幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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今回は長めです。ややシリアス(?)多めです。


ゆっくりご覧下さい。


第二十一話 ナヤミゴト

 

side絶影

 

 

ついに妖怪の山に到着。さあ、暴れるぞ。

 

 

天狗1「待て!ここは妖怪の山だ。今すぐ立ち去れ!」

 

 

『まあ、待て、俺らはあんた等と鬼の戦争を止めに来たんだ。』

 

 

天狗1「黙れ!立ち去らぬならここで切る!」

 

 

聞く気なしと、ついつい吹き飛ばしたくなるがこらえる。・・・壊夢、闘争心丸出しじゃねえか。落ち着け。

 

 

風魔「私は天狗だが・・・入っていいか?」

 

 

天狗1「失礼いたした、ささ、どうぞ。」

 

 

風魔「(すぐに誤解を解いてくる、待っていてくれ。)」

 

 

『(頼んだ。)』

 

 

風魔が天狗と共通点があるので怪しまれず入る。後は待つだけだ。

 

 

『頼んだぞ?風魔。』

 

 

sideout

 

 

 

side風魔

 

 

私は一人で妖怪の山を登る。

 

 

「すまん、ちょっと聞いていいか?」

 

 

天狗2「はっ!何でしょうか?」

 

 

「実は旅の天狗でな・・・ここの最高責任者は誰だ?」

 

 

天狗2「ここの最高責任者は天魔様です。ここをまっすぐ行けば付きます。」

 

 

「それはありがたい。しかし、何故敬語なんだ?」

 

 

天狗2「貴方様から凄まじい妖力を感じますので。かなりの強さだと思われますので。」

 

 

なるほど、ここでは強さ=階級か。

 

 

「ところで、天魔殿は名前か?」

 

 

天狗2「いいえ、階級です。本名は風切 伊織(かざきりいおり)様です。くれぐれも失礼のないようにお願いします。」

 

 

「色々とありがとう。では、失礼する。」

 

 

・・・窮奇移動中・・・

 

 

ここか。入るか。

 

 

sideout

 

 

side伊織

 

 

まずい、鬼がかなりの速さで攻め込んで来ている。このままでは、やられてしまう。

 

 

???「失礼する。」

 

 

誰ですかね?こんな時に。

 

 

「どうぞ。入って下さい。」

 

 

???「では・・・」

 

 

その声の主が入ってきた。瞬間、呼吸が止まった。かっこいい、それが第一印象だった。顔が赤くなり、心臓の動機が速くなるのが分かる。

 

 

「どちら様ですか?」

 

 

???「旅の天狗、風魔と申します。以後、お見知りおきを。」

 

 

風魔さんが微笑む。とたんに私の顔が更に赤くなる。

 

 

「わ、私は風切伊織です。天魔と呼ばれています。は、初めまして。」

 

 

今まで千年以上生きてきたが、こんなに話していて慌てたのは初めてだ。ああ、これが一目惚れだとなんとなく感じる私だった。

 

 

sideout

 

 

 

side風魔

 

 

伊織殿の第一印象は可愛いだった。こんな時に何を言い出すのかと思われるが、少し興味が沸いた。・・・・・ってこんなことを言っている場合ではない!!

 

 

「済まぬが要件を急いで伝える。鬼の件だ。」

 

 

伊織「!!その件は・・・」

 

 

「私達が援護する。が、他五名が天狗でなくてな・・・足止めを食らっているのだ。どうにか出来ないだろうか?」

 

 

伊織「特別に許可します。案内してください。」

 

 

悪いが案内する暇がない、壊夢が暴れだしてしまう。

 

 

「悪い!」

 

 

私は伊織を抱える。

 

 

伊織「え?ちょ、ちょっと風魔さん?」

 

嫌がっているだろうな。・・・仕方あるまい!

