気にしてなんかいませんよ?ぜん、ぜん気にしていませんよ。久々のお休みを楽しみますよ?
寂しいだなんて全然思っていないんですからね!」
ってことで番外編
高校時代のジョニーのクリスマスです。
Side.美波
私が東京に引っ越してきてからもうすぐ一年が過ぎようとしています。
パパの転勤によってもたらされた東京への引っ越しですが、それは私にとって大きな転機となりました。
それは先輩との出会い。
銀色のライオンの鬣のような髪、浅黒い肌、目が明いているかも定かでない細目。そして高校生の領域を大きく超越しているよう思われるその肉体。
性格は変態で自分勝手。私を振り回していつも勝手なことばかりする。
そんな先輩との4月から今日までの期間はあっという間で、風のように駆け抜けた日々でした。
今日は12月24日。クリスマスイヴです。
私はあのイベント大好きなあの先輩が何かするのではと予定を開けて、先輩からの突拍子のない誘いを今か今かと待っていたのですけど……
「美波、そろそろ夕飯よ~」
「あ、ママ。今行くね」
リビングから聞こえてくるママの声。
時間はもう午後の7時を回りもうすぐ短い針は8を指そうとしており、もう外は夜の帳に包まれていた。
なのに…!
「なんで連絡の一つもないんですかぁ…ばか」
そんな不満を部屋に吐き捨て私はママの呼ぶリビングに向かった。
「あれ、夕ご飯じゃ?」
リビングで私を迎えてくれたのはクリスマスケーキとホカホカの料理ではなく、椅子に深く座り、机に突っ伏している弟くんと飲み物の用意だけしているママでした。
「夕ご飯はパパが帰ってきてからよ…あら、噂をすればね」
「ただいま」
「お帰りなさい」
タイミングよく帰ってきたパパ。
それに反応し起き上がった弟くんが
「ねぇケーキは?買ってきてくれた?」
そう言ってパパに詰め寄る。けどその手には仕事カバン以外の荷物はない。
ってことは
「ケーキはお母さんの方で用意するって聞いたんだが?」
「え~でも、冷蔵庫にも何にもなかったよ?」
つまりは何もなし?
「うふふ、安心して。ちゃんととびっきりのものを用意しているから。多分もうそろそろ届くはずよ?」
そう言っていたずらっぽく笑うママ。
どういうことかわからず首をひねる私とパパ。
お腹が減ったっと肩を落とす弟くん。
そして部屋に響くチャイムの音。
「うふふ、いいタイミングね♪」
そう笑って玄関ではなくベランダに通じる大きな窓に向かう。
そしてその窓のカギを開けると…
「メリー・クリスマース‼」
サンタクロースの仮装をし、大きな頭陀袋を背負った先輩がそこにはいた。
…って
「先輩!?」
え?なんで先輩がここに!?
「出たな我が家の敵‼」
「おお、雄くん。久しぶりだね」
「いらっしゃい、外は寒かったでしょ?」
先輩の登場に身構える弟くんと平然と受け入れあいさつを交わす私の両親。
「おっす、みなみん。終業式ぶり!」
呆けている私に近づいてのんきに挨拶してくるサンタ先輩。
ここが三階なのにベランダから入ってきたことはいつものことなのでもう何も言いません。サンタクロース衣装なのにノースリーブで短パン、上着の前が全開でその胸板と腹筋が見えていることももういつものことのようなものなので何も言いません。
ですけど…
「来るなら来るって連絡してくださいよ、先輩」
「悪いな、忙しくて」
そう言って私の頭に手をのせる先輩。
その手は外にいて冷えているはずなのに、とても暖かくて優しかった。
「貴様ぁ‼お姉ちゃんに触るなぁ!」
そしてその先輩に飛び蹴りをかます私の弟。
当然その程度のことで動じる先輩でもなく、逆に打ち込んだ私の弟が跳ね返される。
「ちっ…やはりまだ鍛えが足りないか」
「HAHAHAHAHA、俺に勝とうなぞ一億と二千年は足りんわぁ!それにいいのか?俺に攻撃したら飯抜きだぞ?なんせ今日の料理を用意したのはこの俺だからなぁ!」
「うぐうぅう…!」
「あ、先輩が作ってくれたんですか」
「おう、楽しみにしとけ」
悔しげに膝をつく弟くん。胃袋を握られたらもう敵わない。それを実感しているんだと思います。
そうこうしているうちに大きな頭陀袋の中から寸胴やらなんやらいろいろなものを取り出していく先輩。
それをキッチンに運び、あっという間に仕上げを済ませ食卓に並ぶ様々な料理。
琥珀色に澄んだコンソメスープ、上にかぶさったとろとろの半熟卵にかっこよくケチャップで『Merry Xmas』と書かれたオムライス、そして目を引くニワトリ1羽丸々用いて作られたローストチキン、そしてシーザーサラダに海鮮海藻サラダ、伊勢エビで作られたエビグラタン。
さっきまで反抗的だった弟くんも椅子に行儀良く座り食事の時を待ちわびています。
私も先輩の配膳を手伝った後は席につき、ママが飲み物を用意し、パパが着替えてくるのを待ちます。正直待ちきれません!
