さよならのゆくえ   作:ニケヒデ

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 はい!これがホントのホントにラストです!
 前書きなので先に言っておきます!後半[epilogue]部分からはゲーム「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続」のいろはルートベストエンドをいろは目線から書いたためセリフや演出などのネタバレが大いに含まれています。
 これを読んでいる方はいろはが大好きな人ばかりだと思うのできっとクリアしていると思いますが、万一やっていない、クリアしていない方はぜひプレイしてから読んでください!
 じゃないとぼくちん怒られちゃう!(笑)(わかる人にはわかるセリフ)

  それでは注意事項も言ったので『さよならのゆくえ』最終話です!


『さよならのゆくえ』 -after story2-

 階段を上ると、空中廊下へと続く踊り場に達した。硝子戸の方を見るとその人は手すりに寄りかかり、鮮やかにオレンジ色に染まった空を見ていた。

 普段はどうしようもなくカッコ悪い先輩が、その時は何かを決めたような顔をしていて少し大人びていた。

 雰囲気を壊したくなくて、あるいはそこに着くのが怖かったのか、わたしの手は硝子戸をゆっくりと開ける。

 

「…おう」

 

 先輩はこちらを一瞥してぶっきらぼうに一言。

 

「先輩…」

 

「悪かったな…急に呼び出して」

 

「いえ…」

 

「まぁ…その…なんだ?送辞。すげぇ良かったぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「なんか初めて報われたって感じしたわ。俺の学生生活」

 

「先輩にはほんとお世話になりましたからねー♪ちゃんと伝えなきゃいけないなと思いまして♪泣いちゃいましたか?」

 

「泣かねぇよ」

 

「ほんとですかー?わたしは先輩がいなくなると思うと涙が溢れそうでしたよー?」

 

「あざとい…それに別に卒業してからも会おうと思えば会えるだろ。同じ千葉にいるんだから」

 

「はっ!なんですか卒業してもお前のそばにいるからいつでも会いに来ていいんだぜってゆうアピールですかそんな甘いこと言われたらいつでも会いに行ってしまいそうなので甘やかさないでくださいごめんなさい!」

 

「…最後まで俺はフラれんのかよ…ってかお前毎回毎回よく噛みもしないで言えるな」

 

「ふふっ♪」

 

「ふん…」

 

 わたしと先輩は少し可笑しくなってちょっと笑ってしまう。

 

「…先輩、こうゆう掛け合いも最後ですね…」

 

「あぁ…」

 

 正確には先輩が言ったようにこれからも機会はある。でも機会はあってもこの掛け合いはきっと最後になる。

 

 

「先輩…知ってましたか?これ実は先輩のことフッてなんかいないんですよ?」

 

「………」

 

「その沈黙…やっぱり気づいてたんですね…」

 

「………」

 

 先輩はずっと黙ってこちらを見ている。ちゃんと聞いてくれるんだ。じゃあわたしも言わなきゃいけない。わたしが見つけた『本物』について。

 

「先輩…わたし先輩に言わなきゃいけないことがあるんです。わたしがここで見つけた『本物』を…」

 

「『本物』…」

 

「はい。先輩、覚えてますか?あのクリスマスの時の事」

 

「あぁ…」

 

「あの時からわたしのそばにはずっと『本物』があったんです。でも、それがなんなのかわからなくて…それを確かめたくて葉山先輩に告白しました」

 

「あぁ…」

 

「そしたら言われちゃいました…『それがいろはの本当の気持ちなのかい?』って…」

 

「………」

 

「それでようやくわかったんです…本物の気持ちってものが。わかった時には辛くて泣いちゃいました…わたし気づくの遅すぎたなって…だってそうじゃないですか…わたしよりずっと魅力的な二人がその人のそばにはいたんですから…」

 

「一色…」

 

 先輩が何か言いたそうにわたしの名前を呼んだが、わたしは話を続ける。

 

「でも、少しでも二人に追いつきたくて、何度も何度も会いに行ったり、葉山先輩を理由にデートにこじつけたりして…その時はすごい楽しいんです。幸せでした。あぁこんな時間が一生続けばいいのにって…それで、離れる度に自覚するんです。わたしは偽物を理由にして利用してる、ずるい奴なんだって…」

