ様体を動かそうとするも体は痺れて思うように動いてくれない。

そしてなんとか四つん這いになりながら頭を上げ正面を視界にいれる。しかしそこにはすぐ目の前に迫った不気味な笑顔をした男が右手に持つレイピアで自らの頭を貫こうとする姿が視界一杯に広がっていた。

 

恐らく、並みのグールであれば体をまともに動かすこともできず、ましてやその動きに反応することもできず、何がおきたかわからぬまま、頭を串刺しにされて終わっていただろう。

だが、巨腕という2つ名で捜査官たちから恐れられ、多くの戦いで勝利してきた巨腕のグールは痺れて動かない体を全力で動かしレイピアの切っ先からなんとか頭を反らすことに成功する。しかし切っ先は頭を貫きはしなかったが、グールの左肩を勢いよく深く貫いた。

貫いたレイピアは直ぐ様、引き抜かれ引き抜かれると同時に血を勢いよく吹き出し、引き抜いた捜査官は舌打ちと共にグールの右側を走り抜けていった。

グールは痛みと体全体から襲ってくる倦怠感によりまともに思考することが不可能になっていた。

ただ本能のまま怒りに身を任せ、後ろ姿を見せて己から距離を置こうとしている男の無防備な背中に自らのカグネをぶち当ててやろうと膝立ちになりながら上体を半回転させ、まだ動く右腕を勢いよく振りぬこうとした時、視界の端にもう一人の男が目前まで迫っているのが見えた。その男がもつ薙刀の刀身は先程までなんらへんてつもないものであった筈が、今では真っ赤に染まり不吉な輝きをして今まさに己へと振り落とそうとしていた。

 

防御も回避も間に合わない。

 

 

グールの視界は走馬灯が流れるように、ゆっくりと振り落とされていく薙刀をまるで他人ごとかのように眺めていた。真っ赤に染まった刀身は自らの右肩に触れるとなんの抵抗も感じぬように滑らかに斜めに胴体を切り裂いていき左脇腹よりすんなりと抜けていった。

安室一等は、グールの体を袈裟に切り裂いた後、まだ足らぬとばかりに振り抜いた薙刀を勢いがのったまま体を一捻りし、柄の反対側の刀身で今まさに倒れふそうとしているグールの首目掛けておもいっきり振り抜いた。

 

二度斬り裂かれたグールの体はゆっくりと倒れていくと、袈裟斬りにされた胴体は2つに別れながら地に落ち、頭も胴体から別れるとそれぞれが同時に鈍い音を立てて、地に落ちていった。

 

部屋からは戦闘音が消え、夜の静寂が戻り、崩れ落ちたグールの体が地面に落ちて生じる鈍い音がやけに屋内に鳴り響いた。

 

グールの体を三分割にした下手人である安室一等は僅かの間グールが起き上がらないことを確認すると体の中の空気をゆっくり吐き出し深呼吸を一度してから構えを解いた。

 

そして、グールの姿を見て、自らの失態に気づく。

 

「やっべ、やり過ぎた!」

 

そんな気の抜けた声が屋内に響き、安室一等は嚇包に損傷がないか死体を検分し始める。

 

 

「何度も言っているだろう。頭を落として効率よく殺るか、苦痛と屈辱に染め上げるようにして四肢を切り落とすかのどちらかが最上だと。君はいつもやりすぎだよ。まぁ、それも悪くはないと思うがね。」

 

責めるような言葉を投げる真戸上等だが、言葉とは裏腹に顔には愉悦の籠った満面の笑顔をして安室一等のやり方を称賛するかのように語りかけた。

 

 

「そんなこと言わずに嚇包が無事か確認するの手伝って下さいよぉ。あーぐろい。」

 

そんな泣き言をいいながらグールの体をまさぐる安室一等。

 

「私はこれから本部に連絡を入れなくてはならなくてね。恐らくまた無断でグールの討伐に向かったことを責められるだろう。君が代わりに現状の説明と言い訳をしてくれるなら手伝っても構わんがどうするかね。」

 

その言葉に即答で、結構です。連絡よろしくお願いします。と苦笑いしながら返答する。

 

あーまた帰ったら怒られるのか。

 

そのようなことを想像し憂鬱になりがらも嚇包が無事なことを祈りつつ、グールの体をまさぐり続ける。背後からは携帯電話で本部に状況を飄々と説明する真戸上等の声を聞きながら、安室一等は手を止めずに動かし続けた。

 

 

その夜。巨腕のグール率いるグール集団は一晩のうちに捜査官二人の手によって壊滅した。

 

 

 

 




以下キャラ紹介
安室一等捜査官
主人公。事故死した後に定番の転生をすることになりアムロさんみたいなニュータイプになって俺つええー!したいです。って要望だしたら快諾された。
しかし、色々言葉が足りなかったようでMSなんてない世界に転生。一時期絶望して荒れていた。

しかし、生まれ育った施設の人にグール捜査官なりたくない?クインケっていうグール産の武器を使ってグールをぶっころせるよ!と説明される。

安室:クインケってなんですか!
   ビーム打てますか!ビームサーベルありますか!

CCG:強いグールぶっころせば作れんじゃね?(多分)

その回答を聞いて安室はグール捜査官となることを決意する。

能力は健在なようで、殺気などに敏感であり奇襲が通じない。未来予知ばりの直感で相手の行動を先読みしてばっさりやる。
身体能力は俺つえーしたいが聞き届いていたせいか、かなり高い。だけどあくまで人間の範囲で。しかし自らをガンダムと思い込むことで限定的に身体能力以上の力を発揮できるとか。

CCGに所属後はビームライフルとビームサーベルを求めグールを駆逐しまくってる。
周りはドン引きしている。
能力が高いことから初めから零番隊に配属され、もぐら叩きで有馬の元鍛えられる。毎回ナルカミ下さいと言ってくるので、有馬からは若干うざがられている。

白い悪魔と密かにグール達に言われたいが、有馬が既に白い死神等と恐れられており、憎々しげに有馬を見ることもある。


真戸上等
原作にも登場しているあの人。
原作よりも過去の話なのでまだ、亜門さんとはペアは組んでいない。


巨腕のグール
両手にカグネを巻き付けぶんぶん振り回すのが得意。
上等クラスの捜査官を何人か返り討ちにしてる。
頭はあまりよくない。
討伐後レートはS⁻と判定。



次からはもう少し文章増やしたいです。
感想等頂ければ嬉しいです。
読んでくれてありがとうございます。

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