突然ですが、ここで美城のレッスンのステップについて説明したいと思います。
まず、新人やユニット組み立てでまだお互いをよくわかってない頃のレッスンを担当するのが私と先輩です。要するに基礎の部分ですね。
そのあとは本番の期日やメンバーの実力などによって私のお姉ちゃんたちの誰かが担当することになります。
基礎の部分を変態なんかに任せていいのかと思われますけど…
あれで実際効果があるので驚きです。
体力はもちろんつきますし、普段の突飛なレッスンでユニット内の仲も深めるときもあります。そして何より、この美城に生息している変人を嫌というほどここで学習することができます。したくはないですけど!
それで私が何を言いたいかといいますと…
「はわわわわ///」
「~////!?」
「はふぅ…」
「ん、顔が赤いが全員風邪か?いかんなぁ…体調管理と肉体メンテは基本中の基本だぞ」
絶対うぶな初心者にこの先輩(全裸)は向いてません!
今日から新しく私たちがレッスンを受け持つことになったのはNGの島村さんも所属している『ピンキーキュート』です。このユニットも渋谷さんの『トライアドプリムス』同様にNGのメンバー1人にもう二人新人が加わった形をとっています。
「ううぅぅ…///」
「(´;ω;`)」
「あぁ…///」
その2人のうち、今顔を真っ赤に染め上げ先輩から必死に目をそらしているのが小日向美穂さん。そしてもう1人の恥ずかしさに涙さえ浮かべ始めてしまった保護欲を誘う系の女の子が緒方智絵理さんです。
そして最後に熱い吐息をこぼしている島村さん。少し見ない間にレベル上がってませんか?なんのとは言いませんが…。
「先輩、服着てください」
「服は燃えちまってないんだ」
「なにがありましたか」
このレッスンが進まない状況を何とか打破すべく先輩に服を着るよう意見しますが返ってきたのは斜め下の回答。そして無駄に歯を光らせながらのいい笑顔。
何がそんなさわやかな笑顔にさせるんですか。
「ヒント、オイルレスリングだ」
「答えじゃないですか」
引火してボーンじゃないですか。ていうか何をどうしてオイルレスリングする流れになったんですか。
「ってことで俺はこのままだ。すまんな、俺の後光でどうにか頑張ってくれ」
「は、はい!」
「はっ…うぅぅぅ」
「もったいないです!」
先輩に後光なんて存在しないので反応しなくて結構ですよ?
そして返事しようと顔をあげた時に先輩が目に入って俯く緒方さんと返事のために顔をあげたはいいですけど直視できなくて顔を真っ赤にして目がバタフライしてる小日向さんの純粋さがまぶしいです。
そして島村さんは何があったんですか?踏み出してしまったんですか?
どこへとは言いませんけど…
「それじゃあ今から中庭に移動な、今回のレッスンのお手伝いをしてくれるこを連れてきてるんだ」
「わぁ~誰なんでしょうか?」
「ねぇ智絵理ちゃん…なんで卯月ちゃんはあんなに平気なのかなぁ」
「わっわかりません…」
慣れと本性、後は…性癖でしょうか?
何はともあれ中庭へ。
まともなレッスンになるかは別にして…。
そして中庭に着いた私たちを迎えてくれたのは「あれ何ここ、動物園?」と思うほどの動物たち。
そしてその動物たちが
「おっす、待たせたな゛っ!」
全員が全員先輩にとびかかりました!?
小さいものはハムスターからインコから、大きいものは馬やアルパカまで…
その全員が全員先輩に襲い掛かりました!
「え、ジョニーさん大丈夫ですか!?」
「はわっ!?」
「え…え?…え!?」
あまりの状況に付いていけず混乱している皆さん。
ですが冷静になってよく見て見てください…甘えてます、みんな。
つっついていたり噛んだりいろいろ甘えてるにしては過激な行動もあるように見えますが、先輩も笑ってますし動物もうれしそうです。
それよりところどころ天然記念物レベルの生物もいるんですがいいんでしょうか?
「おいおい、久しぶりだからって甘えすぎだろ?今日はしっかり遊んでやるからそう焦るなって」
そう先輩が笑いながら撫でてあげるとしぶしぶという態で先輩から離れます。
「あの、ジョニーさん。このこたちは?」
代表して島村さんが私たちの気になるところを聞いてくれます。
「俺の友達。今日はお前たちのレッスンのためにわざわざ来てもらったんだ」
いや、どこからですよ…
「というわけで今日のレッスンはこいつらと遊び倒すことだ!それじゃあ各々好きな動物のもとにGO!」
と言ったとたん遊ぶという言葉に反応したのかまた先輩になだれ込む動物たち。
「待てお前たち!今日は他にも遊んでくれる子がいるからその子たちのところにも行くんだ」
その言葉に私たちの方にもやってくる動物たち。
そのこたちは先輩にやったように飛びついてこず、こちらを見つめています。
私たちがどうしたものかと思っていると
「ほら、仲良くなるにはまず挨拶だろ?そしたら後は目を合わせて撫でてやってみ?」
その言葉に従い実践してみる私たち。
島村さんは目の前に来たダックスフントに。
小日向さんは三毛猫、緒方さんはうさぎに、私はアルパカに。
あれ?私だけなんか違うような…
言われた通りするとこちらにすり寄ってくる動物たち。一匹来たらもう一匹と次々によってきます。
あぁ…癒されます。これがアニマルセラピー?
「向こうのベンチに餌と遊び道具置いてあるから自由に使っていいぞ~」
そう言って馬やシカにさらわれ流されていく先輩。
それにしても…あの馬黒くて大きくないですか。世紀末覇者拳王のでしょうか?
