ゴジラ・ウォー!   作:葛城マサカズ

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第21話「学園艦がピンチです!」

 みほ達は知波単学園の学園艦に居た。

 大洗運動公園で救援を待っていたみほ達は日没直前にやって来た陸自部隊と合流して戦車を陸自のトレーラーに乗せ高機動車やトラックに分乗して千葉県館山まで行き、館山の港に寄港している知波単の学園艦に一時避難していた。

 一時の避難はいつしか一週間がすぐに過ぎてしまっていた。

 「わわっ!さすが西住さん!追いつけない!」

 みほは絹代に頼まれて戦車道の練習に付き合っていた。

 絹代が乗るチハとみほが乗るⅣ号が手合わせをしていた。

 絹代が「全力でお願いします!」と願い出たせいかみほは本気で絹代に当たっていた。

 一度も絹代のチハの砲撃を受けまいと急機動を繰り返すⅣ号

 麻子の高い操縦技術もあり絹代のチハでは振り回されるばかりだ。

 「あちゃ~やられた」

 みほのⅣ号からペイント弾が放たれ絹代のチハは撃破されてしまう。

 ペイント弾が被弾したのはこれで3度目でチハには三カ所も白いペイント弾が炸裂して広がった所がある。

 「西さん。一旦休憩しましょう」

 みほはⅣ号を停車させてから絹代へ言った。

 「分かりました。休憩が終わったらもう1回戦お願いします!」

 みほは和やかな声で「はい。いいですよ」と答えた。

 そんなみほの様子を見ていた優花里は久しぶりにみほは気晴らしが出来たと見えた。

 知波単に来てからみほはゴジラで炎上した大洗を気にかけていた。

 また共に戦い別のルートからゴジラから退避した継続やアンツィオ・大学選抜の面々を案じていた。

 継続とアンツィオに大学選抜の面々が無事だと知るとみほは安堵した。

 だがTVなどで見る大洗の惨状を見る度に顔を曇らせていた。

 そんなみほにとってこの手合わせで気分転換が出来たんだと優花里は思えた。

 知波単学園にみほと同行して避難していた黒森峰やサンダース・聖グロなどの大洗以外の皆はそれぞれの学園へ帰って行った。

 「みほさん。諦めたらいけないわよ。あなたは2度も学園を救ったのだから」

 みほが気落ちしているのを察したダージリンが学園へ帰る前に言った。

 「そうそう。元気無くしたらダメダメ」

 ケイも陽気にみほを励ます。

 そんな中を少し照れながらカチューシャが割り込む。

 「私との試合で変な踊りをして元気を取り戻したじゃない。あんたはそんなに弱くないわよ」

 準決勝戦で追いつめられた大洗だったがみほがあんこう踊りを踊る事で士気がどん底だった大洗の面々を復活させた時のことをカチューシャは言っている。

 「ありがとう」とみほは笑みを見せて応えた。

 だがゴジラの被害を受けていない大洗の学園艦に未だ戻れないのがみほには引っかかっていた。

 蝶野に尋ねても「何故か許可が出ない」とだけ。

 みほは嫌な予感を抱えていたせいで元気が無い表情が出てしまっていた。

 その予感は的中していた事をすぐにみほは知る事になる。

 「揃ったようだね。始めるとしよう」

 辻が知波単学園にやって来た。

 誰もが辻を疑うような視線を向けている。

 「政府は対ゴジラ作戦で大洗の学園艦を使用する事を決めた。この作戦は主に自衛隊が担当する事となった」

 辻の言う作戦の概要に杏やみほの表情は凍る。

 学園艦がゴジラとの戦いに使われる。

 それは学園艦が無くなる事を意味している。

 どんな風に学園艦が使われるか分からないが学園艦をゴジラに向けて無事に済む訳がない。

 「君達の役目は終わりました。政府を代表して礼を申し上げる。ありがとうございました」

 辻は礼を言うが口調は突き放すようだ。

 「学園艦をどうするんですか?」

 みほは辻へ尋ねる。

 「作戦内容は機密です」

 辻が素っ気なく答えるとみほは肩を震わせる。

 「何故学園艦を使うんですか?どうして大洗の学園艦なんですか!?」

 みほは憤慨していた。

 みほにとって大洗の学園艦は第二の母校だからだ。

 「・・・もう決まった事です」

 辻は少し困った顔をしてそう弱く答えた。

 「でも!」

 「西住ちゃん!」

 杏は熱くなるみほを大声を出して止めた。

 みほは我に返り口を閉ざす。

 「では作戦開始までに退艦をしてください」

 辻はそう言うと去って行った。

 辻は自分が出た部屋から大洗の生徒達が騒ぐのが聞いた。

 自分の悪口を言っているのだろう。薄情だ冷血だと言っているに違いないと辻は自覚している。

 恨まれるのも仕事の一部だと割り切っているが何度も彼女達へ失望と怒りを与えるのは辻の心にやり切れない気持ちを沸かせていた。

 (恨まれるままに去っていく。それが俺の仕事なんだ)

 感傷に浸る辻の携帯電話が着信の振動を伝える。

 上着の内ポケットから携帯電話を取り出してから電話をかけて来た相手の番号を見る。知らない相手だ。

 だが辻は文科省の誰か、議員の誰かかもしれないと通話に応じる。

 「保守第一党政調副会長の泉です。辻さん会って話がしたいんですがいつが空いてますか?」

 辻は驚いた。政権与党の幹部からの電話だ。

 「これは泉先生!今夜でも、いや夕方からでも時間は空いています」

 辻は泉が何故自分を呼ぶのか分からないまま夕方に新しい予定を加えた。

 


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