「ボケたおすなぁ‼あとまゆまゆはやめてくれ…ホント」
今回は若干まじめな感じだ!
12話のみんなが寝静まった後のお話し
~Side.美波~
みんなが寝静まってしばらくすると、予想通り隣から体を起こす音が聞こえてきます。
「それで雄くん。一人でやるんですか?」
「今2人になったところだな」
そう言って苦笑を浮かべている雄くん。
ここら辺は今も変わりませんね。
そう思うと少しうれしく感じます。
…エッチなところまで変わらないのはどうかと思いますけど。
「さて、そんじゃあ作業に戻りますか」
「そうですね」
「熊ちゃんや、こいつらのお守り頼んだぞ」
そう先輩が年少組にくっつかれている熊に話しかけると片目だけ開け、こちらを一瞥するとそのまま眠りだしました。
「あの熊も知り合いなんですか?」
「あぁ、ちょっと喧嘩したが今じゃ仲良し」
「熊と喧嘩はちょっとじゃないです」
高校時代も似たようなことしていたので私はもう慣れましたけどね。
一度イノシシで登校して来た時は何事かと思いましたよ。
そして、再び水路の清掃に移ると手慣れている2人でやっているからか、やはりスムーズに進む。
「そういえば雄くんと二人っきりって最近あんまりなかったですね」
「そういやそうだな。俺が卒業するまでは大体一緒だったのにな」
「うふふ、そうでしたね」
校内外問わず、ほとんどずっと雄くんと一緒だったと思うと、今の関係は少し寂しいですね。
「私が高校に入学して、水泳部に入部して…それからずっと一緒でしたもんね」
「ん?どうした、寂しくでもなったか、みなみん」
「その呼び方やめてください、先輩」
高校時代初期のお互いの呼び方をし、互いに笑いあう。
「確かに少し寂しいです」
「お、やけに素直」
「今は雄くん1人だからいいんです」
「ならこういうのもオッケーか?」
そう言って私の頭をゆっくりと、優しくなでる雄くん。
その手はパパのそれよりパパみたいで気持ちよく感じる。
「…もっとしてくれても、いいんですよ?」
わざと上目遣いで誘うように呼びかけます。
そうすると先輩は撫でていた手の人差し指で私の額を軽くはじく。
「っ~!」
雄くんのこれはただ人差し指ではじいているだけに関わらず、一般人のデコピンよりも痛いです。軽く涙が出て、その場で転げまわりたくなるくらいには痛いです。
「ははっ、また今度な」
そういつものように笑って、シャベルを振るう雄くん。
「もう…」
少し頬を膨らませながらも、こんな久しぶりの2人っきりのやり取りが懐かしくて、うれしくて笑みがこぼれる。
雄くんの隣に私も並び、同様にシャベルを振るう。
「今年の夏、また2人ででかけませんか?」
「美波が暇ならな、人気アイドル」
そうでした、私の方が暇じゃありません。
でも、
「それでも休みが取れたら約束ですよ?」
「あぁ、約束だ」
そう言って小指を絡めあい、離す。
「それじゃあどこに行くか計画立てましょう!」
「そうだね~、それじゃあ…」
こうして2人、これからの計画などを作業が終わるまで飽きることもなく続けました。
14話その後、北条加蓮の補習の話
~Side.加蓮~
「ふぁはぁ~」
私の口からあくびともため息ともどっちともとれるような吐息が漏れる。
現在時刻朝7時。休日ならまだまだ寝ていたい時間だ。
しかも内容が補習。相手はよくわからない筋肉質な変態だし。
これで元気出せという方が無理だと思う。
「お、ちゃんと来てるな。偉い偉い」
そう言いながら目の前に止まった大型のバイクから降りてきたかの人物。
私たちのトレーナ、雄だ。
「よし、早速これかぶって乗れ」
そう言ってトランクの中からもう一つヘルメットを取り出し私に渡してくる雄。
「え?ちょっと待って、まずどこ行くの!?あと私スカートなんだけど!」
「おいおい、サービス精神旺盛だな」
そういってグッドサインをしてくる雄。
非常にイラッと来る。
「そこのトイレで水着着て来いよ」
そう今度は苦笑しながらコンビニを指す雄。
始めっからいい案があるなら言ってよ!
