前の君と今の君   作:おもちゃん

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朝食回。
若干のキャラ崩壊ご注意を(今更


第十三話 朝食

 俺が永琳に連れられ朝食会場に着いた時には既に輝夜と鈴仙は食べ始めていた。一緒に食べるってなんだろう。

 輝夜は俺を見かけると意外そうな顔をしながら挨拶してきた。

 

「あら、夢幻おはよう。泊まって行ってたの?」

「ん、輝夜おはよう。そうだぞ」

「ふーん」

 

 あまり興味がなさそうだ。まぁ既に永琳がいるのにこれ以上俺に興味津々なやつが増えられても困るし別にいいのだが。

 

「鈴仙もおはよう」

「お、おはようございます……」

 

 こっちは俺に怯えすぎだ。俺お前にはほんとなにもしていないはずなのだが。というかむしろこっちが被害者なんだが。

 

「あら、鈴仙元気がないわね。どうしたの?」

 

 今気づいたがここに居るメンバーで知らないのは輝夜だけだ。

 

「実は昨夜、夢幻さんに痛めつけられまして……」

「おい!」

「え?夢幻ほんと?」

 

 輝夜がドン引きしている。どう責任を取ってくれるつもりなのだろうか鈴仙よ。

 

「いえ、輝夜。違うわよ」

「サンキュー永琳。」

 

 俺が言うよりも永琳に言ってもらったほうが輝夜にとっては信じやすいだろうしな。

 

「あら、永琳が説明してくれるのかしら?」

「ええ、そうよ」

「お、お師匠様!」

 

 鈴仙が泣きそうな顔で永琳に飛び掛かった。いや、泣いているな。

 

「別に輝夜ならいいじゃない。輝夜だったら何もしないわよ」

「前そう言ってお師匠様が姫にチクった後、姫すごい棘のある言い方してきたりして扱い滅茶苦茶だったんですよ!?」

「そうなの?輝夜」

「なんのことかわからないわね」

 

 なるほど、鈴仙はいじられキャラだったようだ。認識を少し改めなければな。

鈴仙はいじれらキャラ……鈴仙はいじられキャラ……鈴仙はいじられキャラ……」

「私はいじられキャラじゃないです!」

 

 いつの間にか口に出ていてしまったようだ。

 

「鈴仙はいじられキャラじゃないの。ねぇ永琳」

「ええ、鈴仙はいじられキャラよ?」

「わたしも鈴仙はいじられキャラだと思う」

「ちょっとぉ!?」

 

 三人の同意が得られたからいじられキャラでファイナルアンサーだ。

 

「で?永琳。説明を早くしてちょうだい」

「ああ、ごめんなさい。ええとね、まぁ簡単に言うと鈴仙がなにもしてない無実の夢幻を落とし穴に落としたのよ」

「簡単に言いすぎじゃないですか!?」

「あら、鈴仙が完全に悪いじゃないの。ふーん」

「ああもう…私のストレスが溜まっていく一方に……」

「ああ、そういえば純狐のこともあるしねぇ……」

 

 純狐とは誰のことだろう。まぁいい、てかそろそろ飯食わないと。

 

「んで、永琳これ食っていいの?」

「ええ、いいわよ」

「美味そうだな。いただきます」

 

 よく見たことない肉と白米とみそ汁と漬物か。肉以外は和食のテンプレートとも言えるようなメニューだな。でもなんかすっげぇ美味そう。

 

「美味そうより美味いのほうが嬉しいのだけれど」

「え、これ永琳が作ったの?」

「ええそうよ」

 

 そうだったのか。なんとなく永琳は料理できないイメージがあった。

 永琳にできないことなんかあるのだろうか?ってうま!なんだこの朝食うま!

 

「うっま。やばいこれめっちゃ美味い。こんな美味い。こんな美味いもん食ったの初めてだ!」

「あら、典型的な褒め言葉三連発ね。ちょっとつまらないわねー」

「いやこれ美味すぎて言葉が出てこない。語彙力が死んだ」

「じゃあもっと食べられるわよね?」

「もちろんだ!これだったらいくらでも食えるぜ!」

「あらそう」

 

 今の永琳の言葉になにか恐ろしさを感じだが何故だろう。

 その疑問はすぐに晴れた。

 

「はい、じゃあこれ全部食べてね」

「……は?」

 

 そう言いながら永琳が持ってきたのは永琳の身長に届きそうなほど盛られたごはんと鍋一杯に入ったみそ汁とどんぶり一杯分の漬物だった。

 

