幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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学校の帰り道、早苗に襲いかかる魔の手に危機が・・・!


第百四話 Daiスクールスチューデント

side早苗

 

 

「鏡一君、変わった人だったなぁ・・・」

 

 

学校からの帰り道、私は歩きながらそう呟いた。

少しだけ学校が楽しみになった。

そう思っていた矢先、路地裏に引き込まれた。

 

 

「・・・!?」

 

 

引き込んだ人の顔を見ると、いつも虐めてくるメンバーがいた。

 

 

「アンタ、侵二君と仲良くするとか、生意気。」

 

 

メンバーの一人の女子がそう言って私を蹴った。

 

 

「・・・っ!」

 

 

続けざまに女子が口を開いた。

 

 

「アンタなんかが、仲良くするとか、笑うとか、気持ち悪いのよ!」

 

 

そう言って蹴り続けてきたが、何も言えなかった。

 

 

「・・・!」

 

 

男子数人も蹴ってきた。

 

 

「てめえ気持ち悪いんだよ!うぜえし、暗いしよ!」

 

 

そう言って更に暴行はエスカレートして来た。

大人達は時折路地裏を覗いてくるが、誰も助けようとしてくれない。

 

 

「てめえなんぞ、この世にいらねえんだよ!」

 

 

私は悔しいけれど、何もできず、涙をこらえながら暴行に耐えていた。

 

 

「・・・っっっ!!!!」

 

 

・・・そんな時だった。場に合わない高笑いが聞こえてきた。

 

 

「ハハハハハハ!!」

 

 

暴行を加えてきた全員が周りを見渡すが、誰もいなかった。

 

「んだよ!誰だ!!」

 

 

男子の一人がそう叫ぶと、

 

「オラアッ!!」

 

 

そう言って上から男子の脳天に拳を叩き込んだ・・・

 

 

「んだよ、脆いなぁ、ぁぁ!?」

 

 

幽夜君がいた。

 

 

「何しやがる!」

 

他の男子がそう言うと、幽夜君が口を歪めて言った。

 

 

「あぁ!?てめえこそ男のくせに女殴ってんのか!?随分と腰抜けみてえな事してんなぁ!あ!?やんのか!?耳の穴から腕突っ込んで奥歯ガタガタ言わせてやろうかゴラァ!」

 

 

そう言うと幽夜君は私を抱え上げて、放り投げた。

 

 

「え?え?」

 

「頼んだぜ壊夢!」

 

 

そう言うと幽夜君は再び虐めのメンバーに罵声を吐き始めた。

 

 

放り投げられた私は、壊夢君の腕の中にすっぽりと収まってしまった。

 

 

「・・・あーあー、折角の顔が台無しぜよ・・・」

 

 

壊夢君はそう言うと、私の顔に手を当てて何か呟いた。すると、みるみるうちに痛みが引いてきた。

 

 

「・・・!?」

 

 

壊夢君は最初のイメージとは遠く離れた声の調子で、

 

「あんま気にしちゃいかんぜよ!」

 

 

そう言って私の頭を軽く叩いた。・・・それよりも、だ。

 

 

「・・・あの、降ろして下さい・・・」

 

 

私はさっきまでの間、ずっと抱えられて・・・お姫様抱っこの体制だったので、流石恥ずかしく、降ろさせて貰った。

 

 

「おお、・・・すまんすまん、慣れとらんぜよから・・・」

 

 

そう言うと壊夢君は体格に合わず、頭を掻いた。少し笑ってしまった。

 

 

「うるせえ!このジャガイモに芽が生えたみたいな物体!ミュータンス菌!てめえらなんぞところてんに頭打ってくたばれ!!Fackyou!!」

 

 

近くでは幽夜君がメンバーを青くさせる程の暴言を吐いていた。

 

 

「オラア!文句あるなら来いよバーカ!!それとも・・・それすら出来ないキングオブチキンかぁ!?」

 

