不比等さんが優しい件。
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side鏡一
俺達は早朝、不比等さんの屋敷を抜け出し、輝夜の所に向かった。
そして、屋敷に入る。
『お邪魔しまーす!』
輝夜「どこから入って来てんのよ!」
・・・縁側から。
侵二「お邪魔しますね。」
輝夜「貴方達、早いわね。まだみんな寝てるわよ?」
『気にすんな。それより、無理難題もとい五つの難題は?』
輝夜「火鼠の皮衣、燕の子安貝、仏の御石の鉢、蓬莱の珠の枝、絶影の首よ。」
やったぜ。ちなみに、どれも俺達で押収済みだ。
侵二「お二人共、顔が悪いです。」
『誰だ、嬉々として押収手伝ったの。』
侵二「まあ、そうなんですけどねえ?」
全員黒い、ここに光はないのか。
『んじゃ、護衛のフリしておく。侵二は俺の前な。』
侵二「了解です。・・・武器は?」
『雷斬刀出してろ。俺も新月とライフル出しておく。』
・・・久しぶりだな。このライフル。
輝夜「そのライフルって、都市の時の?」
『ああ、こいつには世話になった。勿論、これからもだがな。』
侵二「お客さんが来ましたよ。」
輝夜「じゃあ、お願いね。」
俺は輝夜の簾の端に座り込む。侵二はその逆。
不比等「失礼します。」
阿倍御主人「失礼します。」
大伴御行「失礼する。」
石上麻呂「失礼します。」
石作皇子「失礼します。」
輝夜「皆様、集まっていただきありがとうございます。して、集まって頂いたのは貴方がたに、今から出す難題を解いていただきます。」
おっ、食いついてる食いついてる。
輝夜「難題とは、火鼠の皮衣、燕の子安貝、蓬莱の珠の枝、仏の御石の鉢、絶影の首のいずれかです。何を選んでいただいても構いません。」
不比等「・・・・・・」
五人の求婚者が相談している。・・・決まったようだ。
輝夜「では、阿倍御様が火鼠の皮衣、大伴様が絶影の首、石上様が燕の子安貝、石作様が仏の御石の鉢、藤原様が蓬莱の珠の枝です。期限は二週間後です。では、また後日。」
大伴御行「待たれよ、かぐや姫、そこの汚い二人は?」
輝夜「ここの二人は護衛です。」
大伴御行「こんな奴らがですか?」
やべえ、キレそう。
輝夜「なら、試しますか?」
おっ?いいのかね?やっちまうぞ?
大伴御行「なら、うちの最強の陰陽師と勝負をさせましょう。」
あ、侵二の口が歪んでる。
侵二「主上、任せてもらっていいですか?」
『どうぞ。』
大伴御行「一人でですか?」
陰陽師1「相手になりませんな。」
・・・そういや、こいつが俺の首だったっけ?
陰陽師1「こんな奴、すぐに終わりますよ。」
侵二「さあ?どうでしょうか。」
陰陽師1「ぬかしおって!」
陰陽師が霊力を込めた札を投げる・・・普通ならダメージが入るだろう、普通なら。
侵二「なんです?今のは?」
陰陽師1「ひるみもしないだと!?」
侵二「終わりですか?・・・残念です。」
陰陽師1「ひっ!」
おい、侵二、そう言いながら雷斬刀に雷を帯電させるな!
