俺たちの冒険の書No.001〜ロトの血を引きし者〜   作:アドライデ

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No.09:ロトの剣。

 

「あぁ、わかったよ。なぜロトの剣がここにあったか、なぜ虹の賢者がここへ来るように言ったのか」

 ここは竜王の玉座。竜王が巨大化したことにより、この部屋の一部が崩れ落ちている。

「こんな場所で戦ったのですね」

 戦闘の激しさが垣間見えたからか、後方で息を飲むローラ。

一番危険な場所であるここには、流石に連れていけないと一度は言ったが、『大丈夫です』と真っ直ぐな目でそう言われたので、説得を諦めた。

「確かにここで最終決戦がありましたが、そうではありません」

 瓦礫を乗り越え玉座へと歩み寄る。そこには何か黒い塊が鎮座していた。

「これは?」

「分かりませんでも良くないものだと思います」

 答えながらロトの剣を真っ直ぐに振り下ろす。互いに反発し黒い火花のようなものが飛び散る。

何度か切り込んだが、それは割れることなく黒いベールがそれを守っていた。

「恐らく、ロトはこれを見つけて、悪の今後の復活を予測したのではないか。そしてそれに対抗しうる力をこの最終の場に来れる実力のある人に託したのです」

 賢者達は知っていたのだ。この平和が一時的なものであることを、そして竜王も知っていたのだ再び復活できることを…。

 

「ここに竜王の魂はありません。あるのは闇に包まれた卵ですわ」

 ローラは自分が感じた思いとの相違に首を振る。確かに子として竜王は復活するであろう。

「光の玉は世界を闇から救ってくれるもの。竜王は救いを求めて光の玉を探し盗んだ。自らが完全に悪に染まることを恐れて…」

 なぜ、姫が生かされていたのか。相手は策士だ、より良いものを手に入れるのに長けている。釣り針は大きい方がいい。

「勇者を待っていたのですわ」

「え?」

 ローラは一つの仮説として、今回のことで導き出した思いを言う。

「竜王は救いを求めた。運命を断ち切るその強さを。悪が竜王の心を黒く染めるのを防ぐために。それが意思の無きこの黒いベール」

 あくまで推測でしかないが、それでも真剣さが伝わった。これで終わりではないと言うことか。

悪の根源を取り除く術を探し出さなくてはいけない。

「勇者ロトあなた様はとんでもない課題を置いていきましたわ」

 ただの卵だったらそれでいい。通り越し苦労なら万々歳だ。だが、姫の言葉に背筋が凍るのを感じた。

「想像以上に外の世界ですることが増えたな」

 光の玉はラダトームに既に献上している。事情を説明しなければならない。

この卵が孵るのは何年先か己には想像つかない。しかし、世界が闇に閉ざされるのを防がなければならない。ロトの意思を継ぐために…。

 

 帰り際、物言わぬ玉座を一度振り返る。わずかながら、ロトの剣が共鳴した気がする。

そうか。この剣がこの場所にあるのは強さだけじゃない。ここで勇者ロトが亡くなったのだ。

銀の竪琴がガライを求めるようにロトの剣も勇者ロトを求めてここに眠っていたのだな。

「返してやるよ。俺が剣を振れなくなった時に」

 いつになるかは保証できないが確実に。

 

 No.09、巡る悪。


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