言い訳はあとがきに続く!
トレーナーの仕事と言うものは以外でもないかもしれませんが休日が不定期であったりします。それはレッスンの対象であるアイドルに学生が多いため行える時間が限られている、また年齢層が厚いのでそれぞれのスケジュールの空きが様々だからです。
「と、いうわけで久々の休日なので先輩の素行調査を行いたいと思います!」
「はい!島村卯月、頑張ります!」
「ねぇ、なんでまた私たちなのしぶりん?」
「さぁ…私が知りたいよ」
本日のメンバーもニュージェネレーションの島村さん、本田さん、渋谷さんです。
相変わらず島村さんだけアクセル全開ですが三人で平均をとればたぶん通常らへんに落ち着くでしょうから問題なしです。
「それで、今日雄は美城に来てないんだね」
「ジョニーっていつも美城にいるイメージなんだけどな~」
「美城に来るといつもいますもんね~」
そうなのです。ほぼほぼ美城にこもってる先輩が今日はしっかりと服を着て街を歩いてるんです!
「あ、カフェに入りました」
「それじゃあ私たちも入りましょう!」
「はいはい、わかったよ」
「ほ~結構おっしゃれ~」
確かに美城の中に入っているカフェよりも立派、と言うより雰囲気があるといった方がいいでしょうか。落ち着いた温かみのある木製の机と椅子と照明、そして多い緑。店の裏庭はオープンテラスになっており、そこはどっちかと言うとゴシック調であり、外に置くのがもったいなく感じるほどです。
先輩はそのオープンテラスに入ったので私たちは店内の席に座り観察を続けます。
「あ、下川さんとプロデューサーさん…それに楓さんもいます!」
「え…楓さんがプロデューサーに腕を絡めているように見えるんだけど」
「しぶりん、見間違えじゃないよ。だから気を確かに持って!ハイライトオフになってるから!」
武内さんと高垣さんは腕を絡めており、正直カップルに見えます。それを見た渋谷さんは目のハイライトが消え、手に持った紅茶の入ったカップは小刻みに震えています。
…傷は深そうです。
「先輩も下川さんもうれしそうですね」
「2人ともバンバンプロデューサーの肩叩いてますね」
「うん、祝福してるっぽい」
「ねぇ未央…今楓さんの左手の薬指が光ったように見えたんだけど気のせいだよね?ね?嘘だといってよ…」
心ここにあらずな渋谷さんの発言につられ私たちは高垣さんの左手に注目します。
「あ、指輪です!」
「ってことは…」
そういうことなんでしょうね…武内さんと高垣さんが交際、どころか婚約まで行ってしまってるみたいですね。
「ははは…プロデューサー、そんなわけないよね、ねぇ――未央?」
「待ってしぶりん帰ってきて!?目がやばいから!ちょっとしまむーもけーちゃんも手伝って!!」
いや、もう手遅れ―致命傷だと思いますよ?アイドルの顔じゃないですし。
「凛ちゃん!大丈夫です!身体だけの関係が大人の世界ではあるって聞きましたから!」
「しまむーそれは違うから!」
「卯月…うん、私頑張るよ」
「しぶりんも待って!そっちは行っちゃいけない方だから!」
本田さん、頑張ってください。私では手に負えません。
と、ここで先輩たちから外していた視線を戻すと
「…佐久間さんいつの間に来たんでしょうか?」
「ほんとですね、まゆちゃんがいつの間にか下川さんを追い詰めてます」
「私もこれからは見習わなきゃ」
「しぶりん、あれは見習っちゃダメなやつだよ」
佐久間さんはたぶんあれです。武内さんと高垣さんっていうプロデューサーとアイドルのカップルを察知して触発されてしまったんでしょうね、自分も早くって。
「あ、佐久間さんのタックルに下川さんが捕まりました!」
「まずはマウントをとればいいんだね」
「だからしぶりん、メモは取らなくていいんだよ!?」
マウントをとった佐久間さんの表情が恍惚としているのは気のせいじゃないはずです。
吐息もどこか桃色ですが私には関係ありませんから無視です。
そんな様子を先輩は爆笑しながらスマホで連写してます。
たぶんまた脅迫に使うんでしょうね…って、あ。
「一ノ瀬さん」
「あぁっ!ずるいです!」
「ジョニーに気付かれず背後からってしきにゃんすご…」
「背後からの強襲も効果的なんだね」
あぁ…渋谷さんが別ベクトルに成長しています。未央さん、頑張ってください。
そしてトライアドの2人は休日明け、この渋谷さんを見てどう思うんでしょうか…。
「志希ちゃんだけいっつもジョニーさんにくっつけてずるいです!私もっ!」
「まってしまむー!今出て行ったらストーk「観察です」…観察してるのばれちゃうから!」
もう本田さんったら、私たちが先輩なんかのストーカーなはずないじゃないですか~。
「ねぇ、志希の手に持ってるあれって…」
「注射器、だね」
「うぅぅぅ、私もあの筋肉にしがみつきたいんですぅ…」
一ノ瀬さんのその手に握られているのは注射器。中に入っている薬品はあまり想像したくはありませんがおそらくは…
「睡眠薬か媚薬ですね」
「麻酔薬かも」
「シビレ薬かもしれないよ」
どれにしろ碌なものじゃありませんね。
「あ、注入されました」
先輩の首元に突き刺され、シリンダーに充てんされていた薬品が先輩の体の中に流れ込んでいく。
「すっごいつやつやした顔してますね、一ノ瀬さん」
「うん、これでア・タ・シも…ウフフフ♪みたいな顔してるね」
「雄が膝から崩れ落ちたね」
「速攻性は十分みたいですね」
崩れ落ちた先輩の服を脱がしにかかる一ノ瀬さん。そしてそのそばでは佐久間さんに身ぐるみをはがされながらもスマホで先輩の方を激写する下川さん。案外まだ余裕ありますね。
「あぁジョニーさんの大胸筋が…三角筋が…胸鎖乳突筋がぁ…」
「しまむー泣かないで泣かないで、まだちょっとエロい手つきで撫でられているだけだから」
「けど未央、下を這わせ始めたよ」
「うぅぅ…ぐずんっ…ひっく…」
「卯月マジ泣きするくらいなら今度頼んでみたら?」
「はずがじぐでむりなんですぅ」
「あ、今度は鼻を埋めて匂い嗅いでる」
「うわぁあああん‼」
島村さんがガチ泣きです。机に突っ伏して滝のように涙があふれています。
島村さん、あの変態さんにそこまでの価値はないですよ?
