「おーい、そろそろ出してくれー」
自力ではこの落とし穴から出ることが出来ないことを理解した俺は上にいる二人にそう頼んだ。
しかし返ってきたのは
「あっははは!ちょっと待って!お腹痛い!あはははは!夢幻ほんと最高だよ!」
「引っ掛けといてなんだけど、どうやったらそんなに綺麗にかかるの!?あっはははは!お腹痛い!」
二つの笑い声だった。
その後、15分ほど経ちようやく笑いが収まった二人に俺は引き上げられた。
もちろんその15分間俺は穴のなかで一人佇んでいた。
「さ~て?二人とも?」
ここからは俺のお楽しみの時間が始まる。
「「はい」」
「何か言うことは?」
「「申し訳ございませんでした」」
ぴったり息が合っていることに笑ってしまいそうになった。合いすぎだ。
いやいや今はそんなことを考えている場合ではない。
「素直なのはいいぞ。今回は特別にグリグリで済ませてy「ブフッ」おい今笑ったのどっちだ」
少なくとも今笑ったほうが反省していないのがしっかりわかった。そして先ほどの慧音の気持ちも理解でき、俺は心の中で慧音に謝った。
「妹紅でございます」
「ちょっ!てゐ!?」
さっきもてゐって言ってたな。てゐというのはこいつの名前なのだろう。
「なに~?」
てゐは俺と妹紅に目が合わせないように視線を外しているが、わざとらしすぎる。
「いや、なに~?じゃなくてさ!笑ったのてゐじゃん!」
「なんのことかわからないなー。お兄さん早くこの妹紅にお仕置きを」
てゐがキラキラした目で俺と目を合わせてきた。キラキラしてるところがもう滅茶苦茶怪しいのだが。
「夢幻はわたしのこと信じてくれるよね!?」
妹紅が涙目でこちらを見てきた。
涙目の妹紅に揺すられたというわけではないが俺はてゐがクロだと確信した。この妹紅の目は嘘をついているものではないはずだ。
「妹紅。大丈夫だ」
「え?」
妹紅がすごく嬉しそうな顔になった。
そして同時にてゐの顔が一瞬青くなったのも俺は見逃さなかった。
「てゐ?」
俺なりに出来る限り凄みを効かせてみたのだがどうだろうか。
「もしかして、お兄さんこの真っ白なわたくしてゐを疑っていらっしゃるのですか?」
どこかの詐欺師のような喋り方をしてきたところを見ると俺が凄んだのは意味が無かったようだ。
「真っ白なのはてめぇの服だけだろ」
「確かに!お兄さん面白いねーあはは!」
笑っているてゐに俺は怒りを少し感じた。
こうなったら痛い目に遭ってもらおう。
「クロだな。妹紅捕まえろ」
「夢幻様の仰せのままに」
「ちょっと待て妹紅。話せばわかるからさ! 一旦落ち着こう!」
やっとてゐが素を出したな。
ここで情けをかけるようなら妹紅も同じ目に遭ってもらうことになるが…?
そう思いながら妹紅のほうを見たがその心配は無さそうだ。
「夢幻様のご命令だから仕方ないね。諦めなさい」
「ちょ!」
てゐは逃げようとしたがすぐさま妹紅に捉えられた。
「さ~てこの兎。どうしてやろうか」
「痛くしないでね……?」
「こいつ全く反省してねぇな」
「じゃあ私の炎で皮を全部剝ぐ?」
妹紅が相当惨いことを提案したことに俺は非常に驚いた。
そんなことを言うとは…嵌められそうになったのをそこまで恨んでいるのだろうか。
「いや、それはいくらなんでもやりすぎだろ……」
「皮!?それだけはやめてください!」
急にてゐの反応が変わった。さっきまでは追い詰められているのにどこか余裕そうな態度だった癖に一気に下手に回ったのはなんでだ?
「なんでこいつ皮に反応したんだ?」
「だいぶ昔にワニを騙したら仕返しに前身の皮剝がれたらしいんだよ」
「なかなか惨いな……」
まぁ騙したのが悪いし自業自得だと思うが。
そこで俺は一つ気が付いた。
「なぁ、妹紅。確かそんな神話みたいなの無かったか?」
「ああ、因幡の白兎のこと?」
「確かそうだったと思う」
「てゐはその皮を剥がれた白兎だよ」
「……ほんもの?」
「ものほん」
こいつそんな前から生きてたのか。まぁもちろん嘘の可能性も高いが。
ただそれが本当だとすると妹紅が不老不死と言うのもあり得る話になってくるな。
「ちょっと妹紅!プライバシーの侵害だぞ!」
てゐが叫んだ。いつの間にか態度も元に戻っている。
そもそも神話に書かれているのだしプライバシーもなにもあったもんじゃないと思うのだが。
「んでてゐ?まだ罰は決まってすらないぞ?」
「ゲッ。忘れてると思ってたのに」
俺は妖精かなにかと思われているのだろうか。
チルノ達と同レベルと思われていると思うと腹が立ってきた。
「やっぱ皮剥ぐか」
「そ、そうだ!お兄さんたち永遠亭に行くんだよね!?だったら診察費と治療費無料にしてもらうように師匠に頼むからさ!それで許してくれない?」
これからてゐ相手には皮剥ぐっていうのは使えるなと思い俺はこっそり脳内にメモしておいた。
ん?あれ?
「永遠亭って金とんの?」
「そりゃ病院なんだからそうでしょうよ。夢幻そんな常識まで忘れちゃってるの?」
「いや、言ってみただけ」
なんとなく永遠亭は無料で診てくれると思ってた。何故だろう。
「なーんだ。それで?夢幻はどうしたい?」
妹紅はてゐをビビらせるためにそう聞いてきたのだろう。
てゐが後ろでまた真っ青になってる。だが妹紅にその気は無いようだ。俺も同じ意見なのでてゐの提案に賛成した。
「てゐのていあん……ふふっ」
「!?」
「どうしたの?夢幻」
「今誰かここに居た?」
「いや私たちしかいないけどどうしたの?」
「そ、そうか……」
今のは誰だったんだ? というか俺の脳内での考えを一言一句間違えずに呼んでいたのだろうか。怖すぎる。
俺はだいぶ冷や汗を掻いたが話を先に進めようとする。
「まぁ金取られないならそれでいいかなって」
我ながら強引すぎる話の戻し方だとは思ったが今少しパニックになっているのであまり考えられなかった。
そういやそもそも今文字通り無一文だから金払うことになったら診てもらえなくてなってしまうことに気が付きてゐに少しだけ感謝した。
「ありがとうございます!」
「んじゃ、さっさと永遠亭に行こうぜ」
「そうだね」
「そうですね!」
……そういえばてゐ俺に敬語使ってきているが、俺はなにもしてないはずなのだが。妹紅のボスを演じはしたが。
「なぁてゐ?お前の皮剥ぐって言ったの妹紅だし俺なんにもしてないぞ?」
「……それもそうだ。じゃあ夢幻早く行くぞ」
「てゐ?」
「調子に乗って申し訳ございませんでした」
「よろしい」
俺たちはてゐが増えて三人に戻ったこのメンバーで永遠亭へ向かう。
てゐの口調に特徴がなくて難しいです・・・
もういっそうさみんさんじゅうななささいにしとけばよかったかな?
まぁウサミン星人の代わりにダジャレの女王を少し出しましたが