ルーキートレーナーに幸あれ   作:bakabakka

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まさか水路清掃だけで三話も使うことになるとはかけらも思ってなかった馬鹿です。


ルキ「これはこれでいいですね」

 

あの後も、先輩にアドバイスを貰ったり、手伝ってもらいながら、そしてたまにふざけながら作業を続け、時間はお昼となり今朝来た時のように軽トラの二台に乗り町の集会所のところまで戻ってきました。

 

「わぁ~!すっごい!」

 

そんな私たちを迎えてくれたのは町内会の奥様方が作ってくれたと思われる料理の数々。

真先に歓声を上げた赤城さんに続き、年少組、それを追いかけるように美嘉さん、そしてニュージェネレーションズが続きます。

 

「よっぽどお腹すいていたんですね」

「私たちもお腹ペコペコだけどね~」

 

そう言ってお腹をさする高森さんと相葉さん。

そして

 

「…杏はもう死にそう」

「杏ちゃんダイジョブ~?」

 

先輩の肩に担がれているHP全損状態の双葉さん、そしてそれを隣で心配するまだまだ元気そうな諸星さん。

 

「…」

「あのぉ…重くないですか?」

 

そして先輩の逆の肩には沈黙して動かない橘さん。レッスン(?)などで改善されてきているといってもインドア派の鷺沢さんはその腕に片手で横抱きにされ、重くないか心配していた。

 

「飯の前にちゃんと手を洗えよ~」

 

先輩が総重量100キロをゆうに超える重量を顔色も変えずに平然として、注意を促します。この光景はもう見慣れましたね、なんでか。

えぇ、その上もう片方の腕で大量のシャベルを抱えていてももう驚きませんよ。

 

「今年もありがとうございます」

「いいっていいって、こっちこそ毎年手伝ってもらってるんだ。こんぐらいのお礼させてくれや」

 

そして料理のお礼をしている新田さん。これって毎年のことなんですね。

それと新田さんもまだまだ余裕そうなんですね…私でも疲れてるのに。

 

これでもジム通いが趣味なだけあって鍛えてるんですけどね。少し落ち込みます。

そして…

 

 

「コケ」

「ブモ」

 

ニワトリは何でイノシシの上に乗ってるんですか?

しばらく見ないと思ったらどこから連れて来たんですか、ほんと。

 

 

 

 

 

 

食事はバイキング形式であり、多くの料理が机に並べられていた。

並んだ二つの寸胴の中にはそれぞれ湯豆腐と豚汁。

その横には川魚の串焼き、ポテトサラダ、牛肉のワインにのようなもの、山菜のお浸しに天ぷら、そしててんこ盛りのおにぎり。

 

手を洗ってきた私たちは各々好みのおかず、おにぎりを取り、外に敷かれていたござに座り、

 

「いただきます!」

 

「「「「「「いただきま~す!」」」」」」

 

先輩の合図で一斉に食べだすのでした。

 

 

「ん~!おいしー!」

「疲れた体にしみますね~」

「うん、そうだね」

 

叫びをあげる本田さんにぽわぽわしてる島村さん、そして言葉少なくも満足そうな顔の渋谷さん。

 

「はぐはぐ!もぐもぐ!」

「莉嘉、そんなに慌てて食べないくてもダイジョブよ」

「お代わり取りに行ってくるです!」

「あ、みりあも―!」

 

お皿にたくさん持ったおかずとおにぎりを目を輝かせ掻き込む莉嘉さんとそれを宥める美嘉さん。そして早くもお代わりに駆け出す市原さんに赤城さん。

子供たちは元気ですね~。あ、そんなにお肉取らないでください。私も欲しいです。

 

「杏ちゃん、あ~んして♪」

「あ…ん」

 

そして未だに復活しない双葉さんは諸星さんに餌付けされていた。

…ペットと飼い主みたいですね。

 

「これお花をてんぷらにしてるんだぁ」

「おいしいですね、夕美ちゃん」

 

山菜料理の中には山の花々を利用しているものもあり楽しそうに食べる相葉さんと高森さん。相葉さん、その天ぷら独り占めにしないでください。私たちだけじゃないんで。

 

「文香ちゃん、串焼きは串から食べてこそだと思うよ、雄くんみたいに骨ごと食べよるのは違うと思うけど。ほら、こうやって…」

 

串焼きに食いつき、身だけとって食べる新田さん。手慣れてるんですけど…

どこかエロいです。

 

