「暑いとやっぱり脱ぎたくなっちゃいますよね~」
※いえ、いつもです
そんじゃゆったりやってきま~す
あれから一週間たち、唐突にかかった招集。
会議室に集まっているメンツは十時さんをはじめとして三村さんと首藤さん、白石さん、五十嵐さん、松山さん、本田さんなどにいつも通りの見慣れた新田さん、安部さん、高垣さん、佐久間さんが集まってます。
何でしょう、この共通点がありそうでなさそうなメンツは。
ん~料理上手ということも考えられますけど向井さんもいますし…なんなんでしょうか?
次のイベント関係だと思うんですけど…その証拠にお姉ちゃんに大道具の方々や事務の代表者もいます。なんでしょう、こう…まじめに人が集まっているところを初めて見た気がします!
集まっていると思えば先輩による屋台、先輩によるイベント、先輩による飲み会、先輩によるなんだかんだ…って先輩のせいでしかないじゃないですか。
さて、集合時間まであと少しですがまだまじめに分類される武内さんさへ見えません。
と思っていると、
ドアと窓がはじけ飛びました。
ドアと窓がはじけ飛びました、大事なことなので二回言いました。
その煙を切り裂くように飛び出してくる二つの青い影。
こちらに背を向けて着地した二つの影の背中には『祭』の一文字…
そのまま2人は会議室備え付けのホワイト―ボードをたたいて反転させ、現れるのは同一の『祭』の一文字が刻まれた青い着物。っていうか法被。
まぁ誰かなんて言うまでもないですよね…
「「「祭りだ(です)!!」」」
振り返りながら宣言する先輩、武内さん、下村さんの3人。
もうこの人たち首輪をつけて誰か飼育してくれないでしょうか…ねぇ法被姿をカメラに収めてる佐久間さん。
「それでは2か月後に控えたイベントの説明を行いたいと思います」
平然とこれからの説明を開始するドアからダイナミックエントリーしてきた武内さん。
そしてその話の流れにあわせて書類を配り始めるホワイトボードの裏から忍者のように出てきた下川さん。というかどうやってホワイトボードに張り付いていたんですか?
そしてそのホワイトボードに板書を始める窓からエキゾチックエントリーしてきた先輩。
もうなんなんでしょうね、なんでみなさん無反応なんでしょうね?
あれですか、慣れてない私がダメなんですか?私が異端なんですか?
「今回のイベントのテーマは『祭』。ライブステージを中心としたお祭りを開催としたいと思います。今回招集したアイドルの皆さんにはそれぞれお祭りの屋台を構えていただきたいと思います」
「各々屋台のメニューの申請と従業員集めをやっておくように。屋台の申請はテンプレと一緒にそれ用の用紙を今配った資料に挟んであるからなるべく早く提出するように」
「仕入れの方は俺がつてで持ってくるから素材は何でもそろうと思ってくれていい。保健所の方には俺が口をきけば問題はないが、それでも生ものの販売はできないからそこらへん気を付けてな?いいな、葵。火を通さない寿司はNGだからなぁ」
「なんであたしだけ名指しなんよっ!」
「あぁ、そりゃお前料亭で培った料理だから屋台の勝手までは分かんねぇだろ?」
「そりゃそうっちゃけど…」
なんか突っ込む間もなくどんどん進んでいくんですけど…
え、ってことはあれですか?アイドルが屋台を経営するお祭りをやるってことですか?
なんともまぁ型破りな…
「あたしドーナッツつくりた~い!」
「私はお菓子を作りたいんですけど、オーブン大丈夫でしょうかぁ…」
「あぁ、設備は気にすんな。大道具が何とかしてくれる。まぁ?大道具がァ無理っていうならぁ?この俺がぁ、代わりにやってあげるけどぉ」
「「「「あぁぁぁあん!?上等だ、やってやらぁ!!大道具なめんなぁ!!」」」」
先輩のとってもうざい物言いにやる気になる大道具の皆さん、なんというかいつも通りの光景になってきましたね。
「それでは大道具の皆さん、当日前でに最低20は屋台の準備をお願いします」
「「「「え…?」」」」
「それでは会場の方ですが千葉の海浜公園音楽ステージを利用します。なので…」
「「「「ちょまって、え、屋台20作るの?」」」」
「はい、メニューが決まればそれに適したようにカスタマイズもするのでそれもお願いします。では話がそれましたが次に小物・衣装ですがデザインは海と祭をテーマにお願いします。ステージ出演アイドルはユニット5組を考えており、詳細が決まり次第通達します」
2か月で屋台20という割と自作するとなると絶望を感じる数字をしれっと突き付けておいて話をどんどんと伝えていく武内さん…なんていうか鬼畜ですね。
「まぁ地元で幾分かは当たってみれば借りれるし、美城にも俺がいつも使ってる屋台が3つくらいある、それに1週間もあれば俺たちで屋台5は作れる。まぁ…正直言うと作らなくてもレンタルで賄いきれるだろうが」
「先輩、さらっと心を読まないでください。あといつの間にこっち来たんですか」
「ふっ…残像だ」
そう言って消えていく先輩。えぇ…本当にホワイトボードの前にいますし。
とまぁしているうちにいつの間にか武内さんの説明が終わっています。
「それでは何か質問はあるでしょうか?」