あ、先輩が意地を見せました。
張り付いていた一ノ瀬さんを引きはがすと店内に向けて走ってきます。
「やばっ!隠れなきゃ!」
本田さんのその言葉に机のしたや植木に隠れる私、渋谷さんと本田さん。島村さんは…まぁ突っ伏しているから問題ないでしょう。
そして先輩は私たちに気付くこともなく走り去っていきます。
「私たちも追いかけましょうか!」
「いやいや、ジョニーに追いつくなんて無理だって」
「大丈夫です、今の先輩は見た感じ100mを15秒程度が限界みたいなので追跡はできます!」
「見ただけで分かるの?」
「なんとなくなら」
先輩と付き合い始めて私もいろいろぶっ飛び始めたのかもしれませんね…はぁ。
支払いを済ませ、先輩を追いかけます。
薬は麻酔、シビレ系統であったらしくやはり先輩の動きはいつもほどキレがなく、そこまで遠く離れていなかった。
「ジョニーさん動きがぎこちないですね」
「というかよく薬打たれて走れるね」
「そこはまぁジョニーだし」
そうして先輩は走ること数分、一棟のマンションの前で崩れ落ちる先輩。
おそらく本格的に薬が回ったんでしょう。それにしても…
「はぁはぁ…なんで、ペースが…けっほ、落ちないの」
まぁ女性からしたら100mを15秒は速いですよねぇ…ぶっちゃけ私も結構疲れました。他の三人ほどではありませんが。
倒れ伏したまま震える腕でスマホを操作する先輩。そしてしばらくするとマンションから新田さんが!?
「え、ここ美波ちゃんのお家なんですか?」
「そうみたいだね」
「それでジョニーここまで走ったんだね」
倒れ伏した先輩を見て新田さんはまるで『またですか?』と言いたげな表情を浮かべています。そしてうつぶせに倒れている先輩をひっくり返し、その頭を座った自分の膝に乗せます。
「みなみん膝枕し始めたんだけど!」
「うぅ…皆さん私が羨ましいと思うことばっかりぃ」
「卯月、婚約したとかじゃないんだから我慢して」
「下がコンクリートなのに全然嫌な顔一つしてないですね新田さん」
「むしろうれしそうに見えるのは私だけ?」
「私もそう見えるよ」
「羨ましいです…」
島村さんそればっかしですね、今回。
「ああ、次はみなみん頭を撫で始めたよ」
「つるつるの禿げ頭を撫でて楽しいのかな」
「私は羨ましいです!」
鼻歌なんて歌っちゃってますよ、新田さん。
先輩は先輩で鼻提灯を作り始めましたし。
「あのぉ…これってジョニーさんのシビレが取れるまでずっとああなんでしょうか?」
「美波もあの調子だし、そうなんじゃないかな」
「うん、ラブラブだね~」
「そうですねぇ…さすがの先輩でもシビレが取れてからもそこまで何かするとは思えないですし、今回はこれでお開きにしましょうか」
こうして第二回の先輩観察は終わったのでした。
正直先輩について得た情報より他の情報の方が多く、衝撃的だった気がします。
武内さんとか、渋谷さんの行ってはならない方への発展、島村さんの着実なレベルアップとか。
おまけ
「それで雄くん。今回はどうしたんですか?」
「あぁ、しきにゃんにシビレ薬打ち込まれた」
「今回はシビレ薬ですか、前回は睡眠薬でしたよね」
「そん時は落ちる前にうさみんとこに転げ込めて何とかなったんだよなぁ…」
「私のところでもよかったんですよ?」
「ん?あぁ、そん時は美城カフェだったんだよ」
「あぁ、そういうことでしたか」
「それにしても…毎回ごとに効力が上がってきてる気が済んだよなぁ」
「そうなんですか?」
「あぁ、せっかくの膝枕なのに感触が伝わってこない」
「うふふ、またいつでもやってあげますよ」
「どうだか、俺が膝貸すことの方が多いし」
「それは先輩が…!」
「わかってるよ。…っとそんじゃ寝るわ」
「もう…おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
なんてことがあったりなかったり
ここ一か月近くの出来事
雪山に調査に行く→テスト→町が雪に埋まる→停電
って感じ。
雪山で吹雪に遭って町でも雪で体が雪に沈む、停電でデータは飛ぶし凍えかけるし、割と悲惨だったけどエンジョイしてました。
これからはまた前回みたいなペースでやれると思います。それではまたよろしくお願いします。