 

幽夜君が舌を出しながら中指を突き立てた。すると怒った男子の一人が殴りかかり、幽夜君を殴ろうと飛びかかった。勿論幽夜君は避けて・・・

 

 

「当たったぁ!?」

 

 

私はつい突っ込んでしまった。男子も当たるとは思っていなかったらしく、啞然としていた。

 

 

「あーあ、馬鹿な奴・・・」

 

 

微動だにしていなかった幽夜君がそう言い、殴られた跡が見えない口許を歪めて笑った。

 

 

「おーい!俺も喧嘩売られた!」

 

 

そう言って男子の急所を臆面なく蹴り上げた。

 

 

「あがっ・・・!?」

 

 

気絶する男子を横目に、幽夜君は言葉を繋いだ。

 

 

「やっていいよなリーダー!」

 

 

その声には返事がなかったが、路地裏で悲鳴が上がった。

 

 

「読書の邪魔だ。失せろ。」

 

 

『幽夜殴ったからだぜ?バーカ、あ、適当に潰せー』

 

 

「あら?女の子は私が容赦しないわよ?」

 

 

路地裏から見えたのは、辞書を振り回す風魔君と、壁に叩きつけて気絶させていく鏡一君と、女子を相手に蹴りを喰らわせている紫さんの姿だった。

 

 

「ひっ!冗談じゃねえ!俺は関係ねえか・・・ら・・・な・・・?」

 

 

何人かが逃げようとしたが、その先には、

 

 

「何やってるんですかねぇ・・・」

 

 

同じように逃げたメンバーをアイアンクローで捕まえている侵二君がいた。・・・いつの間に!?

 

 

「・・・ああああああ!!」

 

 

一人の男子が錯乱し、鉄パイプを持ち出して笑っていた壊夢君に振りかざした。

 

 

「危な・・・」

 

 

危ない、そう私は言おうとしたが、時すでに遅く、鉄パイプは壊夢君の頭に直撃し、

 

 

鉄パイプが粉々になった。

 

 

「・・・い?」

 

 

「んー?」

 

 

当の壊夢君は無傷で立っていた。

 

 

「あ、あ・・・?」

 

 

そして、鉄パイプを粉々にされた男子に向かって、

 

 

「ふんっ!!」

 

 

強烈な頭突きを喰らわせた。男子は昏倒した。

 

 

「あらあら、全然喧嘩出来ないのねえ?」

 

 

紫さんも大勢の女子を相手に余裕そうだ。

 

 

『へいへい、そろそろ紫は下がれ。・・・先に言っておくが・・・』

 

 

鏡一君が初めの印象とはほぼ真逆の声と顔で、その場全員に、

 

 

『・・・失せろ。』

 

 

周りが凍り付くような声でそう言うと、女子全員が蜘蛛の子を散らすように逃げた。男子数名も腰を抜かし、逃げ始めた。

 

「けっ、私利私欲の為にたかって組織性なんぞねえてめえ等が、俺達に勝てるわけねえだろ!おととい来やがれぶち殺すぞ!!」

 

 

そう言って幽夜君は最後の一人の急所を膝で蹴り上げた。

 

 

『あれは痛い・・・ご苦労。・・・早苗、大丈夫か?』

 

 

「あ・・・え・・・大丈夫・・・です。」

 

 

「嫌ねえ、妬みで殴るなんて。ね?」

 

紫さんが私に笑いかけながら鏡一君に言った。

 

 

『・・・ま、殴られる覚悟がねえのはよくねえな。』

 

 

紫さんを撫でながら鏡一君は頷いた。

 

 

『あ、そうだ侵二、早苗の手当て頼む。』

 

 

そう言って侵二君に顎で合図すると、侵二君が包帯を持っていた。

 

 

「生憎これしか無くてですね・・・」

 

 

侵二君が申し訳なさそうにするが、私が十分だと思うのがおかしいのかな・・・?それ以前に壊夢君が全部治してくれたのだけれど・・・?