 

 

「嫌だろうが我慢してくれ!急ぐぞ!」

 

 

伊織「べ、別に嫌ではってきゃああ!」

 

 

私は最高速で飛ぶ。風圧は能力でなくす。・・・見えた。よかった。壊夢は暴れていないようだ。そのまま私は地上に降りる。

 

 

「着いたぞ。すまなかったな。」

 

 

伊織「い、いえ!別に・・・(うれしかったですし)」

 

 

何か言っていたようだが聞こえない。

 

 

伊織「それより!貴方たちの入山を許可します。」

 

 

天狗1「天魔様!よろしいので?」

 

 

伊織「構いません。風魔さんのご友人だそうです。引き続き巡回を頼みます。」

 

 

天狗1「分かりました!」

 

 

伊織「さあ、此方に。」

 

 

途中、主上が話しかけてくる。

 

 

『彼女は?』

 

 

「最高責任者の風切伊織、天魔と言う階級らしい。」

 

 

『随分と伊織はお前に気があるようだが・・・』

 

 

まさか、もしそうだったらうれしいものだ。

 

 

「そうだといいがな・・・」

 

 

『(コイツ、気づいてねえな。ひどい奴だ。)←ブーメラン発言』

 

 

伊織「着きました。此方でお話を・・・」

 

 

『了解しました。失礼します。』

 

 

「失礼する。」

 

 

伊織「では、お名前を聞いていいですか?」

 

 

『俺は絶影、影妖怪だ。』

 

 

伊織「絶影!?あ、あの伝説の?」

 

 

この光景を見るのも慣れたものだ。

 

 

『次、』

 

 

侵二「私は侵二、饕餮です。」

 

 

壊夢「俺は壊夢、橈杌ぜよ。」

 

 

幻夜「僕は幻夜、混沌だよ~」

 

 

紫「私は八雲紫、スキマ妖怪ですわ。」

 

 

伊織「と、いうことは風魔さんの種族も・・・」

 

 

はあ、ばれてしまったか。しょうがない。

 

 

「ああ、窮奇だ。」

 

 

伊織「ま、まあ、気にしません。それより鬼の件ですが・・・」

 

 

おや?驚かれない?嬉しいものだ。大体は驚いて距離を取るのに。

 

 

『ああ、それなんだが、鬼の首領は?』

 

 

伊織「鬼子母神です。」

 

 

『だとよ、壊夢。』

 

 

壊夢「楽しみぜよねえ。」

 

 

伊織「後は鬼の軍勢が六百程・・・」

 

 

「問題ない、だろう?主上。」

 

 

『ああ、問題は誰が行くかだ。』

 

 

「私に行かせてくれ。同じような種族だ。他の天狗も嫌がらないだろう。」

 

 

『本心は?』

 

 

「分かっているだろう?」

 

 

『いいぜ。侵二、幻夜、お前らは?』

 

 

侵二「いいですよ。」

 

 

幻夜「良いよ~二人の邪魔はしたくないしね~」

 

 

「げ、幻夜、貴様!」

 

 

幻夜「あ、ごめーん。」

 

 

伊織「え、ええ?」

 

 

何てことしてくれた。くそったれ。こうなればやけくそだ。

 

 

「伊織!」

 

 

伊織「は、はいっ!」

 

 

「お前は私が守る。いいな?」

 

 

伊織「そ、それって・・・」

 

 

「嫌か?」

 

 

伊織「い、いえ!むしろ嬉しいで・・・あ、」

 

 

「今のは?」

 

 

伊織「ち、違っ、これは・・・その・・・」

 

 

幻夜「ん~?」

 

 

ええい、ニヤニヤするな!幻夜!ああもう!