「なぁ、永琳。食べ物で遊ぶのは良くないと思うぞ?」

「遊んでなんかないわよ?おいしいって言ってくれる人にたくさん食べてもらいたいと思うのは当たり前じゃない」

 

 なんなのだろう。この悪意のなさそうな悪意の塊は。

 

「永琳なにか怒ってるのか?」

「いいえ?怒ってなんかないわよ。むしろ夢幻がおいしいって言ってくれたから機嫌が良すぎるくらいよ?」

「じゃあこの仕打ちはなんですか?」

「仕打ちってなにかしら?さっきいくらでも食えるぜ!って言ってたじゃない」

「いや、まぁ言ったけどさ。流石にこの量は無理じゃないかな?」

「あら、私の作ったご飯が食べられないというの?」

「いやだからそうじゃなくてだな……」

 

 なぜ姑みたいなことを言われなければならないのだろう。

 というかこの状況どうしよう……これ本当に食わないといけないのだろうか?

 鈴仙でも輝夜でもてゐでも誰でもいいから誰か助けてくれ…

 そう思い三人の顔を見るとなにかを堪えるような顔をしている。いや、そのなにかの正体はわかってる、笑いだ。笑いを堪えている。そんなに俺が虐められてるのが楽しいのだろうか。

 ……いやなにかが違う。こいつらはそんな奴らじゃ多分ない…よく見ると永琳も若干笑いを堪えてるように見えるぞ…なんなんだ。訳がわからねぇ…

 俺は疑問の迷宮に囚われそうになっていた。

 

「ブフッ」

 

しかしその迷宮の壁は輝夜の笑い声により壊された。

 

「あっははは!ごめんなさい。もう耐えられないわ。永琳いくらなんでもやりすぎよ!夢幻困ってるじゃない。あっはは!」

「姫様が最初に崩れたかー」

「輝夜が笑うなんて珍しいわね」

「だって夢幻の顔が!あはははは!」

 

 迷宮の壁は壊されたが更に置いてかれた。

 

「どういうことだ?」

「さすがに永琳でもこの量を一人に食べさせるなんてしないわよ。冗談に決まってるじゃない。それなのに夢幻ったら……あはは!」

 

 冗談?

 冗談ということはさっきの永琳のも演技なのか。絶対に役者に向いていると思う。後でおすすめしておこう。

 

「じゃあこの大量の朝食はなんだよ。やっぱり遊んだのか?」

「違うわよ。これはみんなの分よ」

「みんなの分だぁ?」

「ここにいる5人でこれを食べるってだけよ」

「いや5人でもこの量はキツくねぇか?」

「一人一人が普通の胃袋だったらキツいでしょうね」

 

 普通の胃袋¨だったら¨ということは……

 

「誰だ?」

 

 その質問の答えは永琳と鈴仙とてゐの指が教えてくれた。

 そうつまり、

 

「私よ」

 

 輝夜だった。

 

「え、輝夜ってこんなにスレンダーなのにそんなに食うのか?」

「ええ。輝夜のその体の中にどうやってそんなに入るのか私も不思議で不思議で」

「姫の食べる量は相当だよー。まぁ見てたらわかるって」

 

 そんなにか……楽しみにさせてもらおう。

 

「さて。じゃあ輝夜。そろそろいいわよ」

 

 永琳がそう言うと同時に俺の目の前にあった大量の朝食が一気に減った。

 

「え……」

 

 何が起こったのだろうか。答えはわかってはいるのだ。わかっているのだが信じられない。

 確認のために横を見ると輝夜がすごい勢いでそれを口の中に放り込んでいる。間違いないようだ。

 放り込んでるというより口の中に吸い込まれていってると言ったほうが正しいかもしれない。なんだこいつは。ブラックホールか何かか?

 俺がそのような考察を繰り広げている間、鈴仙とてゐは横で醤油の取り合いを始めたりしていた。

 まぁ、とりあえず俺も食おう……

 そうして賑やかな朝食の時間は過ぎていった…




ほんとにただの朝食回。
次の次かさらにその次くらいで物語が大きな変化を迎えるかもしれません…
というか本来それ十話くらいでやっとく予定だったんですけどね。
今は起承転結の起のところです。もう少しで承に移行ですね。
この物語は転の部分がめっちゃ長くなります。
数年くらいは(リアルタイムで)続くと思います。てか続きます

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