ルーキートレーナーに幸あれ   作:bakabakka

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time、place、opportunity…時と場所と場合を考えましょう

ようはうちはノリを持ち出していい場所とダメな場所があるってことで、行ってみましょう!

あ、特に今回総選挙ネタは関係ないです。思いつかなかったから。


ルキ「TPO、大事です」

 

 

Side.ありす

 

 

校庭に今日のために石灰で描かれた真新しいトラック、建てられたテント、張り巡らされる意味が分からない万国旗。そして集まった父兄の皆さん…でも、その中に私の両親はいません。今日も今日とて仕事、いつもと変わりません。

 

 

 

 

でも、今日は見に来てほしかった…かもしれません。

 

 

各色組みから学年ごとに男女1人ずつ選ばれて行われる色別対抗リレー。そのアンカーを僭越ながら任されたのですから。

 

去年までは考えられなかったこの大役の抜擢は、明らかに文香さんの周りを付きまとうあの変態さんのレッスンのおかげですが…何でしょう、高笑いしている姿が脳裏によぎってイラつきます。やはりあの人は私の天敵です!文香さんは渡しません!

 

 

なんてことを考えているうちに終わる校長先生のありがたいお言葉。

そしてそこから流れるようにラジオ体操に移行するのですが、私はそこでわが目を疑います。え?いや…え?なんでですか…目の前のことを一切理解ができません。

 

いえ、わかるんです。わかってはいるんです。ですが認めたくないのです。

 

 

 

「HAHAHA‼元気か少年少女!ラジオ体操第一!よぉうい‼」

 

 

 

そう全体に号令を出す珍しくジャージという文明の利器を身に纏ったジョニーさんと顔を真っ赤にし、すごく申し訳なさそうにしている慶さんがさっきまで校長先生が立っていたお立ち台の上に存在しました…!

 

何を言っているかわからないとは思いますが(ry

 

あ、よく見るとその向こうに変装していますが文香さんもいます。ハンディカメラをこちらに向けて。嬉しいんですけど、嬉しいんですけど…恥ずかしいです!

 

真っ赤になりプルプルしていると、周りの友人が心配げに声をかけてきますがごまかすことしかできません…。

 

目の前にて行われる手足の先まで意識の行き届いたこれこそTHE・ラジオ体操だとでも言いたげなジョニーさん。しかもしっかりとミラー対応です。思わずほれぼれしそうになりましたがそうではないんです、なんでここにいるかが問題なんですよ!

 

説明を要求します!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side.ルキちゃん

 

 

 

「明日乗り込むぞ」

「はあ?」

 

事の始まりは前日に遡ります。

本日のレッスン(シャワークライミング)も終わり、シャワーを浴びて後のことです。

ちなみに現在地シャワー室の更衣室の入り口の真ん前です。扉を開けるとすぐ目前に特攻服を着た先輩が仁王立ちでスタンバイしていました。ここで迷わず扉を閉め、更衣室に引きこもるではなく、リアクションをすぐさまとれる事実からこれらの一連の怪事件がどれほどの頻度で起きているか理解できることでしょう。

 

「それでどこに乗り込むんですか?隣の島ですか?でしたらお一人でどうぞ」

「んなわけあるか、近隣の島はあらかたもう攻めた後だ」

 

え、もう攻めた後なんですか?

 

「そんなどうでもいいことは置いといて、明日乗り込むのは小学校にだ」

「警察呼びますねー」

 

自然な、淀みのない動作で最近はもうプッシュし慣れた二種類の数字による三桁の数字の羅列を打ち込んでいくが、これまた手慣れた動作でスマホをかすめ取られ一瞬で電源を落とされる。

 

「話はちゃんと最後まで聞くようにと小学校で習わなかったのか?」

「先輩に言われたくはないです、会議の居眠りとさぼりの常習犯」

「たけちゃんが後で要点かいつまんで教えてくれるから問題ない」

 

仕事のできるバカ枠武内駿輔既婚者ですね、ほんと。

 

「話を戻すぞ。まず明日はあーたんの小学校が運動会なんだ」

 

ふむ、小学生の体操服姿をなめるようん見たいということですね。スマホの再起動を急ぎます。

 

