妖怪たちとの非日常生活   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

明けましておめでとうーー!今年もわたくしアイゼロの作品をよろしくお願いします。

今話にて、妖怪シリーズ完結となります。

それではご覧ください。


入部

妖怪生活が1年半経過し、今日から高校2年生。昇る階段が一階増え、年下が入り、クラスメイトも変わる。俺には何一つ関係ないな。

 

進級して出された『高校生活を振り返って』の課題を提出し、颯爽と帰宅。

 

その後日。

 

 

『2年F組の比企谷八幡君。今すぐ職員室に来なさい』

 

俺にとっちゃ最悪でしかない放送呼びかけ。この声はおそらく俺のクラスの担任になった平塚先生だろう。この人は何かと俺に視線を送ってきて、怪しいとは思っていた。

 

 

職員室に入ると、平塚先生が凄い険悪な表情で睨んできた。やめろよ思わずひぃ!って情けない声出すとこだったじゃないか。

 

「なんだこの作文は?」

 

そう言って俺に見せてきたのは、俺が課題で描いた高校生活を振り返っての作文だ。なんだ?って普通の作文なんだがな。

 

「何か問題でも?」

「大ありだ。楽しい高校生活を送れましたしか書かれていないぞ。それに、君は1年間学校では楽しそうに見えなかったが?」

 

やだ何この人ずっと俺の事見てたの?怖い。もしかして妖怪とのやり取りも聞かれてたりしてるのか?だとしたら絶対問題児扱いされてる。

 

「大丈夫だよ八幡。モンちゃんがしっかり見回りしてくれたから、聞かれてることは無いよ」

「そうか、サンキュー花」

「何を1人でブツブツと喋っている?」

「いえ、何でも」

 

平塚先生はため息をつきながら、しばしこちらを見る。数秒そのままだったから、あれ?見えてんの?って疑った。

 

「君は色々噂されてるようだな。何でも、君の陰口を言ったら無差別怪奇現象が起きると」

 

あー、おそらく同じ中学の奴が流したんだろうな。そのおかげで人と関わることが無くなったから、俺にとってはありがたい。

 

「それがどうかしたんです?」

「どうかって…。君はそれでいいのか?このまま友達もいないまま卒業を迎えるのか?」

「はい」

 

俺がそう即答すると、額に手を当てて、ため息をつかれた。そもそもこの教師は何故そんな噂される俺を呼び出して、お節介なことをしているのか分からない。少なくとも普通の教師とは一味違うタイプなのかな?

 

すると、平塚先生はおもむろに立ち上がった。

 

「ついてきたまえ。もしかしたら君の助けになるかもしれない」

「いや、いらな……。はい、行きますよ」

 

きっぱり拒否しようとしたら、鬼のような形相で睨まれた。そういう顔を生徒にするのは感心しません。

 

「八幡、やっぱり友達は欲しいですか?」

 

平塚先生の後ろを歩いていると、白音が袖を引っ張って聞いてきた。そんな申し訳なさそうな顔しないでくれ。何で周りの黒歌たちも暗い雰囲気なんだよ。

 

「前にも言ったろ。お前らがいればそれでいい」

「着いたぞ。雪ノ下、入るぞ」

 

ガララ!と豪快に特別棟の空き教室を開けた先生。雪ノ下と言っていたな。確か学年1位で入学式には新入生代表で挨拶していた気がする。何で俺がそんな奴のいる場所に……。

 

「平塚先生、ノックをちゃんとして……。ッ!」

 

読んでいた本を閉じ、礼儀を知らない平塚先生を睨みながら、注意しようとした雪ノ下。だが、その言葉は途中で遮られ、驚いた顔で俺を見ている。これは、もしかして俺のあまりの目の濁りっぷりに驚愕せざるを得なかったのかな?

