「チェイサァー!」
「甘いわよっ!」
「ぴにゃぁ!?」
気合いを入れた拳は難なく受け流され、流れる様に投げ技に移行される。ろくに対応できず受け身も取れないまま、ゴスッという鈍い音を立て、あかりは頭から訓練所の床に組み伏せられる。
「ゴロゴロー。だりゃぁー!」
「甘いってのぉ!」
「ぷにっ!?」
手を離された瞬間に転がる様に離れ、狙いを定めて跳躍。躍り掛かる様に拳を振り下ろす。するとここで、飛び上がることで視線が高くなり、憧れの先輩を
「あんた、今なに考えた?」
「い、いえなにも……」
「そう?なんか、カンに触ることを思われた気がするんだけど」
「……ソンナコトナイデスヨ?」
「……?」
変ねぇ、と可愛らしく首を傾けるアリア先輩からそっと目をそらす。
今度からは飛び上がるのはやめておこう。カンが鋭すぎていつかバレそうだ。
〜〜〜〜
(それにしても、この子のタフさはどうなってるのよ…)
「あうあうぁ〜〜。たんこぶできちゃうぅ〜〜」
訓練終了後、床をゴロゴロ転がるあかりを見ると、そう思ってしまう。
今までの訓練で分かったことだが、あかりは耐久性が尋常じゃなく高い。
今回
……ん?なんか周りから目をそらされるんだけど……気のせいかしら。
数回はいい感じに音を立てたのだが、それも悶えるように転がるだけだ。しかも、転がりがかなり速い上に上手く間合いを取ってるので、追撃がやりにくいのだ。
これは投げ技の後すぐに絞め技に移ればいい話だが、あかりが回復するタイミングが早すぎて、絞める前に抵抗されるのだ。投げが甘ければ逆に締められそうになる事だってある。
「頭がぁ〜。背ぇがぁ縮むぅ〜」
ーーなどと、のたうち回っているが、油断していると直ぐに飛び掛かってくるのだ。だからそこの男子、畏怖の眼差しをこっちに向けんな。思わずホルスターに手が伸びちゃうじゃない。
「オォーーッ!!」
「ん?」
あかりを80回ほど投げた頃から、「男女に負けるな」とか何とか声が上がってた所だ。
「にっししぃ♪」
「あがががっ!?ギ、ギブ、ギブギブギブ!!」
「あん?お前、そんなこと言って何回もカウンターしてきてんだろ?ちぃと、お灸でも食ってろ。20秒くらい耐えやがれ」
「あががが!?お、お灸は食いもんじゃねぇだろうが!?」
「はいはいそーですねっと。後10秒追加なぁ〜」
「ちょっ!?締まってる、締まってるぅ!?」
「締めてんのよ?」
「そんな『当ててるのよ?』みたいに言うんじゃねぇよ!?」
「はっはっはー。そんなことテメェになんかにするかよ。…………1分追加ぁ」
「しれっと恐ろしいこと言うな!?」
そこではあかりと仲が良いライカが、一年男子をアキレス腱固めで極めていた。
それを見て、ライカすごいっ!と、跳ね起きながらあかりが観衆の方にテクテクとよって行く。
「……あんた実は全然ダメージ無いんじゃないの?」
観衆の後ろから、ピョンピョン跳ねながら友達を見ようとしている姿からは、全くと言っていいほど体にガタがきていなかった。
「……もうちょっとハードにしてもいいのかしら」
「ーー!?な、なんか今寒気が……」
ま、ジョークだから気にしなくていいんだけど……おい、そこの男子、なんで防弾シールドの要請を出したのかしら?ちょっと詳しくお話し聞かせて貰いましょうか。
〜〜〜〜
「足がっ!足がぁぁあ゛!!?」
「そ、それ以上はいけない!」
「メディーーック!!救護兵!救護兵はいないかぁ!?」
「こ、こいつ……足を触る度にピクピクしやがる……」
「な、なんてことだ…ま、まるで悪魔に襲われたようじゃないか……」
「……なんか面白いなこれ」(´・ω・)つ゛ツンツン
「ヒギィッ!?」
「「「バッカお前なにやってんだ!?」」」
「応急手当て(物理)だーーー あっ」
「たわばっ!?」
「ちょっ、白目向いてんぞ!?本当に大丈夫なのか!?」
「だ、だだだ大丈夫だ。ま、ままだ慌てる症状ではない」
「ちょい待ち、こいつニセモンじゃね?」
「だ、誰が偽物だとーーーあっやっべ」
「
「……間違ったかな?」
「ヤブ医者ぁだぁあ!!」
「えぇい、本物連れてこい!いや、むしろ連れてくぞ!」
「ちょ、やめ、こ、これ以上はらめぇぇええ!?」
「……なんかすげえことになったな」←主犯
「ライカちょっとやり過ぎだよぉ」
「ん〜、そうか?」
「膝を悪くしたら危ないでしょ?ちゃんと頭を狙わないとダメじゃない」
「一応言っとくが、皆んなが皆んなお前みたいに頭固くねぇんだぞ?隣でゴスゴス音聞こえてめっちゃ怖かったわ」
「いやぁ、全然勝てなかったよ!流石アリア先輩だね!」
「……あぁそうだな。
ーーto be continued !!
防弾シールド
所謂ライオットシールド。立てこもり事件が起きた時によく見かける大型の盾。一応武偵専用ということで『police』ではなく『butei』とプリントされている。
拳銃弾はもちろん、散弾などの貫通力の低い弾丸を防げる。爆発物などの破片からも身を守れる優れもの。
また、今回の場合、男子生徒C君が要求した防弾シールドは、拳銃弾は防げたが、バリツの効いたろくに力が入ってなさそうなキックの衝撃を殺しきれず吹き飛ばされた。慌てて態勢を立て直したところに勢いよく踏み込んだ抜き手で防弾シールドを貫かれ、そのまま持ち手と握手されたようだ。
このように、貫通力の高い物や衝撃自体は殺せないので注意が必要になる。
対処法
シフ→大剣以上の質量武器で上から叩き斬る。
あかり→『必殺技』で貫く。
志乃→武器を壊す覚悟なら突き。極限の集中力があれば斬り裂ける。
ライカ→トンファーなどで強い衝撃を与え、倒させた後シールドを踏みつけながら背後に飛び回り背後からホールド。
金次→金欠じゃ無ければDL弾(グレネード)でドカン。狼さんなら背後の壁などに跳弾させてバックアタック。
アリア→上記。
レキ→ビューディフォー。又はグッナイ。
ののか(一応一般人)→高台になんとか逃げて石を頭に投げる。
FPSプレイヤー→グレネード。又はナイフでサクッと。