幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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未だかつてキレなかった男が・・・!

ゆっくりご覧ください。



第百六話 激昂

side鏡一

 

 

『・・・と言うわけで、お前の家行って大丈夫か?』

 

 

早苗に家に行っていいか聞く。実際同年代だと展開が速いが、俺等は性別不明が混じっているうえ、俺以外の野郎共が婚約済み。何か起きる方がおかしい。てか早苗も全く気にしてない。

 

 

「いいですよ。・・・でも、お見せできる事が・・・」

 

 

早苗が悲しそうに下を向く。・・・さーて、第二の課題始めるか。

 

 

『・・・確か、跡継ぎでもめてるんだろ。』

 

 

「はい・・・」

 

 

なんて顔をしてやがる・・・

 

 

「・・・そんな顔しちゃいかんぜよ。」

 

 

壊夢が早苗の肩を叩く。

 

 

「・・・壊夢君?」

 

 

壊夢が爽やかに、全部俺に振ってくる発言をしやがった。

 

 

「リーダーは依代になれるぜよから、何かあったら神が降りるかもしれんぜよ。」

 

 

・・・いや、まあ、依代どころか本体だけどな!!

 

 

「・・・そうなんですか?」

 

 

早苗が心配そうに聞いてくる。・・・頷くしかねえじゃねえかよ。

 

 

『・・・ああ、大体降りてくる。化け物も降りてくる。』

 

 

こうなりゃ元から無いプランaだ。

 

 

『・・・で、今から行くが、準備できてるか?』

 

 

「はい、出来てます・・・」

 

 

『いいだろう。』

 

 

これ以上暗いとイライラしてくるのでもう行く。

 

 

『風魔、いいな?』

 

 

つまらなさそうに聞いていた風魔が立ち上がり、頷いて飛び去り、帰ってきた。

 

 

「ポイント完了だ。行けるな?」

 

 

『よーし、上等!バースト!!』

 

 

空間を破って全員入る。早苗は混乱していたが神々の遊びと嘘をつくと納得したようだった。

 

 

して、辿り着いたのは普通の神社。・・・と、クソデカい豪邸。神仏の邪魔じゃい。

 

 

『・・・あれが家か?』

 

 

「はい。」

 

 

早苗が淡々と答える。

 

 

『ふーん。・・・おい幽夜、プランaだ。「分かんねえよ。」・・・騙せ「あいよっ!!」・・・あのなぁ。』

 

 

幽夜がノリノリ過ぎる。外道め・・・

 

 

『じゃあ・・・俺が行くからな。』

 

 

豪邸のインターフォンを押し、失礼しますと営業スマイルから始める。侵二曰く張り付いた笑みで挨拶をする。

 

 

『今日は。つい最近お宅の早苗さんと仲良くさせて頂くようになった、矢川と言います。初めまして。』

 

 

「あら、早苗の?」

 

 

恐ろしくチャラチャラした早苗の母さん?が驚いたようだった。・・・こっちがビックリだわ。

 

 

『はい!実は僕も仏教関係の者でして、神による憑依が出来るんですが、そのせいであまり周りと馴染めなかった時に早苗さんが・・・』

 

 

勿論背後で幽夜が能力を使いまくっている。嘘だと感づかれる確率はゼロ。

 

 

『それで、お礼にここの神を憑依させてここの権力をはっきりさせようと思いまして・・・』

 

 

ここで怒ればリセット。喜べば地獄ルートだが・・・

 

 

「あら!なら歓迎するわ!ねえ、あなた!ウチの権力がはっきりしそうよ!!」

 

 

地獄ルート確定。生き地獄じゃい。

 

 

『・・・なら、向こうにいる組織も同じでいいですか?』

 

 

瞬く間に了承された。そして神社の中へ案内され、親族と思わしき奴らが集まってきた。

 

 

「・・・鏡一君、本当に・・・」

 

 

頷いてやった。・・・しかし、懐かしい霊力が感じ取れるな・・・

 

 

「さあ、鏡一君、お願いしてもいいかしら?」

 

 

諏訪子と神奈子は幻想郷にいるので勝手にさせてもらう。

 

 

『はい。・・・侵幻幽魔夢二夜風、絶!!』

 

 

・・・適当に頭を下げて、霊力から変換する。

 

 

『・・・聞け、貴様等。』

 

 

妖力になぁ!!

 

 

『・・・つってもまあ、どうでもいいや。ここに権利書あるか?土地権利書。』

 

 

若干驚きつつ、おずおずと親族の一人が権利書を持って来た。

 

 

『ふーん、全部譲渡ねぇ。じゃ、普通は一番才能がある奴だな!誰だー?』

 

 

「・・・ウチの早苗です!早苗は風祝の素質があります!」

 

 

だろうね。そう言うと思ったが、アンタが言えるわけないだろ。

 

 

『あっそう。じゃあ全権を早苗のみに譲渡!他は出て行け。いらん。』

 

 

「なっ・・・」

 

 

早苗の母親が絶句する。

 

 

『いや、当然じゃん。他要らないから。・・・それとも何?お前ら権力と金欲しさで俺呼んだの?』

 

 

周りが一度黙るが、何処からか当たり前だと叫ぶ声が聞こえた。・・・幽夜だろテメエ!!おかげさまで周り全部そうなったじゃねえか。

 

 

『・・・あっそ。』

 

 

さてそろそろ雷落とすかと準備した。その時だった。

 

 

「いいかげんにせんかっ!!」

 

 

壊夢が拳骨を床に叩きつけていた。おーい、ぜよ抜けてるぞ。

 

 

「壊夢さん・・・?」

 

 

早苗が驚いたような、泣きそうな声でそう言うと、壊夢は更に逆上した。

 

 

「こんなに早苗が苦しんどるのに貴様等は自分のことばかりかっ!!見苦しいっ!!」

 

 

あー、壊夢の奴、ブチ切れてやがる。

 

 

「何だこのガキ!勝手に家の問題に口を挟むな!!」

 

 

またか幽夜ぁ!!

