前の君と今の君   作:おもちゃん

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サブタイトルネタ切れです(早い


第十二話 永遠亭の夜

 あれは惨かった。この世の終わりを見たようだった。

 俺は永琳によるてゐと鈴仙に対するお仕置きという名の処刑を思い出して、そのような感想を浮かべていた。

 麻痺薬を注入されて身動きが取れなくなったてゐは鈴仙と同じように吊るされ、その後は……言葉にするのもおぞましい。

 そして今俺の前には意識がなくなったてゐと鈴仙が横たわっている。

 

「なぁ、永琳。こいつらどうすんの?」

「ここに置きっぱなしにしとくってのはどうかしら……」

「いや、駄目だろ」

「まぁ冗談よ。でも別にそれでも大丈夫なのよ?」

「危ないだろ。妖怪とか出るんだろ?」

「ええ」

「いくらてゐがこの辺の兎を束ねてるくらいすごいとは言え……あ」

「そういうことよ」

 

 なるほど、すでに俺の知識の中に答えは合ったってことか。

 

「さてと。妹紅こいつら永遠亭に入れるの手伝ってちょうだい」

「えー」

「あら、あなたもこの兎たちと同じ様になりたいのかしら?」

「なんでもお申し付けください」

「助かるわ」

 

 恐怖で人は支配するとはまさにこのこと。あの妹紅が一瞬で忠実な部下へと早変わり。

 

「永琳、俺は?」

「んーどうしようかしら。どうしたい?」

「足と尻が痛い」

「私が湿布貼ってあげましょうか?」

「いえ、自分で貼ります」

 

 永琳に貼ってもらうってのはなかなか良い提案だがまだ俺にはその勇気は無かった。

 

「まぁ、本当に足とか痛いなら先に休んでてもらってもいいけど?」

「んー。そうしたいけど今日どこで寝ていいのか知らんしな」

「あー。普通なら鈴仙にそういうのはやらせてるんだけど、今この有り様だしねぇ……」

 

  それをやった犯人が何を言っているのだろうか。しかしそれを口に出してしまうと俺もこいつらと同じ死体になってしまうと思い口に出すのは堪えた。

 

「まぁ手伝うよ」

「とは言っても私と妹紅で一人ずつ持っていくし、あなたが出来ることってなにかあるかしら……」

「ないね」

「ないか」

 

 妹紅が持ってく分を俺が持ってくって発想はないのだろうか。まぁ悔しいが俺より妹紅のほうが力あるだろうし、仕方ないか。

 

「まぁいいわ。後ろくっついて来といてちょうだい」

「うーい」

 

 俺の役職は賑やかしになったようだ。

 戦士1、僧侶兼魔導士兼その他1、賑やかし1、死体2ってどんだけパーティー編成下手なんだろう。などとしょうもないことを考えつつ、永遠亭の中に再び入って行った。

 

 

 

 

 その後、てゐと鈴仙は永琳の手によって謎の機械の上に固定されて放置されたようだ。そして妹紅は輝夜に遭遇しないようこっそりと俺に別れを告げ帰って行った。

 俺はと言うと永琳が敷いてくれたふっかふかの布団で永琳と二人でぐっすり寝て……

 

「…なんでお前がここに居るんだよ!」

「あら、別にいいじゃない」

「よくねぇよ!」

「私だって寂しいときはあるのよ?」

「はいはい、わかったから早く出てけ」

「釣れないわねぇ……」

 

 悲しそうな顔をしながらそう言って永琳は部屋を出て……行かない。

 

「永琳さん?」

「あら、一緒に寝る気になってくれたの?夢幻」

「いや、そうじゃなくてだな」

 

 はぁ……頭まで痛くなってきちまう。

 

「なんで俺の横でもう一枚布団を敷こうとしてるんだよ!」

「なんでって言われてもここわたしの寝室だし」

 

 その言葉に衝撃を受けた。ここで寝ろと言われたのでその通りにここで寝ようとしたのだが永琳の寝室だなんて聞いていない。

 

「……他の部屋って空いて無いか?」

「他の部屋は輝夜が占領してるから空いてないわねぇ……あ。一つだけ空いてる部屋があるわね。」

 

 最初からそこを教えてほしかった。

 

「お!どこだ?教えてくれ!」

「薬品部屋」

「…一緒に寝ようか」

「嬉しいわ」

 

 そうして俺は仕方なく永琳と共に寝た。もちろん、特に何も起きなかった。

 

 

 

 

「はぁ~あ」

 

 俺が目を覚ました時にはすでに外は明るくなっていて、永琳の姿もなかった。

 

「さて、どうするか」

 

とりあえず誰かいないか読んでみよう。

 

「おーい!誰かいないかー?」

 

 そう叫ぶと廊下から走って誰かがこちらに来る音が聞こえてきた。

 そして数秒後

 

「夢幻!よくもわたしを売ったな!」

 

 てゐが勢いよく襖を開け、俺をすごい形相で睨みつけながらそう言った。いつもの俺ならその形相を見てひるんでしまったかもしれないが、今は余裕をかましていられた。

 

「夢幻!お前だよ!お前に言ってるんだよ!」

 

 てゐがなにを言おうと俺にはノイズにもならない。

 なぜなら

 

「夢幻、おはよう」

「おう、おはよう。永琳」

 

 てゐが勢いよく開けた襖の向こう側に死刑執行人の姿が見えたからだ。

 

「え、あ、あ。お師匠様。これはえーっと違うんですよ。あのーなんというか」

 

 てゐが物凄い量の汗をかきながら、昨夜の鈴仙をも上回るスピードで震えながら言葉を振り絞っていた。

 

「あら、てゐ。こんなとこで何をしていたのかしら?」

「えーっと。あ、そうです!夢幻が起きてきたのでおはようの挨拶をしようと」

「そうなの?夢幻」

 

 お前も後ろから聞いていたというのに、段々と逃げ道を無くして追い詰めていくとはやはり中々のSだな。

 

「俺の顔を見るやいなや、よくもわたしを売ったな!とか言ってきたぞ」

「あら、そうなの。てゐ、夢幻はそう言ってるけどなにか弁解は?」

「うぅ、ございません……」

 

 てゐがこの世の終わりのような顔でこちらを見ているが気にしない。犯罪者に同情してはいけない。

 

「そう。わかったわ、てゐ。後でわたしのところに来なさい?あなたが前から知りたがっていた薬品についての授業をたっぷりしてあげるわ」

「はい……」

 

 全部お前が悪いんでしょうがない。

 

「んで、永琳。俺はこれからどうしたらいいんだ?」

「昼過ぎくらいに妹紅が迎えに来るらしいから、それまではまぁ朝食食べた後はみんなでゆっくり過ごしましょう。今日は医者としての仕事もちょうどお休みだしね」

「うーい」

「朝食はどうする?わたしや輝夜たちと一緒に食べるか後で一人で食べるか」

「それ一人で食べる利点無いだろ。お前らと一緒に食べるよ」

「そういうと思ったわ。じゃあ着いてきて頂戴」

 

 見るからに生気が無いてゐも一緒に俺と永琳は朝食を食べに向かった。




十一話にしてようやく一日目が終わりました…
スローペースにもほどがある。誰だよ!こんなスピードで書いてるやつ!私です!
まぁ一年経っても一日が終わらないような漫画もありますし....ね?

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