「くぁあ………!」
「う……くっ、あ………!」
酸で装甲の一部が溶ける。武装を盾にしたメンバーも多くその殆どは使い物にならなくなっていた。
「みなさん!大丈夫ですか!」
テルマのワイバーンが地上に降り竜声を使って全員に声をかける。ほぼ全員負傷していたが、死者は無かった。
「………くッ!
「リーズシャルテ様」
全機に指示を出すリーシャにテルマが近づく。
「
もろに酸を浴びたのはドレイクとワイアームのみ。ワイバーンは衝撃で地上に落とされたがそれ以外の被害は無かった。
その報告を聞きリーシャは、
「まだ十分に交戦可能だ!狼狽えるな!」
と仲間たちに声をかけ、鼓舞する。
だが
「ほう、随分と王女ヅラが板についてきたじゃないか、リーズシャルテよ」
「………!?」
ふいに聞こえたしわがれた男の声。竜声を使ったその声は
「だがな、お前はそんな器ではない。そのような誇りなどないのだよ。」
「貴様、何を言ってーッ………!?」
不遜な声の直後、その
「部隊長!」
「姫様!」
だが
「させない。」
側にいたテルマがリーシャの前に出て
「どういうつもりでしょうか?警備部隊の隊長が姫に向かって牙をむくというのは?」
静かだが怒気を含んだテルマの声。
しかし、
「それは間違いだ。王都の犬よ。」
淡々とリーシャに対して詫びることもなく、
「私は帝都から来たのだ。アーカディア帝国近衛騎士団長ベルベット・バルトが、私の名前だ。」
「ッ………!?」
その一言に
帝国側の
だが、
「新王国を裏切ったということですか?」
「裏切ったなどと人聞きの悪い。王道に立ち返ったのだよ。力を得てな。」
勝ち誇ったように話すベルベット。
「不意打ち一発で勝てると思ったか?傲慢は身を滅ぼすぞベルベット。」
リーシャが悠然と返す。確かにベルベットが連れてきた
それでもベルベットは余裕の表情で、
「勝てますとも。こうして貴女を誘きだしたのも勝算があっての事ですから。」
そう言うとベルベットは小さな黄金の笛を手に取った。
「さあ、孵れ、卵よ」
そして酷薄な笑みを浮かべて笛を口に当てる。聞いたことの無い不協和音が辺りに鳴り響いた。
直後
破裂してドロドロになっていた
「あれは………!?」
出てきたのは、ガーゴイル。
しかも一匹では無く群れで、
「ちょ、ちょっと待ってよ………」
「あんな数………!私たち2体以上の
「どうしよう………聞いてないよ、こんなの」
「そもそも、軍の警備隊まで敵だなんて」
絶望の声が竜声で重なりあう。無理もない。ガーゴイル30体。一人前の
「
だからテルマの指示は完全に予想外だった。
「何を言ってるんだテルマ!」
シャリスが竜声で声をあらげる。
「そーだよ危険だよ!」
「Yes.死ぬつもりですか。テルマさん。」
ティルファー、それにノクトがシャリスに同意する。
だが
「彼の裏切りは軍の責任です。なら責任は軍人である僕が取ります。」
テルマもまた強い意志を示した。それだけに先ほど声をあらげた
「リーズシャルテ様、後の指示を………」
「ー目覚めろ開闢の祖。一個にて軍を為す神々の王竜よ。〈ティアマト〉!」
だが撤退させようとしたリーシャが〈キメラティック・ワイバーン〉を解除し〈ティアマト〉を纏った。
「リーズシャルテ様、何をなさってるのですか?」
「残念だけど撤退は無理そうだ。敵は翼を持っている
「そのための時間は僕が稼ぎますから、だからリーズシャルテ様………」
「それは私が王女だからか?」
唐突に
テルマの言葉を遮ってリーシャは尋ねた。
「生き延びることも王女の責任、ということか?」
「…………」
はっきり言ってしまえばそう言うことだ。やっと平和を手にした新王国のためにここでリーシャが死んでしまうのは良くない。それこそ反乱軍に勢いを与え、新王国の人々に恐怖と悲しみを与えてしまう。もっと言えば最悪リーシャだけが生き延びればいいとも思っている。だがそれを口には出せない。
「やっぱり私には王女なんて向いてないな。」
そう一言寂しげに呟いて、
「面倒なんだよ。苦手なんだ。誰かを犠牲にして生き残って、誰かの死を英雄として称えて、残った市民に演説のひとつでもして、拍手を浴びるなんてさ。」
「………」
「だから私は戦うよ。きっとそれが私に出来る姫としての使命なんだ。」
言い切ると同時にリーシャの〈ティアマト〉が飛翔する。それに合わせてテルマのワイバーンも飛翔する。
「どうした?まだ私を止めるか?」
「止めませんよ。」
どこか呆れたようにテルマは呟く。別に悲観したわけではない。
「こうなった以上貴女に従います。部隊長殿。」
そう言ってテルマは武装を構える。それを聞いてリーシャはふっ、と笑みを浮かべて
「
「リーズシャルテ様………」
その口調に覚悟を感じとった
「ノクト、お前は
「Yes.了解しました」
返事の直後、ノクトのドレイクが
同時に
「さぁ、遊んでやるぞ反逆者ども。」
「二度目の反逆はの罪は重い。死ぬまで牢屋の中ですよ。」
リーシャは《
テルマは可視出来るほどのエネルギーを
「口の減らない奴らだ」
ベルベットはそう吐き捨て再び笛を口に当てた、