 

「先生、そこの男と2人にさせてください!」

「あ、ああ、分かった」

 

状況が呑み込めない先生は言われた通り、その場から去った。俺も何が何だか理解できないため、彼女の言う通りにするしかなかった。

 

今、俺は雪ノ下と対峙している。しかし、一向に沈黙が続くため、俺から口を開いた。

 

「なんだ?俺と2人になりたいなんて、お前もの好きなんだな」

「…ええ、そうね。あなたの後ろに大勢いるんだもの。興味が湧くわ」

 

その言葉が耳に届いた瞬間、目を見開き、戦慄した。それは、後ろで見守っていた妖怪も同様に、驚きが隠せていなかった。

 

自分以外にも妖怪が見える。俺以外にも自分が見える。その事実に、ただただ呆然とした。

 

「座ったら?」

「ああ…」

 

用意されている椅子に座り、雪ノ下と向かい合わせになった。

 

「私は雪ノ下雪乃よ」

「比企谷八幡だ。お前、妖怪見えるんだな」

「ええ。私以外にも見える人がいるなんて、驚いたわ」

「そりゃこっちの台詞だ」

「比企谷君は、過去に何かあったのかしら?」

「まぁな。っつーことは、お前もか」

「そうよ。……ところで、何とかしてくれないかしら?」

 

雪ノ下は眉を下げて、少し身を縮こませた。原因は、俺の連れている妖怪たちだ。もう1人の視認者を目の前にして落ち着いてはいられないらしく、皆一斉に雪ノ下の観察をしたり、触れたりしている。

 

「凄いですね。目は濁ってないようです」

「過去に何かあったとは思えないなー」

「いや、わずかに心の中の闇が見えるにゃ」

「雪ちゃんと声似てるねー!」

「おーいお前ら。一旦離れろ。雪ノ下困ってる」

 

俺がそう言うと、そそくさと俺の後ろに戻った。

 

「随分と懐いているのね。それに、ほとんど美少女なんて、ね…」

「おい、何故引いた。それに関しては本当に分かんねぇからな」

「冗談よ。ただ、多すぎないかしら?」

「やっぱそう思うか。そういや、お前は誰も連れてないのか?」

「いいえ。一匹いるわ」

 

雪ノ下はそう答えて、懐から鈴を取り出し、それを鳴らした。すると、窓から一匹の妖怪が現れた。狐の容姿をした妖怪、妖狐だ。

 

「妖狐は様々な種類があるけど、これは白狐よ。人々に幸せを運ぶという言い伝えがあるわ」

「でけぇな…」

 

俺の身長を余裕で越している……。2メートルはあるぞ。

 

「それはそうと、比企谷君は何故ここに?」

「さあな。何も聞かされてねぇし。逆に雪ノ下は何でこんなとこに?」

「部活をしているのよ。私1人で」

「部活?」

「名前は奉仕部。生徒の悩みを聞いて、それに答えてあげる。それがこの部の理念よ」

「随分面倒くさいことしてんだな」

「あら?そうでもないわよ。ほとんど人なんて来ないから」

「いや、それでいいのかよ……。っつーか、あの先生、もしかして俺をこの部に入れようとしたのか?」

「そうかもしれないわね」

 

俺の助けになるって言うのはここで奉仕活動して、噂を払拭させようって根端だったのか。さらに俺のぼっちを勝手に悩みと解釈してここに連れてきた。お節介すぎる……。

 

「あの、ちょっと……」

「ん?…あーあ」

 

困惑している雪ノ下が見ている方向に俺も向けると、妖狐と雪たちがめちゃくちゃ楽しそうに遊んでいた。コロちゃんとシキが妖狐に乗ったりしている。妖怪の戯れという絵ができて、名画になりそうだ。

 

「比企谷君の妖怪って、とても積極的なのね。あなたとは大違い」

「一言余計だ。で、あいつらは俺のじゃねぇよ」

「ふふ、そうね。それでどうするの?入部するのかしら?」

 

雪ノ下の笑みにドキっとされながら、俺は目の前の妖怪たちを見る。答えは決まっている。

 

「…入るか」

「そう、歓迎するわ。ようこそ奉仕部へ。よろしくね、比企谷君」

「…おう」

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

この度、このような作品を読んでくださり、ありがとうございます。楽しみが減るという感想に、感激しました。

これにて、妖怪たちとの非日常生活、完結です。ありがとうございました。

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