どうもこんにちは、私です。明日です。
ドラマが好調な滑り出しを決めて、少し有頂天な私です。
今の段階では、撮影は4話分ほど済んでおり二日前に第一話を放送しました。
放送時、私も一人の役者として皆の反応が気になったので、実は少しエゴサーチをしてみたのです。
その結果、やはり予想していた書き込みがSNSで沢山ありました。
代表例をいくつかあげますと...
[安部さん...それ軽く30年前の曲...]
[何故そこに安部さんを置いたのか。監督は有能なのか。]
[フリートークを台本なしのマジのフリートークにしてる感じがやばい。話し相手の子も理解してなさそう。]
まず3つです。これはすべて菜々さんに向けて書き込まれたものですね。
知ってましたよ。あの自爆でこうなることは。実際私も前世の記憶の御陰で内容は理解していたんですけど...流石に現役高校生が反応するのは拙いかと思い、黙っていました。
でも、よくよく考えると菜々さんも17歳ですし別に反応をしても良かったのかもしれません。でもなぜでしょうか...菜々さんから高校生のような雰囲気が感じ取れません...気のせいでしょうか...
話を戻しさっきの書き込みにもう一つ注目すべき点があります。
そうです、ファンが菜々さんのことを皆、名字で呼んでいるのです。
何ででしょうか、そこまで威圧も感じませんし、愛されキャラである彼女は菜々さんと気軽に下で呼べてもおかしくないはずです。
この疑問ばっかりは考えても答えが出なかったので当分の保留になると思います。
次の例です。
[この会話してる相手誰?スタイルめっちゃ良いし、色気むんむんだけど...新人?]
[ヒロインの子めっちゃかわいい。ファンになりました。]
この2つですね。
結構な数、私に関しての書き込みも見かけたんですが拾いすぎるときりがありませんし、纏めるとこの2つと内容は大体おんなじです。
まず一つ目から拾っていきましょう。私のスタイルは確かにいいです。同年代の子よりもありますし、勿論肇よりもあります。
ただです、16歳に色気を求めるのはどうなんでしょうか。このくらいの年齢の子はかわいい!とかかっこいい!くらいが十分だと思うんです。
そんな色気だなんて20後半の大人の女性だけでいいんです。子供に求めないでください。
次に二つ目ですが、そこまで拾うことがないので割愛です。
その後、同い年の子に100を超えるバストの女の子がいることを知り、少しの間
___________________________________
私のドラマ出演がうまくいったのか知りませんが私はとあるバラエティ番組に呼ばれました。
この番組は主に新人発掘が目的の番組で、司会は高垣楓という美城プロの私の先輩がやっているそうです。
私自身あまり高垣さんのことを知らず、顔は見たことあるんですけど...状態でした。
ですがこの時の私は本当に愚かでした。事前情報の無い私が、高垣さんに
「それでは、今週も始めていきましょう!新人発掘~タレントディグ~!」
高垣さんの掛け声とともに私が待機していた幕が上がります。要するに出番だということです。
「今日のタレントさんは綱嶌明日さんです。」
そういい高垣さんはこちらに向かって手招きをしました。
その合図を見て私はゆっくり歩いていきます。
「では、明日さん一言お願いします。」
「はい。最近芸能界に姿を現した綱嶌明日です。よろしくおねがいします。」
「おー、
「...はい?」
「それでは!第一の質問コーナーに行きましょうか。」
...この瞬間、私は何か不穏な空気を感じ取ったのです。
「では~綱嶌さんに届いていたお便りを見ていきましょうか」
「はい。お願いします。」
私が頭を下げると高垣さんはBOXに入っているお便りをガサガサし始めました。
今更ながらこれテレビ番組向きじゃないですよね。完全にラジオな感じです。
そうこうしていると高垣さんが引いたであろうお便りを読み始めました。
「では、ペンネーム、春は曙さんからの質問です。」
「はい。」
「今回のゲストの明日さん、楓さんディグディグ!」
「はい、ディグディグです。」「ディグディグです」
あっ、このディグディグは恒例行事なので気にしないでください。
これは楽屋で先にスタッフさんに教えてもらっていました。
「明日さんに質問です。明日さんは16歳には見えない容姿にスタイルをお持ちですが、何か気を付けていることとかはあるのでしょうか?可能ならば教えて下さい...だそうです。」