 

「だから、そんなずるいわたしが大好きな雪ノ下先輩や結衣先輩と同じようにその人を好きでいていいのかって思ったんです…それで…諦めようとしました。それがわたしにできる罪滅ぼしみたいなものなのかな、なんて柄にもなく思ったんです…」

 

「それで、その事を二人に言ったら怒られちゃいました。そんな事をされても私達は嬉しくない。あたし達だっていろはちゃんの事が好きなんだから、そんな誰かさんみたいなやり方は嫌いだって。誰かを見ているみたいで凄く胸が痛くなるって言われたんです。初めてでした…こんなに自分の事を、こんなずるい自分を好きでいてくれる人達に出会えたのは…それも全部先輩のおかげです…」

 

「それは…違う。例え俺と会わなくたってお前は」

 

「違います…違うんです。例えばとかそんなのはどうでもいいんです。自分の事を可愛く造り上げて、外面ばかり造って、中身のなかったそんな偽物だったわたしを変えてくれたのは先輩なんです…あの日放課後に先輩の声を聞いてから、わたしは変われたんです…」

 

「だから決心しました。フラれてもいい。伝える事さえ諦めるのはあの大好きな二人に失礼だから。だから伝えます」

 

 

「わたしは先輩が、比企谷八幡先輩が大好きです。誰にもこの気持ちは負けません。例えあの二人にだって…」

 

 

 やっと言えた。これで後悔はない…これでわたしもちゃんと前に進めるんだから。そのためにちゃんと先輩の返事を聞こう。それでわたしは…

 

 

「…一色…俺さっきまで四扇と会っていたんだ。ちょっと前に告白されてその返事をするために」

 

 

「…はい…」

 

 そっかやっぱり…きっとそれで先輩は…

 

「それで…俺はこう言った。『今好きな奴がいるから…』って」

 

「え…?」

 

「そいつはいつの間にか俺の隣にいて、最初は妹みたいな、あざとい小町のような奴だと思っていた」

 

「でもそれは違った。気づいたのは奉仕部が無くなるちょっと前から。そいつと会えないのを寂しいと感じた」

 

「その瞬間からそいつから小町の影が消えて、俺はそいつを一人の女の子として見るようになっていた」

 

 

 

「そして俺はそいつを…お前を好きになっていた」

 

 

 

 

 

 

「一色。俺もお前の事が好きだ。だから…付き合ってほしい」

 

「せん…ぱい…」

 

 その言葉を聞いた瞬間わたしは力が抜け同時に涙が溢れだした。

 

 

「またか…泣くなよ…」

 

「だ…だってぇ…うぅ…えっ…ぐ」

 

「ほんとお前俺の前で良く泣くやつだな」

 

 先輩はそう言ってハンカチを渡してくれる。わたしはそのハンカチで涙を拭きながら

 

「せんぱいが悪いんです!全然そんな素振り見せないし、わたしばっか頑張ってて…」

 

 ちょっと恨み事をたれる。

 

「いやだからそれはね?中学の時のこともあるし…」

 

「言い訳はいいんです!まったく…先輩は…」

 

「まぁ俺だからな」

 

「む……せんぱいもう一回…」

 

「はい?」

 

「だからもう一回好きって言ってください!じゃないとわたしも信じられません!」

 

「はぁ…?マジで?」

 

「マジです!」

 

 先輩は一瞬困ったような顔をしてハァっとため息をつき言った。

 

 

「一色好きだ。俺と付き合ってくれ」

 

「なんですか告白してるんですかわたしも大好きなのでとても嬉しいです付き合ってください」

 

「またそれか…ってか今度はオーケーされんのかよ…」

 

 そう言って先輩はわたしの頭をぽふぽふと叩く。

 

「えへへ♪」

 

「…まぁそれじゃあそろそろ奉仕部戻りましょうかね…」

 

 先輩は座り込んでいたわたしを立ち上がらせ、硝子戸へと向かう。

 

「あ、そうですね…二人待たせちゃってるし…」

 