そう思いながらコンビニにトイレを借りに行くのでした。
「うし、今度こそ行くか。あと寒いからこれも着とけ」
「あ、うん」
返ってきた私に今度は自分が来ていたライダージャケットを渡してくる雄。
「けど、そうすると雄がタンクトップ一枚だけど大丈夫なの?」
「何なら全裸でも俺は一向にかまわんが?」
「私が構うからやめて」
大人しく着ることにし、来てみたんだけど…
「わかってたことだけど大きくない?」
「下なんも履いてないみたいでエロいぞ!NICE裸ジャケット」
大きすぎて袖はダルダルに余るし、裾もスカートよりも下まで届いている。
その姿を裸ジャケットといいグッドサインをよこす雄。
文句の一つでも言おうとしていると
「時間おしてるから早くな」
そう言って私にヘルメットをかぶせバイクにまたがる雄。
文句を渋々噛み殺し、後にまたがる。
「しっかりつかまってろよ?じゃないと落ちるから」
「え?」
そうしてエンジン音を高らかに上げ、走り出す。
かなり容赦のないスピードで。
慌てて雄の腰に腕を回し必死にしがみつく。
「ヒャホー!やわっけぇ‼」
何か雄が叫んだ気がするが、それを聞き取る余裕が私にはなかった。
「…死ぬかと思った」
「HAHAHAHA、あんぐらいじゃ死なない死なない。俺なら」
つまり一般人は死ぬってことじゃない!
「ま、借りれる時間が制限あったからな。ちょっと急いじまったぜ」
「ここでやるんですか?」
私たちが暴走バイクでやって来たのは水族館とプールが併設された施設で、結構人気のある場所だった。私も友達と何回か来たことがある。
「まだ開園時間じゃないけどどうするの?」
時間はまだ7時過ぎ。開園時間は9時であり、まだまだ時間がある。
「あぁ、開けるまでの時間を使わせてもらえることになってるからこれでいいんだよっと」
そう言いながら関係者入り口から普通に入っていく雄。
「え!?いや、どうやったの!?」
「コネ」
たった2文字で説明されてしまった。分かりやすいけど意味が分からない。
「どうやたらこんなところにコネが持てるのよ…」
私のつぶやきはむなしく消えて行った。
それからよくわからないけど、その後、たぶんこの施設でもかなり偉い人と雄が話をし、従業員用の更衣室を借り水着に着替え、集合場所に行ったんだけど…
「…ねぇ」
「ん?」
「何この装備一式」
「ダイビング用のドライスーツにマスク、ウェイトだな。早速身に付けてくれ」
いや、なんでダイビング。
とか思いながらも、用意されていたスーツにブーツ、手袋、マスクなんかを雄に手伝ってもらいながら身に付けていく。
「ねぇ、私はそのジャケットとボンベ付けなくていいの?」
「ん?ああぁ、そのことね。ジャケットの扱い方までいちいち説明してる時間ないし、俺がれんれん抱えて潜れば大丈夫だ、前もやったし。ほら。こいつ咥えてみ」
そう言って渡されたのはボンベから延びているマウスピースのような機械。
「それレギュレーターって言ってな、それこの向きで咥えて口呼吸してみ」
言われた通りやってみると、普段とは幾分感覚が違うが呼吸ができる。
「んじゃ次、耳抜きだな。鼻押さえてそのまんま鼻から息だして、耳がポンって感じになれば成功だ」
やってみるがなかなかならず首をかしげていると
「もうちょい思いっきりやっても大丈夫だから、頑張ってみ」
言われた通り吹き込む息を強くすると耳の中でポンって音が響きびっくりする。
「ん、できたな。そんじゃあ行こうか」
「行くってプールに?」
「いや、水槽の中」
「え?」
たぶんこの時私は、今日一番間抜けな顔をしていたと思う。
「本当にここで潜るの?」
「マジマジ、大まじ」
私たちの下に広がるのは水族館に展示してある水槽の一つ。
「俺が先はいるから、そのあと俺のそばに降りておいで」
そう言ってマスクをし、押さえながら飛び込む雄。
「ほら!寒くないから早く来いよっ」
そう言ってきてたジャケットを膨らまし水面に浮いている雄。
私も深呼吸し、決心をし飛び込んだ。
耳に響く泡と水の音。そして一瞬の冷ってした感触。そして一拍遅れて腰に感じる力強く、頼もしい感触。
「ぷはっ」
「どうだ、寒くないだろ?」
「うん、思たより全然」
「それじゃ、さっき上でやったおさらいやるか。レギュ咥えて水面に顔をつけて息してみよっか」
「う、うん」
「大丈夫だ、ちゃんと支えてるし息もできるから」
緊張しながらもレギュレーターを咥え、呼吸を整えたのち、水面に顔をつける。
私はびっくりした。
さっきは余裕が無くて気付かなかった。
水中のこの光景に。
カラフルなサンゴと岩礁の間を泳ぎ回る色とりどりな小さな魚。
そして大きく、ゆったりその上を泳ぐマンタ。
この施設に何回か来て、きっと何度も友達と見た光景なんだろうが、全く知らない景色がそこには広がっていた。
そこで、私は一度雄に水面にあげられる。
「どうだった?」
にやにやした顔で私に問いかけてくる雄。
…絶対わかってるでしょ、もう。
「…すごかった」
「潜ったらもっとすげぇぞ?
