Another WWⅡ!   作:永遠のZero

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とても忙しく、中々投稿できませんでしたが久々の投稿です。
引き続きよろしくお願い致します。


ハバロフスク・キロフスキーの悲劇です!

まだ寒さが残る中、時期は巡り4月を迎えた。

日本は雪溶けの時期を迎えているにも関わらず、各地の日本陸軍の戦線は凍結していた。

角谷杏が参謀を務める牟田口軍も例外では無く、作戦開始から3度の総攻撃が行われた。

しかし、いずれも失敗に終わり、その戦死者は既に10000人を超えていた。

 

案内人「間もなくです、岬大佐」

 

明乃「案内ご苦労様。」

 

そんな中、戦艦長門の艦長である岬明乃は単身、呉鎮守府を訪れていた。

その目的は、1940年8月に進水を迎え、間もなく実戦配備されるであろう世界最大の超弩級戦艦である大和を視察する様、海軍大臣の宗谷真雪元帥に命じられためである。

 

明乃「(突然の視察命令・・・、一体何故私に?)」

 

いくつかの疑問を残固しながらも案内人の運転する小型艇で瀬戸内海に繰り出す。

するとそこには想像を絶するほど巨大な、黒鉄の城とも呼べる戦艦大和が姿を現した。

 

明乃「これが、大和・・・」

 

明乃はその凄さに圧倒されながら小型艇から大和に乗り移り、艦橋を目指す。

 

芽衣「凄い!、凄いよ!、これに乗って早くあの主砲撃ちたいよ!」

 

するとそこには川内に乗艦しているはずの西崎芽衣の姿があった。

 

明乃「随分とはしゃいでいるね、西崎中佐。」

 

芽衣「岬大佐!」

 

明乃「何をそんなに興奮しているの?」

 

芽衣「何ってそりゃあ!、世界最大最強の46㎝3連装砲3基9門!、撃て撃てなアタシにはもう最高ですよ!、あー!、は・や・く・う・ち・た・い!」

 

芽衣はもはや収拾が付かない程に興奮していた。

 

案内人「岬大佐、西崎中佐は私が何とかしますので任務の方をお願いします。」

 

明乃「わかった、お願いね。」

 

案内人「はい!」

 

芽衣が興奮する理由を良く知っている明乃は冷静に艦橋を始め、艦内を歩き回り視察の任務を全うした。

しかし、途中で合流した芽衣が射撃指揮所に入るなり本当に主砲を撃とうとしたため全力で取り押さえると言うトラブルが発生したのはまた別のお話。

 

明乃「(この大和1隻を作るのに国家予算の3%を食い潰してしまった・・・、そのせいで国民は重税に苦しんでる・・・、大事に使って、必ず勝つ!)」

 

 

キロフスキー要塞正面・日本軍司令部

この日、参謀長である辻より次なる作戦が発表された。

 

辻「この様に2個小隊を5人1組の微力偵察部隊に分離、闇に紛れて川を渡り防壁をくり貫いて作られたと思われるトーチカ付近に爆薬を設置、合図と共に一斉に爆破した後、全力を持ってトーチカを通り内部へ攻め込む!、以下がですかな閣下?」

 

牟田口「まあ、正面攻撃よりは幾分マシか・・・」

 

杏「突撃の援護は如何致しますか?」

 

牟田口「西、河嶋の戦車大隊にやって貰おう。」

 

今回のこの作戦はこれまでの正面総攻撃よりは作戦として成り立っていると判断した牟田口は承認し、杏はまだどこか不安感を抱いていたが賛成した。

そして翌日、夜明前に作戦が開始された。

 

爆破隊長「よーい!、点火!」

 

爆破隊長の合図で仕掛けられた爆薬が一斉に爆炎と化し暗闇を照らした。

 

ソ連兵「ぐああああ!」「何が起こった!」

 

歩兵旅団長「突撃!」

 

日本兵「「「「「うおおおおーーー!!」」」」」

 

うおおおおーーー!!