輝夜「そこまでです。」
大伴御行「何故だ!」
侵二「賢明な判断ですね。」
陰陽師1「助かった・・・」
圧勝、その一言で済む。
大伴御行「くっ!覚えていろ!」
陰陽師と共に逃げていく。しょぼい悪役かよ。
輝夜「では、また。」
他のメンバーも帰っていく。・・・不比等さんを除いて。
輝夜「?貴方は?」
不比等「かぐや姫・・・正直に申して下さい。貴女は結婚する気がないですね?」
輝夜「・・・!!」
『輝夜、不比等さんは信用できる。話して大丈夫だ。』
輝夜「なら・・・」
輝夜は月の住民であること、次の満月に迎えが来ることを明かした。
不比等「そうでしたか・・・なら、私は婚約破棄をします。」
輝夜「何故ですか?」
不比等「もし、手に入れたとしても、絶対に心を開いて下さらないでしょう?」
輝夜「そうね・・・ありがとう。不比等さん。」
不比等「しかし、他の四人は?」
『それなら大丈夫だ。』
不比等「何故ですかな?」
『侵二、』
侵二「御意。」
不比等「これは!!」
『そう、お題の物、全部こっちで押収している。』
不比等「絶対に無理だったと?」
『イエス、すでに仕込まれていたのさ。』
輝夜「不比等さん。お願いがあります。」
不比等「何ですか?」
輝夜「私と結婚する、ということにしていただけますか?」
不比等「それで他の四人を?」
輝夜「ええ。駄目かしら?」
不比等「一度惚れた方です、お手伝いしましょう。」
『・・・決まりだな。』
侵二「では、これを・・・」
侵二が不比等さんに蓬莱の珠の枝(本物)を渡す。
不比等「分かりました。これでうまく騙しますぞ。」
輝夜「お願いします。・・・娘さんの件ですが、連れてきて下さい。」
不比等「ありがとうございます。」
『あ、不比等さん。俺達護衛が絶影と饕餮だって事は秘密で。』
侵二「もし破ると・・・」
不比等「・・・殺すのかね?」
侵二「いえ、何も。ばれたらしょうがないですね。」
不比等「何ですかそれは・・・とにかく、お任せください。」
輝夜「お願いね。」
不比等「かぐや姫、口調が・・・」
輝夜「ああ、あれしんどいのよね。これでいい?あと、私の名前は蓬莱山輝夜よ。」
不比等「ええ、いいですよ。そして、宜しく、輝夜殿。」
・・・随分と歴史が変わったもんだ。
『じゃあ、不比等さんにバラすけど、俺の本名は神矢龍一だ。知ってるかな?』
不比等「か、か、かっ、神矢龍一!?あの龍神様の!?」
『正解、と言っても拝むなよ?面倒だから。』
不比等「話すのはこのままで?」
『勿論、そうしてくれた方が嬉しいな。』
不比等「分かりました。・・・では、絶影と言うのは?」
『絶影は元々俺が正体を隠すための名前。だが、やりすぎてな・・・』
不比等「はあ、」
侵二「で、人間になっているんですよ。」
不比等「では、妹紅が見たという不思議な術は?」
『銀糸操作な。あれは能力。一応、他にも魔術や陰陽術は使える。』
不比等「・・・何者ですか?」
『・・・わからん。』
侵二「まあ、そんな感じですよ。」
輝夜「どんな感じよ。」
不比等「・・・そろそろ失礼します。鏡一殿、侵二殿、護衛、頑張って下され。」
『おう、またな。』
侵二「では、また。」
不比等さんが去って行った。
『で、輝夜、話があるんだが。』
輝夜「何?」
『お前、帰りたいのか?』
輝夜「帰りたいわけないじゃないっ・・・ どうせ、いい実験道具よ。」
『じゃあ、どうしてほしい。』
輝夜「・・・守って頂戴、月の奴らから。」
『やれやれ・・・元月の英雄が裏切りか・・・』
輝夜「それは・・・」
『・・・楽しそうだな。どうせ月には行けないんだ。それに、今は死んでいるんだ。死人が裏切っても裁けるまい。侵二、殺るか?』
侵二「ええ、逝きましょうか。」
輝夜「ねえ、何か不吉なものを感じたのだけれど。」
・・・聞こえない。俺はコ○ンに出てきたナイト○ロンの仮面をつける。
『どうだ?似合うか? 』
輝夜「まさか、本当に・・・」
『ああ、元月の軍人鏡一。もとい絶影。貴女をできるだけ守ろう。』
侵二「保証はしないですよ?」
輝夜「ありがとうっ!」
『ま、その前にあの俺の首取りに行った貴族のめさないと。なあ?』
侵二「そうですねえ。」
輝夜「ちょっと、二人共怖いから止めて。」
『さて、忙しく(楽しく)なりそうだ。』
俺達は口を三日月に歪めて笑う。
そして、貴族達が再び集まった・・・
次回へ続く
ありがとうございました。
次回もお楽しみに。