前の君と今の君   作:おもちゃん

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ちょっと書き方変えてみました。
読みにくかったらごめんなさい!


第五話 しばしの別れ

 寺子屋へ出た俺たちは妹紅の案内の元、永遠亭に向かっている。

 そして今俺は先ほどより少しテンションが上がっている。なぜかと言うと俺の右側には妹紅、左側には霊夢がいる。つまり両手に花ってやつだ。

 しかも妹紅も霊夢もかなりの美人。これでテンションが上がらないはずがない。

 

「いや~これはいいな~」

 

 浮かれていたせいか俺はそう口に出してしまった。

 そしてそれを聞いた霊夢と妹紅が俺の側から一気に離れていってしまった。

 

「お、おい。お前ら!違うんだって!」

「そんな顔をしていたら否定してもまったく信じる気にならないのだけどなにが違うのかしら?」

 

 顔?そんなところを見ていたのか。

 いや、そうじゃなくてだな。

 

「わたしはもう千年以上生きてるから顔を見なくてもなにを考えてるのか大体わかっちゃうけどねー」

 

 ……もうどうしようもないようだ。

 言葉で騙せるのなら頑張ろうとも思えるがそれ以前の問題ならばやる気など出てこない。

 

「で?夢幻、なにが違うのか説明してくれない?」

「え、えーと……」

 

 霊夢は俺が言い訳をしようとしたことで更に怒りを増しているようだ。

 これはふざけて返事しては駄目なのはいくら俺でもわかる。しかしだからと言ってどのような返事をすれば波風立てず終わらせることが出来るのかはわからない。

 ならば一か八かにかけてみるしかないか……と俺の脳は思いついた。

 そして俺はすぐさまそれを実行に移す。他に案が思いつかないからだ。

 

「いや、そのー。そう!霊夢と妹紅が可愛すぎてさ……しょうがないじゃん!」

「ブフッ」

 横で妹紅が吹き出した。

 ……笑ったってことは少なくとも納得できるようなものでは無かったということか?

 そしてそれを裏付けるかのように霊夢が下を向いたまま動かない。しかも少し震えているように見えた。

 選択を間違えたようだ。

 せめて記憶を取り戻してから死にたかったな。

 俺はこの世への未練を吐き出すように大きく溜息を吐いた。

 その時にふと霊夢のほうを見ると顔が真っ赤に染まっていた。

 なにがあったんだ?

 

「あれー?霊夢顔が真っ赤になってるよー?どうしたのかなー?」

 

 俺が気づいたのと同じころに妹紅も霊夢の顔が赤くなっているのに気づいたようで、からかうように霊夢にそう言った。

 妹紅は死にたがりなのだろうか。いや、そんな千年以上も生きていたら逆に死にたくなってくるのかもしれないな。

 いや、そんなシリアスな話をしたいんじゃなくて……

 

「キャン!」

 

 なんだ今の可愛い悲鳴は?まぁ状況からして妹紅が発したのだろうが。

 それを確認するために妹紅のほうを見る。

 妹紅は慧音の頭突きをくらった時より数倍すごい顔をしながら頭を抑えていた。

 

「私、用事思い出したから帰るわね。妹紅あとはよろしく」

 

 霊夢はまだ顔を真っ赤にしたままだがそのまま俺たちが来た方向へと引き返そうとしている。

 

「え、ちょ!?霊夢!?」

「俺が悪かった!帰らないでくれ!」

 

 俺は霊夢と別れたくなく、そう駄々をこねた。

 しかしその次に妹紅が紡いだ言葉に俺は言葉を失った。

 

「永遠亭で見てもらったあとはどうしたらいいのー!」

 

 涙目の少女が健気に叫んでいたらなにも知らない人が見れば可哀想に見えるかもしれない。しかしその言っている言葉が酷い、霊夢との別れを惜しむ訳でなく後始末のことを聞いている。お前に情ってもんはねぇのか。