「なのにあーたんの両親はどうしても休みが取れないらしくて見に行けないそうなんだ。というわけで代わりに行くことになった」

「というわけでで話が跳躍してる気がするんですけど」

「どこも違和感ないと思うが?」

 

はて、何がおかしいのやらといったふうに大袈裟にジェスチャーを行う先輩。

Be Cool、私。このくらい何時ものことです。今日浴びた川の水の冷たさを思い出すんです…OK、私冷静です。いらっ♥なんて効果音ついてません。

 

「まず、なんで親がこれない事を?そしてそれで何で先輩が行くことに?」

「あーたんの親とはメル友です」

「新事実なんですけど」

「未成年の子供を預かるんだ、何かあったとき連絡できるように親さんの連絡先を知っているのは当然だろう?」

 

言われてみるすごく正論でまたむっ♪としちゃいますけどそれじゃメル友にはならないと思うんですが…

 

「あぁ、それはな、あーたんの両親はなんだかんだで子煩悩でな。いろいろとあーたんの様子は気になるんだよ。ってことでレッスンの風景とか美城での様子を写メで送ったりメール送ったりしてたら今ではすっかりメル友だ」

 

そうサムズアップをしながら見せてくれるラ○ンのグループってあれ、鷺沢さんもグループチャットに入ってるんですけど。あ、そこは当然なんですね。

 

「それで先輩、部外者の私たちが入って大丈夫なんですか?」

 

最近はそういうところどこも厳しくなっていると思うんですけど。

 

「問題ない、あーたんの小学校なら理事長にコネがある」

「どうすればそんなところにコネがもてるんですか…」

「人生不思議がいっぱい!」

 

一番の不思議生物が何言ってんですか。

 

 

 

 

 

 

そして今。

なんで私と先輩はたくさんの全校生徒の前でラジオ体操を踊っているのでしょうか?

あぁ、橘さんすごく恥ずかしそうです。

 

ごめんなさい。でも、私に責はないんです。悪いのは隣でノリノリでラジオ体操を行っている先輩なんですから。

 

 

と、ラジオ体操が終わり、それぞれ分団のテントに戻っていきます。そうして始まる種目。プログラムを見ると午前中は学年別リレーがメインで他に綱引きや玉入れといった大人数参加できる種目に、低学年の学年別の種目になっています。この中で橘さんが出るのはリレー、それに借り物競争ですか。これに含め午後には色別リレーもあるので走りっぱなしですね、橘さん。

 

「アリスちゃん、楽しそうで何よりですね」

 

隣から聞こえてくる優しげな声。橘さんのお母さん…というわけではなく、鷺沢さんです。ふみふみを呼べばあーたんも喜ぶだろということで、大学の方の講義を新田さんに代返してもらい本日参加のとなりました。当然のことながらアイドルがこんなところに来ていますと騒ぎになりますので、少し変装をしています。カチューシャは外し、代わりに伊達メガネ、後ろ髪を三つ編みにし前に垂らしています。服装は白のワンピの下に七分丈のパンツにサンダル。腕には日焼け防止用の名が手袋をはめ、肩に薄いストールをかけています。少し大人っぽく見えるようにメイクもしているんですが…どう見ても11歳の子供がいる母親のようには見えませんね。若々しすぎて美魔女と言われるレベルです。

あと、

 

「私には恥ずかしそうにしか見えないんですが…」

 

テントに戻るなり顔を押さえてしゃがみ込みましたし。周りに心配され、何でもないですとかたぶん言いながら今競技の応援をし始めましたけど。そして先輩。なぜあなたは玉入れのかごの運搬などを平気で行っているのですか。部外者でしょうが一応。

 

「嬉しいんですけど、どう反応すればいいのか分からないんだと思います。このような行事の際、両親が来てくれることはほとんどなかったそうですから。ほら、口角が上がってますよ」

 

あ、本当です。照れながら口角だけ抑えきれず上がってしまっているので珍妙な顔になってしまっています。そしてそれをしっかりとカメラに収める鷺沢さん。

両親が無理してでも行けばよかったと思えるようなシーンを今日は大量にカメラに収めることが出来そうですね。

 