「多分いろいろお小言言われるんだろうなぁ…」

 

「一緒に聞いてあげますよ♪」

 

 そう言ってわたしは前を歩いていた先輩の腕に手を回す。

 

「っ…///ほんとお前ってあざとい…///」

 

「あざとくないです!彼女なんですからいいんでしゅ///!」

 

「自爆なんだよなぁ…」

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

[epilogue]

 

 その後先輩は大学へ進学。相変わらずのぼっち生活を送っているらしい。一人暮らしをしていて、小町に会えないといつも言っている。もちろんわたしも暇さえあれば遊びに行っている。

 わたしはと言えば、もう子どもみたいに甘える生徒会長ではなく、頼られる生徒会長になるために、あれから髪を伸ばし、肩くらいだった髪も今では雪ノ下先輩くらい長くして、仕事もしっかり務め上げた。

 

 

 そして今はわたしが二年間過ごして一番思い出が残っている場所。この生徒会室で彼を待っている…

 椅子に座って生徒会室を見渡す。もう少しでわたしも卒業なんだなーと思いながらこの教室を見るといろんな事を思い出す。目を見張るのは無理やり戸部先輩に持ってこさせた冷蔵庫やハロゲンヒーター。

 

「あの時はまだ先輩のことなんて何とも思ってなかったのになー。それが今ではこうしてその先輩をずっと待ってるんだもん。ほんといろんなことあったなー」

 

 くすりと笑いながら独り言を喋っていると誰かがこちらへ近づいてくる足音が聞こえる。

 

「来たかな♪」

 

 生徒会室のドアがノックされその人は入ってきた。

 

「えぇと、ど、どーも…」

 

「あっ、せんぱーい!おっそーい!」

 

 なんて懐かしい言葉を先輩に浴びせてわたしは先輩に寄り添った。

 

「大学ってヒマなんじゃないんですか?」

 

「いや、これでも五限ぶっちしてきてるから」

 

「先輩だったらもっといけますよー。次は四限ぶっちを目指しましょうねー?」

 

 なんて無理難題を先輩に押し付けるのは日常茶飯事だ。当の先輩はわたしと話しながらも生徒会室を見渡している。

 

「懐かしいんじゃないですかー?先輩、学校来るのって二年ぶりぐらいですよね?」

 

「あぁ」

 

「雪ノ下の姉みたいなレジェンドはともかく、俺みたいなのが顔出したってしょうがねぇしな」

 

 また、この人はこんな自虐を…結構先輩生徒会からは信頼あったから歓迎されると思うんですけどねー…

 

「……っていうか、お前一人か」

 

「一般入試前日ですし、現役ちゃん達はみんな職員室に駆り出されてます」

 

「推薦組は気楽でいいな」

 

「はい」

 

「で、答辞なんですけど、こんなもんでいいですかねー」

 

 そう言いながらわたしは持っていた二枚の原稿を先輩に渡す。

 

「……え、なに急に。答辞?」

 

 先輩は何事?と困惑した様子だ。

 

「はい。添削してもらおうかなーって」

 

「大事な相談があるとか何とか言ってなかった?」

 

「それがこれです」

 

「……俺の五限返して?」

 

 なんて文句を言いながらちゃんと最後まで読んでくれる先輩。変わらないなぁ…

 

「どうでした?」

 

「いいと思うぞ。お涙頂戴の魂胆が丸見えだが、お前らしくて」

 

 相変わらず言葉が悪いがこれが先輩の褒め言葉なのはわかっている。

 

「そうですか。よかった……」

 

「……これでほんとのほんとに終わりかぁ」

 

 生徒会長としての仕事はこの答辞が最後。答辞も自分の言葉で高校生活を締めくくりたかったから文章はほとんど自分で考えた。だから先輩にオーケーを貰えたってことはこれでもう準備は万端。

 

「我ながら『よくやったー!』って感じなんですよねー。二年連続で生徒会長やったのなんて総武高校史上でもわたしだけですよ!」

 

「始まりはお前の生徒会長当選を阻止するっつー依頼だったのにな」

 

「そうそう。そうなんですよねー。うまい具合に先輩にそそのかされてー」

 

