「やっと出動ね」
蝶野は自衛隊がゴジラとの戦いに出動した事に安堵する。
ようやく大人がゴジラと戦える。それに菊地原は胸に鬱積したモノが晴れる思いだった。
「みんな。もうすぐ自衛隊が来るわ。あともう少し持ち堪えて」
蝶野は戦車へ向けて通信する。
あと20分もすれば木更津からの対戦車攻撃ヘリがまず飛来する。
続けて三沢からの戦闘機だ。
これらが到着したら戦車道のみんなを一時後退させようと蝶野は思った。
蝶野のこの考えはまだ子供であるみほ達をゴジラから遠ざける意図もあったが根本的な問題もあった。
「大隊長へそろそろ砲弾が無くなりそうだ」
「こちらレオポン、弾がもうすぐ無くなるよ」
ゴジラと最初から戦っていたまほのティーガーⅠやレオポンのポルシェティーガーなどの戦車で砲弾が尽きようとしていた。
蝶野は砲弾が無くなるのが分かっていた。
自衛隊が来ないままだとゴジラから離れる機会を掴めないからだ。
「蝶野さん。自衛隊はいつ頃来ますか?」
みほが尋ねる。
「あと15分ほどで陸自の対戦車ヘリがゴジラを空から攻撃するわ」
「分かりました。砲弾が無くなった戦車を下げて他の戦車で空いた分をカバーします」
「それで行きましょう。あともう少し頑張って」
みほは蝶野とのやり取りを終えると残弾の確認を行う。
最初から戦っていた重戦車はどれもがすぐに砲弾が尽きると答えた。
「大隊長へ。黒森峰の戦車は砲弾が無くなった」
まほがまず砲弾が尽きたと報告する。
「プラウダもノンナのIS-2が弾切れになったわ」
カチューシャがノンナを下がらせながら言った。
「ノンナの分も撃ちまくりなさい!」
ノンナが退場したもののカチューシャは残るT-34を押し出しゴジラへ撃ち込む。
「私達も厳しいわね」
「そろそろ限界かな」
「こっちも弾が無くなるぞ」
ダージリンとミカもアンチョビも残弾が心許ない。
「大隊長、あともう少しで大洗町の那珂川沿岸に戻るわ」
ケイからみほへ無線が入る。
「了解しました。無理を言ってすみません」
大学選抜チームの来援により川又町への備えは完了した。みほは川又町へ移動中のケイが率いるサンダースと知波単・大洗の一部をまた大洗へ呼び戻していた。
残る予備戦力となったこの戦車で弾切れとなった黒森峰やプラウダなどの戦車の穴を埋めるのだ。
「いいって、気にしない気にしない。早くゴジラを倒しちゃおう!」
ケイは陽気にみほへ答える。
そのゴジラはどうなっているか。
まだ続くカールの射撃もあってまだ足止めが出来ていた。
海上からはゴジラを発見して追尾していた海自の護衛艦「むらさめ」が76ミリ砲でゴジラを攻撃している。
「大隊長、サンダース攻撃に入るよ」
「こちら知波単。攻撃を開始する」
大洗町の那珂川南岸に到着したサンダースと知波単の戦車はゴジラへの攻撃を始める。
M4シャーマンと九七式中戦車の砲火がゴジラへ向けられる。
火力が少し弱まったが火力を絶やさないようにと戦車道の少女たちは努力する。
そんな様子を砲弾が尽きて大洗水族館の駐車場へ下がったまほはティーガーⅠの砲塔の上に立ち見つめる。
無言で妹が戦う姿を見つめていた。
「来た」
まほの上空をAH-1対戦車攻撃ヘリが4機通り過ぎる。
「CPこちらアタッカー1、目標を確認した」
「アタッカー1、こちらCPただちに攻撃せよ」
「CP、アタッカー1了解、攻撃を開始する」
もう戦車道の戦車が攻撃をしている為にAH-1が攻撃するか否かを政府や自衛隊が迷う必要は無かった。
「アタッカー1、CP、武器の使用制限は無い。那珂川の中にゴジラが居る間は無制限だ」
「了解した。まずは誘導弾による攻撃を行う」
AH-1には機体の両側に戦車を撃破する為のTOW対戦車ミサイルを8発搭載している。
他にも19発入りのロケット弾ポッドを2基、機首には20ミリバルカン砲がある。
この三種類の武器を使う自由がAH-1の小隊に与えられていた。
4機のAH-1は大洗水族館の上空から西へ変針して巌船の夕照付近の上空でホバリングする。
「距離500、発射!」
AH-1の4機は一斉に2発づつのTOWをゴジラとの距離が500mの位置で放つ。
TOWはゴジラの頭部へ命中する。
爆発はしたが効果は不明だ。
「アタッカー1より各機へ。続けて撃て!使用する武器は各自自由!」
AH-1小隊の隊長はゴジラへのTOWの効果が不明と分かると持てる装備全ての使用に踏み切る。
20ミリ機関砲が唸りTOWとロケット弾が乱れ撃ちのように放たれる。
「聖グロと継続にアンツィオで残弾が無い戦車は今の内に下がってください」
みほはAH-1が派手に戦っている間に弾切れの戦車を後退させる。