「…こう、でしょうか?」

 

新田さんのまねをしてその小さな口を広げて串焼きにかぶりつく鷺沢さん。

うん、こちらもエロいです。

 

「ありすちゃん、口元汚れてるよ」

 

そう言って串焼きにかぶりついて口元が汚れた橘さんの口をハンカチでぬぐってあげている新田さん。

うん、和みますね。

 

そして問題なのは…

 

 

 

 

 

「ぎゃはははは!相変わらずいい飲みっぷりじゃねえか!」

「HAHAHA‼ジジイどもに負けるかよぉ!」

「いい度胸じゃねぇか!」

「飲み比べといこうぜクソガキ!」

 

一升瓶を手に飲み比べを始める先輩と現地の方々。

そしてなぜか全員全裸。

先輩を除くと平均年齢が60を超えているとは到底思えないような体つきが並びます。

皆さんここが野外なのわかってます?まだ五月始めの暖かくとも暑くはない時期ですよ?

 

「お姉ちゃん、私も飲みたい!」

「はいはい、莉嘉は烏龍茶ね。あとあの汚物からは目をそらしましょうね」

 

年少組の目をふさぐ美嘉さん。こういうことは手慣れてますね。

 

「おじいさん方もすごい筋肉ですねぇ…はふぅ」

「しまむー!お願い、帰ってきて!」

「卯月しっかりして!…でもやっぱりジョニーが一番がっしりしてるんだね」

「しぶりんも冷静に観察しないでしまむーをちゃんと止めて!」

 

恍惚とした顔で街灯に誘われる蛾のようにふらふらと進みだす島村さん。

それを必死に止めようとする本田さんと止めながらも観察もしている渋谷さん。

まずは島村さんをどうにかするのが先決だと思うんで頑張ってください。チームでしょ?

 

「キャーキャーキャー!」

「ジョニーさんのは慣れましたけど他の人は無理です~!」

 

真っ赤になった顔を手で覆い悲鳴を上げる相葉さんとさらっと先輩の裸は平気宣言をしている高森さん。

そんなに脱いでるんですか、先輩。

回想・・・・回想終了。はい、そんなに脱いでます。

 

「…すごい、ですね」

「文香さん!見てはだめです‼」

「これも例年通りなんですよ」

 

呆然と光景を見てる鷺沢さんとその目を必死に隠そうとする橘さん。

そしてこれも例年通りだと笑顔で言ってのける新田さんに戦慄。

 

「おい!美波とふみふみも飲もうぜ!」

 

とそこに片手で一升瓶三本もった先輩が突っ込んでいく。

そこに立ちふさがる橘さん!さぁ!橘さんは先輩の進行を防ぐことができるのか!?

 

「なんだ?あーたんもお酒が飲みたいのか?正直に言えよ~いつでも飲ませてやったというのに」

「そんなわけないじゃないですか!あとあーたん止めてください!」

「遠慮すんなよ、俺なんて下の毛が生え始めた日にはもう酒飲まされたんだぜ?」

「~‼⁉」

 

よくわからない悲鳴を上げる橘さん。そりゃ小学六年生がドアップで大人の男性の下腹部を見たらそうなるでしょうね。

 

そしてオーバーヒートした橘さんを突破し新田さんと鷺沢さんのもとにたどり着いた先輩。

 

「それじゃあ貰いますね」

 

そう言って平然と飲みだす新田さん。

…ってマズイ!新田さんが子供モードになってしまいます!

 

「…私も、少しだけ頂いていいでしょうか」

 

そして鷺沢さんまでも飲み会に参戦。

ん?そういえばこのお二人まだ19歳だったような…

 

「けーちゃんも飲むか、飲むだろ、飲んどけって」

 

考え事をしようとした一瞬をつかれ、先輩の接近を許してしまいます。

その手にはなみなみと注がれたお酒が!

 

「ちょっと待ってくだ!?」

 

抵抗する間もなくコップの中身を口に流し込まれます。

けど…

 

「…これ、お酒じゃないんですけど」

「あぁ、ただの水だな」

 

なぁに平然とだましてくれてるんですかこの先輩は…!

 

お?っていうことは鷺沢さんと新田さんの飲んだものも…

 

「ふふっ、少し暑くなってきましたね~」

「…そう、ですね」

 

あ、あの顔の赤さはお酒ですね。だけどまだ新田さんは酔っぱらうまでいってません!

