ゴジラ・ウォー!   作:葛城マサカズ

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第27話ヤシオリ作戦第1段階です!

 ヤシオリ作戦第一段階は鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の無人列車で実行される。

 ディーゼル機関車2両で爆薬を満載した貨車の列を引っ張り貨車の後ろにも2両のディーゼル機関車が繋がり列車を押すこの列車は遠隔操作で動かされゴジラへ向かい走行している。

 この無人在来線爆弾と称された列車は2つ編成され水戸駅と新鉾田駅から出発した。

 南北から大洗駅に鎮座するゴジラへ向かって出せる全速で向かう。

 ゴジラの手前に近づくと列車を押す2両の機関車がスピードを上げ列車を加速させる。

 唸る機関に軋む車輌の連結に車輪が突撃の雄たけびのように響く

 「無人在来線爆弾突入!」

 望遠で大洗のゴジラを撮影しているカメラからの映像で状況を監視している陸自隊員が報告する。

 2つの無人在来線爆弾はゴジラの足に激突した。

 激突の瞬間に先頭の機関車は潰れ、2両目の機関車は先頭の機関車にぶつかると逆立ちする形になり後ろに繋げている貨車の列を振り上げる。

 振り上げられた貨車の列はゴジラの足へ列全体でぶつかり搭載している爆薬を炸裂させる。

 この爆発に眠っていたゴジラが不機嫌な鳴き声を上げ目覚める。

 「無人在来線爆弾によりゴジラが活動再開」

 「作戦第二段階誘導開始」

 丹波は作戦を次に段階へ進める。今度はゴジラを大洗から海へ学園艦へと誘導するのだ。

 「誘導ボートを始動させます」

 海自の隊員が大洗の沖に浮かべている2隻のプレジャーボートを無線操縦で動かし始める。

 そのボートが大洗沖で旋回を繰り返しボートの存在をゴジラにアピールする。

 ゴジラはそれに気がついたように海へと身体を向け歩み出す。

 「ゴジラが大洗港区より太平洋へ出ました」

 「ゴジラは誘導ボートを追っています。誘導成功です」

 「ゴジラはエサに食いつきました」

 誘導役を担う誘導ボートには核燃料の廃棄物が入った容器が載せられている。

 「まずは最初の成功ですね」

 矢口はゴジラを作戦海域へ引っ張り出せた事にまず安堵した。

 カヨコがもたらしたアメリカのゴジラ情報の中には海底へ不法投棄された核物質をゴジラが捕食しているというものがあった。

 そこで立案されたのがこの誘導作戦である。

 「ゴジラは学園艦へ向けて前進中、あと10分で作戦海域に到達します」

 隊員の報告は矢口をはじめその場の者達の心を引き締める。

 あと10分でゴジラとの決戦が始まるのだと。

 「西住さん、あと10分で作戦開始です」

 蝶野亜美は矢口の近くに居て作戦の推移を共に見ていた。あと10分で作戦開始と聴き無線機でみほの乗るⅣ号と通話する。

 「了解です」

 みほは短く答える。

 「武運を祈ります。くれぐれも無理をしないで」

 「分かりました」

 通信はこれで終わる。

 もはや長く語る事は無かった。亜美はみほの覚悟を知りみほも亜美へ訴える事が無かったからだ。もはや両者の意志は一つになっていた。

 「対策副本部長、海自と米軍の攻撃準備完了です」

 伊丹が矢口に報告する。

 矢口は巨災対の事務局長から対策本部長へ昇格していた。

 これは泉による活動が大きい。矢口に対ゴジラの権限を持たせてヤシオリ作戦を実現させようとしたのだ。

 そうなったのは文科省が大洗の学園艦を使う対ゴジラ作戦を打ち立て準備段階まで進めたからだ。対ゴジラ作戦に文科省が突出した事に矢口と泉が危機感を抱き巨災対主導へ引き戻す為に矢口を昇格させたのだった。

