ゴジラ・ウォー!   作:葛城マサカズ

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第26話ゴクゴク作戦です!

 時間は矢口の訓示の後に遡る。

 黒森峰の飛行船とサンダースの輸送機が大洗の学園艦上空に飛来して来た。

 「大洗の生徒以外を増やしてもいいんですか?」

 矢口と同行している袖原が矢口へ尋ねる。

 「調べると彼女達は放っておいても自発的に集まる傾向にあるようです。止めるより管理下に置く方が賢明ですよ」

 矢口は大洗女子の生徒達がヤシオリ作戦に参加すると表明した時にみほをはじめとした関係者について調査していた。

 大洗と大学選抜との試合では大洗と対戦した学校の生徒達が連絡し合い助太刀に来た事と、大洗にゴジラが襲来した時の救援

 この二つの事例を見ても止めるのは難しい。ならば目の届く管理下に置こうと矢口は決めたのだ。

 

 飛行船からはまほとエリカの黒森峰のティーガー重戦車

 輸送機からはサンダースのケイとナオミのシャーマンとファイヤフライだけではなく、聖グロリアーナのダージリンのチャーチルにプラウダのカチューシャとノンナのT-34とスターリンに継続高校のⅢ号突撃砲

更に大学生の愛里寿やメグミ・アズミ・ルミのセンチュリオンとパーシングが降りた。

 ダージリンやカチューシャ・愛里寿はサンダースの輸送機に載せて貰い大洗の学園艦へ来たのだ。

 「無事を祈っています!」

 輸送機を操縦するアリサが無線でケイや他の皆へ伝える。

 誰もが皆を連れて来てはいない。先の大洗でのゴジラ迎撃戦でゴジラの恐ろしさは分かっていた。行くなら自分達だけでとそれぞれは決めていたがエリカやノンナ・メグミ・アズミ・ルミはほぼ無理矢理に強引な形で同行していた。

 「みなさん。来てくれたのはありがたいのですが、本当に危険ですよ。学園艦の上ですから万が一にも逃げる事はできないかもしれません」

 みほは加勢に来た皆へ感謝しつつも危険だと警告する。

 「そんな事は百も承知だ。姉として危険に立ち向かう妹を見るだけなんてできない」

 まほが毅然とこう言うと「さすがお姉さんね」とケイが感心する。

 「もう船は出ましたよ。降りるなんてできません」

 愛里寿は言う。その通りに学園艦は館山の埠頭から離れていた。

 「武運を祈ります!」

 埠頭では絹代をはじめ知波単学園の生徒達が手を振り見送る。

 「う~ん」

 みほは困ったような顔をした。

 「皆さん!」

 みほは吹っ切れた顔で皆の方へ向き直る。

 「一緒にゴジラを倒しましょう!」

 その言葉に一同が「おおー!」と歓声を上げる。

 「ところで、作戦名は?」

 ダージリンが不意に尋ねる。

 「え~とゴジラを凍らせる作戦だから・・・ゴジラ凍結作戦はどうもイマイチだし・・・血液凝固剤を飲ませるのでゴクゴク作戦にしましょう」

 こうしてヤシオリ作戦はみほら戦車道の面々ではゴクゴク作戦で通る事になる。

 

 ヤシオリ作戦当日

 学園艦の上甲板は戦車のエンジン音に満ちていた。

 自衛隊と戦車道の戦車がエンジンの暖機運転を行い作戦開始に備えている。

 「緊張してる?」

 継続高校のアキはⅢ号突撃砲の車内でカンテレを弾くミカに尋ねる。

 カンテレを弾くのはゴジラと戦う緊張を和らげているのかと思えたからだ。

 「いいや、暇つぶしさ」

 ミカはいつもの涼やかな表情を変えずに言った。

 ミカ達はいつものBT-42では無かった。ゴジラに対して長距離の射撃を行うと聞いて継続高校が持つ戦車で砲の射程が長い長砲身の75ミリ砲を装備したⅢ号突撃砲G型を選んだ。

 この射程の問題は知波単では解決できなかった。

 知波単が持つ九七式中戦車や九五式軽戦車では長射程の砲撃はできないからだ。なので参加を見送った。それはアンツィオも同じだった。

 学園艦に居るが戦車に乗っていない生徒も居た。

 大洗のアヒルさんチームとカメさんチームにカモさんチームだ。

 どれも砲の射程は短いからだ。

 みほは三チームの面々に退艦を促したが誰もが断った。

 「生徒会が降りる訳にはいかないからね」

 「戦車を降りても風紀委員なのよ」

 自分の役職があると言ってカメさんチームとカモさんチームは残り

 「戦車で戦えなくても準備とかマネージャーみたいにサポートをします!」

 アヒルさんチームの磯辺典子をはじめ四人のバレー部員達はみほへそう熱心に訴えて残った。

 「みんなここまでしてくれる」

 みほは戦車の間をせわしなく回り準備を手伝うアヒルさんチームの面々を眺めて思いにふける。

 本当に命が危ういのに駆けつけてくれる皆

 大学選抜でも感じた感謝をみほは無言で噛みしめる。

 

 「学園艦予定位置に到達」

 「第6護衛隊予定海域に到着」

 「YashioliOperation Participation Arrangement Completed」

 「茨城県警より関係各位へ県沿岸部の住民避難を確認、ただし沿岸以外の避難は続行中」

 戦車の無線にヤシオリ作戦に関わる各所の無線が入る。

 「CP(指揮所)よりタイガー1(自衛隊戦車部隊の隊長車)とアンコウ1(戦車道戦車部隊の隊長車)へ、あと5分で作戦を開始する」

 作戦開始が近いと告げる無線にみほが「了解」と返答する。

 「アンコウより皆さん」

 すぐにみほは戦車道の戦車が使う無線の周波数で呼びかける。

 「もうすぐ作戦開始です。これからの戦いはこの前の戦いよりも厳しい戦いになります。命を落とすかもしれません。そんな危険を覚悟でこの作戦に参加したみなさん、ありがとう」

 みほは一旦言葉を区切り一呼吸する。

 「CPより全部隊へヤシオリ作戦を開始する。第一段階開始」

 指揮所からの作戦開始が告げられる。

 「では、ゴクゴク作戦開始します。みんなで無事に帰りましょう!全車、戦闘陣地へパンツァーフォー!」


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