 

絹代・桃「「撃てーーー!!」」

 

そして先発の歩兵1個旅団6000人が突撃、その援護として絹代、桃の各戦車大隊が砲撃を開始、地上の敵防衛陣地を攻撃した。

 

歩兵旅団長「あれだ!、あそこから突っ込め!」

 

向こう岸にたどり着いた歩兵隊は1個分隊規模でボートから破壊されたトーチカへ飛び込み前進した。

 

辻「これで兵たちが次々と上陸、戦車隊の攻撃で地上の防衛陣地もある程度破壊されておるから次の一手でもう1個旅団送り込めばそれで終わりだ!」

 

作戦の進行具合を司令部付近の見張り台から見ていた辻を始めとする牟田口軍参謀達は皆がそう考えていた。

しかし、通信員から飛び込んで来た知らせは辻らの理想からあまりにもかけ離れた物であった。

 

通信員「突撃部隊より!、我ら敵要塞に侵入するも!、視界の悪い洞窟の中で敵は数多の隠し部屋より攻撃!、既に兵力の損失大なり!、との事です!」

 

辻「なに!」

 

通信員「新たに報告!、トーチカから洞窟を通り地上へ出る部隊も少なく無いが敵の強靭な防衛陣地に阻まれ被害甚大!、戦車隊の砲撃効果は薄いものとみられる!、との事です!」

 

余りにも誤算であった、辻はトーチカから地上にでる事は用意であると兵に伝えていた。

そのため、油断した日本兵は洞窟に設置された数え切れぬほどの隠し部屋より奇襲を受け、洞窟内で全滅した部隊まで出始める始末であった。

更に辛うじて洞窟での攻撃を交わし地上へと出る事の出来た部隊もいたが、その部隊を待っていたのはソ連軍主力戦車のT-34/76およびT-34/85であった。

これらの戦車はある程度距離がある中で、93式戦車の57㎜砲で破壊する事は不可能に等しかった。

 

辻「おのれ!」

 

次席参謀「追加の部隊は如何致しますか!」

 

辻「くっ!」

 

余りの惨状に辻は焦った。

そしてその焦りが辻から冷静さを奪った。

 

辻「第二波を出せ!」

 

杏「!!、ちょっと待て!」

 

更に部隊を送り込もうとする辻に杏は異議を申し立てようとした。

 

辻「なんだ?、今の参謀長はこのワシだ!、いくら総司令部の参謀とは言え口を挟まんで貰えないか?」

 

杏「くっ!」

 

しかし、立場がそれを許さなかった。

いくら総司令部所属とはいっても、他の部隊の作戦指揮そのもの捻じ曲げる事は出来ない。

杏は奥歯を噛みしめた。

 

杏「(これは明らかな地獄だ!)」

 

そして突撃し、洞窟から抜け出し地上で敵陣に突撃する兵が現場で体験している物は紛れもない地獄であると感じた。

しかしそんな中で、敵防衛陣地を全て突破し本丸へとたどり着いた部隊が僅かに存在したが、それでも新たな防衛陣地に阻まれ内部に至る事は出来ず倒れた。

 

杏「(このままこんな無茶な作戦を続けていたら!、牟田口軍は立ち直れなくなる!)」

 

 

そんな中、補給のために一度、旅順港へ立ち寄った連合艦隊から山本を始め、艦隊首脳陣の数人が補給期間中に奉天の満洲方面軍総司令部を訪れていた。

 

山本「お久しぶりです、西住閣下。」

 

しほ「ええ、お久しぶりですね、山本閣下。」

 

そこでは西住しほ元帥を始め、陸軍首脳がすでに席に着いていた。

 

山本「聞いたところによりますと、奉天に置かれている本体は行動を起こさず、1個軍団でハバロフスク攻略を行っているとの事で?」

 

しほ「ええ、ハバロフスクの部隊は我が軍にとって大きな脅威と成り兼ねませんので。」

 

山本「しかし、陸軍もまた人で不足と聞いておりますが・・・」

 

しほ「なのでこちらは動かず、敵を動かさない、攻めて来た場合には防戦に徹する様、命じています。」

 

山本「では現在、ハバロフスク攻略はどの様な状況になっておられるのですか?」

 

陸軍陣営「「「「・・・」」」」

 

山本が言葉を達した途端、陸軍側に一度沈黙が生まれた。

 

