幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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平和な現実世界に殺伐とした一団が・・・


ゆっくりご覧ください。


第百三話 HAYスクール生活

side早苗

 

 

「・・・アハハ、マジー?」

 

 

「うん、マジでだってさ。」

 

 

私は教室で一人座って、クラスメイトのたわいもない会話を聞き流す。

私はクラスメイトの大半に、居ないように扱われているし、中には私にちょっかいをかけてくる人達もいる。

 

 

でも仕方ない。・・・私はみんなとは違うから。

 

 

「よし、ホームルーム始めるぞー」

 

 

担任の先生がそう言い、クラスは騒ぎながらも皆席につく。

 

 

「・・・さて、今日は新入生が来る。皆よろしくな。」

 

 

途端、クラスはざわつき始める。でも、私には興味がない。きっとその人も私を避けるに決まっている。

 

 

「矢川君、ここに、」

 

 

ほいさ、と、男性の声が聞こえて、白い髪をした背の高い男の子が現れた。

 

 

「・・・えー、矢川鏡一と言います。よろしくお願いします。」

 

 

クラスの女子達は特にざわつき始めた。すると鏡一君が口を開いた。

 

 

「で、まあ他にも同じ奴らがいるんで、共々よろしくお願いします。・・・てめえら、並べ。」

 

 

すると、ぞろぞろと現れ始めた。

 

 

「おい、女子いるじゃん!」

 

 

「あの笑顔の人素敵じゃない?」

 

 

「紹介を軽く。」

 

 

鏡一君が言うと、微笑を浮かべていた男の人が口を開いた。

 

 

「・・・えー、八雲侵二と申します。このような場所は慣れていませんので・・・宜しくお願い致しますね?」

 

 

そう言って侵二君は私に笑いかけた。・・・え?私に?

 

 

次だなと、目つきの鋭い男の人が口を開いた。

 

 

「風切風魔と言う。宜しく頼む。」

 

 

そう言って風魔君も私の方を見た。少し笑っているのか、目元が緩んだ。

 

 

「じゃ、次俺か。」

 

少し口調と目つきが悪い男子が口を開いた。

 

 

「俺は風見幽夜。ま、よろしくな。」

 

 

怖そうだけれど、軽そうな雰囲気がしていた。

 

 

「・・・えっと、次は私?」

 

 

一人だけの女の子が鏡一君を見て言っていた。鏡一君は頷いた。

 

 

「・・・えっと、八雲紫です。侵二の同い年の妹です。よろしくお願いします。」

 

 

紫さんはとても綺麗な顔立ちをしていた。

 

 

私はふと視線を感じて鏡一君達に目線を戻した。

 

 

「・・・最後は俺か。・・・っと、神鬼壊夢ぜ・・・だ。宜しくな!」

 

 

壊夢と名乗った男の人は私を見てニヤッと笑った。・・・何故私の方を?

 

 

「・・・という訳で、まあ宜しく。」

 

 

鏡一君がそう締めくくった。

 

 

その後ホームルームが始まったが、クラスはそれどころではない空気だった。

鏡一君達も綺麗な顔立ちをしていて、動作一つ一つが綺麗だった。特に侵二君と鏡一君は、

 

 

「あ、消しゴムが・・・」

 

 

私の消しゴムが無くなった時、隣から消しゴムが飛ばされてきた。飛ばしたのは鏡一君のようで、侵二君が隣で消しゴムを的確に二つに割って椅子の下からアンダースロー、それを鏡一君が足で弾いて拾っていた。

 

 

「リーダー、半分よこします。」

 

 

「サンキュ、あ、その消しゴムプレゼントで。」

 

 

動きがスタイリッシュだった。

 

 

「あの・・・ありがとうございました。」

 

 

ホームルーム終了後、私は鏡一君にお礼を言った。すると鏡一君は、

 

「あー、あんま気にしないで大丈夫大丈夫。それよりさ、俺等ここよく分かんねえんだ。案内してくれるか?」

 

 

私は驚いてしまった。

 

 

「私がですか!?」

 

 

「・・・忙しかったか?」

 

 

鏡一君が悪そうにするので急いで否定する。

 

 

「いえ!・・・その、私を変だと思わないのかと・・・髪の色とか・・・」

 

ああ、と鏡一君が納得したようだった。

 

 

「俺は白髪だが、「白髪!?」逆に変わってる方がいいだろ?全然変じゃない奴とかさ、逆に気持ち悪いと思うぜ俺は。な?」

 

 

鏡一君が周りに言うと、近くにいた侵二君達が頷いた。

 

 

「そうよ、ちょっとぐらい変わってないと、ねっ!」

 

 

紫さんが鏡一君に抱きついた。

 

 

「やめろ、動けん。」

 

 

周りから男子に睨まれているが、近くで机に腰かけていた風魔君に睨まれて固まっていた。

 

 

「あの、お二人は・・・」

 

 

鏡一君が気だるそうに答えた。

 

 

「大体考えてるのが正解。・・・あー、くそっ、離れろい!」

 

 

隣でニヤニヤしていた幽夜君が、ふと私に向いてきた。

 

 

「あ、そうだ。これお前のだろ?落ちてたぜ。」

 

 

そう言って幽夜君が渡してくれたのは、失くしたはずの消しゴムだった。

 

 

「落ちてたぜ。・・・知らねえ奴の机の中にな!な!そこのお前達よ!見てるか?・・・ね、今どんな気持ち?NDK?NDK?」

 

 

そう言って幽夜君は見ていると腹の立つような顔・・・近くで睨んでいた男女の集団・・・私をいつも虐めてくるメンバーをドヤ顔で見ていた。男子の一人は何か言いたそうだったが、いつの間にか百科事典を抱えて座っていた風魔君に睨まれ、逃げるように去っていった。

 

 

・・・いやいやいや!風魔君!?

