銀河英雄伝説異伝   作:はむはむ

34 / 40
第34話

[ファニーウォー]

 

最終ブリーフィングがロイエンタールの旗艦にて行われ、将官がシャトルで

参入する。

ブラウンシュバイク・ロイエンタール盟約から始まり、今では帝国軍と同盟軍

の共同参戦であり歴史上初めての事柄でもあった。

基本規準系が違うので、帝国側と同盟側の軍人を含めた融合はおこわなれない

予定であったが大きな違いがでた。

 

「わたしくはヤン・ウェンリー様の元で戦いの行く末をみとうございます」

エリザベートは小さいが凛とした声でそうのたまい、誰も反対はしなかった。

面白く無さげにしていたのはオフレッサー大将くらいのものであろう。

誰もがこの小さな姫の、それに反比例するであろう重責を想い、自然と好感

を抱いたいた。

 

「儂はな、この歳で学んだことがある、それは他人は生きている限り、変わり続ける

事が出来るという事じゃ。それだけでも今まで生きてきてよかった」

メルカッツは副官のシュナイダーにつくづくと語ったものであった。

貴族提督を中心核になり、穏健派保守といでも言うような思考スクリューが

産まれてきており、実際同盟軍と接する事によって案外馬があうという事もあった

ようだ。

 

「ヤン提督、小官は久しぶりに故国へ変えったような気分ですな」

実際帰ってきてるのであるが、それは女性の上という意味合いもあるのだろう。

 

そして、諸々の予定が決定、ロイエンタールが最終号令をかける。

 

これより我らは帝国首都オーディンへと進発する。

途中、予定されている会戦には必ず勝つ。

 

 

オーディン星系恒星オーディンより数秒光年の位置にローエングラム大元帥の大艦隊

が凹字状に誘うようなフォーメーションで展開されていた。

両翼にヤン艦隊とビュコック艦隊を配し、奥部にはメルカッツ提督、両翼を埋める形で

ロイエンタール旗下のヒルデスハイム提督、ライザ提督、シュターデン提督、フレーゲル男爵が堂々と有する。

 

 

ロイエンタールが有効距離まで近づき、手を振り下ろす。

「ファイエル」

「ファイアー」

それぞれの言葉と共に、エネルギーが射出され、人命が物品が無になっていく。

当初はやはり、…ローエングラム大元帥の艦隊精度が高く、同じキルレシオが取れない事

が問題となっていたが、それでも貴族提督は成長したのだろう。

自ら凹陣になったり攻撃を受ける部分を厚くしたりと序盤の神経戦によく耐えてた。

 

白く眩い光に半身が照らされるたびに、彫刻のようなその人が倒れるのではと心配だった。

若干青白い表情を浮かべているが、その眼鏡の奥には静かに澄んだ真摯な姿勢が宿っている。

「不安ですか。大公女様」

エリザベートは小さく首を振る。

「怖い…といえますが、死地に人を送りむ人間はその恐怖から逃げてはいけない。逃げては

行けない時に逃げてしまうと…死ぬよりも後悔しそうです」

ヤンは紅茶入りの紙コップを渡し、艦橋にもどった。

突然、ローエングラム大元帥の艦隊左翼一個艦隊が大きく迂回し、後ろを取ろうとする

動きを見せた。

素早く、ビュコック提督が反応し、それを突きかる。

「煩い奴じゃ」

ビュコックは歯噛みした。

練度といいスピードといい、常に後手後手を取られてしまっていた。

「銀河帝国の最奥部でこんな戦いをするために来たのではない! ファイファイエル、ポイントを

しぼり突撃じゃ」

 

まさか、陣を乱してまでの突撃は予測していなかったであろうローエングラム大元帥の一個艦隊、

これはキルヒアイスが指揮するものであったが背面につくことを断念する。

 

この間も平凡な打ち合いは続き、互いにエネルギーと命をすり減らしている。

 

この広大な宇宙規模のスペクタルはオーディン惑星の上からも肉眼でも確認でき、多くの人たちが

望遠鏡で逐次見持っている。

弁当売りが出るなど、庶民は戦いに関係なくたくましく生活を送っていた。

 

 

ヤンは「…やりますか」

と攻撃行動を敢行する宣言を行い、兼ねてよりロイエータールと詰めておいた作戦を実行する。

自らが先ほどの艦隊と同じように、大きく迂回し銀河天井方面から進み、ビュコックの艦隊は銀河底辺部より

サンドウィッチのようにローエングラム大元帥の艦隊を押しつぶす作戦であった。

陽動といて、メルカッツが積極攻勢をかける。

それを貴族諸提督が補助する形になった。

 

巨象が図式図になり、覆いかぶさったかのような恐怖感をラインハルトは覚えた。

こうっては、数に劣る彼の艦隊としては銀河天井方面か銀河底辺領域に逆進するべきだと理解した。

が、一瞬その判断が遅かった。

「ブラうビッチ分艦隊消失!」

「カルナップ提督戦死!」

「ミッターマイヤー提督の生死不明!」

「このままでは分断されます!」

悲鳴のようなノイズが轟きわたる。

しかし、ラインハルトは怯まない。

「ビッテンフィルト」

「はっ!」

「食い破ってくれるな?」

 

ラインハルトはビュコックの指揮する銀河底辺方面の攻撃が粗だと見抜き、そこにシュワルツ・ランツァエンレイター

を投入し、爆砕にかかった。

効果は抜群だった。

狂的とも言えるほどの猪突を繰り返し、等々銀河底辺部の戦線を崩壊させてしまった。

ヤン艦隊は頃合いを観ながら、先ほどのように大きく迂回しながらの背面への突入を敢行するも、上で途絶えてしまった。

ただ、ローエングラム大元帥としてもこのときナイトハルトミュラー提督の戦死が確認され、ビッテンフィルトも重症を

負っている。

 

「ラインハルト様」

「キルヒアイスか」

「私のするべきことをしようと思うのですが宜しいでしょうか?」

暫しの思案の末、許諾した。

 

数百単隻位づつを無数に合わせた、錐のように先を尖らせた一個艦隊が正面奥部に突撃を開始し、指向性ゼッフル粒子を巻

きながら誘爆を起こせ占めて、貴族諸提督を中心にパニックに押されてた。

「逃げるんじゃないよ! 敵は少数…狙い撃ちにして…!」

ライザは身を守るように艦隊構成を密にしたが、これは逆効果であった。

それで、敢闘は出来ていた。

ヒルデスハイム艦隊はもっとも悲惨であった、練度が不足していたこと、攻撃の正に矢面に立ってしまった事。

「ええい、どうにかならんかどうにか!」

「閣下、退避の準備を」

あたふたと周りを見渡し、唇を人舐めするとお前たちも逃げるのだぞといい、カプセルに乗り込んだ瞬間核融合弾の

直撃を受け、ヒルデスハイム提督は戦死した。

 

「戦況は決したな」

ロイエンタールはそう判断し、諸提督に暗号通信を送る。

このまま半弧陣形ですり潰すことも出来る。だが戦い続けては…次を目指すのはロイエンタール大元帥もそうだが

彼らの側のほうがより革新に近くなったせいもあり、戦力は少しでも温存したい。

後に軍縮するにしても。

 

和平の時は近い。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。