このシリーズは多分ラブコメは無いんじゃないかな?そこんところは作者自身よくわかってない状態です。
それではご覧ください。
朝、目を覚まし、カーテンの隙間から射してくる日差しを手で抑えながら、体を起こす。周りを見渡したら、昨日と変わりない部屋。
・・・・そうだ。夢に違いない。座敷童子なんて
「おはよう!」
・・・・夢じゃなかったか。夢だけど夢じゃなかったてきな?
「お、おはよう」
とにかく、相手が人間であろうと妖怪であろうと、挨拶はちゃんと返すべき。
顔を洗いに洗面所に行くと、目の前の鏡を見て驚いた。
昨日とは違い、虚ろな目をしている。
『絶望と失望』その両方がこの両目にはっきりと宿っていることが分かる。
小町の朝食を食べるべく、リビングへ向かう。一方座敷童子は俺の肩を掴んでぶら下がっている。全然重みを感じないため、そこまで苦ではない。
飯を食べる時は膝の上に乗っかってきた。そして茶碗に手を伸ばそうとしているが、どうせ触れないだろうと思って、油断した矢先、普通に触れていたので、急いで手を引っ込ませた。
学校へ行く途中、何やらきょろきょろと辺りを見回すようにうろついている女性がいた。全身ダボダボの白い服を纏っていて不思議な人だ。という感想を心の中で言いながら、その人に話しかけた。
「迷ってんすか?」
「え?・・・・はい、実はここに行きたくて」
そう言って女性が俺の方へ顔を向けると、俺は目を見開いて驚いた。とんでもない美人だ。黒髪ロングで、白くきめ細かな肌で端正な顔立ちをしている。
「ここでしたら、この道をまっすぐ行って、突き当りを右に行くとありますよ」
「どうもありがとう・・・」
普通に会話ができてしまった。いつもならどぎまぎして気持ち悪がられるんだが。・・・・昨日の学校での出来事でかなり俺のメンタルは強化されたらしい。
しかし、あの人、一体どこへ行くつもりなんだ?あの先は山しかないし、行く人なんてそうそういない。
なんだかんだで学校に着いた。・・・はぁ、やはり俺を的に嘲笑という名の矢を放っている。まぁ、半分は自業自得だと思っているし、嫌な気分にはなるが気にしないのが一番だ。とにかく無視。
教室に入り、自分の席に座る。すると、奥の方から男の3人グループがナルガヤという蔑称を俺に向かって叫び、教室を爆笑の嵐にした。
何故だ。何故ここまでされなくてはいけない。俺は、女子に告白をしただけだ。誰もが一度することを俺はしただけなのに。なんだよ。俺なんか告白する権利すらないとでも言いたのかお前らは。
さすがの俺も堪忍袋の緒が切れそうになり、立ち上がろうとした瞬間
「はちまんにいじわるするなー!!」
後をつけてきた、俺にしか見えてない座敷童子が、教壇に立って置いてあった鉛筆、ボールペン、その他の文房具などをクラスの奴らに一斉に投げつけた。
それにはクラスの奴らも大騒ぎ。物が浮いて自分たちを攻撃しているのだから、パニックになって当然だ。
そして、誰もいなくなった。
「ふふん。どんなもんだい!」
お返しに満足したのか誇らしげに胸を張って喜ぶ座敷童子。傍から見たら、俺が教室で暴走したと見て取られそうだったので、座敷童子を抱えながら、教室を出た。
それにしても、いちいち座敷童子言うの面倒だな。名前あるのか聞いてみるか。なかったらつけてやろう。恩返しだ。
・・・・・・・・・
学校七不思議に加えられてもいいくらいな怪奇現象が起きてから何時間か経った昼休み。俺は屋上に来ていた。
「なぁ、お前って名前あるのか?」
隣で足をパタパタと動かしながら座っている座敷童子に質問を投げた。
「え?ないよ」
ない・・・か。自分が分からない境遇は一体どういう気持ちなんだろうな。きっと寂しいと感じているのか。分からないけど、名前を決めよう。座敷童子だから・・・・・
「お前の名前は『シキ』だ」
「え?名前付けてくれるの!?」
「ああ、嫌か?」
「ううん♪ありがとうはちまん。今日から私はシキだー!」
両手を上げながら、年相応の喜び方をしている。あくまで見た目年齢だけど。見た目幼女でも、座敷童子は一体何歳なんだ?これで100歳とか言われたら、絶対に信じられない。
教室に戻り、席に座って本を読もうとしたら、俺の前に男3人が現れた。
「お前、屋上で誰と話してたんだ~?」
「お前以外誰もいなかったけど、どうしたんだ~?」
「とうとう頭までおかしくなったんじゃないか?」
はぁ、何だお前ら。俺の事大好きか?何で屋上まで来てんだよ・・・。そんで周りの奴らも便乗して笑うなよ。分かってるけどな。ここで笑わなかったら、今度は自分が敵になるって怯えているのだから。多分、この教室にいる奴らは9割本心だろうけど。
そして、教室の中の笑いは収まったと同時に、何故か奴らは顔色を変えて、冬のように、自分を抱き始めた。
「な、何だ急に寒くなったぞ・・・」
「お、おい、何でだよ」
「うお!見ろアレ!黒板が凍り始めたぞ!」
「ちょっと!何コレ!教室中氷漬けよ!」
またまた教室がパニック。今日で2度目だ。謎の怪奇現象2回目のせいで、今度は学校中が大騒ぎ。
しかし、不思議なことに、教室は氷漬けになったが、俺だけ何も感じていない。つまり、寒さを感じないのだ。俺だけ不思議な力で守られているのか?
「大丈夫?」
上から声が聞こえたので、そこに目を向けると、宙に浮いた全身白い服を纏った女性が、心配そうな目で俺を見ていた。
・・・・・・また妖怪?・・っつーかこいつ、朝道を教えてやった女性じゃん!マジで、この人も妖怪だったの!ということは、俺は何もない空間に向かって道案内をしていた男と見られてしまったことになる。
「あの、ありがとうございます・・・」
「いいのよ。私も、不愉快だったから」
そう言って頭を撫でてきた。姉御肌な妖怪だ。見た感じ、氷漬けにする白い服を着た女性、そして山に行ったから、雪女といったところか。
「最初は、あなたが話しかけてきたから、驚いたわ。あなたにも私が見えてるなんて」
「まぁ、見えるようになったのは昨日なんすけどね」
「そうなの?そろそろここを出た方がいいんじゃない?怪しまれるわよ?」
「そうします。改めてありがとうございました」
「どういたしまして。それと、敬語じゃなくていいわよ。私の事も、雪って呼んで」
「・・・分かった」
今日は妖怪に助けられた一日だったな・・・。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
多分11月中には完結します。
また次回。