ルーキートレーナーに幸あれ   作:bakabakka

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今回も今回とて突拍子もない話だ!


ルキ「父親ですか‼」

 

今日は普通にレッスンがあるのですが、なぜか集合場所は給湯室。

今までにレッスンルームのほか、調理室、プール、正門、廊下、カフェなど様々なところでレッスンを語った別物が行われてきましたが給湯室なんて初めてです。

 

あんなお湯を沸かし、お茶を入れるためのちょっとしたスペースでいったい何を行うつもりでしょうかあの先輩は…

 

「失礼しま~す」

 

軽くノックをした後挨拶をしながら室内に入ります。

 

「…ってなんですか、これ!?」

「しー…」

 

思わず驚きに声を上げたところを口元に人差し指を立てた三船美優さんに止められる。

 

薄山吹色の地にに白い花がしつらえている着物を紺色の帯で締め、髪を大きめのコサージュでまとめた三船さんの膝の上には甚平を着こんだ先輩が大の字で寝ており、その上には黄緑色の着物を着た兎の着ぐるみを着て丸くなるようにして寝ている市原さん。そしてその上におまけのようにチョンと乗っているニワトリさん。…なんでこのニワトリ鼻提灯を膨らませてるんでしょう、何でもありですか?そして何ですかそれ?あったか家族の昼下がりですか?

 

そしてもっと大きな変化が給湯室に一つ。なんと!タイルで敷き詰められていた床が畳に代わっているではありませんか。しかも隅にちゃぶ台と座布団まで用意してありますし。

 

「えっと…これどうしたんですか?」

 

寝ている市原さん(先輩とニワトリはどうでもいいです)を起こさないように抑えた声で三船さんにこの状況について問います。そうすると三船さんも起こさないように声を押さえて返してくれます。

 

「こういうのには慣れてないんですけど…小さい子供ってついつい甘やかしたくなってしまって」

「いえ、その体勢のことじゃなくてこの部屋のことなんですけど…それに片方小さい子供じゃないですから、脳みそが小さい中身が子供な大の大人ですから」

 

いや、不思議そうな顔しないでください三船さん。

 

「えっと、この部屋は昨晩のうちに雄さんが整えたらしいですよ。この仁奈ちゃんの着ぐるみも徹夜で頑張ったらしいですよ」

 

そう言って膝の上の先輩の頭を優しげに撫で、市原さんを優しげな笑顔で見守る。

何でしょうこの私だけ蚊帳の外感。

 

向こう三人(+ニワトリ)でなんか一塊の家族みたいじゃないですか。それは鷺沢さんと橘さんの役割です。

 

なんて自分でもよくわからないことを考えていると背後から特徴的な呼び方の優しい声をかけられる。

 

「慶はん、どないされましたん?」

「あ、小早川さん」

 

後に首をかしげて立っていたのはいつも通りの若芽色の着物を着こんだ京美人・小早川紗枝さんが立っています。

 

「あらあら、ほんまのんびりやな~」

「うふふ、しー…ですよ?」

「そやな~、こんな幸せそうやと起こすのがかわいそうやわ~。それに、畳って久しぶりでうれしいわ~」

「日本人の心ですね。慶ちゃんも、上がってください」

「ほな、うちはお茶淹れるえ~」

「あ、すみません」

 

畳に上がり、嬉しそうな小早川さんと三船さんに招かれ私も上がることにする。

そして座布団に座り、小早川さんがいれたお茶をいただき一息。

あ~落ち着きます…

 

 

「じゃなくて!」

「「しー」」

「…これ何のための集まりなんですか?」

「さぁ…」

「知らへんけど?…あっ!仁奈はんが雄はんの服ぎゅっと握りこんではる」

「愛くるしいです」

 

ダメです。ポカポカ家族が一人増えました。

なんなんですか?私が正常なんですよね?アットホームなのがおかしいんですよね?あれ、けどアットホームっていいことですよね。昨今の会話のない家庭の食卓なんかとは異なり、つまらないことで笑いあえ楽しめるそんな家庭っていいものですね。いえいえ!第1この人たちは本当の家族じゃありませんし!あれ?けど家族のように親密な間柄の人がいるというのもいいことなんでしょうか?ですが家族って一番近い他人と言うくらいですし……はっ!まず家族とかなんかとかの前にこれレッスンが名目なんじゃなかったですっけ!?そうですよそうですよ、レッスンです!レッスン中に眠るのっておかしいですよね?そうですよね?レッスンと言って料理したり鬼ごっこしたり旅行したりいろいろしてますがそんなのは無視です!ってことで正当化終了!この空気ぶち壊してもオッケーです!

 

「起きてください先輩‼」

 

ということで先輩の鼻提灯にスパーキン‼

目が寝てても起きてても変わらないのでわかりにくいですがこれで起きたはずです!

 

「んがっ…あー寝てたのか」

「雄くん、おはようございます」

「雄はん、おはよ~」

「おお~頭の後ろがマーベラス」

「私なんかのですみませんけど…」

「いやいや、適度に柔らかいしいい匂いで気持ちいい…ってことで二度寝していい?」

「はい、かまいませんよ」

「雄はんおねむやね~」

「あ~流石に徹夜で裁縫は疲れる」

「ならうちは子守歌歌いますさかい、ゆっくりやすんでぇな」

「おうおう、そりゃ極上で」

 

そう言って持ち上げかけてた頭を戻し、市原さんの頭を軽くなで、その背中をあやすようにやさしく叩く。

って!

