「西住さん、空自の爆撃が始まるわ那珂川北岸の戦車を退避させましょう」
蝶野は統幕からの連絡からみほへ伝える。
「大隊長から聖グロ・アンツィオ・継続の皆さん那珂川とゴジラから離れてください。自衛隊の戦闘機が爆弾を投下します。巻き込まれないように退避してください」
みほの指示にすぐ「了解」の返事が届きまだ那珂川北岸にあった戦車はひたちなか市の市街へ移動する。
「これでゴジラも倒せそうですね」
オレンジペコが言う。
「さてどうから。戦いは最後までどうなるか分からないものよ」
ダージリンはいつもの格言を言う口調で言ったが眼は気が抜けないと言っていた。
戦車道の戦車がゴジラから離れてすぐに上空に三沢からのF-2が到着した。
「Cleared attack.」
「Cleared attack. Fire. Ready...now. Bombs away. Laser on」
F-2の主翼に吊り下げられた2発の2000ポンド爆弾が投下される。
「Lasing.」
2000ポンド爆弾にはGBUー38/Bが装着され誘導爆弾(JDAM)となっている。
大洗の戦車隊の観測班に同行している爆撃誘導員がゴジラへの爆撃を誘導する。
「Completed!」
爆弾はゴジラの頭部と背中に命中して大きな爆煙がゴジラを包む。
「やったか!」
爆煙がまだ晴れていないが桃が嬉しそうに言う。
それは他の皆もそうだった。
三宅もそうだし東京の政府や統幕の面々もそうだった。
「ゴジラが進路を北東へ転進」
爆煙が晴れてゴジラの姿が見えると変化があった。
大洗か川又町へ進んでいたゴジラがひたちなか市の市街へ戻るような動きを見せた。
「市街地に入る前に第二派の爆撃をせよ」
対ゴジラの自衛隊統合任務部隊を指揮する山岡東部方面総監はF-2による第二撃を命じる。
別のF-2が同じく2発の2000ポンドのJDAMをゴジラへ投下する。
またしても大きな爆発と爆煙がゴジラの上半身に広がる。
だが煙から顔を出したゴジラの様子に変化は見られない。
「爆撃が効いていない?」
みほはゴジラの様子を見て落胆する。
ゴジラはどの方向から攻撃をしても効かないのではないかと思えた。
「みほさん」
そこへ愛里寿が呼びかける。
「カールにはコンクリート貫通弾と言う特殊な砲弾があります」
「徹甲弾のようなもの?」
「はい。カールを大学で預かる時に物好きな人達が作った物ですけど」
カールは要塞を攻撃する為にコンクリート貫通弾なる砲弾がある。
大学では物好きな生徒有志によりコンクリート貫通弾が作られていた。
戦車道の試合には使えないが趣味として作られたその砲弾は3mの厚さのコンクリートを貫く事に成功していた。
「蝶野さん。カールで徹甲弾のような特殊な砲弾を使用します。良いですか?」
みほは急くように蝶野へ尋ねた。
みほにとってはカールの特殊な砲弾が最後の希望だった。
「許可します」
蝶野が答えるやみほは「大隊長よりカールへ。コンクリート貫通弾で射撃して下さい」と即座に命じた。
「やるぞ!才能の無駄遣い、無用の長物扱いされた私の砲弾が役に立つぞ~!」
趣味でコンクリート貫通弾を作った大学生達がはしゃぐ。
彼女達も自分たちが作った砲弾を管理するとしてカールと共に来ていた。
「これよりコンクリート貫通弾による射撃を行う」
愛里寿がそう報告した時にカールは放った。
貫通弾は那珂川の北岸に右足を乗せようとしていたゴジラの背中に命中した。
ゴジラは高い声で鳴く。
貫通弾がゴジラの背中を貫いたのだ。
「やった!私の砲弾がゴジラを倒すぞ~!」
砲弾を開発した大学生たちは歓喜した。
「凄い。さすがカールだ」
エルヴィンが砲隊鏡でカールが放った貫通弾の効果を見て嘆息した。
彼女はカールが攻撃したソ連軍のセヴァストポリ要塞のようにゴジラが崩れるのを期待した。
「砲弾が残っている戦車は攻撃を再開。カールは貫通弾で射撃を続行してください」
貫通弾が刺さりよろけるゴジラを見たみほは命じる。
「ここで自衛隊と協力して一気にゴジラに止めを刺します!」