寺田先輩が入部するときのお話です。そのためガルパンキャラが寺田先輩以外出てきません。ごめんなさい
しかも今回は前編後編に分けるために短め&ポエム濃いめです…
すまねえ…今の俺には謝ることしかできねえ…
EX前編 Regret
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…音が聞こえた
嫌になるくらい膨大な音が、意識の中に入ってくる…
サイレンの音
警察の人達の声
そして、お姉ちゃんの叫び声
目の前のクルマが燃える轟音
なんで…?なんでこんなに聞こえてくるの?
あのクルマが…Zがクラッシュした時は、何も聞こえないような気さえしたのに…
もう嫌だ、こんなの、もう聞きたくない…
…わかってる…
聞こえてくるんじゃない、私が、自分から聞かずにはいられないんだ
いくら嫌だと思っても、目の前にある現実が、私を逃がしてくれないから
壊れたZ
炎の中でうなだれて、動かなくなった島田さん
その様子を茫然と見つめる九十九さん
その横にある
Zが、身を挺して守った、180sx……
どれも全部が、ただひとつの事実を私に伝える
認めたくないけれど
あの人は、死んだんだ
私の、せいで…
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- side:寺田 -
あの事故から3年が経って、私は本来進学しようとした地元の高校をやめて、大洗学園に進学した。…別に目的があってここに来たわけじゃない。どこでも良かった…地元から…あの事故が起きた場所から少しでも離れられれば、それでよかった。
…あの日見た景色を、一刻も早く頭から消すことができれば、それで……
入学して間もない頃、学校の体育館でイベントが行われた、部活の新入生歓迎会のようだった。特に何か惹かれるものがあったわけでもなく、ただぼうっと見ているだけだったけど。
「えーそれでは、次に自動車部のみなさんお願いしまーす!」
進行役の生徒が発したワードに、無意識に反応してしまう。…自動車部…クルマか……
正直な話、今はそんな話聞くだけでも嫌だった。
聞いているだけで、あの日の記憶がフラッシュバックしてしまうから…
結局すぐに私は、体調が悪いと言って、早退してしまった。
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その日の夜は、珍しく休みが取れて家にいるお姉ちゃんと一緒に、家で晩御飯を食べた。ご飯を食べている最中、お姉ちゃんが学校のことを聞いてきたから、今日は部活の新歓があることを伝えた。
「…で?結局部活どうするのよ?陽花」
「…うん、いいよ別に…どこかに属さなくちゃいけないわけでもないし…」
「そう…まあ私も、別に無理に入れとは言わないけどさ…」
「…うん……」
「…ねえ陽花…まだ、あの事故のこと引きずってるの?」
「…!」
「言ったでしょ?あの事故は、あなたのせいなんかじゃないって…」
「…どうして、そんなこと言えるの?」
「陽花…」
心配そうに、お姉ちゃんが私の名前を呼ぶ。でも、私はそれを無視して、声を荒げてしまう
「私のせいなんだよ!全部私の!私があのクルマ…ワンエイティなんか見つけたりなんかしなきゃ、あの人は死なずに済んだの!」
「…陽花」
「あのクルマが来てから、みんなおかしくなっていった…みんな何かに憑りつかれたみたいに、スピード上げて…最初はただ、楽しかったのに…」
「陽花」
「私のせいだ…私があんなもの持ってきたせいで…全部、私の…」
「陽花!」
「!あ…」
「陽花、もういい、もういいから…ね?」
「…お姉ちゃん…ゴメン、私…」
「…ほら、ご飯食べよ?冷めちゃわないうちにさ…」
「……」
その後、結局2人とも一度も口を開かないまま、ただ時間だけが過ぎていった。
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その日は、夜中に海沿いの、人気のない場所を歩いていた。学園艦だから、ここは船端とでも呼べばいいのだろうか?ともかく、その辺の部分だ。
建物の少ない場所なのに、もしくはそんな場所だからか、道路が結構広くて、潮風とも相まってどこか不思議な開放感がある場所だ。気が沈んでいるときにたまに来る、お気に入りの場所でもある。そう、ちょうど今日みたいに…
(…分かってる、いつかは踏ん切りをつけなきゃいけないってことぐらい…)
お姉ちゃんや周りの人は、もうあの事故のこと、きちんと割り切って、前へ進んでいる。きっと、立ち止まったままなでいるのは、きっと私だけ…いつかは前へ進まなきゃいけない、それはわかっている…
(けれど…)
けれど、前に進める気がしない、罪悪感と自責が、それを許してはくれない。それもあってか、私自身、前に進むことを、あまり望んではいなかった。
(…私は…)
私は…贖罪をしたかった。あの人を…あの人たちを壊してしまった罪滅ぼしをしたかった。あの時の過ちを償えるなら、私は何でもしたい…前に進めるのは、それからな気がした
「…もう、遅いよね…」
自嘲気味に、そう独り言をつぶやく…当たり前だ、もう3年も経ったんだ…もう誰もそんなこと、望んじゃいない…そんなことしたって、死んだ人は生き返ったりなんてしない…
それに…何ができるっていうの?私みたいな、何の力も持っていない子どもが…
何にもできやしない…
そう、何にも…
その時だ
疾走する閃光達が、私を一瞬で横切っていった
「!?」
何事かと思って見たときにはもう遅い。その閃光達は、もう私のはるか先を走っていた
(今の…もしかして自動車部の…)
もう、そんなこと関わり合いになりたくなかった。でも、私の足は何故か、エキゾーストの鳴る方向へと向かっていく。追いつけるはずのない足で、私は必死に閃光の軌跡をたどっていった。
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(…見失ったかなあ?)
しばらく追いかけ続けたものの、結局途中で見失ってしまった。もうエンジンの音はしない、終わって帰ってしまったんだろうか?
(…なんでこんなことしているんだろう、私?)
見つけて、それからどうするつもりだったんだろう?もうああいうことに関わるのは、嫌なはずなのに……だけど…
あの景色が、あの閃光が、すごく懐かしいものに思えてしまった
もう失くしてしまった。私が壊してしまった、私の居場所…それがまた、私の目の前に現れたような気がしてしまった気がした
(やっぱり…帰っちゃったみたい…)
もう諦めて帰ろうと思った
その時だ
(!…向こうから声が…)
声のする方向へ、走って向かう。少しでも早く、少しでも早く会おうと、まるで昔みたいに…
角を曲がったその先に…
「…えーっと?」
「あ…すいません!大洗学園自動車部の方たちですか?」
「うん、そうだけど…君は?」
数人の女の子と、何故かおじさんが1人
そして、
2台のクルマ、フェラーリと、レビン
始めて見た、けど酷く懐かしいような光景が、そこにあった
…書き終わった時に思ったのですが、もしかして現在の3年って「ガルパン原作で現在の」という意味だったんでしょうか?
もしそうだったらすいません…
別の自動車部キャラの番外編もいつか書きたいと思います。