 それでは霊夢が可哀想では無いかと思ったが、妹紅のその質問に対して霊夢が返した言葉で俺は本当に可哀想なのは誰なのかを理解した。

 

「人間の里にでも放してきたらいいんじゃないかしら?」

 

 俺は野生動物かなにかと思われていたのだろうか。

 人間の里に送り届けるでも霊夢のところに連れて行くでもなく人間の里に放すときた。

 霊夢からの思わぬ扱いに俺はかなり傷ついたが二人ともそんなことは気にしていないようだ。

 

「はーい」

「じゃあね」

 

 俺がせめて礼を言おうと口を開く前に霊夢は飛んで行ってしまった。

 霊夢が空を飛べることを今更知ったが、だからどうということもない。

 霊夢はこちらを一切振り返らずに飛んでいき見えなくなってしまった。

 

「あんな躊躇なく帰るもんなのか……」

「あーあ、夢幻があんなこと言うから霊夢帰っちゃった……」

「いや、あれ俺悪くねぇだろ!? 妹紅が霊夢を煽るからだろ!」

 

 事の発端は俺だが煽ったのは妹紅だ。まぁどっちも悪いのかな。

 

「まぁ、帰っちゃったもんはしょうがねぇ。早く永遠亭に行くぞ」

「そうだね。あ、そうそう迷いの竹林であたしとはぐれたら死んじゃうから気をつけてねー」

「そんな大事なことさらっと言うなよ……」

「なんなら手繋ぐ?」

「うぇっ!?」

 

 デジャブを感じる……

 確か霊夢に対して俺も同じようなことを言ったはずだ。まぁ唯一にして一番違う点は本気か本気じゃないかってとこだろう。

 

「ははは。嘘だって」

「んなもんわかってるよ。てかお前俺と発想が変わらねぇぞ」

「うぇぇ……」

「ちょっと黙れよ」 

 

 あんまり認めたくないが俺と妹紅は本質的にはかなり似ている様な気がすると思いつつも俺はそれを口には出さなかった。

 

「ところで夢幻、永遠亭までは送るけど永遠亭の中まで付いてきてほしい?」

 

 少しだけ妹紅が真面目な顔をしてそう言った。

 こんな顔も出来ることに俺はすこし驚いた。

 質問の意図がいまいち読めないが正直に答えてもいいだろう。

 

「んーそうだな。一緒に説明とかしてくれるとありがたいし来てほしいな。」

「そっか。わかった」

 

 少し妹紅が難しい顔をしている。

 

「あ、なんか用事とかあったら別にいいぞ?」

「いやー、そういうわけじゃないんだけどね。」

 

 どういうことだろう。

 用事がないのに付いて来たくないと言うことは何か他の事情があるのかそれともあまり考えたくはないが俺のことを嫌いかのどちらかだろう。

 

「……妹紅って俺のこと嫌い?」

「? 普通に好きだけど?」

 

 ということは他の事情があるっていうことか。嫌われてる訳でなくてよかった。

 しかし普通に好きってのはあくまで中の上なのかそれとも上なのかがよくわからないんだよな。俺だけかもしれないが。

 

「んーじゃあなんでそんな難しい顔してるんだ?」

「そうだなぁ……説明すると長くなっちゃうから説明は省くけどまぁ簡単に言えば永遠亭にいるある一人のやつと因縁があるっていう話。まぁ着いたら多分わかると思う。

 

 因縁か。まぁ信じ切っている訳ではないが本当に千年以上生きているなら因縁の一つや二つあるものだろう。

 

「さ、早く行こうよ」

「そうだな」

 

 妹紅もあまりその話はしたくないようだし、さっさと行くか。

 一人減って少し寂しくなったが自業自得とも言えるので甘んじて受け入れよう。また後で謝りに行きたいな。




霊夢帰っちゃった……
てか永遠亭に行くまで長すぎるような気が自分でもちょっとしてきてます……
まぁ永遠亭編は一章の中でも一番長くなると思いますはい。飽きずに頑張って!

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