総てを切り裂く刃となるため   作:葬炎

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またやってしまった……





始まり

「秀次……はぁ……逃げて……はっ……」

「何言ってんだよ姉さん! 一緒に逃げるんだよ!」

 

とある場所、学生服を着た一組の姉弟らしき人物が一緒に何かから逃げている。

 

「ダメ……私もう限界なの……」

「何言ってんだよ! もっと、もっと離れなきゃあの化け物に追いつかれちゃうよっ!」

 

その二人はまるで戦争跡地のような瓦礫や人の死体が散乱する町の中をただひたすら走っていた。

弟のほうはまだ少し余裕があるのか息を上げつつ姉を引っ張っているが、姉のほうはもう足が限界らしく、既に歩くほどの速さしか出ておらず弟の引っ張る手がなければ今にも倒れそうだ。

 

「ダメ……あなただけでも先に逃げて……私も後から行くから……」

「っっ! ……いやだ! 一緒に行かないと俺も行かない!」

 

しばらくそのまま歩くほどの速さで走っていたが、もう体力の限界なのか姉は崩れるようにへたりこみその場で座り込んでしまう。

 

「ほら……くっ……はぁ……先に行って? ……大丈夫、お姉ちゃんは絶対大丈夫だから秀次だけ先に安全なとこに……」

「……嫌だ! 絶対一緒に逃げるんだ!」

「え……?」

 

もう全部諦めた顔で言われた言葉に弟は耳を貸さず、座っている姉を無理やり背負って歩き出そうとしていた。

 

「……! 無理よっ!そんなことしたら二人とも逃げきれないわ!」

「うるさい! だからって置いていけるか!」

 

しかしその歩きの速さは普通に歩くよりも格段に遅く、また、弟も2、3歩ほど歩いただけでもう体力の限界が近いらしく足は小刻みに震えている。

それでもなお姉を下ろすことなく一歩一歩踏みしめ少しでも安全な場所に向かおうとしていた。

 

「秀次……」

「守るんだっ! 姉さんを、俺が!」

 

背中で自分の名前をつぶやく姉に気づかず前へ、前へと玉のような汗をかきながら歩く。

だからだ―――気付けなかった。

 

「…………っ!? 秀次っ!」

「えっ?」

 

ドン! と背中を押されて前のめりに倒れる。

倒れながら姉のほうを見ると、そこには自分に手を突き出した状態の姉と、いつの間にか近寄っていたのかこの周辺を地獄のような状態にした元凶―――怪物が腕を振り上げている姿が。

 

「あっ__________」

「ごめ__________」

 

まるでこれが最期だとでも言うように悲しい笑顔をこっちに向ける姉。

 

驚きの声を上げる間に怪物の腕についた鋭い凶刃が今にも姉に目掛けて振り下ろされ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザンッッッ

 

ドシャッ

 

「……斬滅完了。次のターゲットの場所を教えてくれ」

『早いねっ! 了解! 次はね______』

 

「「……へ?」」

 

―――なかった。

たった今姉弟を襲いそうだった怪物は、目の前に謎の男があらわれたと同時に体の中心を捉えるようにまっすぐ斜めに線ができて、そこからずれるように真っ二つになったのだ。

怪物からの突然の襲撃に謎の光る剣らしき物を持った男による突然の救出劇で頭が混乱した姉弟は目の前でなにがおこったのかまったくわかず呆然とするしかなかった。

 

『______だよ! 急いで!』

「了解。……そこの姉弟」

「……あっ、はい!」

「……なんでしょうか?」

 

頭が追いつかないままとりあえず返事をした姉に、どうなってるかわからず呆然としながら返事する弟。

そんな二人の様子を確認した男はこう告げる。

 

「……手短に言う。ここら一帯の化け物は全て斬滅した。下手に動くと逆に危険だから救助がくるまでここにいてくれ。いいな?」

「……本当ですか?」

「ああ」

 

男が手に持つ光の剣の調子を確かめるように数度振るってから、どこからともなく左手に現れた鞘らしきものに剣を収める。

それと同時に足にぐっと力を込めるのを見て慌てて弟が質問した。

 

「ま、待ってくれ! あんたは何者なんだ!?」

「……俺か? 俺は―――」

 

―――ボーダーだ。

そう告げると同時にボン! と、男のいたところが爆発したかのような音と衝撃を出したと同時に土煙が巻き上がり、咄嗟に腕を目の前で交差させて目を守りながら閉じていると気付けば男はいなくなっていた。

 

「……なんだったんだろ」

「……わからないわ。でも一つ確かなのは―――」

 

私たちは助けられたのよ。

その言葉に弟は未だに呆然としつつ、小さくこくりと頷いた。

 

彼、彼女らがボーダーという組織について知ることとなるのはこの惨劇から数日後だった。

 

 

その姉弟は後にボーダーに入り、今では活躍してるらしい。

 

 

その目はまっすぐ守ることへと向けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お疲れ様っ!』

「……ああ。被害は?」

『…………とてもではないけど、高台から見渡す感じ被害を最小限にとどめた、なんて言えないね。でも迅くんが言うには最善の一歩手前くらいの結果らしいよ』

「これで最善の一歩手前……か」

 

まだ無事なマンションの上に駆け上がりあたりの状況を確認すると、そこら周辺には綺麗に真っ二つになった怪物の山と、家だったものの瓦礫と、間に合わず救えなかった人の死体が転がっている。

 

その人が死んでるという現実を再認識したのか、その場に座り、どことなく虚ろな目で空を見上げる。

 

「これがかつて望んだことがある光景……か」

『……? ごめんよく聞き取れなかったのだけど』

「いや……大丈夫だ、です」

 

口に手を当てもごもご呟いた言葉は誰の耳に入ることもなく自分に返ってくる。

はたして何を思って呟いた言葉なのか。

 

それを知るには今から18年ほど遡ることとなる。




どうも。葬炎です。
他の小説が1年以上放置してるのにヤっちゃったぜ☆〜(ゝ。∂)


……はい。すみません。他のも書いてはいるんですが全然進んでないです。
それもこれもワートリが面白すぎるのがいけないんだ……

この小説もワートリ熱が冷めるまではやる気ですがいつまで続くかわかりません。書きだめ吐き出した後は不定期+亀更新となります。ご容赦ください

まあどうせ誰も読まないし大丈夫やろ……

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