 

 

『うーん、それは仕方がない!俺たちの家に連れて行こう。』

 

 

やけに棒読みな鏡一君がそう言った。だから治ってるんですって。

 

 

「そうですね。・・・いいですか早苗さん、これから路地裏の壁に激突します。」

 

 

「はい?」

 

 

意味が分からない。

 

 

『さあ、行くぞー!』

 

 

そう言うと鏡一君は紫さんを抱え上げて壁に飛び蹴りを・・・

 

 

「消えたあぁっ!?」

 

 

私が呆然としていると、壊夢君が腕を引いてくれた。

 

 

「大丈夫ぜよ。怖かったら目つぶるぜよよ?」

 

 

そう言うと、私の手を引いたまま壁に・・・

 

 

「・・・あ!」

 

 

ぶつからなかった。そこには巨大な部屋があった。

 

 

・・・ええええええええええええ!?

 

 

啞然とする私の背後からやいこらと侵二君達も飛び込んできた。

 

「よっと、主上・・・じゃなかった。リーダー、どうするんです?」

 

 

鏡一君が首を捻り・・・

 

 

『いつも通りでよくね?』

 

 

いやしかしと鋭い顔をしていた風魔君が緩んだ顔で突っ込んだ。

 

 

「早苗はどうする?怪我は既に壊夢の奴が治していたようだが・・・?」

 

 

『・・・んー、早苗、泊まるか?』

 

 

鏡一君が聞いてきた。

 

「いやいやいやいや、リーダー、んな無茶な・・・」

 

 

私は行けます、と言った。

 

 

「ほら見ろよ、行けるって・・・は?」

 

 

幽夜君が呆れたような、嬉しそうな顔で見返してきた。

 

 

「家は基本私が何をしても何をされても何もしてくれないので大丈夫です。」

 

 

笑っていた鏡一君が私がそう言った途端に顔を歪めた。

 

 

『あ゛?・・・んで頼まれたのかよ。』

 

 

「・・・?何か言いましたか?」

 

 

鏡一君の顔が戻った。

 

 

『いんや、じゃ、いいんだな。』

 

 

「はい・・・って、違います!ここ何処ですか!?」

 

 

流されていたけれどそれ以前の問題でした!悩んでいる侵二君がお茶を持ってきてくれながら言った。

 

 

「リーダーの家です。」

 

 

「そこじゃないんですっ!」

 

 

私は机を叩いた。

 

 

「じゃあ何故鏡一君の家は壁に埋まってたんですか!」

 

 

鏡一君が答えた。

 

 

『・・・立地条件?』

 

 

「そんな訳ないじゃないですか!どこに壁に埋まった家があるんですか!?」

 

 

呆れる私に対して、鏡一君達は口をそろえて言った。

 

 

『「「「「「ここ。」」」」」』

 

 

「あーはいはいそうですか!いい加減にして下さい!本当に何処ですかここは!?それ以前に壊夢君人間ですか!?」

 

 

そう言うと鏡一君が座れ、取り敢えず全部話そうと、そう言ってくれた。

 

 

『・・・じゃあ、話そうか。ここが何処か、俺達は人間かどうか。』

 

 

そう怪しげに言って笑う鏡一君の周りには、

 

 

ふよふよとお茶が浮かんでいた。

 

 

「何でですかあっ!?」

 

 

私の叫びが部屋中に木霊した。

 

 

 

 

次回へ続く




侵二君大人気。仕方ないね、顔面偏差値マックスかつ紳士かつ家事スキルマックスかつ文字通り文武両道の人だもの。・・・結婚してますけどね!

侵二を100とすると鏡一達も90あります。その癖に性格は極悪。

早苗は苦労キャラで確定。・・・幻想郷外は。ですが。


次回もお楽しみに。


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