戦争の兵器といえば何を思い浮かべるだろうか?
銃? 大砲? 戦車?
それらも立派な兵器だろう。しかしそれらの兵器は十年程前に鉄ぐず同然となってしまった。遺跡から発掘された古代兵器・機竜。それは世界の7つの遺跡から発掘された伝説の竜を模した機械装甲である。それらの登場により国の軍事力は
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赤々と燃えたぎる炎。アーカディア帝国の城が燃えていた。その城を背にしながら一機の機竜が走ってゆく。乗っているのはまだ12歳ほどの少年だ。
「はぁ、はぁ」
息を切らしながらも機竜を操作し懸命に城から離れる。だが
「………ッ!」
小さな声とともに機竜が解除され地面に投げたされる。身体中傷だらけで呼吸も荒い。これ以上動ける様子ではない。しかしそれでも這ってでも少年は城から離れもうとする。まだ城の上空では一機の機竜に他の機竜が次々に破壊されてゆくのが音で分かる。いつ全てが倒され自分が狙われるか分からない。
(逃げなきゃ)
そう思うがもう身体は動かない。這うこともできず呼吸をするのがやっとの状態だ。そんな少年の前に5機の装甲機竜が降りてきた。装甲の色からして旧帝国の機体では無いことは分かる。
「君、大丈夫か………」
と一人が声をかけてくるが少年の腰に指してある機攻殻剣を目にすると途端に戦闘態勢に入る。それを見た他の機竜使いも次々に戦闘態勢を取る。ある者はブレードを、ある者はキャノンを向けてくる。
(ここまでかな)
と少年は思う。せめて痛みなく殺してほしいと思うが既に傷だらけで身体中痛い。少年は目を閉じて来るべき衝撃に備える。
(?)
しかしいつまで経っても衝撃が来ないので不思議に思って少年が目を開けると、機竜使いの一人が装甲を解除し、こちらに歩いて来る。
「君、大丈夫かい?」
そう優しく問われた。さっきと変わらない言葉なのに人が変わるだけでこうも違うのかと一瞬感動を覚える。がそこで気が抜けてしまったのか少年の意識はだんだんと失われてゆく。
(なにか……)
そこで少年の意識はなくなった。
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意識を失った少年を男が抱き抱える。
「隊長!本当にその少年を保護するのですか!?」
隊員であろう男が隊長に抗議する。
「ああ、この子はまだ子供だ、殺すことはないだろ。」
隊長と呼ばれている男は隊員の怒鳴り声にも全く動じず当然のように答える。しかし、
「いくら子どもとはいえ帝国の人間ですよ!もし復讐でもされたら…」
隊員の意見も最もだろう。それでも隊長は断固として譲らなかった。隊員たちもそんな隊長折れその少年は保護されることになった。
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「う………」
小さなうめき声とともに少年は目を覚ます。覚醒までに1分ほど掛かり自分の状況を確認する。
(どこだここは?)
少年が寝ていたのはセミダブル位のベット。結構高そうなベットだった。身体には包帯が巻かれており身体中が痛む。何とか起き上がり身の回りの状態を確認する。
(ワイバーンの機攻殻剣はある。)
ベットの横には自分の使っていた機攻殻剣が置いてある。痛む身体を何とか動かしてそれを手に取ったと同時に部屋の扉が開かれた。
「お、起きたのかい。」
入って来たのは女の子だった。青い髪に凛とした佇まい、歳は自分よりも1つか2つ上位だろう。それなのに随分と大人びて見える。
「………っ!」
とっさに機攻殻剣で斬りかかろうとするが、
「………ぐぁ」
身体中に痛みが走り斬りかかるどころか剣を落としてしまい、少年もベットから落ちてしまった。
「こらこら、怪我人なんだから大人しくしていないと駄目だろう。」
やれやれとため息を吐きながらベットから落ちた少年に手を貸してベットに寝かせようとする。が
「やめろ!」
少年はその手を振り払おうとする。
しかし、
「………ぐぅぅ!」
振り払おうとするとさらに痛みが走り完全にうつ伏せてしまう。
「全く、しょうがないな。」
そう言うと少女は少年の身体に手を回し持ち上げベットに運んだ。
「僕をどうすつもりだ?」
少年は少女に問う。恐らく自分は帝国の人間だから罪人扱いされるはずだ。今投獄されてないのを見るにこの怪我が治るまでが猶予なのかも知れない。
「安心したまえ別に君に危害を加えるようなことはしないよ。」
少女は優しく言った。
「………僕は帝国の人間だぞ。」
「でもただの兵士だろう?」
「お前らの敵だぞ。」
「君が私に何かしたわけではないだろう。」
少年の呟きに少女は悠々と返す。そんな問答をしていると、
「おお、目を覚ましたのかい」
いかにも軍人らしい男が入ってきた。少年は警戒するがその顔にどこか見覚えがあった。
そうだ、確か気を失う前に見た顔だと少年は思う。
「そう警戒しないでくれ、と言いたいところだが、そんなすぐには無理か。」
そう男は言う。
「私の名はバルトシフト。こっちは娘のシャリスだ。君の名前は?」
「………テルマ」
「そうか。テルマと言うのか。」
バルトシフトはウンウンと頷き、
「テルマ君、もし良かったら私に君を引き取らせてくれないか?」
「…………………は?」
はぁ?なんだって?引き取る?この人が?僕を?
頭が混乱する。そんな混乱が顔に出ていたのだろう
「いや、驚かせてすまない。ただ、今君の御両親の事を探しているのだが、なかなか見つからなくてね。もしこのまま見つからなかったらと言う意味でだよ。」
確かにこのまま両親が見つからなければどこかに引き取られるのかも知れない。それなら少しでも知っている人に引き取られる方がいいだろう。
それに
「両親はとっくに死んでる。家族はもういない。」
家族はとっくに死んでしまっていた。
だから
「お願いします…」
こうして少年はテルマ・バルトシフトとなった。