 

 

「やっかましいっ!!家以前の問題だろうぜよがっ!!」

 

 

そう言うと壊夢は、俺から権利書をひったくり、ふざけていた幽夜を引っ張り出し、書類を凍らせた。見ると、幽夜にも青筋が浮かんでいた。お前等・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

遊ぶんなら誘えよ!

 

 

「一体何を・・・!」

 

 

馬鹿か早苗の親族の誰かさん。アイツ等書類ぶち壊すに決まってんだろ!!

 

 

「ふんっ!!」

 

 

凍った書類を氷の塊ごとぶっ壊した。

周りから悲鳴が上がる。早苗もあまりの展開に驚いている様子。

 

 

『・・・ほう、やるじゃねえか、小僧。』

 

 

仕方ないのでそのまま進める。

 

 

『・・・で、これで権利書無くなったんだよなめんどくさい。まあ、これで普通になったわけだ。・・・で?ここ、誰が管理するの?あ、先に言うけどさ、書類消えたんで財産云々却下でね?』

 

 

誰も立ち上がらなかった。正確には早苗以外。

 

 

「私がやります!」

 

 

『お、決まったな。じゃあ閉廷・・・の前にだよ。お前らだよ早苗の親族共。権利目的かボケ。・・・やっぱ本人連れてこなくて良かったわ。・・・言い忘れてたがな?コイツ、鏡一は憑依能力高いからな。時々化け物が乗り移るんだわ。で、今乗り移ってんのは俺・・・絶影。』

 

 

数名がショックで崩れ落ちる。隣で幽夜が満面の笑み。

 

 

『で、自分達の神社の神様がどんな奴か分かってない奴らは素質無し。神社は貰う。契約しちまったからな。今回お前等は悪魔と契約しちまったわけだ。大人しく余生を過ごせ。せめての慈悲だ。そしてこの後貴様等の神社についての記憶は消滅する。以上。さっさと失せろ。じゃねえとそこでニコニコしてる饕餮が貴様等を食い千切る。後、鏡一や早苗、そこにいる紫に危害を加えようものなら、我が特技の【津苦得ノ角二武津蹴琉】(机の角にぶつける)呪いをかける。良いな・・・?』

 

 

そう言うと、蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。結局野郎の全員が青筋を立てていた。胸糞が悪い。

 

 

『・・・さて、早苗。色々と悪いな。勝手にしちまって。・・・そろそろ帰りたいんだが、・・・ちょっとお前に会わせるべき奴がいる。』

 

 

「・・・私に・・・ですか?」

 

 

『ああ、野郎共もよく知ってるぜ。・・・な、

 

 

 

・・・縁?』

 

 

「・・・ふふっ、お久しぶりです。絶影さん達。初めましてよね。早苗。」

 

 

『えっとな・・・早苗、お前さんの先祖だ。』

 

 

早苗が立ち上がった。

 

 

「ご先祖様・・・ですか?」

 

 

ええ、と、縁が頷いた。

 

 

「私が初代の守矢の巫女よ。・・・ずっと見てたわよ。いつも自分を殺して、神奈子様と諏訪子様の為に努力していたのも。」

 

 

でもね、と、縁が続けた。

 

 

「私も同じように頑張ってたわ。でもね。私が死んだとき・・・諏訪子様と神奈子様は泣いていたの。・・・神様らしいことが出来なくてごめんって。だから、お願いがあるの。」

 

 

「・・・何ですか?」

 

 

縁は寂しそうに笑った。

 

 

「時々、神奈子様と諏訪子様に甘えてあげて頂戴?ちょっと我儘を言ってあげて。それだけお願い。」

 

 

早苗は、頷いた。

 

 

「・・・分かりました。縁・・・さん?」

 

 

「縁でいいわよ。それじゃあね。・・・絶影さん。ありがとうございました。あの時、とても楽しかったです!侵二さん達も、ありがとうございました。そして、紫さん。早苗がお世話になります。・・・では!早苗をよろしくお願いします!!」

 

 

そう言うと、縁の霊力が消えた。

 

 

『・・・了解。』

 

 

隣で何かを決意したような顔つきの早苗に、俺は霊力に戻して言った。

 

 

『望まない結果で悪かったな。』

 

 

いえ!と、早苗が今までで一番明るく笑った。

 

 

「ありがとうございました!!」

 

 

その顔からは、迷いや悩みが見えなくなっていた。

 

 

 

次回へ続く

 






壊夢はブチ切れるとぜよが抜けます。

他は普通に怒ります。怒ったことありませんが。


次回もお楽しみに。

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