 

 

「ちょっと風魔君!?何故百科事典を「ぶん殴る為に決まっている。」・・・ああ、はい、そうですか・・・」

 

 

隣でケラケラと笑っていた鏡一君から聞くと、「あんま気にすんなよ?・・・風魔と壊夢に喧嘩売ると大怪我、幽夜は身内の不幸、俺は何も無し、紫は全部。」だそうだ。そんな物騒な事聞いてません。

 

 

「ま、不良ってわけだ。」

 

 

そう言って鏡一君達は笑っていた。

私も呆れたけれど、

少しだけ笑えた。

 

 

次の日、いつも私を虐めてくるメンバーの一人が右腕を骨折していた。

 

 

まさかと思い、鏡一君達に聞くと、幽夜君が

 

 

「俺じゃねえけどな、壊夢?「応、帰り道に殴ってきたから肘と膝で腕を挟んだだけぜ・・・だ。」アイツ雑魚すぎワロタ。・・・ワロタって使い方合ってるか?」

 

 

そう言って壊夢君と幽夜君は笑った。

笑い事じゃないです。

 

 

「・・・腑抜けが多いな。」

 

 

そう風魔君が逃げ去った集団を睨み、嘲笑していた。違いますから。

 

 

「はいはい、毒吐くのもいい加減にしてくださいね。主・・・リーダー、次体育ですよ。ちゃっちゃと準備して行きましょう。」

 

 

「へいへい、おい、お前らさっさと行くぞー」

 

 

侵二君が同じように嘲笑いながら鏡一君に話しかけ、鏡一君も了承した。すると紫さんは、

 

 

「・・・覗かないでね?」

 

 

対する鏡一君は、

 

 

「あ、そうか。そんなトラブル展開あるよな。気付かなかったわ。しねえよ。」

 

 

アウトオブ眼中だった。紫さんは若干悔しそうにしていた。

 

 

その後男子の更衣室から辞書が落ちたような音がしたのは気のせいだと思いたかった。とある男子が風魔君と壊夢君に絡んだらしく、壊夢君に投げ飛ばされ、風魔君と幽夜君でリンチにされたらしい。ひたすらごめんなさいと呟いていた。

 

 

・・・丁度体育は体力測定だったのだが、鏡一君達は、

 

 

「ぬうんっ!・・・握力300か。」

 

 

握力計を壊しかけたり、

 

 

「よーい、始め!「着いたぞ。」は?」

 

 

50メートルを一秒で走ったり、

 

 

「立ち幅跳びねぇ・・・よっと。・・・おい、メジャーねえぞ。」

 

 

20メートルを立ち幅跳びで飛び、

 

 

「・・・残像です。」

 

 

反復横跳びを残像を作りながら動いていたり、

 

 

「・・・え?まだまだ行くわよ?」

 

 

長座体前屈で異常に体が伸びていたり、

 

 

「風向よし、・・・ソイヤッ!!」

 

 

ハンドボールが大空へと飛んで行ったりと、

控えめに言って化け物でした。

 

 

更に持久走はその五人だけ常に全力疾走で息切れすらしていませんでした。幽夜君や鏡一君は四足歩行で走る始末でした。

 

 

「評価全部マックスでワロタ。」

 

 

「・・・あんまり力入れてませんがねぇ・・・」

 

 

評価の紙を見て爆笑する幽夜君と本気ではないとサラッと恐ろしい事を言う侵二君を横に、私は鏡一君に聞いた。

 

 

「人間ですか?」

 

 

対する鏡一君の答えは単純だった。

 

 

『そんな訳ねえだろ。』

 

 

・・・はい?

 

 

『人間かと聞かれるとな・・・内緒だ。真意が知りたきゃ・・・』

 

 

神に聞きな。私が神子関係の者だと、神様が見えるとも一度言っていなかったのに、そう鏡一君が不気味に口元を歪めて言った。

 

 

「・・・!?」

 

 

『ん?ジョークだぜ?またな早苗。明日からもよろしくな。』

 

 

そう言って鏡一君達は去っていった。

 

 

今まで会った人達の中で一番不気味だと思ったけれど、

一番優しくて、久しぶりに素直に笑わせてくれた人達だった。

 

 

・・・ちょっと色々おかしいけれど。

 

 

 

次回へ続く

 

 




ありがとうございました。

幽夜がめでたくチャラ男に、風魔は無言の圧力人間に、壊夢はぜよが抜けたオーラ漂う巨人に。・・・そして背後で嘲笑う三人。絶対にクラスに居てほしくないですね。


次回もお楽しみに。

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