「いきなり、結構どぎついの来ましたね。」
「無理なら答えなくても大丈夫ですよ」
そうは言いますが流石に開幕から質問を無下にする勇気など私には到底ございません。
なので素直に答えさせていただきます。本当はきついんですけど、空気が空気ですし...もしここで間違えた選択をすれば今後にかかわります。
「大丈夫ですよ。そうですね...本当に簡単で申し訳ないんですが、牛乳を飲み、しっかり寝ることですかね。」
「そうなんですか?私自身体には自信があったんですけど...簡単に抜かれちゃってますね...ふふっ」
「…まぁ、大きさだけではありませんしそれに十分に高垣さんは魅力的だと思います。」
「まぁ、私にそんな言葉
「...有難う御座います。あの、私、慣れてないもので反応に困るんですけど...本当にどう返すのが正解何でしょうか...?」
私は知りました。この高垣さん。重度のダジャレ好きです。それも致命的な。
最後のニアーに関してはムリやりすぎて伝わりません。無理です。
一回一回にダジャレを混ぜてくるので反応にも困りますし、そっちが気になって話が頭に入ってきません。
「あんまり気にしなくていいですよ。それよりも、明日ちゃんは本当に16歳なんですか?」
「(ちゃん...)はい。紛れもなく現役の16歳ですよ。」
「明日ちゃんの学校の一個上の先輩ってナウいJKとか言ってますか?」
「え...?ナウ...?すいません。言ってませんね...ていうかナウいって死語じゃないんですか...?」
「あら、すいません。
「使われてませんよ、言って10年前くらいだと思います。」
「...ふふっ、そうですか。有難う御座いました。では話が逸れましたので、そろそろ戻して次の質問に行きましょうか。」
「はい。」
その後、アイドルになった理由から仲の良い友人、最近あった面白い出来事などを語り、最後にドラマの番宣をして私の初バラエティは幕を閉じたのでした。
この日はいつもより疲れがたまっていたので仕事が終わった後は、早急に寮に帰りすぐに睡眠につきました。
後日、菜々さんが私に電話で17歳が使う言葉を聞いてきたことが未だに謎で仕方がありません。貴方こそ17歳でしょうに。
____________________________________
今日は私、肇、幸子さん、前川さんでの合同レッスンがありました。
レッスン内容はダンスレッスンであり、先輩方が踊った「お願い!シンデレラ」という曲の振り付けを練習した。
幸子さんはこの曲をもう踊ったことがあるらしく軽いステップで踊っていました。
私含め他三名はまだ初心者なもので、覚束ない足取りで何とかダンスを踊っていました。
その中でも、前川さんは振り付けは覚えているのか次のステップ次のステップ、と私達に比べ綺麗につなげていました。
肇はもとより体力もなく陶芸一筋だったので、すぐにバテバテでした。
え?私ですか?...なぜか体力はあるので見様見真似で踊っております。
「藤原!もっと気合い入れて踊れ!前川ァ!先輩の真似じゃなく自分の形で踊れ!」
大きな声で私達に喝を入れてくれているこの方は、私達のレッスンのトレーナーさんです。
美城は設備が本当にそろっており、レッスン場も複数あります。
でもまさかエステルームからサウナまで完備してあるとは思いませんでした...
「こら綱嶌!集中をしろ!」
「はい」
いけません。考え事をしていたら注意を受けてしましました。
私自身ダンスは嫌いではないのでここはまじめに取り組みましょう。
一番身近な目標である幸子さんを超えれる様に今は頑張りましょうかね。
「はぁ...疲れました...」
「フ...フフーン!ボクは...はぁ、か、可愛いですから、ね!ぜん、ぜん...疲れてませんよ!」
肇が膝に手を当てながら肩で息をしていると、そこに幸子さんが来て息をぜぇぜぇしながら私達に話しかけてきました。
肇よりつらそうじゃないですか...でもそれも仕方ないですね。実際、幸子さんは私達の倍は動いてますし、何よりキレが違います。
これが年期でしょうか...!
「そ、それにしても、明日は余裕そうですね...」
「あ、ボクもそれは思いました!明日さんも初めての振り付けなのにみんなより動けてましたし...それに息切れもあまりしてないようですし」
「いえ、少し体力があるだけですよ」
「少しならボクのように息切れしてますよ明日さん!」
あっ、さっき息切れしていたこと認めるんですね。
疲れてませんよ!は後輩である私達への励ましだったのでしょうか?