まほ「苦戦しております、敵の防戦が想像を絶する程激しく、被害も少なく無いと、しかし確実に進行しております。」

 

そして初めに口を開いたのは西住まほ少将であった。

 

ましろ「確実に進行とは?、具体的にはどれ程進行しているのか、お教え願います。」

 

それに対し宗谷ましろ大佐が返す。

 

まほ「私が知っているのは確実に進行していると言う事のみだ。」

 

ましろ「それでは理解できません、本当に進行しているのですか?」

 

まほ「なに?」

 

ましろ「ハバロフスク攻略を支援した爆撃機隊の搭乗員によれば未だ上陸すら難しいと聞いております!、何が何でも落とさなくてはならないあの要塞が未だ無傷であると!」

 

まほ「貴様!」

 

この2人はそれぞれ陸軍軍令部総長と海軍大臣の娘であり、以前の御前会議でのやり取りの様に、2人のやり取りには緊迫感が現れ始めた。

 

しほ「よしなさい!」

 

まほ・ましろ「「!」」

 

それを見かねたしほが2人を止める。

 

しほ「あなたは宗谷真雪元帥の息女の宗谷ましろであっているかしら?」

 

ましろ「はい・・・」

 

しほ「海軍一の秀才だそうね、先ほどあなたが申した事の根拠は何かしら?」

 

ましろ「ハバロフスクは、シベリア方面からウラジオストクへの中継地点であると同時にオホーツク海に面した地域があります!、もしそこに多数の空軍基地を置かれれば北方の艦隊が常に空襲の危機に曝されます!」

 

しほ「なるほど、ベーリング海とオホーツク海を抑えれば陸路以外で極東への支援は不可能、我が陸軍としても決して悪い話ではありませんね。」

 

ましろ「でしたら!」

 

しほ「しかし、力任せに攻めればあまりにも多くの犠牲が出る事になるわ。」

 

ましろ「くっ!」

 

まほ「まあそういう事だ、慌てるな。」

 

ましろは苦虫を噛み潰した様な表情になり、一度両陣営に沈黙が生じた。

 

山本「まあ、今日はもう遅いので続きは明日にしませんか?」

 

しほ「・・・、ええ、そうさせて頂きましょう。」

 

そして山本の放った一言でこの場はお開きとなり、明乃にもえか、ましろは3人で1つの部屋に集まった。

その中でもえかがましろに切り出す。

 

もえか「シロちゃん、なんであそこまでハバロフスクにこだわるの?」

 

ましろ「先の日露戦争の時と同じだ。」

 

もえか「旅順のこと?」

 

ましろ「ああ、帝政ロシアは旅順陥落によって奉天で敗走したと言っても過言では無い。」

 

明乃「それは結果論な気がするけど?」

 

ましろ「いいや今回もソ連はハバロフスクのために敗北する!、だがこちらが取れなければ日本軍はハバロフスクのために敗北する!」

 

ましろはあくまで陸軍にハバロフスク攻略を求めた。

その理由の一つは当然、オホーツク海で艦隊が空襲に晒されるのを防ぐためであった。

 

明乃「けどそのハバロフスク攻略で10000人の兵が戦死したって聞いたよ?、このまま陸軍が力押しで行けば確実にはじき返されると思うし、それ以前に陸軍は海軍の言う事に耳を傾けようとしないのも事実。」

 

もえか「作戦失敗が続いて、今更になって海軍の意見を聞き入れたとなっては陸軍の面子が経たないと言う事ね。」

 

明乃「これだけの事が続いてるからこそ、冷静に考えた方がいいよシロちゃん。」

 

ましろ「何を呑気な事を!、例え60000の兵が犠牲になろうとも!、ハバロフスクは絶対に落さねばならない!」

 

明乃「!!、可能な限り犠牲を最小限に留めるのがシロちゃんの!、宗谷流の作戦じゃないの!」

 

もえか「シロちゃん、いいえ、宗谷作戦参謀、一度冷静になろ?」

 

ましろ「・・・、すまない、ちょっと夜風に当たって来る・・・」

 

表情にこそ出さなかったが、この時のましろは少々混乱している節があったと2人は感じた。

一方のハバロフスクでは新たな攻撃が開始されようとしていた。


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