 

「だ!か!らぁ‼レッスンはどうするんですか!」

「ん?あぁ…そんな予定もあってたなぁ~。ま、ニナニナが起きないとどうしようもないから」

「どういうことなんですか?」

「今回のレッスンはニーナちゃんと遊んであげることだからで~す」

 

私の代わりに尋ねた三船さんの問に帰って来たのは思った以上にシンプルと言いますか中身が決まっていないと言いますか…うん、レッスンじゃないです。

 

 

 

 

それから暫く、先輩はしぶしぶ、本当にしぶしぶ起き上がり、しかもその時一切市原さんが揺れたりしないようしながら膝に移動させるという神業を披露しながら、ってこでまだまだレッスンは始まりません。

 

「それで雄はん、何して遊ぶん?」

「あぁ、それはこれで」

 

そう言ってポケットから引っ張り出してきたのはカルタ?

 

「カルタ、ですか?」

「そうそう、この前ちは○ふる見てたら百人一首したがってな。さすがにそれは難しいからカルタってことで。メンツは畳が似合いそうな人をで今日空いてた人を適当にだ」

 

なるほど、そういうことですか。納得です。

それにしてもこの先輩はその方がぽいってだけで畳と市原さんの着ぐるみ用意したんですか。ほんと…バカですね。

 

「それにしても、仁奈ちゃん起きませんけどどうしましょう…」

「ん~心苦しいが起こすか?寝すぎると夜眠れなくなるし」

「そうやな~それがええんちゃう」

「それじゃ、ニワトリ。出番」

 

先輩のその声に反応しさっきまで閉じていた目を開け、鼻提灯が割れる。

そして、その両翼で市原さんを揺すりだした。

 

「何でですか!普通鳴きましょうよ!コケコッコーって!」

「あかん」

 

しゃべった!?

 

 

 

 

 

 

「ん~朝でごぜーますか」

「おう、おはようさん」

「おはようごぜーます」

 

目を覚ましはしましたが、先輩の膝の上でまだ眠そうにしている市原さん。

 

「仁奈はん、お茶あるえ」

「ありがとーです」

 

そんな市原さんに小早川さんがお茶をわたし、徐々に意識が覚醒していく市原さん。

 

「雄、今日は何するんですか?」

「今日はみんなでカルタだ!」

「カルタでごぜーますか!楽しみです」

 

先輩の膝の上ではしゃぎだす市原さん。

 

「それじゃあルールの確認だぁ!

まず一つ!手は膝のうえ。二つ!…あーうん。もうないや」

「適当ですね、先輩」

「今ぐらいにゆるい方がちょうどいいんだよ」

「そうやね~堅苦しいのも大変やし」

「そうですね、それがいいと思います」

 

そして広げられていく絵札。

…なんですか?この明らかに手書きでしかも内容が全然想像できない絵札は。

 

「ふふん、これも手作りだ!」

「みなさん、たぶんろくでもないものです。発言の前に片づけましょう」

「おい、決めつけひどいな」

「私はきれいな絵と思いますよ?」

「仁奈はんもおるんやからそこまでむちゃくちゃなものはあらへんって~」

 

甘いと思いますが…市原さんがわくわくした顔をしているのでしょうがないです。

頑張りましょう。

 

 

「それじゃあ一枚目~。『友達になりたいんだ…全力全開!スターライトォ…』」

「はいっ!」

 

先輩が読んでいる途中で小早川さんにとられる一枚目の『と』の札。

その絵は黒い服の女の子が磔にされており、白い服の子が極太の光線を打ち出そうとしている様子です。

…友達?

 

「次~『氷雪系最強(笑)氷輪○』」

 

今度は倒れ伏している少年の絵。

 

「『健全なる青少年の魂、ToL○VEる』」

 

走っている少年の後ろに描かれている沢山の女性。

 

「『終わったはずが激化する闘い』」

 

武内さんと高垣さんが腕を組んで歩いている後ろで不穏に輝く赤い目。

 

「『だんぜん!たくみんはプリ○ュア!』」

 

プリティーでキュアキュアな格好をした向井さんの…写真。

 

「『人生の終着駅』」

 

佐久間さんに結婚式場に引きずっていかれている下川さんの写真。

 

「『ちょっと頭冷やそうか?』」

 

オレンジの髪の女の子を光弾で仕留めるさっきの白い髪の女の子の面影がある女性。

 

「『拳が最強!魔法使いプリ○ュア』」

 

紫の怪物を杖とか無視で殴っている2人の女の子。

 

「先輩、待ってください」

「なんだよ、今いいところだっただろ?」

「私の知っているカルタと何か違います」

「よかったな、これが真のカルタだ」

「なわけありますか」

「カルタっておもしれ―です」

「ほら、になっちは喜んでいるぞ」

「何かの間違えです。あと呼び方どれか一つに定めて下さい」

「んじゃにーなで」

「雄、仁奈でいーです」

「だそうだ」

 

そうして進められていくカルタに見せかけたただのネタ。

そんな変なものの中に混ざる真面なことわざ。

 

そして…

 

「『が、がおー』」

「///!?」

 

「『ホットパンツ、かぁ…』」

「あきまへん!///」

 

肩だしへそ出しミニスカとら耳尻尾付き三船さんの写真を回収する速度が普段からは想像できないくらい素早く、小早川さんがホットパンツに興味があることだけ記しておきたいと思います。

 

「皆で遊ぶと楽し―です!」

 

そう言って喜んでくれる子がいるならまたやってもいいと思う私でした。

…市販のカルタなら。





ってことでクール三重士全員出し切りましたとさ。
お母さんは25日までとっときたかったけど我慢できなかったとさ。

それじゃあ久しぶりに

市原仁奈のオリ主への認識
「パパでごぜーます!」

ちなみにママは当然あの方。

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