ってことで、次は潜るけど耳抜きは耳が痛くなる前に定期的にな。あとしっかり俺の腕を離さないこと。いいか?」
普段と違いまじめなその確認にしっかり頷き、レギュレーターを咥え直し、しっかりと雄の腕を握る。
「それじゃあ潜ろうか」
そうして雄のジャケットから空気が抜け、少しずつ海中に沈んでいく。
耳に響く泡の、そして水の音。それ以外何も聞こえないが、視覚から入ってくるものがそれを凌駕していた。
なんと言えばいいのだろうか?
陳腐でいいならまさに絶景。
そんな景色に見とれていると隣から肩をたたかれ、雄の方を見ると雄が耳を指さして見せた。
あ、夢中すぎて耳抜き忘れてた。
急いで耳抜きを行うと雄が指でオッケーと聞いてくるのでこちらもオッケーと返し、さらに潜っていく。
どれくらい潜っただろうか?どれくらい進んだだろうか?
上を向けば照明が波で揺れ、下を向けば自分の影が海底に映っている。
そして様々な生き物たち。
何もかもが私の初めてだった。
「で、どうだったよ今回は」
水中から戻り、機材を雄は片づけながらそう問いかけてくる。
「疲れてるのに気づかないくらい楽しかった」
あの後水中から上がってみると思った以上に疲れていたのか、私はへたり込んでしまい、片づけを雄に丸投げする形になってしまっていた。
「そりゃよかった」
自分のことのように屈託のない笑顔を浮かべる雄。
「…ねぇ」
「ん?」
「本当の海もこんな感じなのかなぁ?」
「いいや、全然」
「え?」
私の問いに返って来たのは否定。だけどそれは
「海はもっとすごい」
私の心を躍らせる否定だった。
「ここはあくまで人の手でできるだけ海に近づけた世界であって海の世界じゃない。まぁその分見栄えは良くなってる部分もあるんだけど…でも、自然の方がもっとすごい」
「…見て見たいかも」
「なら、ライセンス取らないとな」
「え、そんなのいるの?」
「当然。ま、一週間もあればとれるもんだから安心しろよ」
「簡単?」
「難しくはない」
「なにそのビミョーな返答」
そんなふうに笑っていると、片づけ終わったのかベンチに座る私の隣に座る雄。
…全裸で。
「ねぇ、水着は?」
「一枚ぐらい誤差だ」
これが誤差で通るなら、きっと50歳女性が17歳と名乗っても誤差で通るであろう。
「あ~あ、でも体力付けなきゃなぁ~」
「ま、海で潜るんならもっと水に慣れてなきゃダメだな」
「うん、頑張る」
「おう、頑張れ」
「頑張れじゃないでしょ?私をその気にさせたんだから…ちゃんと責任とってよね」
その私の宣言をこの人は
「それより髪から落ちた水滴が鎖骨を流れ、谷間に降りていくのってエロいな」
ぶっ壊しにして行きましたとさ。
ていうか、
「どこ視てるのよ」
「鎖骨から谷間」
「目が細すぎてどこ視てるかわからない」
「HAHAHA、よく言われる。あと…任せとけって」
そう言って私の頭に手をのせる雄。
その時ちらっと見えた彼の瞳は
海のような、空のような、澄んだ青だった。
北条加蓮のオリ主への認識
「責任、とってよね?」
最長記録更新!
長い割にネタシーンがねぇ!?
うん、次回はふざける。