ここでふと、さっきまでレッスンしていた前川さんが周りにいないことに気付きます。
何故か気になったのでぐるっと周りを見回していると、レッスン場の隅っこの鑑で振り付けの練習を未だにしていました。
なんて熱心なんでしょうか...
前川さんの熱意に惹かれた私は、静かに彼女の近くに寄っていった。
「...ふぅ...ふぅ、はっ」
激しいステップを踏みながらしっかりと踊っていました。
こんなに真面目にしている前川さんはきっと将来大物になるでしょう。
実際、幸子さんも影では学校の友達から借りたノートを写させてもらったり、年長組や先輩からどうすれば目立つことができるか聞きこんだりと、勉学にもアイドルにも熱心なのです。
私が思っていたよりこの業界は努力で何とかなるものかもしれません。
考え事がある程度まとまったので、私は熱心に踊っている前川さんに声を掛けました。
「あの、前川さん?」
「にゃっ!?」
...にゃ?え?
「にゃ?」
「い、いえ!何でもないです!ど、どうしたんですか?綱嶌さん?」
「あ、そんなに畏まらないでください...ただ、前川さんが熱心に踊っているのを見て何か夢でも持っているのかと思いまして...話を聞こうかと...」
「み、みくの夢?」
「はい」
何か引っかかってるのか分かりませんが前川さんの顔に暗雲が立ち込めてきます。
これは何かあったに違いないですね。
「...どうしても聞きたいですか?」
「はい...」
「実はみく...猫ちゃん系アイドルになりたいんです...」
「...はい?」
「うっ、笑わないでぇ...」
前川さんはそう言うと、不安な表情のまま下を向いてしまいました。
どうやら、最後の笑わないでぇ、の発言の通り過去にこの夢を語ったところ笑われてしまったのでしょう。
人の夢を笑うだなんてとんでもない輩ですね。
私はこんなアイドルになりたい!という明確な像ができていないので素直に前川さんの夢は凄いと思いました。
「凄いですね。前川さんは...」
「うぅ......え?」
「そんなに早くから自分の将来の図を完成させているなんて、凄いです。」
「...本当に?」
「はい。私なんてまだ全然未来が見えていないんですから...」
「だ、大丈夫!き、きっと見える!」
「ふ、ふふふ...」
「な、何がおかしいの!」
「い、いえ、前川さんが敬語じゃなくなったのが...とても似合っていたものでつい...」
「...は!」
どうやら前川さんの素はこんな感じのようですね。
周りに自分の夢がばれたら笑われてしまう...そんな小さな悩みを抱え続けていたせいで周りに馴染めず、ずっと一人になっていたのでしょう。
隣の部屋である私にでさえあいさつし隠れなかった彼女が、到底仲良しな相手ができているとは思いません。とても失礼ですが。
なのでここは...隣の嘉ですし初の友達にでもなりましょうかね。
「前川さん。」
「は、はい?」
「友達になって下さい」
「.........え?え?」
「ダメですか」
「違うんです!その、急すぎてどう答えればいいかというか、友達ってどうやってなるものなのかというか...」
あっ、これ私パターンじゃないですか?ですよね?
それに私に言い方もあれでした。友達になって下さいなんていうもんじゃありませんね。
「返事はいりません。ですが、今後はその前川さんの敬語をやめてください。どうせ、元はそんな口調じゃないはずです。」
「え”!?本当に言ってるんですか!?」
「はい。前川さんには敬語が似合いません。もっと気ままな猫のほうが前川さんらしいです。」
「...猫らしい...そう...そうにゃ!」
え?にゃ?え?
私の予想のエベレストを超えるくらいの返答が帰ってきました。
「...なら、対価で綱嶌さんも敬語をやめる!ってことで!」
「いえ、私は敬語がアイデンティティなので...それは」
「なら、みくのことをみくって呼んで!みくは明日ちゃんって呼ぶからさ!」
まるで尻尾を振ってじゃれてくる犬かの如くグイグイ来るようになりましたね。
まぁ、これが前川さんの本来の姿なのでしょう。
一人の少女の悩みを解消できたようで、私はとても満足です。
「よし、お前等!レッスン再開するぞ!」
「「「はい!」」」
後日、遊びに来たみくが魚を食べれないということを知り、より猫から遠ざかっていく前川さんに少し面白みを感じましたが、本人に言うとキレるのでこれは内緒です。