今回は有名な妖怪です。ちょいとキャラを濃い目にしました。
それではご覧ください。
「あ~、大丈夫かな~・・・」
「大丈夫ですよ!あんなに頑張ったんですから!」
「そうにゃ、私たちが一番傍で見てきたでしょ!」
「でもなぁ・・・」
「あーもう!男のくせにうじうじするな!」
落ち着かない俺に容赦なく一斉に叱責をする妖怪一同。
けど、仕方がないじゃないか。今日は受験だったんだから。しかも、偏差値が高くて、有名な進学校なんだから。ちなみに雪たちはずっと校門で俺を見守っていたらしい。そのせいか不思議とペンを走らせている時は心強く感じた。
まぁ、それとこれとは話が別で現在不安なわけだけど・・・。
肌を攻撃する寒さに、手をこすらせながら帰路に就く。その後ろをついてくる妖怪たち。俺の背後では百鬼夜行が完成してしまっている。
信号を前にして足を止める。別に赤だからというわけじゃない。その信号に紙が引っかかっているのだ。
だからといって歩みを止めるなんてことは、普通ない。例えば、たまに道路に飛んでいるビニール袋のようなものだ。皆は見かけたことはあっても無視はしていただろう?
だが、俺は信号に引っかかっている紙を見逃せなかった。後ろの妖怪も同様。それも当然のことだ。
その紙に、手の形をしたものがくっついているのだから。手の形を切り取って貼り付けたように見える。
あー、もうわかってるから何も言うな。みなまで言うな。分かってるからその目で見るのはやめてくれ。
「雪」
「はい」
唯一宙に浮ける雪に、引っかかっている異様な紙を取ってきてもらい、俺がその紙を受け取った。
デ、デカい・・・。書初め用の半紙の2倍はある。丸まっているため、広げると、上から段々と小さくなっていき、超長い三角形ができた。・・・・・あー、こいつがあの・・・。
「はて?私は何を・・・」
「うお!」
突然紙から目が出現し、俺の目の前で浮き始めた。目は瞬きしており、両手も動かしている。俺もこいつは昔から知っている。
一反木綿だ。
「おや?何故こんなにも妖怪の集団が」
「あなた、信号に引っかかってたんですよ」
「その雪ってやつが助けてやったんだ」
「そうでしたか!それはそれは大変ご迷惑を。どうもありがとうございました」
やけに礼儀正しい一反木綿は雪に頭を下げ、こちら側を見渡した。この一反木綿、一反木綿のくせに目玉おやじの声にそっくりだぞ。
「凄いですね、こんなに妖怪が集まってるなんて、数百年前の百鬼夜行以来ですよ」
『す、数百年前!?』
一反木綿から発された言葉に、俺達は驚きを隠せず、大声をあげてしまった。数百年前の百鬼夜行。つまりこいつは、もう百歳を超えている。
「お前、一反木綿でいいんだな?」
「如何にも。私は一反木綿ですよ。・・・それにしても、不思議ですね。何故私が見えるのです?」
「自分でも分かんねえよ。取り敢えず、俺には妖怪が見える。とでも思っとけ」
「成程。分かりました。」
物わかりがいいのか、順応性が高いのか、一反木綿はポンッと手を内ながら理解し、後ろの妖怪たちを見回した。
「あのー、よろしければでいいんですが、私も混ぜてもらえませんかね?何しろ、気付いたらここで気絶してて、記憶が途切れ途切れで・・・」
「大丈夫だ。今更増えたって問題ないし」
「ありがとうございます!いやはや、貴方の寛大な心に私、感動です!お名前を教えてくれますか?」
「八幡だ」
「八幡さんですね。では、これからよろしくお願いします。私の事は気軽にモンちゃんとでも呼んでくださいな」
口調は面白いが、礼儀が正しいんだな。さすが数百年この世に存在してるだけの事はある。
それと初めてだな。女子以外の妖怪とは。何というか、今までの違和感がすべて払拭されたよ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
最終回への道筋が見えてきたーー!他のシリーズも順調に書いてます。多分!
また次回。