戦車道は衰退しました   作:アスパラ

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第3話

 長い長い浮遊感が体を襲い、気が付けば、わたしは意識を失っていました。

 

 やがて聴覚が回復し、風や林のざわめきが、嗅覚からは鉄と油に混じって土のにおいが、そしてわたしは目を開きました。

 

 そこは林でした。植生を見るに、温暖湿潤気候の照葉樹林です。それ以外に不審なところは特にありません。

 

「みなさーん! ご無事ですかー?」

 

 中に向かって呼びかけると、みなさんもごそごそと目を覚ましました。

 

「ほら、起きなさい」

 

 なかなか起きなかったYに仕返しも含め蹴りを入れます。

 

「ふぐっ!?」

 

「どうやら妖精さんの遊びに巻き込まれてしまったみたいですね」

 

 全員が覚醒したのを待って、そう説明します。

 

「姐さん、ここはどこですか? 里たぁちょっと違ったように見えますが」

 

「……まあ、ラクッコピコリンの夢世界みたいなところだとは思いますが」

 

 わたしはそう述べてみますが、それにしては嫌にはっきりくっきりしている気がします。まあ、妖精さんの起こすことを真面目に考えても仕方がないんですが……。

 

「童話事案で死ぬことはまずありません。まあ、ここは妖精さんと一緒に遊びましょう」

 

 建てに何度も巻き込まれてはおりません。対処法もだいたいわかっています。

 

「妖精さん、どうしたらここから出られますか?」

 

 わたしはさっそく彼らに尋ねます。

 

「……さあ?」

「なんか、さめたです?」

「かいさん?」

「ふなかですゆえ」

 

「あ、あれ?」

 

 なんだか鬱モードに入っているみたいです。

 

「よ、妖精さん、どうしたんですか?」

 

「でんぱさん、たくさんおります」

「ぼくら、じゃまものっぽい?」

「きえたほうがいいかもー」

 

「ええっ!?」

 

 衝撃の事態です。まさか自分たちで自分たちの首を絞めるとは……。

 

「せめてその、帰る方法ぐらい教えてくれませんか……?」

 

「かつことすべてです?」

 

「か、勝つこと? 敵にってことですか?」

 

「そうですなー」

 

「それは、その、どれぐらいかかるんでしょう?」

 

「1くーるあればじゅうぶんかとー」

 

 1くーる? 聞いたこともない単位です。それはそれは一体地球時間にして何分ほどなのかを聞こうとしましたが、

 

「ではー」

 

 あえなく丸まりモードに突入してしまいました。おそらく無理やり起こしても情報は得られないでしょう。

 

「……消えないだけ良いとしましょう」

 

 わたしは妖精さんたちをポケットにしまうと砲塔の中に入りました。

 

「妖精さん、なんだって?」

 

「とりあえず、ゲームみたいなものだと思います。現れれる敵をバンバン倒して、全部やっつけたらクリアーといったところでしょう」

 

「O太郎さんと一緒にやったことがあります!」

 

 助手さんが言います。

 

「それと同じ認識でよいと思いますよ。まぁ、せっかくの練習です。張り切っていきましょう。では、パンツァー・フォー」

 


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