 

そうしてつつがなく消化されていくプログラム。先輩が玉入れの玉を使って16個のジャグリングを行い競技より注目を集めたり、綱引きの綱を一人でもって来てそのまま先生vs体力自慢の先生3人と玉入れで先輩に憧れた一部生徒で綱引きが行われ先輩が圧勝したり、借り物競争で橘さんの引いたお題が“尊敬する人”で鷺沢さんと手をつないで仲良くゴール、そのおかげで《美魔女、謎の奥様あらわる!?》状態になりました。こんなに問題がありながらも巻きでプログラムが進んでいるあたり競技の合間の準備を労働力としての面だけ見ると天下一品の先輩がってあれ?先輩以外に来てるんですけど、美城を代表するバカ…いつの間に。

 

としている間に弁当の時間になります。少し恥ずかしがりながらも、こちらに歩いてくる橘さん。おそらくお昼ごはんになったら合流するように借り物競争の時に伝えたのでしょう。

 

「うっし、昼飯だ!」

「の、前になぜいるんですかジョニーさん…!」

「あーたんが淋しくないようにに決まってんだろ、言わせんな恥ずかしい」

「むぅ…」

 

と口では言っときながら一切恥ずかしそうな様子もなくおしぼりを回す先輩。

ですが弁当の影は一切なし。しれっと混ざる武内さんも下川さんも取りに行く気配一つありません。

 

「あの、先輩。お弁当は?」

 

こういう時真先にこりだすと思うんですけど。この人たち。

 

「あ、私は買ってきたお弁当が」

「却下にきまっとろうあーたん。安心しろ、しっかりと用意はしている」

 

堂々と三人立ち上がり腕を組み、偉そうにしだす。

 

「前回使った屋台を用いてだな…!」

「この場で料理を行い」

「軽く一儲けしちゃう?って計画だったんだがぁ!」

 

「「「見事にちっひに見つかって止められた」」」

 

「当然ですよ」

「そうですか…残念です」

「文香さん、だまされないで下さい」

 

意外に毒されてますよね鷺沢さん。いい変化なのか悪い変化なのか悩ましいところです。

 

「それで、結局お弁当はどうなったんですか?」

「あぁ、出来立てがやっぱうまいってことで今から出前が来ることにn「呼ばれて飛び出てびびびび~ん!」あ、ナイスタイミング」

「どうも、お疲れ様です」

「はぁとがわざわざきてあげたんだからありがたくおもうんだぞぉう」

 

やってきましたのは重箱をそれぞれ持った安部さんに三船さん、飲み物を抱えた佐藤さんです。それぞれ、髪を下ろすなりして変装に加え、奥様っぽくしてきており、なんと言いますか…様になってますね。

 

「仕上げサンキューな」

「いえ、構いませんよ」

「そうだぞぉ、最後の運動会なんだからパーっとやろ♪」

「いえ、来年も中学校の運動会があるんですが」

「細かいことを気にしてると大きくなれないんだぞー☆」

 

てきぱきとお重を広げていく安部さんに談笑する先輩と三船さん、11歳と言い争いを開始した26歳児。なんと言いますか、目立ち始めましたね。父親っぽい見た目の人三人に美魔女奥様4人、いったいどんな複雑な家庭だと思われているんでしょうか…?

 

「あの9人ってどういう関係なんだ…?」

 

ん、9人?ぼそって聞こえてきた周りの声に違和感。

橘さんに鷺沢さん、奥様三人衆にずっこけ三人組。8人ですよね…あ、私だ!

そう言えば自分も渦中の人なんだと今さら気づき旋律!?え、でも私はまだ姉ポジは入れるからセーフ!いや、この男3人衆と家族とみられるだけで同類扱いされた気がしてなんかアウト!