そしてついに全員が席につきママが
「それじゃあ食事にしましょうか、乾杯!」
「「「「乾杯‼」」」」
それぞれの飲み物が入ったグラスを打ち付け、クリスマスの晩餐が始まったのでした。
「それにしても先輩…こんな料理どこで習ったんですか?」
どれを食べても絶品ですし、伊勢エビや本格的な素材も使われており、外食でこのレベルを食べようと思えばそれ相応の出費が想像できた。
「ばあちゃんと近所の人に習った」
「料理人か何かだったんですか?」
「いや、自称遊び人だってさ」
なんですかその無駄な性能を持った遊び人は…
あ、先輩も似たようなものでした。
「食材はどうしたんですか?作ってもらったんですし、私たちが払いますよ?」
その言葉にちらっとパパの方を見ると『まかせろ』っといったようにうなづいてくれる。
「あぁ、貰いもんだから大丈夫だ。サラダとかで使っている野菜は夏休みに行った農家で作っていたものだぞ」
「そうなんですか!?」
「ああ、手伝ってくれたお礼だとさ」
こんなところで今年できた新しいつながりがまだまだ続いていることを実感できてうれしくなってきます。
「それで先輩、冬休みはまた何かするんですか?」
「ん?どないしよっかね~なんか予定があるなら誘うのやめとくけど」
「いえ!大丈夫です!」
「そんじゃあまたどっか行くから宿題やっとけよ」
「もう終わってます!」
今日からもう何かあるものだと思ってましたから、もうすでに終わらせてます。
「準備いいなぁ…」
そう言って苦笑してシャンパンを飲む先輩。
…ん?シャンパン?
「先輩、何を飲んでいるんですか?」
「シャンパン」
ママを確認。
『てへっ』
パパを確認。
バッ!(メソラシ
「没収!!」
「なぁ!?ご無体なぁ!」
「当然です!今何歳だと思ってるんですか!?」
「17だ」
アウトですよぉ!
周りの人が毒されちゃったらどうしてくれるんですかぁ!
「安心しろ、ノンアルコールってことになってるから」
「なってるからって何ですかそれ!」
「酔わないならノンアルコールも同然だから安心しろって~」
その年齢で飲んでいるということ自体が問題なんですよ!
「まぁそう細かいこと気にしても仕方ないし今日はどっかの水さえもワインに代えれるおじさんの誕生日付近だから大丈夫だ」
「そんな暴論通りません!」
「なんだよぉ…クリスマス前に17人も男を振っておいて」
「そっ!…それは関係ないじゃないですか!」
っていうよりなんで知っているんですか!
「あらあら、美波もモテるようになったのね~」
「そうだなぁ…いつかは嫁に行ってしまうのか…」
「くっ…害虫がこいつのほかにも…」
「ママ!パパ!私まだ誰とも付き合ってませんから!お嫁さんにもまだ行きませんから!」
うぅ…恥ずかしいです。
「そうそねぇ、雄くんがいるもんね~」
「そうか、雄くんがいたか」
「俺は虫よけですか」
「「いえいえ、そういうわけでは」」
ニヨニヨしながら私の方を見る両親。
なんですかその目は…何なんですか!
私と先輩はその、そんな関係じゃないんですからね!
好きとかじゃないんだから勘違いしないでください!
…あれ、ツンデレ?
