早めの更新、このシリーズは気まぐれに投稿していきます。
ところで、トイレの花子さんって妖怪?まぁいいや。
それではご覧ください。
妖怪
それは、日本で伝承される民間信仰において、人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、あるいはそれらを起こす、不可思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在のこと。
妖怪は日本古来のアニミズムや八百万の神の思想に深く根ざしており、その思想が森羅万象に神の存在を見出す一方で、否定的に把握された存在や現象は妖怪になりうるという表裏一体の関係がなされてきた。
「やったー!上がりだよ!」
「あら?負けてしまいました・・・」
そんな恐ろしくも浪漫があふれる存在である妖怪、座敷童子のシキ、雪女の雪は、笑顔で平和にトランプのババ抜きをしている。
何で俺の家にいるのかはさておき、今は家に誰もいないからいいが、これ見つかったらとんでもないことになる。別の人から見ると、トランプがひとりでにババ抜きをしている光景が映るのだから。なんだったら俺が超能力者だって疑われる。
しかし、この先ないであろう不思議体験に何をしていいのか分からず、受け入れている俺だが、事実、俺を助けてくれたのだから悪い奴らじゃないんだ。
でも一つだけ困ったことにもなる。人間と妖怪の区別がつかない。容姿でわかる妖怪もいるが、雪やシキのような人間のような格好をした妖怪だと、一般人と勘違いして俺は空間に話しかける、わけのわからない人になる。
取り敢えず、トイレに行こう。
トイレのドアを開けたら、客人がいた。この家に家族はいない。という事は・・・
「またかよ!」
「あれ?見えてるの?」
「ああ、思いっきりな」
便座の上に座っていたのは、俺と同じ身長や年齢に見える女の子だ。
「トイレの花子さんか?」
「正解♪」
いやいや、花子さんそんな元気じゃないだろ・・・。人間をトイレに引きずり込むと言われて恐れられてる存在なんだぞ。
「花子さんって、学校にいるんじゃねぇのか?」
「気付いたらここにいたんだ~」
えー、何その迷惑極まりない話。
しかし、有名な都市伝説のトイレの花子さんまで見れるとは、光栄なのかもしれない。けど、想像していた人物よりもずっと違う。おかっぱじゃなくて艶やかな黒髪のセミロングだ。目がくりくりとして綺麗。はっきり言うと一番人間味があふれてて、めちゃくちゃ可愛い。服装は伝承通り赤色のスカート。
「それにしても、急に見えるようになったんだ。何で?」
「それは俺が一番知りたいことだな。・・・ん?お前いつからここにいたんだ?」
「一週間くらい前かな」
・・・・という事は、人が用を足す光景を見ていたという事になってしまうんじゃないのか?
その事実が発覚した途端、つい反射的に股間を抑えてしまった。そして、それを見た花子さんは顔を赤くしながら、捲し立てる。
「み、見てないから!ちゃんと目瞑ってたわよ!馬鹿じゃないの!?」
「ほ、本当かよ・・・」
「何で疑うのよ!」
「だって、ずっとトイレにいたって言われたらそりゃあ、な?」
「とにかく、見てないんだからね!」
急にツンデレみたいになったぞ。そして顔を赤くしながら、チラチラと下半身を見るな。俺まで恥ずかしくなる。
「ん?でも俺が見えるようになったのは2日前だぞ。どこに行ってたんだ?」
「いきなりここに来たんだもの。そりゃ気になるでしょ。家の中歩き回ってた」
凄い都合よく鉢合わせしなかったんだな。それはそれで助かった。
しかし、言い伝えられている花子さんとは180度違うな。なんか急に気が抜けたわ。全然怖くないし、トイレに引きずり込むような奴には到底見えない。誰だよ、都市伝説にして化け物にした奴・・・。めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか花子さん。
「あ、ありがとう・・・。可愛いって言ってくれて・・・」
「え?声出てた?」
「うん。私、ずっと前から恐怖の存在って言われてて、可愛いとは無縁だったから、嬉しい・・・」
花子さんは頬を掻きながら、はにかんだ表情で笑った。想像だけで決めつけるのは良くないと、思い知った。でも、何で都市伝説になるほど恐れられているのか分からない。
そのことを花子さんに聞いたら、ちょっと暗い顔になりながらも、話してくれた。
どうやら、昔、独りぼっちが嫌で寂しい思いをしていた時、とある女子が花子さんがいたトイレに入ってきたらしい。その場所が言い伝えられている三階のトイレの一番奥。花子さんにその気は無かったらしいが、腕を掴んでしまったらしい。そして逃げられたと。
まさかトイレの花子さんの真相がわかる日が来るとは思わなかった。
「一人は、今でも嫌か?」
「・・・うん。だから、あんたが私に反応してくれた時、素っ気ない口調だったけど、凄い嬉しかったんだ」
「そうか・・・。お前、トイレから出れるのか?」
「え?・・ちょっと体力使うけど、出られないことは無いよ」
どんな構造してんだ・・・・。
「上で他の妖怪が遊んでんだ。お前も行こうぜ」
「いいの?」
「別に問題ねぇよ。じゃあここにいるか?」
「ううん!行く!行きたい!」
「じゃ、行くか。えーっと・・・」
「花って呼んで」
「分かった。じゃあ行くぞ、花」
「おーい、シキ、雪、新しい妖怪だぞ」
「は、花子です。よ、よろしく・・・」
「あら?随分と可愛らしい妖怪ですね。ささ、一緒に遊びましょう」
「わーい!お姉ちゃん!トランプしよう!」
「うん♪」
平和だなぁ。新たに妖怪『トイレの花子さん』が加わった。今思えば花子さんって妖怪なのか?と思うところもあるが、考えてもしょうがねぇからいいや。
しかし、すっかり妖怪に慣れてしまったな。慣れって怖いな・・・。けど、不思議と心地がいい。人間不信になった俺の前に突如現れた、俺にしか見えない妖怪。気付いたら、俺の支えになっていた。人外は捨てたもんじゃない。
数時間後、花は汗だくになっていた。本当に体力を使うらしい。ちなみにトイレで回復するんだって。なんじゃそりゃ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
先に言っておくと、妖怪による闇落ちや百鬼夜行などはありません。
また次回。