優と千尋の神送り   作:ジュースのストロー

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つづきは夢の中

 

 

 

 

 

 

布団は敷いた。着替えも準備した。風呂にも入った。さて、どうしようか……

 

「どうしたの? 千尋、もう遅いから寝よう?」

 

「あぁ、うん……。」

 

あれ? さっきまでの純情なハクは何処に行ったんだ?? 何で特に気にしてないの? 最初、廊下で寝るとか言ってよね?? もしかして、私がおかしいのか?!

モヤモヤと考えてながら取り敢えず布団に潜る。流石というか、湯婆婆の弟子クラスの階級の布団は、私の家の物よりもふわふわで暖かかった。

ハクが電気を消してくれて、お休みと声を掛けられたので私もお休みと返す。取り敢えず目を瞑ってはみたが、とても眠れる気がしない。ハクじゃないけど、廊下に布団を敷いて寝ようか……

 

「ねぇ千尋、もう寝たかい? ……流石に眠ってるか。」

 

眠ってる判断がお早い!! これは起きてると言った方が良いんだろうか。 時間が経てば経つ程に言い出し辛くなるのだから、言うなら今しかないよね?

 

「私は自分の名前を忘れてしまったんだ……だからもう元の場所へは帰れない。」

 

っあーー……完全に言うタイミングを逃した。これ、私が聞いてないと思ってるから言ってるんだよね? 耳を閉じておいた方が良いだろうか?

 

「だけど、ちゃんと覚えている事もある。昔あった楽しかった事や悲しかった事、その思い出は忘れてはいない。」

 

そう言えば、ハクはいつからここにいるんだろうか。私みたいに最近来た訳ではなさそうだが……

 

「……あの子には本当に悪い事をしてしまった。最初に千尋を見た時は本人じゃないかってびっくりしたんだ。だって見た目も魔法もそっくりだったから。」

 

あの子? 一体誰の事だ??

 

「名前も苗字も違うからただ似てるだけなんだろうけど、本当に驚いた。だってもう、会える筈は無かったから……私には会う資格すらないしね。」

 

私とそっくりで魔法を使える女の子。ハクはその子に何か良くない事をしてしまったらしい。その話を聞いて私は、ハクが本当はその子にもう1度会いたいのではないかって思った。だってその子の事を話すハクがあまりにも寂しそうだから……

 

「千尋とあの子は違うって分かってはいるのだけど、どうしても重ねて見てしまう。ごめんね……千尋は千尋だよね。今日、湯婆婆と釜爺とのやり取りを見てて気付いたよ。千尋はあの子とは違うって……あの子はとても優しかったから……」

 

おい、それだと私がまるで優しくないみたいではないか。まぁ、聖母の様だとは言わないけど、流石に酷くないか……

 

「千尋は強いね。本当に強い。私よりも全然年下なのに全く叶わないよ。……私も千尋みたいに、強く……なり…た………」

 

「えっ嘘、そこで寝るの?!」

 

結局、何だったんだろうか……何だかどっと疲れた気がする。そう言えば今日は波乱の1日だったから、随分と疲れが溜まっているみたいだ。自覚すると、睡魔が私にも襲って来た。

大きな欠伸をして、ついでに凝りをほぐす。ハクが結局の所、何を言いたかったのかはさっぱりだが、明日からも頑張ろうと思って瞳を閉じた。

 

 

 

 

 


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