戦車道は衰退しました   作:アスパラ

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第5話

「こちらウサギさんチームです。D23地点に到着しました」

 

 車長、澤梓が報告すると、すぐにみほから返答があった。

 

『わかりました。そこから反転して北西方向に進んでください』

 

「了解。桂里奈、北西に進んで、森の中に入るよ」

 

「あーい」

 

「ねえ、あれ、Ⅳ号じゃない?」

 

 優季が突如声を上げた。

 

「え? あんこうチームならCエリアにいるはずだけど」

 

 その時、轟音とともにすさまじい衝撃がリーを襲った。

 

「Ⅳ号発砲っ!?」

 

 梓はとっさに横ののぞき窓から外を見た。

 

「なんでっ……」

 

 それはたしかに、見覚えのあるⅣ号戦車だった。

 

「こちらうさぎ! 先輩! 先輩が攻撃してるのは私たちです! やめてくださいっ!」

 

 梓は咽頭マイクを抑えて叫んだ。しかし帰ってきた返事は、

 

『え……? 私たちは今、移動中ですけど……』

 

 困惑したみほの声だった。

 

「いいえっ! 私たちは今Ⅳ号戦車から攻撃を受けて、キャアッ」

 

 さらに攻撃を受け、無線が途切れる。

 

「撃破されちゃったよー」

 

「ちょっとなんでーっ!?」

 

「そんな……」

 

 梓はばっと砲塔から身を乗り出した。Ⅳ号は砲塔から煙をくゆらせながらゆっくりと交代し、木々に紛れて見えなくなった。

 

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「みぽりん!? うさぎさんチーム撃破されたって!」

 

「え!」

 

 みほは沙織の方に体をのめらせる。

 

「撃破したのはどこですか!」

 

「みんなはⅣ号だって言ってる!」

 

「見間違えたんですかねえ?」

 

 優花里が首を傾げる。あんこうチームは、リーとは反対の方向におり、当然試合が始まってから一度発砲していない。

 

「3突あたりと見間違えたんじゃないでしょうか?」

 

「……いや、それはないと思う。車高が違うし、何よりウサギさんチームが大洗の戦車を見間違えるっていうのは考えにくいから……」

 

「幽霊戦車っていうところでしょうか?」

 

「い、五十鈴さん!? そんな恐ろしいことを言わないでくれっ!」

 

 麻子が青い顔で、華はなぜかわくわくした調子で言った。梓との会話の内容は、すでにチーム内に伝達されているのだ。

 

「……沙織さん、共通回戦につないでください」

 

「了解!」

 

 無線の周波数が、非常連絡用の共通回戦につながる。

 

「みなさん、聞こえますか?」

 

『こちらカメ。なんだ』

 

『カバだ』

 

『はい! あひるさんチームです!』

 

「正体不明の戦車が紛れている可能性があります。なので、演習を一時中断し、いったん点呼を取ります」

 

『正体不明? なんだそれは』

 

桃の不機嫌そうな声が返ってくる。

 

「わかりません。ただ、ウサギさんチームがあんこうチームではないⅣ号に攻撃を受けたみたいで」

 

『……我々もお前たちに、Ⅳ号にやられたのだが』

 

「っ!? それはどこでですか?」

 

『D10だ』

 

「……作戦を変更します。動ける車両は、Dエリアに集まってください。正体不明車両はその付近にいると思います。車種はⅣ号です。あんこうチームは、私が砲塔から顔を出しています。出会ったⅣ号に私がいなければ、それが目標です。遭遇したら安全に注意しつつ走行不能に追い込んでください」

 

『『了解』』

 

「麻子さん、」

 

「わかってる」

 

 麻子は戦車を急転回させた。

 

「学園艦演習地に戦車で侵入って、いったいどうやって……」

 

 


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