ゴジラ・ウォー!   作:葛城マサカズ

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第1話「巨大不明生物です!」

 茨城県沖の太平洋で海上保安庁が巨大不明生物と遭遇した。

 その巨大不明生物は西へ進み茨城県ひたちなか市へ向かっていた。

 ただの大きな生物であり何の被害も無い事から茨城県もひたちなか市も静観していた。

 だが巨大不明生物がひたちなか市に上陸し建物や車両に被害が出始めるとひたちなか市は住民への避難勧告を発令する。

 「麻酔か何かで動きを止められないか?」

 「いや、死傷者が出る前に警察の銃で撃ち殺すべきだ」

 ひたちなか市の役所では市長をはじめ防災課長など有事に参集する者達が意見を出し合う。

 「知事がどうやら自衛隊の治安出動を要請しようとしているらしい」

 茨城県知事がひたちなか市で暴れる巨大不明生物を自衛隊に対処させるつもりだと情報が流れてきた。

 「あのデカさなら大砲で撃つのがいいかもな」

 ひたちなか市の市長がそう納得しかけたときだった。

 「政府が治安出動の要請を却下しました」

 市長をはじめ皆が驚いた。

 「どうすんだアレは?かみね動物園からの麻酔だけが頼りか?」

 ひたちなか市は巨大不明生物へ対応する手段として日立市かみね動物園に麻酔を提供するよう要請していた。

 「政府は文部科学省に戦車道履修者による害獣駆除を要請しました」

 また一同は驚く。

 「アレを女子高生に任せるのか?正気か?」

 

 「政府は茨城県ひたちなか市に被害を与える巨大不明生物に対して文部科学省に戦車道履修者による害獣駆除を要請しました。これは現地に戦車道履修者が多く在籍する学園艦がある為であり事態の早期終結を考えての事です」

 TVでは内閣官房長官が会見を開き淡々と述べる。

 「政府の要請により茨城県大洗町の学園艦である大洗女子学園へ文部科学省は戦車道履修者による害獣駆除への出動を求めました。これは茨城県知事からの要請があった自衛隊の治安出動に政府内で意見がまとまらなかった為とも言われています」

 官房長官の会見に続いてアナウンサーが解説するように伝える。

 「と、いう訳で私達に出動要請が来ている」

 大洗女子学園の生徒会の会長室で生徒会長の角谷杏がTVを指して言った。その顔は呆れている。

「社会的な貢献は学園艦の存立維持には大きなプラスになりますよ」

 学園艦を監督する文科省の学園艦教育局の役人は杏へそう嫌味のように電話で言った。どうやら大学選抜チームとの大洗女子学園廃校か存続かを賭けた試合での遺恨を晴らすようだ杏には聞こえた。

 「本当に私達がするんですか?」

 不安そうに杏へ尋ねるのは西住みほだった。廃校寸前だった大洗女子学園を戦車道全国高校生大会の優勝と大学選抜チームとの試合に勝ち存続できる働きをした英雄とでも言える少女だ。

 「戦車道連盟も生徒の安全が確保されるならと文科省の要請を承諾したそうだ」

 生徒会広報である河嶋桃がため息混じりで言った。

 「法的にも試合ではない特殊事例の項目で行政の要請に基づく害獣駆除と言う部分があって合法ではあるの」

 生徒会副会長である小山柚子が戦車道のルールなど規則が書かれた本を開きながら言った。

 「安全が確保ってどう確保するんですか?あんな怪物相手に」

 みほは怒りが混じる言い方になっていた。

 みほの考えは皆も同じだった。害獣退治と簡単に言うが相手は体長50メートルもの生物だ。

 「だけど政府は自衛隊を出さない。このままだと大洗にあの化け物はやって来る」

 杏は窓よりひたちなか市から幾筋も伸びる黒煙を見ながら言った。

 「大洗を守れるのは私達になってしまったんだ。西住ちゃん、無理を承知でやるしかないんだ」

 杏はみほへ向かい頭を下げた。

 「私からも頼む」

 「副会長として私も」

 桃と柚子もみほへ頭を下げる。

 みほは頭を下げる三人を目の前にして戸惑いながらも決意を理解し覚悟を決めた。

 「分かりました。私は害獣駆除へ行きます。しかし行くのは志願者だけです」

 みほの条件に杏は「もちろんだ」と返した。

 


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