「えっと…質問っていうか疑問なんですけど、たしかに私お料理できますけど趣味の範疇なんですけど大丈夫ですかね?」
そんな疑問をあげたのはアイドル内で嫁力選手権でも行ったなら上位確定のレベルで家庭的な五十嵐さんです。
確かに自分の料理が本当にお店に出せるレベルかといわれるとそうはなかなか思えませんよね。
「あぁ、そこらへんは心配すんな。ここに呼んだメンツは俺たちが本当においしいて思える料理を作れるやつしか呼んでないからな。響ちゃんの肉じゃがすんげぇ上手かったから自信持てよ。料理に込められた思いやりなら集められたメンツでもトップクラスだよ」
そう言ってにかっと笑う先輩。料理とかに関しては本当にプロレベルの先輩がそういうんなら間違いないんでしょうね。
「それに、不安なやつはいって来い。俺たちで特別レッスンしてやるから」
そう言ってサムズアップする3バカ。こういう時ばっかりはとても頼りがいのあるように見えるのが不思議ですね。いつもそうならいいのに…
「あ、それと言い忘れたが従業員はプロダクション内で集めるように。じゃないと俺のコネをそのまま持ってる美波が無双するから」
「え、無双なんてしませんよ!」
「え、けどミシュランレベルのシェフを普通に集めれるだろ?」
「そうですけどさすがにしませんよっ!」
いえ、そんなことできるという事自体で異常なんですけど…
ほら、首藤さんとかそのコネに興味津々じゃないですか。
「それで、成果で何かご褒美があったりするのかしら?」
「そうですね~まゆも気になります」
ごたごたコネ関係や料理のアドバイスなんかでごたごたし始めた先輩の周辺を差し置いて上がった2人からの質問。その2人の視線はそれぞれ武内さん、下村さんをしっかりとロックオンしています。
これは少しでも口を滑らせたらろくでもないことを要求されそうですよ、武内さん。金欠に続き2度目の新婚生活の障害が来てしまいますよ。
ほら、あまりの雰囲気に大道具の方は膝をついて俯いていた姿勢がなぜか3段ピラミッドの組体操に変わり、先輩の周りのサークルも空気が固まりましたよ。
「そう言えば何も決めていませんでしたね…どうしましょうか」
「まぁご褒美があった方がこういうのは盛り上がるもんだろ」
「そうだな、本気でやるにもなんか見返りがあった方が燃えるだろ」
そんな空気に一切気が付くこともなく何がみんなを焚きつけるのに最適なご褒美かを相談し始める3バカ。あの人たちは今死亡フラグ∼人生の墓場∼が立とうとしていることに気が付いていないんですか?
「ん~もう勝者のゆうことを何でも聞くとかでいいんじゃね?」
「まぁそれが一番妥当か?特別賞与とかちひろさんが許すと思えんし」
「そうですね、企画の私たちのもてる権限の範囲内で自由というのが最良の報酬だと思います」
あ、終わった。
和久井さんに佐久間さんが机の下でガッツポーズをしてます。もうなにを要求されても私は知りませんよ…ほんと、自業自得なんですから。
「ということで売り上げがトップだった組には私たちができる範囲内で要望を聞きたいと思いますので、皆さん、ベストを尽くしましょう」
武内さんからのその宣言に盛り上がるアイドルの面々。その盛り上がり方は単純に楽しみだという盛り上がりもあれば、これで我が宿願が叶うみたいなラスボスチックな盛り上がり方もちらほら。
「えっと…これどうしましょう」
「あ、新田さんはまとも組…というよりは分かっている組なんですね」
「結構あからさまですからね」
そう言って苦笑している新田さん。
そうですね、あからさまにピンクのオーラを出している方もおられますし。
それよりも…
「新田さんはいいんですか?」
「えっと…一応聞きますけど何が、ですか?」
「先輩に何でも要求ができるチャンスですけど」
そういう私に新田さんはそう言われることが分かっていたように苦笑した後口を開きます。
「全力で料理は作りますけど、ご褒美はいいんです。
そんな事をしなくても雄くんは要望はできるだけ聞いてくれようとしてくれますから。自分の欲望に沿ったものなら特に」
確かに今までのこと思い出してみると服を着てくださいとかい変態行動を慎んでください以外の要求は大体叶えようとしている気がします。
「だからそうですね、もし売り上げトップだったら休日でも頂いて旅行に行きたいと思います」
「先輩といっしょに、ですか?」
「はい、約束しましたから。休日が取れたらどこか行こうって」
いつの間にそんな約束したんでしょうこの2人は…
やっぱり付き合いが長いだけあってお互いを結構理解しあってますよね。
「なんにせよ、私は私の最高を見せます。雄くんが用意してくれた舞台なんですから楽しまなくちゃっ!」
そう笑って相変わらず首藤さんにコネについて付きまとわれながらメニューの可否の相談を様々なアイドルからされている先輩に弾んだ足取りで進んでいく新田さん。
先輩達の計画では十時さんを看板に据える予定ですが、上手くいかない予感がする。
そんな一幕でした。
というわけでイベントの概要を説明するだけのお話でしたとさ。
それではまた次回、お会いしましょう。読了ありがとうございます。