「我々大洗女子学園は文科省の要請により害獣駆除へ出動する。しかしその害獣は街を破壊できるほど巨大で凶暴だ。今回の出動は志願者だけで行う」
戦車道で使う戦車が置いてある倉庫の前に大洗で戦車道をしている生徒達が集まっていた。まず桃が説明をする。
「志願するつもりでも、よく考えてほしい。この出動は命の保証はない」
杏がこう言うとさすがに一同はざわめく。
「時間があまりない。5分で志願するかどうか決めてくれ」
杏はそう言うと桃と柚子を連れてその場を去る。
「西住殿はどうするんですか?」
みほへ尋ねるのは秋山優花里だった。
「私は行く。隊長だから」
「私も行きます。一人じゃ戦車は動かないですよ」
みほの決意を聞くと優花里は即答する。
「私も行きます」
五十鈴華はいつもの微笑みで言う。
「行く。操縦手がいるだろう」
と冷泉麻子は当たり前のように言う。
「もう、みんな行くなら私も行く!」
武部沙織もたまらずな風に言う。
「みんなよく考えて。怪我どころか死ぬかもしれないんだよ」
みほは慌てて考え直すように促す。大切な友人を死地へ連れて行くような事はしたくないのだ。
「でも遠くから見るだけの方が辛いです。何か出来るのなら大洗の皆さんを守りたい」
優花里がぽつりと言う。
「私の操縦ならあんな化け物に追いつかせはしない」
麻子は当然という風である。
「あんな大きな身体なら外しはしません」
華も自信満々だ。
「色んなところとの連絡は私に任せてよ」
沙織も胸に手を当て任せてと言うポーズをする。
「みんな・・・ありがとう」
みほは感謝した。
「隊長、バレー部もといアヒルチームは全員行きます!」
あんこうチームの一致団結を見てアヒルチームの磯部典子が名乗り上げる。
「我らカバさんチームも皆が出撃する」
「レオポンもみんな行くよー」
「ウサギチームの私達も行かせてください」
「アリクイの私らも行くぞなもし」
「こういう時こそ風紀委員の出番よ」
次々と皆が志願する。その誰もが不安な顔は無い。
「みんな聞いてくれ」
意気高く沸く皆に杏が呼びかける。
「もう一度聞く。本当に行くのか?」
杏は確認を重ねる。この場にいる皆は弱小チーム、無名チームと言われながらも強豪校と背水の陣のような戦いを繰り返し潜り抜けた戦友みたいなものだ。
経験と腕を磨いた彼女たちは頼もしい。しかしそれは軍人や兵士としてではない。スポーツチームの一員としての頼もしさだ。
杏にはそんな彼女達の覚悟を今一度確かめたかった。
皆は杏やみほを見つめながら「はい」と揃えて答えた。
「大洗は私達の地元です。大洗が壊されるのは嫌だ」
典子が志願の理由を言うと他の皆が「私も同じ」「そうだその通り」と同意したり頷く。
杏は彼女たちの眼を見渡しながらその覚悟はしっかり固まっていると分かった。