幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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受験終わりました。終わったので投稿です。


ゆっくりご覧ください。



第百十二話 残心

side龍一

 

 

『・・・さて、オイコラ風魔ァ!!何処じゃいコラァ!!』

 

 

俺は通信後すぐに妖怪の山に来たのだが・・・

曇天の二文字。天気がボロクソに悪い。

 

 

『おい風魔ァ!!出てこいや野郎!!』

 

 

「ちょ、ちょっと龍一さん、騒ぐと困るんですよ・・・」

 

 

山の麓で伊織は待機していてくれたようで、困惑する若い天狗衆を全てスルー出来た。

聞くと若い衆は天狗ではない風魔がボスなのが納得いかないらしい。

 

 

『ああ悪い悪い。しかしいねえなぁ・・・折角刀の鍔と持ち手探してきてやったのによ・・・』

 

 

伊織が神妙な顔をした。

 

 

「・・・あの、風魔の前世とは・・・?」

 

 

『あそっか、説明してなかったよな。・・・アイツは多分

 

 

 

 

 

佐々木小次郎だと思う。』

 

 

「佐々木・・・小次郎・・・?」

 

 

『ああ、佐々木小次郎ってのは簡単に言えば外の世界の剣士でな。生まれた年が分からないのと、死んだ年は大体わかるものの、何歳で没したかは分からない剣士で、向こうではなかなか有名な男だ。愛刀があの身の丈レベルに長い【備前長船長光】、通称物干し竿。巌流島というところで宮本武蔵に破れた。・・・って感じ。諸説あり。何せ死んだときが70の爺だったの18の青年だったの相当謎だからな。』

 

 

そう会話しているのに風魔が出てこないまま頂上まで辿り着いた。

 

 

『なーんでいつも余計な時は辻斬りしてくんのに今回はしないのかね。』

 

 

仕方がないので俺は拳銃を空砲で撃った。伊織が突然の銃声にのけぞった。

 

「わっ!?」

 

 

『ああ、ゴメンゴメン。・・・出てこい通り魔ぁ!!』

 

 

「誰が通り魔だ!!」

 

 

叫び声と共に、樹上から風魔の斬撃が飛んできた。

 

 

『お前じゃい!!』

 

 

それを俺は持参した木刀で弾き、風魔の脳天に叩き込む。

 

 

『カッフェーオーレ、プリーズ。』

 

 

「ガッ・・・!?」

 

 

いつもなら木刀が粉々になるはずが、今回は風魔が倒れ伏した。

 

 

『・・・およ?流石に西行妖の枝の木刀は違うか?』

 

 

風魔はしゃがんだまま、呻き声を上げた。

 

 

「どんな武器だ・・・ッ。」

 

 

ふむ、前世の記憶が再生しそうで蹲ってしまったのか。いやまあ西行妖の木刀が硬すぎるのか、それとも木刀に彫った【羅刹】の文字のせいか。

 

 

『まあええわ。いきなりだが簡単な事から聞いていくぞ。お前、死んだことあるか?』

 

 

風魔は頷いた。

 

 

『次、宮で始まる人間。最初に誰が出た?』

 

 

「・・・宮本武蔵。」

 

 

俺は気付かないうちに笑っていたのか、口の端が吊り上がっていた。

 

 

『お前もう分かってきただろ。次。この刀の残骸の名前。正解したらやる。』

 

 

風魔は苦笑いを浮かべた。

 

 

「備前長船長光、物干し竿だが?・・・なぜ忘れていたのやら。」

 

 

風魔は立ち上がり、俺の持っていた物干し竿の残骸を受け取った。

 

 

『正解。よくわかってるじゃねえか。元、佐々木小次郎。』

 

 

風魔はニヤリと笑い、鞘を上空に投げた。

 

 

「・・・簡単に完結してしまったが・・・世話を焼かせた。伊織もすまんな。不甲斐ない旦那ですまん。」

 

 

そう頭を下げた風魔に、伊織はそっと腰に手を添えた。

 

 

「いいえ・・・風魔はいつもいつも私の事ばかり・・・私が争い事が嫌いだからと言い、付き合った頃は剣すら握りませんでしたよね。私は・・・駄目な妻で「違う。」・・・風魔?」

 

風魔は伊織を抱き締め、優しく言った。

 

 

「・・・お前がいなければ、ここに【風魔】はいなかった。【人斬り】しかいなかっただろう。私はそれしか能がない。だが・・・お前は俺で良いと、俺を選んでくれた。それが俺の幸せであり、【人斬り】の死んだ時だ。

・・・こう言うとキザかもしれんが、俺はお前の為なら屍の山の一つや二つぐらい造作もなく作り上げる。」

 

 

抱きしめられて棒立ちになっていた伊織が抱き締め返した。

 