 

「さ、準備もできたし早く食べようぜ!」

「水分補給も大事なのでしっかりと飲み物も飲んでください」

 

周りなぞ一切知ったものかと合計8段にも及ぶお重が並び、紙皿、紙コップに割りばしが各人にわたりお茶が三船さんにより注がれる。

 

「それじゃあみなさんてお合わせて下さい、いただきます!」

「「「「「「「いっただっきまーす‼」」」」」」」

 

安部さんの号令で解き放たれる飢えた獣に淑女に扮した皆さま。我先にと好みのおかずを紙皿に取っていく。それを尻目にゆっくりと食事を行う鷺沢さんと橘さん。どちらが大人かわかりませんね。いや、鷺沢さんはれっきとした大人ですけど。

 

それにしても、今回のメニューも豪華ですね。具がすべて違うおにぎりが詰められお重が2セット、いなりずしが詰まったものが1セット。残り5には揚げ物、サラダ、卵焼きに一口ハンバーグやアスパラのベーコン巻き、グラタンといったものが彩を考えられて所狭しと詰められています。たまにおせちと間違えてるのではと思うような品も出てくるのでおそらくノリと勢いで暴走した結果なのだとは思いますが…周りの人の目がいたいです!だって明らかに他の家のお弁当とは格が違うんですもの!

 

そのことにまったく気付かないこのレベルに慣れ切ってしまっている私以外。

…美城クオリティは無駄に高いんです。外から見たら美城の平凡は高クオリティなんです。それだけ一芸に富んでいる方が多いことを理解してほしい私でした。

 

あ、結局気になった子供がどんどん集まり、その親も集まり、その弁当が全部集まったのでちょっとしたパーティ会場みたいなことになってしまいました。

 

 

 

 

こうして午後にプログラムが移るんですが…まずは応援合戦。やけに先輩達が静かだと思ったら男衆が消え去っていました。この時点でこの後に起こるであろうことを予想できていればと深く思います。

 

そして学年別個別種目高学年の部も終わり…あ、6年生は3人4脚で橘さんと足を結んでいた男の子の顔がずっと真っ赤だったことだけ言っときましょう。先輩の暗躍はまだこの時点では行われませんでした。まだ。

 

そうしてたどり着いた最終種目、色別対抗リレー。最終種目であることからポイントが高いどころか1位に1千万ポイントとかいう昨今のクイズ番組でも見なくなった一発逆転方式がつけられています。そんな重要な種目のアンカーを橘さんが務めるということもあり、見ているこちらも少し緊張感を覚えます。そして今まさにスターターの撃鉄が落とされようとするとき、後ろから不穏な気配を感じ、振り返ります。そこには…

 

 

 

応援団がいました。

さほど大事なことではないですがもう一度言います、応援団がいました。

 

さらしを巻いた身の上に竜虎の刺繍が入った長ランを羽織る武内さんと下川さん。そしてその斜め後ろにさらしだけで学ランを羽織らずに和太鼓に向きあう先輩。

 

まぁまだそこまでは許容しなくもないです。その後ろ、何やってるんですか。

 

チアリーダーの格好をした奥様衆+どこから出てきた姫川さん。それにその脇を固めるマーチング部隊、東郷さん、ナターリアさん他水本さん、涼宮さん。そして依田さん。えーっと…マーチングのくせにブラスが東郷さんしかいないのはどういうことだろかナターリアさんの持ってるその楽器はなに?とか依田さんまさかの法螺貝で参戦!とかはもういっそのこと置いておきます。ただこれだけ言わせてください。

 

ここ小学校!公共施設!Do you understand!?

美城じゃないんですよ、ここ?

 

ほら、まだ走り始めてもないのに橘さん顔赤いですし、足ふるえてるじゃないですか!

限度というものを考えてください!

 

そんな私の悲痛な訴えをたやすく打ち消していく太鼓と音頭。

なんか、今までで一番疲れた気がしました…

 

 

 

え、結果ですか?勝ちましたよ。最速で駆け抜けましたよ。そのまま応援団に説教しに来ましたよ。でも説教する前に胴上げされてうやむやになりましたよ…

 

 

 

あ、ちゃんと全員ちひろさんの説教を受けました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私も含めて。納得がいきませんでした。




帰り道、なんだかんだジョニーとふみふみに挟まれて帰ったみたいよ、手をつないで。

ちなみにチアを一番はずかしがってたのは三船さん。真っ赤になってもじもじしてた。周りの父兄の皆さまにとって役得だったらしい。

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