ガルパンキャラが1人しか出てないのさ…
- 夕方 ある街道 -
時間帯の割には不思議とすいている道路で、フーガを走らせていた。お嬢様の送迎のためだ。
もうとっくに戦車道の練習が終わっている頃だろうか。急がないと大目玉かもしれない。
それから十数分後、大学に到着し、クルマから降りて演習場に行くと、探していた人を見つけた。
やはりとっくに演習は終わっており、他のメンバーと談笑しているようだ。
手を振ると、自分の存在に気づいたようで、メンバーと別れの挨拶を交わした後、此方に向かってきた。
「すみません。お待たせしました。」
「ううん、大丈夫」
謝罪をすると、そんな言葉が返ってきた。どうやらお嬢様からのお咎めはないようだ。正直ほっとした。
お嬢様を車に乗せ、帰路につく。
「どうですか、大学は?」
「楽しいよ、みんないい人達だし。歳が離れていても、優しく話しかけてくれる。」
「歳が離れているからこそじゃないですか?小さい妹みたいに見られているとか。」
「…遅れたこと、お母様に言いつけるよ?」
いらんこと言ってしまったかな…。そんなやり取りの後、しばらくは俺の謝罪が続き、ボコ?だかなんだかのぬいぐるみをおごることでさっきの失言に関してはお許しを貰った。お嬢様の送迎を続けて随分経つが、彼女も俺に慣れたのか、最初に比べてだいぶ遠慮がなくなってきた。人のことは言えないかもしれないけれど。
「奥様には内緒ですよ?」
「わかってるよ」
お嬢様は上機嫌にそう答えた。
まさかあんな一言で予想外の出費を出すことになるとは思わなかった。
----数十分後
正直この街のデパートには進んでいきたいとは思わない。
デパートに行くためにいつもとは別のルートを走らなければいけないからだ。
いつもは意図的に避けている、嫌いなルートだ。
嫌いな理由は簡単
「…まだ直してないのか…。」
道路脇に広がるオイルのシミ、ひん曲がったガードレール、そしてそれを覆うように位置している
コーンとバリケードを見て、そう呟く。
そう、嫌いな理由は、昔ここで事故を起こしたトラウマがあるからだ。
あれから5年、きっともう忘れることはできないだろう。
いつも俺の前を走り、そして俺の代わりにいなくなったあいつのzは、もうスクラップになって
しまったのだろうか。あいつを殺したあの180は、もう分解されて売り飛ばされてしまったの
だろうか。いくら後悔してももう遅い。
ふと、昨日旦那様と話していた内容を思い出した。
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『九十九くん、いま帰りかい?』
『はい』
『そうか、いや、ちょっと伝えたいことがあってね。』
『カレラの件ですか?』
『そう、それだよ。さっき電話がきてね、キミのポルシェ、セッティングが完了したらしい。
明日には受け取っていいそうだよ。ただ、時間がなくてシャシダイで慣らしができなかったみたいだから、こっちで実走してくれ。とのことだ。』
『どの位必要ですか?』
『1000km、回転数は一応4500までにとどめておいてくれといっていた。』
『分かりました。ありがとうございます。』
『…まだ、忘れられないのかい?』
『……』
諭すような声で、旦那様はつづけた。
『もういいんじゃないかな?自分を許してあげても。それにそんなことを続けていても、何も生み出さない。
それどころか、自分が破滅に向かう一方だ。』
『…心配して頂きありがとうございます。でも、本当にそんなんじゃないんですよ。ただ無理なく趣味で続けたいだけなんです。』
『……』
『お心遣い、感謝します。それでは』
そういって無理な言い訳をして帰路についた俺を、旦那様は何も言わずに見送ってくれた。
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その通りだ。
こんなこと、誰が見ても間違っている
何も生み出さない。
きっと後悔することになる。
それでも
そんなことを堂々巡りに考えていると、目的地のデパートに着いた。リクエストした張本人を見てみると、
後部座席でぐっすりと眠っていた。どうりで静かだったわけだ。
もし、俺がいなくなったら、この人はどう思うのだろうか?
そんなことを少しだけ考えて、そしてすぐにやめた。
たられば話をいくらしても意味がない、どちらにしろ、自分がやることは変わらないのだから。
(終わったらクルマを取りに行って…それから慣らしだな…)
仕事後の予定を頭の中で立てながら、気持ちよさそうに寝ている眠り姫を起こすために、名前を呼んだ。
「着きましたよ、愛里寿様」
それでも、最後まで止まることはできないだろう
九十九 樹(つくも いつき)
25歳、男性、元々はクルマ弄りが好きなただの学生だったが、ある事故をきっかけに愛里寿の父に目をかけられ、島田家の専属運転手となる。
この人はとりあえずここでフェードアウト。次からは大洗学園が舞台になります。