「ふふっ。・・・争いは嫌ですよ?」

 

 

「・・・ハハハ、参ったな。」

 

 

暫く抱き合っていた後、伊織から離れた。

 

 

「・・・んんっ、風魔、私はあなたの前世は何であれだ、大好き・・・です。そして今回はいつものお礼を兼ねて、しばらくの間休んで頂きます。その間は龍一さんの部下として、のんびりとしていて下さい。」

 

 

風魔は俺を見て苦笑した。

 

 

「成程、散々俺達に言わせておいて二人で仕込んでいた通り、私にこの天候を解決させる気だったか。」

 

 

『その通り。さあ行って来い。この異変の事情はちと面倒でな。「相変わらず全読みか。この賢者の旦那が。」・・・まだ結婚してませーん!「まだ。なんだな。」当たり前だろ。・・・でまあ天界行って来い。そこに異変・・・の前座をやってる奴がいるからお前に任せる。何しようが知らん。』

 

 

風魔は苦笑して何処からか煙管を

取り出し、吸い始めた。

 

 

『・・・お前煙草吸ってたか?』

 

 

風魔は首を横に降り、煙とともに雲を出した。

 

 

「いいや、これは空気中の水蒸気を雲に変えるだけのもの、これで空気の流れを読むだけだ。・・・で、私にその異変解決のメリットがないのだが?『天界に俺の金属置いてきた。それと疾風刀の破片落とした。』・・・ふむ、そう来たか。仕方ない。乗ろう。だが、勝手にするぞ。」

 

 

『どうぞご自由に。』

 

 

「了解した。ところで主上、宮本武蔵はどうなった?」

 

 

『隠居した。最後の方はひっそりと暮らしてたみたいだな。』

 

 

「そうか。・・・あそこで死ねた私は、案外幸せだったのかもしれんな。」

 

 

風魔が天を仰ぎ、ため息をついた。

 

 

『・・・さあ、どうかね。死にたがりも生きてりゃいい事あると思うがね。死ぬことは一回きりだしな。早死にするだけ無駄だろ。「生き返ったお前が言うな。」・・・あれは命張らにゃならんだろ。それともなんだ、お前はそのタイミングも見抜けんのか。』

 

 

「ほざけ、さっさと式を開け。安心させてやれ。」

 

 

『・・・悪いな。まだ駄目だ。俺の最後の悲願が残ってる。あれだけは絶対に成し遂げねえと俺は式を挙げない。』

 

 

風魔は察したのか、かぶりをふった後、微笑んだ。

 

 

「無粋な事を聞いたな。・・・了解した。その時私はどうすればいい?」

 

 

『・・・正直、俺の悲願は一つ読み違えば戻れない。いわば俺の数億年を賭ける博打でもある。だから無理について来いとは言えん。観客でも構わない。だが・・・ついてくるなら来い。命令ではない。』

 

 

「了解。まあ勝手に決めさせてもらう。」

 

 

風魔は頷くと、瞬く間に消え去った。

 

 

『・・・お前はこう言ったら絶対に参加しちまうだろうが。』

 

 

俺は笑いながら、四凶一の忠臣野郎を見送った。

 

 

・・・さて、どう転ぶやら。

 

 

「主、こっちの虹はどうすりゃええんぜよか?」

「おいマスター、アリスと手つなぎで帰ってたらこの辺雪なんだが。」

「マスター、幻夜んとこ雹降ってるぞ。」

「主上、雷が増えました。」

「ねえマスター、雹降ってる。」

 

 

『いっぺんに喋るな貴様ら。寝てろ。後幸夜、惚気は今度聞く「は、はぁ!?んなもんじゃねえよ!!」子供かお前は。』

 

 

「・・・で、通り魔はどうしたんですか?」

 

 

雷がドカドカ落ちるのが聞こえているのだが、侵二のどうでもよさそうな質問が飛んでくる。

 

 

『天界に行った。「マジで?お土産頼んでねえんだけど。」おつかいじゃねえんだよ。「俺材木がいいぜよ。」「俺糸。」「俺水。」「私筆と紙で。」「僕花。」欲深いのかそうじゃないのかはっきりしろ。』

 

 

まあとりあえず、と俺は言った。

 

 

『ここしばらく我慢してろ。お前ら休暇な。俺家籠るからな。』

 

 

「へーい。」「応。」「なにすっかな。」「だってよ、どっか行くか。」「了解しました。」

 

 

『だからいっぺんに言うな。』

 

 

取り敢えず、俺たちはする事がなくなったので、それぞれが勝手にし始めた。

 

 

 

次回へ続く




元々は新選組にするつもりだったんですが、どうしても長刀使わせたかったのでこうなりました。


受験とか抜かしつつ既に書いてた私は馬鹿ですね。



次回もまたお待ちくださいませ。

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