もしもベル・クラネルにこんなスキルがあったなら:短編集 作:自堕落キツネ
加藤団蔵が欲しくて札使ったら酒天童子(二人目)が来ました。
嬉しい、んだけど「マジ?」ってなっちゃいましたね。
幼い頃から、祖父に英雄譚を読み聞かせてもらっていたベルは、英雄は平和と笑顔を世界に広げる存在である、と認識していた。
その為、小さな、引っ掛かると思わず笑顔になるようなイタズラを村の人達に時折行っていた。
と同時に、日々の糧を得るための動物を狩る為の罠と、村にモンスターが近付かないようにするための罠、種類の異なる罠を猟師達に教わっていた。これは、ゴブリンに襲われた時の恐怖を乗り越える為である。
祖父曰く、「対処法を知っていれば怖くなくなるもんじゃ。」だそうだ。
その後に小声で「おなごを怒らせた時なんぞ特にな。」と言わなければ格好良かったのだが。
故に発現したこのスキル
『
・スキル使用時、ジャックオーランタンの変装になる
・イタズラ、罠の発動時
・内容は使用者の想像力に依存する
・変装時、浮遊行動可能
・イタズラに引っ掛かったモノは、大きな反応を強制的にしてしまう
(ギャグ漫画のリアクション並み)
オラリオで冒険者となって半月、その行動からすっかり有名になったベルはダンジョンに潜る階段を使わずに、大穴の淵に立っていた。
「よし、今日も頑張って稼ぐぞ~!!」
オー!!と一人で拳を掲げるベルを、微笑ましく眺めていた男は、その後ベルのとった行動に驚愕した。
なんの躊躇もなく飛び出し、真下へと落下していったのだ。
「ハァ!?おい、大丈夫か!?」
慌てて駆け寄り、無事を確認しようと覗き込むと、ユラユラ、と防具に見えないオレンジの被り物と真っ黒なマント、小さな鐘の付いたカンテラを装備してゆっくり降りていく姿が視界に入った。
先程とは違う驚きに硬直している男に、後ろから声が掛かる。
「あんた、アレを見るの始めてなのか。なら驚くのも仕方ねぇな。」
「?、あんたはアレを知ってるのか?」
「あぁ、なんでもあの坊主のスキルらしいぞ。かなり目立つからさっさとギルドに公開したそうだ。内容が内容だからあんま戦力としては注目されてないらしいけどな。」
「へぇ、今度見に行ってみるか。」
と、こんな会話がベルが去った後で交わされていた。
その話の種となっていたベルは、
「よし、まずは今日の調子を確認しよっと。」
前方には5匹のゴブリンがグループとなって、ベルに今にも襲いかかる寸前であった。
雄叫びをあげながらベルへと突進するゴブリン達、ベルは落ち着いた様子で「カロン」と小さな鐘の付いたカンテラを振り、イタズラを発動させる。
ゴブリン達とベルの間に、『油』と字が浮いたツボが落ち、ガシャンと割れ中身が地面に広がる。
気にせずに踏み込んだゴブリンからツルンと足を滑らせ、尻餅をつかせた。
イタズラに引っ掛かったのを確認するや、もう一度カンテラを振り、どこからか現れた燃える矢が突き刺さる。
「ギャァァァ!!」と断末魔の叫びをあげながらゴブリン達は魔石とドロップアイテムを残して灰になった。
「うん、今日も好調好調。これならもう少し下の階層も行けるかな。」
オレンジカボチャの口から顔を出す形になっているベルは、満足気に頷き、探索階層を広げることにした。
そして、まるでそうなるのが当然、逃れられない運命であるかのように、ミノタウロスと遭遇する。
「ヴォォォォォ!!」
「よし、なんでミノタウロスが
妙に落ち着き、思いついたイタズラと罠の組み合わせを試してみようと意気込むベル。モンスターの強さはベルにとって、罠の性質を変える必要が有る程度の認識しかないようだ。
獲物を擂り潰す、とばかりに突進し、持った武器をガムシャラに振り回す。
それをベルはユラリユラリ、フワリフワリと浮いたまま動き、攻撃の
少々の距離が開いた状態で、ベルは三度、カンテラを振るう。
ミノタウロスの突進に合わせ、足下に長い草で編んだイタズラが発生する。
それに足を引っ掻け、両腕を前に伸ばした体勢で転ぶ。
地面に前面をビタン!と叩きつけられると同時に降ってきたツボが後頭部に当たり、『油』がミノタウロスの全身を覆う。
ゴブリンと同じようにどこからか燃える矢が発射されミノタウロスに刺さり、炎に包まれる。
だがゴブリンと違い、地面に転がり炎を消し立ち上り、もう一度ベルへと突進した。
「うわ、やっぱり頑丈だなぁ。」
と呟きながらも、再びカンテラを振るう。
今度は、ミノタウロスがこれから踏み込もうとしている地面にバナナの皮が現れ、それを踏み地面と平行になるほどに勢いよく滑り、空中で仰向けになる。
ミノタウロスの形に1Mほど地面が凹み、そこにスッポリと収まると、目、口、肩、二の腕、
抵抗することもできずミノタウロスはそのまま仕留められた。
「う~ん、まだまだだなぁ。もうちょっとイイ組み合わせ考えなきゃ。」
そう独り言を呟くベルと、戦いの一部始終を見ていたアイズとの出会いまで、あと少し………