 「もうそろそろ見えますか?ゴジラが」

 矢口は誰ともなく尋ねる。

 「まだ2km先ですが。こちらを」

 亜美が双眼鏡を矢口へ渡す。

 そこには影としか見えないゴジラの姿が見えた。

 「対策副本部長、ゴジラが作戦海域に入ります」

 「開始のタイミングは任せます」

 矢口は伊丹に委任する。

 「作戦第2段階に入る。航空部隊攻撃開始」

 伊丹の号令によりヤシオリ作戦は第2段階へ移る。

 「第1波攻撃開始」

 まずは米軍の無人攻撃機による攻撃が始まる。大洗の学園艦からの連絡と誘導を受けた無人機の群れはゴジラへ殺到する。

 それらの無人機は主翼に提げたミサイルや爆弾をゴジラへ向けて放つ。

 だがどのミサイルも爆弾もゴジラが背ビレから打ち出される熱線によって撃墜される。

 ゴジラの熱線はイージス艦のレーダーでもあるかのようにミサイルも無人機も全て撃墜する。

 「予想通りです。飛行する物体は全て撃ち落としています」

 袖原は自分がゴジラにはイージス艦のレーダーに近い探知能力があり飛行物体を高い確率で撃墜すると言っていたのが証明されたとも感じた。

 「第1波に続き第2波全滅!第3波攻撃開始!」

 「どんどん投入しろ、消耗戦でゴジラに熱線を放出不可になるまで吐かせるんだ!」

 無人機部隊は次々に落とされては新手が攻撃を開始する。

 有人の戦闘機や爆撃機ではできない戦いだ。

 だがゴジラの熱線放出が止まる気配はない。

「熱線放出がなかなか尽きない」

 亜美は遠くで対空砲火のごとく周囲へ熱線が放たれている光景を見て焦りを感じた。 

 ゴジラは無尽蔵のパワーがあるのではないかと。

 ゴジラが熱線を吐く能力があるまま、みほ達と戦わせたくはない。

 「第4波に続き、第5波攻撃開始!」

 5つ目の無人機の群れが攻撃を開始すると変化が起きた。

 ゴジラの背ビレからの熱線放出が止まったのだ。

 「目標の背部からの放射線放出が停止しました!」

 「第5波攻撃を続行!」

 撃ち落とされない無人機は攻撃を続けゴジラの身体を着弾による爆炎で包む。

 「目標!尻尾から熱線放出!」

 「あんな事ができるなんて!」

 ゴジラは尻尾の先から熱線を放つ、あたかもホースで散水するように尻尾を振りながら熱線を周囲へ振り向ける。

 また口からも熱線を放ち攻撃能力は回復する。

 健在だった第5波の無人機はたちまち次々に撃墜される。

 「ゴジラプルームが予想値の2倍を超えています。海上ですが汚染する地域が拡大する恐れがあります」

 ゴジラの熱線放射はゴジラからの放射線放出を増大させていた。

 熱線がゴジラから出るごとに放射線の数値は高くなる。それは放射線による汚染濃度が高くなる事を意味する。

 今回の作戦では太平洋上で行われているが風向きによっては日本の陸地へ向かうかもしれないし、他国へ広がる場合もある。

 「続行です!ここで止めたら全てが無駄になってしまいます。攻撃を続けて下さい!」

 矢口は汚染拡大に動揺が生じ始めた指揮所の空気に喝を入れるように作戦続行の決心を表明する。

 「第6派攻撃せよ!攻撃の手を緩めるな!」

 矢口の意志を受けて伊丹は更なる攻撃を指示する。

 第6波も尻尾や口から熱線を放つゴジラによって次々と落とされるがゴジラに変化が生じる。

 「目標体内の放射線流が低下しています」

 衛星からゴジラの体内にある放射線量を観測していたデータがゴジラの体内で燃え上がる様に存在する放射線の流れが低下している事を示唆した。

 それはゴジラが今度こそ熱線が出せない事を裏付ける。

 ゴジラは自身の口から出ていた熱線が消えて面食らう。

 「目標の熱線放出停止を確認」

 「作戦を次の段階へ移す。学園艦前へ」

 ゴジラからの熱線が止むと大洗の学園艦がゴジラへ向けて進み出る。

 その学園艦を操船するのは本来の船舶科の生徒達では無く海自の隊員達だ。

 だがそんな海自隊員達に何者かが近づく。

 不慣れな学園艦の操船に集中する隊員達に学園艦を知り尽くす者達が迫る。

 「おーとっ騒がないでね。騒ぐと面倒な事になる。どう面倒かは分からないけど」

 お銀が隊員の一人を背後から羽交い絞めにする。

 隊員の目の前には睨んで腕組みをするムラカミが「面倒を起こしそう」に見えて隊員はお銀の言う事に従う。

 「さて、この船は頂くよ」

 矢口やみほ・亜美が知らない間に学園艦はドン底の面々によって掌握されていた。

 それが分かるようになったのは学園艦のポールに翩翻と黒字に髑髏を描いた海賊旗が挙がってからだ。

 「こちらはドレイク、河嶋先輩、この船は私達が動かします」

 桃の携帯電話にお銀から通話が来た。

 「おい、なんという事をしてくれたんだ!」

 桃はどん底の面々が何をしたのか察して慌てる。

 「不慣れな自衛隊の皆さんでは学園艦はゴジラに捕まってしまいます。私達は腐っても船舶科ですよ。学園艦の動かし方はよく知っています」

 「だがな」

 桃の心配をお銀が「どうか大船に乗った気になって下さい、おっと学園艦は大船でしたね」と心配ないと断言する。

 「分かった。お前達に任せるぞ」

 桃は信じるしかないと決めどん底のメンバーの学園艦を任せる事にした。

 

 「目標まであと3kmです。あと1kmで作戦を開始します」

 「こちらアンコウ、了解です」

 みはは亜美と連絡していた。

 ゴジラと学園艦は共に近づき距離は縮まる。

 陸自と戦車道の連合戦車隊はゴジラと2kmの距離から射撃を開始する事に決めていた。

 あと1km距離が近づけば戦いが始まる。

 「みなさん、もうすぐ作戦開始です。これがゴジラとの最後の戦いになります。倒して皆で帰還しましょう」

 みほは改めて通信を戦車道の各車に伝える。

 「ねえ、ミホ。固過ぎちゃダメ!勝利の女神も逃げるわよ」

 ケイが陽気にみほへ通信を送る。

 「その通りね。勝利の女神は笑顔に振り向くと言う言葉がありますわ」

 ダージリンがケイの言葉を肯定する。

 「辛気臭いのはカチューシャには性には合わないわ」

 カチューシャも続く。

 「そういう事だ。みほ、相手は強大過ぎるが気力で負けてはならないぞ」

 まほが締めるように言う。

 皆から送られる言葉にみほは微笑む。

 「では皆さん、ゴクゴク作戦階です!」

 みほの顔に笑みがあった。


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