 ほんとあの時は絶対にやりたくなかったのに。でもそれがわたしと先輩を結んだきっかけだったんだから今ではやって良かったと心底思う。

 

「ああ。あれは我ながらよくやった」

 

 先輩を見ると変な顔をしながら自画自賛していた。

 

「ふふ」

 

「………」

 

「……そう、だから……、ね、先輩」

 

 もう一度先輩に、今度はさっきより近く寄り添い

 

「?」

 

「二年間、務め上げたご褒美ください」

 

 おねだりをする。

 

「えっ……」

 

「わたしを生徒会長にしたのは先輩なんですよ?」

 

「頑張ったご褒美ぐらい、くれてもいいと思いません?」

 

 それも今までで一番とびきりあざとい笑顔と声で。

 

「こ、ここでか?」

 

 先輩はいつもの『あざとい』も忘れ、誰もいないのに周りをキョロキョロと見渡す。 

 

「いいじゃないですか、誰もいないんですしー」

 

「………」

 

「……………わ、分かった」

 

 そう言って先輩はわたしの肩を掴む。掴んだ手が少し震えている。

 

(先輩、緊張してるんだ)

 

「その……二年間、ごくろうさん」

 

「………」

 

 それはぶっきらぼうな労いの言葉。それも先輩らしくてわたしはくすりと笑ってしまう。

 そして先輩は緊張しながらもわたしの唇にそっと…

 

「いろはせんぱーい、この書類なんですけどー」

 

「……!?」

「……!?」

 

 急な来訪者によって先輩は離れてしまう。

 

「………」

 

 その来訪者は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐさまニヤッとわたし達を見て

 

「……失礼しました~」

 

 と来訪者はドアを閉めて出ていった。…あぁ…これは後で絶対に冷やかされる…

 

「………」

「………」

 

 なんて考えながらわたしと先輩はドアの方をしばらく見てぼーっとする。

 

「……なんか、今ので空気おかしくなったし、もういい?」

 

 先輩は怖気づいたのかいつものヘタレ先輩が出てきてしまった。でも今日はだめ。ご褒美なんだから。

 

「……ふふ、だめです。むしろ現生徒会長には感謝しなくちゃですよ」

 

「だってほら、先輩の緊張ほぐれましたし」

 

 その証拠に先輩の手の震えは治まっていた。

 

「だから……」

 

 だからもう一度。もう一度だけ先輩におねだりする。

 

「……今度こそご褒美のキス、ください」

 

 とびっきりのご褒美を…

 

 

―完―

 

 

 

 

 




 以上『さよならのゆくえ』でした!いかがだったでしょうか?
 思えば俺ガイルは僕が唯一アニメ放送前からラノベを買って読んでいた大好きな作品でして、もちろんゲームも買いましたし、やなぎなぎさんのCDも買いました。(円盤は…すいません…テレビ放送だけです…何ぶん安月給なもので…汗)
 どのキャラも特徴があって大好きなんですが、中でもいろはすのOVAはもう何度見たことか…見る度にうへうへと傍から見たら気持ち悪い声と顔をしながら癒されていました(笑)
 佐倉綾〇さんの声もぴったりですし、なによりあの「死ねぇ!」は萌えました(キモいな)
 原作は二年以上出ていませんがいつまでも待ってます!

 肝心の中身ですが自分も学生時代生徒会をやっていて、中学高校と会長に副会長などいろいろやったため、送辞、答辞と聞くと当時の事をしみじみと思い出します…そのため最後はそのお話を盛り込ませていただきました。
 もしこれを読んでいる方に学生さんがいたならぜひ生徒会入ってみてください。また違った青春を送れますよ!ラブコメは…知りません。書記ちゃんみたいな人を見つけてください(笑)
 
 長々とすいません。それでは最後に今まで読んでくれた方、感想くれた方、評価していただいた方本当にありがとうございました!処女作としてこんなに感想いただけて本当に嬉しかったです!
 またいつか書くと思いますがその時もぜひ読んでやってください!

 それでは皆さんにもこんな『さよならのゆくえ』がありますように!
 

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