そして先輩不在のまま進むアニマルセラピー。
レッスンではないですけど悪くないですね~むふぅ~
アルパカさんや羊のその毛に体を預けながら周りの様子を確認します。
まず島村さんは…
あ、フリスビーで遊んでますね。
島村さんが投げたフリスビーを追うのは数頭の犬とワシやタカなどの鳥類。それと先輩。
ん、先輩?
「行きます!そぉ~れっ!」
島村さんの掛け声とともに投げられたフリスビー。
それに雄たけびをあげながら駆けていく犬や鳥、そして先輩。
そして真先にフリスビーに追いつきその手に取ったのは…
「とったどぉ‼」
勝鬨をあげその手に取ったフリスビーを掲げる先輩。
何で犬や鳥に勝てるんですかあの先輩は…
「なぁ!?そんなバカなぁ‼」
そんな先輩の腕に犬が複数匹飛びつき、下がったタイミングを狙いかすめ取る犬。
頭脳プレーですね。
「よしよし、すごいですね!」
そのまま島村さんの元まで帰還する犬。それをすごいとほめ、頭を撫でる島村さん。
「…ちくそい」
足取り重く帰ってくる先輩。
それを
「次は勝てます!ジョニーさん!」
そう言って背中をなで慰める島村さん。
鼻息荒く頬が紅潮していることはここからでも見て取れました。
…ついに触れましたもんね。筋肉に。
そして二回戦目も初めはキャッチするのだがそのあとタカにかすめ取られ、三回戦目はどこからか出てきたキツネザルに、四回戦目も…
「悔しくなんてないんだからなぁア‼」
そう言って走っていく先輩。それを笑ってみている妨害活動に勤しんだ動物たち。
それを残念そうに見ている島村さん。触るのに用いた右手を愛おしそうに見る島村さん。
動物と遊んだあとは手を洗いましょうね、島村さん。
それがそこはかとなく不安です。
島村さんのもとから逃げ出した先輩がたどり着いたのは小日向さんのところです。
小日向さんは動物にエサを渡しながら木陰で一緒に休んでいます。
「はわわっ///」
まだ先輩の裸になれていない純真な小日向さんは走ってくる先輩を見て顔を真っ赤に染めます。…揺れてますもんね。何がとは言いませんけど。
「お、お前らは昼寝か。相変わらずだなぁ」
そう猫たちに言いながら座り込む先輩。
局部が見えなくなったからか少しほっとした顔の小日向さん。
「えっと…レッスンってこれでいいんですか?」
先輩は膝に乗ってきた猫や肩に止まった小鳥をなでたりと暫く無言が続き、ちょっと気まずく感じたのかそう問いかける小日向さん。
「ん?しっかりとしてるだろ?」
どの口が言いますか、どの口が。
「だて、アイドルのレッスンってもっとダンスとか歌をしたりするんじゃ…」
「ん?そんなもんは鬼軍曹をはじめとした青木sに任せるさ。それにこれも立派なレッスンだ」
「?」
「感受性のレッスンだな。動物とのふれあいは子供の心を豊かにするからな。アイドルってのはどれだけ相手に伝えられるかだからまず心がいるんだよ」
「心、ですか…」
先輩…先輩にはちゃんと先輩の考えがあったんですね。
「ってのを言い訳で考えてみたんだけどどう思う?」
思わずずっこける私。
やっぱり先輩は先輩でした。
「え!う、嘘だったんですか!?」
「いやでも考えてもみてくれよ。
歌も踊りも表情も、心を気持ちを伝える術の一つでしかない。だからまずは伝えるものを持とう。そしてそれからはそれを伝える術を磨こう。
…アイドルのレッスンっぽいいい言葉に聞こえるだろう?」
「き、聞こえますけどぉ…」
確かに言うことはまともです。言ってる雰囲気が台無しにしてますが。
「ま、遊びだって立派なレッスンってことにして今はこの子たちと遊んどけ」
そう言って膝の上の猫を小日向さんの膝に乗せ、ゆっくりと歩いてきた黒王号にまたがり去っていく先輩。
そしてその後ろを行軍するかのように付き従う有蹄類たち。
「うん、悪い人ではないんですよね…
裸なのは、恥ずかしいけど」
人はそれを公然猥褻罪の罪人と呼ぶ。
つまり法的に見ると悪い人です。それを忘れないでください。
そのままの状態で先輩が向かったのは緒方さんのところです。
「ひっ…」
自分よりもよっぽど大きい馬に驚き腰が引ける小動物と遊んでいた緒方さん。
「大丈夫だ。こいつは確かに強いが優しやつだから。ほら見てみ?」
「へ?」
そう先輩に言われ視線を向けると黒王号の体に上り遊んでいるリスやハムスター。
黒王号は自分の体をちょろちょろと駆け回る小動物に怒ることもなく優しそうな瞳をしていた。
「動物はもともと臆病なんだよ。ただ子供や群れのためなら全力で命を懸けて戦うけどな」
「そう…なんですか?」
「そうなんですよちえりん。それはこの小さな動物だって同じだ。ちえりんが抱えているそのうさぎだって群れのために戦ったりするんだ。まぁ方法は動物でいろいろだが」
「そう…なの?うさぎさん」
緒方さんの問いかけに何のことかわかっていないそのうさぎは首をかしげるばかり。
「ちなみにうさぎが孤独だと死ぬっていうのも本当な」
「うさぎさんも…寂しいのは嫌?」
その言葉にうさぎは緒方さんの顔に顔をよせ鼻をピスピス鳴らして答える。
なんて回答しているかは私たちにはわかりませんが、
意味深に笑っている先輩には届いているのかもしれませんね。
クールは一度お休みでここから暫くキュートのターン!