 

 

「なら、私が守る。この戦が終わるまでな!拒否権は無しだ!」

 

 

伊織「はいっ!お願いします!」

 

 

とりあえず、幻夜は一発殴っておいた。

 

 

 

sideout

 

 

 

side絶影

 

 

あれから数時間後、風魔が俺に話しかけに来た。

 

 

風魔「主上、私はどうすればいいのだ?」

 

 

『守りたい奴が出来たんだろ?なら、守れ。たとえどんな奴が来ても。』

 

 

風魔「では、主上とは?」

 

 

『馬鹿、それは自分で決めろ。俺、最初に言ったろ?好きにしろって。』

 

 

風魔「分かった。私は、伊織を守る。だが、主上の式でもある。だから・・・」

 

 

『だから?』

 

 

風魔「困ったときは呼んでくれ。私はいつまでも主上の式だ。」

 

 

『・・・ああ、なら、約束だ。もし俺が死んでも、お前等は死なない。だから、幸せにしてやれ。お前が死ぬまでな。』

 

 

風魔「・・・御意」

 

 

風魔が立ち去る。あいつは義理堅いからな・・・

 

 

壊夢「主・・・」

 

 

『ん?何だ?壊夢。』

 

 

壊夢「もし、俺に守りたい奴ができても。俺もずっと主の式ぜよ。」

 

 

『・・・泣かせにくんじゃねえよ。お前も守りたい奴が出来たら守れよ。最後までな。』

 

 

壊夢「勿論ぜよ。」

 

 

壊夢も立ち去る。

 

 

紫「何で絶影はそこまでするの?」

 

 

紫か・・・

 

 

『俺は昔、守りたい奴らを守って、死んだことになっている所がある。だが・・・最後まで、とは行かなかった。多分、これからもそうだ。だからこそ、あいつ等には同じような道を選んでほしくないからだな。』

 

 

紫「そう・・・ねえ、絶影、」

 

 

『ん?』

 

 

紫「貴方の事、師匠って呼んでいい?」

 

 

『何でだ?』

 

 

紫「私が目指す世界、それを絶影は一人だけでもやっているから・・・」

 

 

『俺は当たり前の事をしただけだ。この世は弱肉強食、でもな、たまには救世主がいてもいいと思うんだ。だからこそ、気分で弱者を助けた。これからもだ。』

 

 

紫「で、師匠って呼んでいい?」

 

 

『・・・良いぞ。いつ辞めてもいいぞ。修行もやりたければ言いな。ちょっとぐらいなら手助けできるからな・・・』

 

 

紫「ありがとう。師匠。じゃあ、また明日。」

 

 

もう夕暮れだ。紫も立ち去る。

 

 

『・・・で、いつまで見てる?幻夜、侵二。』

 

 

侵二「ばれてましたか。」

 

 

幻夜「あちゃー」

 

 

『バレバレだ。』

 

 

侵二「主上って時々未来のことが分かるみたいですね。」

 

 

こいつ等には話そうかな・・・

 

 

幻夜「もしかしてこの世界の人間じゃなかったりしてね~」

 

 

『そうだとしたら?』

 

 

侵二「別に?なんとも。」

 

 

幻夜「気にする必要がないね~」

 

 

俺は、神界の龍源の事を話した。

 

 

侵二「だから何ですか?主上は主上でしょう?」

 

 

幻夜「そうそう、別に気持ち悪くないよ~だって。」

 

 

侵二+幻夜「「友人でしょう?(友人でしょ~?)」」

 

 

俺の胸のつかえがとれた気がした。

 

 

『ああ、そうだよな。そうだよな!』

 

 

悩んでいるのが馬鹿らしい。そうだ!俺は神矢龍一、この世界の住民だ!

 

 

『あーあ、悩んでたのが阿呆らしいわ。』

 

 

侵二「それでこそ主上でしょう。」

 

 

幻夜「そうそう、早く寝に行こう~?」

 

 

昔、龍源に言った言葉、俺が実践できてねえじゃん。だが・・・もう、悩まない。止まらない。突き進む。

 

 

 

この命尽きるまで。

 

 

 

さあ、明日が楽しみだ。

 

 

 

次回へ続く

 

 




ありがとうございました。


風魔の彼女は天魔でした。

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