まだ間に合います!

 

「ここでとれたお米使って作ったお酒なんだ。うまいだろ?」

「あ、やっぱりそうだったんですね」

「…お酒は初めて飲んだんですが、おいしいんですね」

「そりゃ人様が丹精込めて作ったものなんだ。好みで合う合わないはあってもまずいわけはないだろ?」

「これって私が収穫した分も使われていたりしますか?」

「もちろん、ふみふみも今年もいろいろと人手のいる工程は手伝いに来る予定だから数年したら自分の収穫したコメのお酒が飲めるぞ」

「そうですか…それは、楽しみです」

 

そう笑いながらちびちび飲んでいく2人と瓶でラッパ飲みしていく先輩。

あれ?まともな飲み方してる。

と、安心して少し振り向くと、

 

 

 

酔いつぶれたおじさん方が寝ていた。

 

 

 

先輩はこの人たちと飲み比べをしていたはずです。向こうが全員潰れているということは…

 

「全員抜きしてきたんですかあの人」

 

一体どのくらい飲んでるんでしょう。想像しただけで怖いです。

と震えていると

 

「大丈夫だよ、心配しなくても。量は飲んじゃいないから」

 

そう笑いながら隣に座り説明してくれるおばあちゃん。

何でも通常の日本酒程度の度数のお酒で飲み比べたらいくらあってもお酒が足りないため、スピリタスで行っていたらしい。量より質作戦である。

 

ですけど…スピリタスなんてもので飲み比べを行えば、ちょっとした殺し合いであることをこの人たちはわかっているのだろうか?

 

 

 

とまあ、にあり―大人組みがお酒を飲んでいるとここでとんでもない事実が双葉さんによって判明する。

 

「それより帰りの運転どうするの?」

 

この一言により飲んでいる三人以外固まってしまった。

そして真先に早期に戻った美嘉さんは

 

「ちょっと!帰りどうするの!?まさか泊じゃないでしょうね!」

 

と先輩に掴みかかったんですけど先輩は

 

「ん~大丈夫大丈夫~。ちゃんと昼からの予定も考えて合ってちゃんと晩までには帰る予定だから。そんじゃ、みんな食事も終わってるみたいだし移動するか」

 

そう言って立ち上がり、瓶に残ったお酒を飲みほし「ご馳走様」。

私たちも合わせてご馳走様を言い、歩き出した先輩の後を追い歩いていく。

 

そのまましばらく歩くと、小高い丘の草原に出る。

そこからは田んぼや民家が見渡せ、風も気持ちい。

 

「それじゃ、寝るか」

 

そう言って大の字に寝っ転がる先輩と新田さん。そして先輩は速攻で花提灯を膨らまし始める。

 

「え?みなみんここでお昼寝するの?」

「うん、毎年そうなんだよ。ここは陽が当たってぽかぽかで気持ちいし、それに…ほら」

 

新田さんが笑いながら先輩の方を見るのでそちらに目を向けると、先輩を囲んで動物たちが集まって寝ています。

 

先輩の連れてきていたニワトリをはじめ、スズメやトビなどの鳥類、イノシシやシカの親子。それに熊までいる。

 

なんですかこのムツゴロウさん空間。なんか暖かくて幸せそうな空間ですね。

 

「毎年寝てたらいつの間にかこうなっちゃったんです」

 

そう言って笑う新田さんのもとにも動物が集まってきている。

こっちには犬や猫も来ている。民家から抜け出してきたんでしょうか?

 

「さ、ゆっくり休憩しましょう」

 

そういってあくびを一つし、先輩の横で本格的に眠りだす新田さん。

そしてすでに寝ている双葉さん。年少組も続き、恐怖することもなく熊などに抱き着いて眠りだす。

動物も一瞬目を向けるんだが、振り払ったり逃げることなくそのままになっている。

 

 

その光景を見ていると私たちもお昼寝してみようかって気になってくる。

 

 

 

こうして最終的に動物や人が入り乱れて塊になって眠るなんていう非常識な休憩を行い、酔いも覚め、目も覚めた先輩によって起こされ、現地の方にあいさつとお礼をし、美城に帰るのでした。

 

たまにはこういうのもありかもしれませんね。

 

 

 

 

レッスンでは絶対ないですけど!





次回から単発バカ話に戻ります。または思いつかなきゃ先に美波とジョニーの出会いの話でもします。

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