そんな風に進んだにぎやかなクリスマスパーティ。
「んじゃあ締めにケーキ出しますか」
そう言って冷蔵庫の中にいつの間にかしまわれていたケーキを引っ張り出してくる。
「「「おぉ…」」」
思わずこぼれる感嘆の声。
もうお店のものかと見間違うほど完成度。
滑らかに広げられた生クリーム、その上に広げられた艶やかな輝きを放つイチゴにちらべられたナッツ。そして上に並べられたチョコの家、砂糖のサンタにクリスマスツリー。切り分けられた断面から覗くのは様々なフルーツ。
「おいしそぉ~」
「すごいなぁ…」
「うまそぉ」
各々感想をこぼす私の家族。
確かにすごいんですが…
「どこまでド器用なんですか、先輩」
「欲望に不可能なことはない」
性欲ですね、わかってます…身に染みて。
欲望を本に動く先輩以上に強い、厄介なものはいない。それを私はこの一年で知りました。
ケーキも食べをわり一息。
「そういやみなみん、ほいこれ」
そのとき先輩が投げて渡してきた一つの紙袋。
「先輩…これって」
「クリスマスプレゼントだ、俺が作った服なんだが…よかったら着てくれないか?」
ふと思い出す友達の『男性が女性に服をプレゼントするのはその服を着た女性をぬがせたいからよ』という言葉を思い出してしまう。
いやいや、先輩は変態ですけどそんなつもりはないはずです。多分、メイビー。
「え…その、ありがとう…ございます。それじゃあ…早速着てきていいですか?」
「おう、頼む」
ちょっとだけどんなものかウキウキしながら自分の部屋に戻ります。
先輩の手作りかぁ…ウフフ
なんて期待した3分前の私を張り倒したい気分です。
「…先輩。この服は何なんですか?」
「ん、見て分からないか?」
見て分かるから言ってるんです。
赤いとんがり帽子で先端に白いボンボンがあり、淵にも白いファーが浮いている。
そしてワンピース上の淵などに白があしらわれた赤い服。首本はファーで寒くないようにされているにかかわらず袖なしミニスカート。まぁ裏起毛なので言うほど寒くないんですが…
そして袖がない代わりに設けられた二の腕まである赤い手袋。ミニスカに対しては白い厚手のパンストとごっつい茶色のロングブーツ。
簡単にいえばサンタコスです。
しかもすごいミニです。
「ぶはぁっ…‼」
先輩の奥で弟君が鼻血を噴いて倒れていますが今は先輩です!
「うむ、さすが俺。サイズもぴったしだな」
「ぴったしとかじゃなくて何なんですかこの服は!」
「サンタ」
「そうですけどそうじゃなくて!」
「うし、準備もできたし行くか」
「え、行くってどこに?」
先輩は着替えた私をひょいっと抱え上げると
「それじゃあまたしばらく預かります。お邪魔しました」
「はい、またいらっしゃい」
「美波を頼んだぞ」
「え!?ちょ、パパ、ママ!?」
そうして来た時のようにベランダから外に降りていく先輩。
ここ三階なんですよ~!
ってこの前まで思ってたんですけど慣れましたね、これ。
降り立った下に控えていたのは大きなソリとそのソリにつながれた…イノシシ?
「えっと先輩。いろいろ突っ込みたいところはあるんですが…」
「おいおい、突っ込みたいだなんて性夜だからってはしゃぐなよ、後でな」
「後でもしませんから!それより、どこに行くんですか?」
「ん?孤児院」
「え…」
「ちょっとプレゼント届けにな」
そう言ってソリの上に乗っている頭陀袋を指す先輩。
もう…しょうがない人ですね、ホント。
「なら、早く行きましょうか」
「あいよ」
そうして2人でソリに乗り込み、イノシシでソリを走らせる。
あ、結構早い。
「届けたらその足で星でも見に行くか」
「うふふ、それもいいですね」
「ホワイトクリスマスじゃないが…星を見るにはいい夜だ。
うん、ついでに露天風呂でも入るか」
「いいですね、そんなクリスマスも」
「それじゃあ、まずはガキどもに夢でも届けるか!」
「はい!」
そうしてイノシシソリで公道をかけていく私たち。
さて、警察に捕まるのと私たちが目的を達成するの、どちらが先でしょうか?
ギリ‼間にあったぁ…
けーちゃんたちとのクリスマスにしてもよかったんですがそんなものを書いている余裕が飲み会でなかったためみなみんとの過去話に
みなみんとの過去話は大体こんな感じです。ネタが尽きたころ。余裕がないころに突っ込むか別連載でそのうち最初っからやると思てるよ。
それでは、よいクリスマスがすごせたならまた明日から正月に向けて、頑張りましょうか